特殊装甲隊 ダグフェロン 『廃帝と永遠の世紀末』 第八部 「監査が来たぞ!」

橋本 直

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馬鹿が去って

第17話 少し早い昼ご飯

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 隊のゲートでタクシーに乗り込む麗子を見送った誠達はある意味虚脱感に襲われた。

「やっと行きやがった……」

 かなめはため息交じりにそう言って苦笑いを浮かべた。

「鳥居曹長。貴様はついていかないのか?」

 カウラは一人取り残された鳥居にそう言って笑いかける。

「呼ばれているのは麗子様だけですので……ここって食堂とかあります?」

「どうせかえでが持ってきたサンドイッチがあったろ?今日はアタシもそれでいいや」

 かなめはそう言って本部棟に向けて歩き始めた。

「私達も食べていいの?かなめちゃんに作ったんでしょ……リンちゃんが」

 アメリアも呆れた調子でそう言うとかなめの後ろに続いた。

「日野少佐の副官の渡辺大尉は結構家事が上手いんだ……きっと気に入ると思うよ」

 誠は気さくさをアピールしながら大きすぎるカメラを抱えてかなめに続く鳥居に笑いかける。

「それは助かります……私、実家に仕送りしてるんでそう言うのありがたいんです」

 鳥居はそう言って誠に笑いかけた。

「なんだ?鳥居って言えば甲武の武家じゃあ名家だぞ。それが仕送り?」

 かなめは振り向いて不審そうに鳥居の顔をのぞきこむ。

「そんな……私の家は鳥居家と言っても分家も分家で……一応士族ですけど、父が早いこと亡くなったもので弟達の学費とか私の仕送りと母の内職でなんとか賄ってるんです」

「苦労してんだな……しかも上司がアレだろ?」

 そう言うとかなめは関心を失ったというように足を速めた。

「士族ってことはサムライなんですか?」

 誠はとりあえずそう尋ねた。

「うちは下級士族ですから……出世の見込みもたかが知れてますし、給料もかなめ様みたいに官位のある人に比べたら……」

 鳥居はそう言いながら少しうつむいた。

「身分制度が残ってる甲武の弊害だな。ここは東和だ。能力主義の国だ。もっと自信をもって生きた方がいい」

 カウラはそう言って鳥居に笑いかける。

「そうよ、まああのお馬鹿なお姫様のあとをついて回るのはご苦労だけど仕事としては楽なもんじゃない」

 そう言いながらアメリアは大柄な彼女から見れば小柄に見える鳥居の肩を叩いた。

「馬鹿だなんて……そんな。立派な方ですよ、田安中佐は」

 鳥居はキッと目を見開いて糸目のアメリアをにらみつけた。

「アイツが立派?妙なこと言うじゃねえか」

 先頭を歩いていたかなめがニヤニヤ笑いながら鳥居に近づいてくる。

「品があってたおやかで思慮深い方です」

「思慮深い?アイツが何か考えているとは思えねえんだけどな……あと品があるんじゃなくてお高く留まってるって言うんだ、あれは」

 挑発するようなかなめの言葉に鳥居はさらに視線を鋭くする。

「いいえ!何も考えてらっしゃらないようでいて常に最善手を考えて行動されています!実際、あのお方のおかげでどれだけの命が救われたことか……」

「そりゃアイツの『ラッキー』のなせる業だろ?ツキ以外にアイツに何か取り柄があるなんて聞いたことねえぞ……」

 ムキになってにらみつけてくる鳥居をせせら笑うようにしてかなめはそう言ってタバコを取り出した。

「はいはい、喧嘩はよしましょうね……かなめちゃんニコチン切れなんでしょ?タバコ吸って来なさいよ。私達は第二会議室にいるから」

 空気を察してアメリアはそう言ってかなめを喫煙所に送り出した。

「西園寺は口が悪いからな。我慢してくれ」

 カウラはそう言うと怒っている鳥居に静かに笑いかけた。

「麗子様は武門の棟梁にふさわしい方です。あのお方はいずれ将軍になられます」

「将軍ねえ……」

 深く考えまいというようにアメリアはそれだけ言って本部棟の入り口に入った。

 冬の本部棟の廊下には寒風が吹いていた。
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