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第五章 異様に過ぎる『彼』
第28話 いずれは自分もと誠は思った
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「やはりなんか感じます。でも嵯峨警部、なんなんですかこれは?法術師の成れの果てって……聞いたことが無いですよ」
誠は正直中にあるだろう人であった物体には興味が無かった。いや、興味を持たないようにしていた。あれが法術適正者の成れの果てと言うならば、誠が同じ姿を晒すことになっても不思議ではない。
あえて中を見ずに誠は茜を見つめた。
「そうね、自己防衛本能が形になったようなものと考えていただければ良いと思いますわ」
それだけ言うと茜はそのまま中身を見終えたアメリアの隣の出っ張りに再び携帯端末を置く。中を見終えたアメリアとかなめがこの中の物体に変わってしまった人間の身元を眺めていた。人のよさそうな青年の顔がそこに浮かんでいる。
「神前、お前の番だ」
中をのぞき終えたカウラがそう言うので仕方が無く誠はのぞき穴に目を近づけた。
レンズに汚れがついているようで赤いものと黒いものがうごめいているような視界の中にしばらく誠は黙り込んで目を凝らした。
だが、次第にその形がはっきりしていくにしたがって再び震えのようなものが体を支配していくのを感じていた。しばらくしてそこに人影があるのを発見して誠は大きく息をする。さらに集中してのぞき穴を見つめる。手にした刀が熱く感じられてくる。
そこにはズボンをはいた上半身裸の男が椅子に座っていた。その男からは黒い見たこともない種類の煙が立ち上っていた。
「見えるだろ?アレが今日オメーが斬る人物だ」
ランの言葉に誠は集中して中の男を見つめた。両手を挙げた男が、そのこぶしで自分の頭を叩いた。そのこぶしは頭蓋骨を砕いてそのまま頭にめり込む。血が吹き上げ、辺りを赤く染めた。
思わず誠は目を逸らした。誠にはその光景はあまりに残酷過ぎて正視に耐えるものでは無かった。
「何が見えた?言ってみろ」
再びランが聞いてくる。誠は答える代わりに再び中をのぞき込んだ。
男の自分の頭にめりこんだこぶしが黒い霧に覆われていた。その霧は頭の傷跡から血に代わって吹き上がり、すぐに頭を覆いつくした。うなり声を上げながら男が両手を差し上げるころには、へこんでいた頭の形が次第に元の姿に戻りつつあるように見えた。
そこで誠はそのままのぞき穴から目をそらして彼の後ろに立ち尽くしている茜の顔を見た。
「ご覧になりまして?」
茜の言葉。誠は感想を言おうとするが、口が震えて声にならなかった。
「あれが……アタシ等『不死人』と呼ばれる存在の行きつく先だ」
ランの言葉にどこと無く悲しげな色があった。自分自身が不死人であると公言しているランの言葉だけにその言葉には説得力があった。
誠は正直中にあるだろう人であった物体には興味が無かった。いや、興味を持たないようにしていた。あれが法術適正者の成れの果てと言うならば、誠が同じ姿を晒すことになっても不思議ではない。
あえて中を見ずに誠は茜を見つめた。
「そうね、自己防衛本能が形になったようなものと考えていただければ良いと思いますわ」
それだけ言うと茜はそのまま中身を見終えたアメリアの隣の出っ張りに再び携帯端末を置く。中を見終えたアメリアとかなめがこの中の物体に変わってしまった人間の身元を眺めていた。人のよさそうな青年の顔がそこに浮かんでいる。
「神前、お前の番だ」
中をのぞき終えたカウラがそう言うので仕方が無く誠はのぞき穴に目を近づけた。
レンズに汚れがついているようで赤いものと黒いものがうごめいているような視界の中にしばらく誠は黙り込んで目を凝らした。
だが、次第にその形がはっきりしていくにしたがって再び震えのようなものが体を支配していくのを感じていた。しばらくしてそこに人影があるのを発見して誠は大きく息をする。さらに集中してのぞき穴を見つめる。手にした刀が熱く感じられてくる。
そこにはズボンをはいた上半身裸の男が椅子に座っていた。その男からは黒い見たこともない種類の煙が立ち上っていた。
「見えるだろ?アレが今日オメーが斬る人物だ」
ランの言葉に誠は集中して中の男を見つめた。両手を挙げた男が、そのこぶしで自分の頭を叩いた。そのこぶしは頭蓋骨を砕いてそのまま頭にめり込む。血が吹き上げ、辺りを赤く染めた。
思わず誠は目を逸らした。誠にはその光景はあまりに残酷過ぎて正視に耐えるものでは無かった。
「何が見えた?言ってみろ」
再びランが聞いてくる。誠は答える代わりに再び中をのぞき込んだ。
男の自分の頭にめりこんだこぶしが黒い霧に覆われていた。その霧は頭の傷跡から血に代わって吹き上がり、すぐに頭を覆いつくした。うなり声を上げながら男が両手を差し上げるころには、へこんでいた頭の形が次第に元の姿に戻りつつあるように見えた。
そこで誠はそのままのぞき穴から目をそらして彼の後ろに立ち尽くしている茜の顔を見た。
「ご覧になりまして?」
茜の言葉。誠は感想を言おうとするが、口が震えて声にならなかった。
「あれが……アタシ等『不死人』と呼ばれる存在の行きつく先だ」
ランの言葉にどこと無く悲しげな色があった。自分自身が不死人であると公言しているランの言葉だけにその言葉には説得力があった。
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