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第六章 誠がもたらした『世界』
第36話 休むべき時、救いの時
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「このかつて人だった人に休んでもらうって事ですか?僕の剣で……つまり、この人を斬れと」
搾り出すように誠がそう言うと彼女達は一斉に頷いた。
「え!それって……どうして?この人だって……助かる見込みは無いんですか!」
驚いたようにサラが叫んだ。
「無理ですわ。もうこの人の大脳は血流も無く壊死して腐りかけてますの。それがただたんぱく質の塊のような状態で死滅と再生を繰り返しているだけ、ただ未だに機能している小脳で痛みと苦しみを感じるだけの存在になってしまった。数週間後には再生すら出来なくなって全身が腐り始める」
その茜の言葉にサラは反論を止めて黙り込むしか無かった。
「僕に、人殺しをしろと?」
誠は覚悟はしていた。この剣を貰った時から人を斬る時が来るのは分かっていた。そしてそれが今なのだと言うことも分かっていた。
「馬鹿言うんじゃねー。こいつを休ませてやれってことだ。こいつを苦しみから、痛みから救ってやれるのは『法術師』だけだ。そしてそれがオメーの司法局実働部隊での役目なんだ」
ランの言葉に誠は剣を眺めた。黒い漆で覆われた剣の鞘。誠はそれを見つめた後、視線を茜に向けた。
「やります!やらせてください!」
誠に迷いは無かった。覚悟も心もすでに決まっていた。
「いいのね」
確認するような茜の声に誠は頷いた。
「止めろとは言えないか」
カウラがつぶやく。アメリアは黙って誠の剣を見つめていた。
「俺は何も言える立場じゃないけどさ。やると決めたんだ、全力を尽くせよ」
島田に肩を叩かれて誠は我に返った。しかし、先ほどの決意は勢いに任せた強がりでないことは自分の手に力が入っていることから分かっていた。
静かに誠は手にした秘剣を抜いた、鞘から出た刃は銀色の光を放って静かに揺れていた。
「それじゃあ、ラーナさん。部屋を開放、神前曹長には中に入ってもらいます」
茜の言葉でラーナは端末のキーボードを叩き始めた。二つの部屋の中ほどに人が入れる通路が開いた。
「そこから入ってくれますか?指示はアタシが出しますんで」
ラーナの言葉を聞いて誠はその鉛の色が鈍く光る壁面の間に出来た通路に入っていった。
膨れ上がった眼球が誠の恐怖をさらに煽る。だがもはやそれは形が眼球の形をしているだけ、もうすでに見るということなどできる代物ではなく、ただ誠の恐怖をあおる程度の役にしか立たない代物だった。
『神前曹長!狙うのは延髄っす!そこに剣を突き立てて干渉空間を展開たのんます!神経中枢のアストラル係数を反転させれば再生は止まるっす!』
ラーナの言葉を聞いて誠は剣を正眼に構える。突きを繰り出せるように左足を下げてじりじりと間合いをつめた。
しばらくして飛び出した眼球が誠を捉えたように見えた。そのかつて普通の人間だった怪物は誠の気配を感じたのか、不気味なうなり声を上げる。次の瞬間、その生物からの強力な空間操作による衝撃波が誠を襲う。だが誠もそれは覚悟の上で、そのまま一気に剣を化け物の口に突きたてた。
「ウギェーヤー!」
喉元に突き立つ刀。化け物から血しぶきが上がった。誠の服を血が赤く染め上げていく。しばらく目の前の化け物はもだえ苦しんでいるように暴れた。突きたてた誠はそのまま刀を通して法術を展開させた。
『こ・レデ・・やす・める』
脳裏にそんな言葉が響いたように感じた。誠の体をすぐに黒い霧が化け物を包む。もがく化け物の四肢が次第に力を失って……。
そんな目の前の光景を見ながら同じように誠も意識を失っていった。
搾り出すように誠がそう言うと彼女達は一斉に頷いた。
「え!それって……どうして?この人だって……助かる見込みは無いんですか!」
驚いたようにサラが叫んだ。
「無理ですわ。もうこの人の大脳は血流も無く壊死して腐りかけてますの。それがただたんぱく質の塊のような状態で死滅と再生を繰り返しているだけ、ただ未だに機能している小脳で痛みと苦しみを感じるだけの存在になってしまった。数週間後には再生すら出来なくなって全身が腐り始める」
その茜の言葉にサラは反論を止めて黙り込むしか無かった。
「僕に、人殺しをしろと?」
誠は覚悟はしていた。この剣を貰った時から人を斬る時が来るのは分かっていた。そしてそれが今なのだと言うことも分かっていた。
「馬鹿言うんじゃねー。こいつを休ませてやれってことだ。こいつを苦しみから、痛みから救ってやれるのは『法術師』だけだ。そしてそれがオメーの司法局実働部隊での役目なんだ」
ランの言葉に誠は剣を眺めた。黒い漆で覆われた剣の鞘。誠はそれを見つめた後、視線を茜に向けた。
「やります!やらせてください!」
誠に迷いは無かった。覚悟も心もすでに決まっていた。
「いいのね」
確認するような茜の声に誠は頷いた。
「止めろとは言えないか」
カウラがつぶやく。アメリアは黙って誠の剣を見つめていた。
「俺は何も言える立場じゃないけどさ。やると決めたんだ、全力を尽くせよ」
島田に肩を叩かれて誠は我に返った。しかし、先ほどの決意は勢いに任せた強がりでないことは自分の手に力が入っていることから分かっていた。
静かに誠は手にした秘剣を抜いた、鞘から出た刃は銀色の光を放って静かに揺れていた。
「それじゃあ、ラーナさん。部屋を開放、神前曹長には中に入ってもらいます」
茜の言葉でラーナは端末のキーボードを叩き始めた。二つの部屋の中ほどに人が入れる通路が開いた。
「そこから入ってくれますか?指示はアタシが出しますんで」
ラーナの言葉を聞いて誠はその鉛の色が鈍く光る壁面の間に出来た通路に入っていった。
膨れ上がった眼球が誠の恐怖をさらに煽る。だがもはやそれは形が眼球の形をしているだけ、もうすでに見るということなどできる代物ではなく、ただ誠の恐怖をあおる程度の役にしか立たない代物だった。
『神前曹長!狙うのは延髄っす!そこに剣を突き立てて干渉空間を展開たのんます!神経中枢のアストラル係数を反転させれば再生は止まるっす!』
ラーナの言葉を聞いて誠は剣を正眼に構える。突きを繰り出せるように左足を下げてじりじりと間合いをつめた。
しばらくして飛び出した眼球が誠を捉えたように見えた。そのかつて普通の人間だった怪物は誠の気配を感じたのか、不気味なうなり声を上げる。次の瞬間、その生物からの強力な空間操作による衝撃波が誠を襲う。だが誠もそれは覚悟の上で、そのまま一気に剣を化け物の口に突きたてた。
「ウギェーヤー!」
喉元に突き立つ刀。化け物から血しぶきが上がった。誠の服を血が赤く染め上げていく。しばらく目の前の化け物はもだえ苦しんでいるように暴れた。突きたてた誠はそのまま刀を通して法術を展開させた。
『こ・レデ・・やす・める』
脳裏にそんな言葉が響いたように感じた。誠の体をすぐに黒い霧が化け物を包む。もがく化け物の四肢が次第に力を失って……。
そんな目の前の光景を見ながら同じように誠も意識を失っていった。
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