法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『悪夢の研究』と『今は無き国』

橋本 直

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第三章 極秘法術研究施設

第14話 促成栽培のパイロット

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「第二小隊が居ないのは西園寺には結構な話なんじゃねーのか?毎日日野からセクハラを受けなくて済むんだ。感謝して貰いてーな。アタシも気を使ってんだぜ……日野の変態性は筋金入りだ。西園寺、良くあそこまで妹を変態に育てたな」

「アタシは育ててねえ!ただアタシは暇つぶしとストレス解消を兼ねたおもちゃにしただけだ!」

『もっと悪いわ!』

 車内の全員がかなめの発言にツッコミを入れざるを得なかった。

 日野かえで少佐。甲武海軍出身のエリート女性士官で、かなめの妹だった。ただし、その人格には尋常ではないほどの問題があった。

 彼女は極度のシスコンでしかも『女王様』気質のかなめに調教された開発され尽くしたマゾヒストだった。その異常な性的嗜好は誠もアメリアがかえでから誠に見せるように言われた動画で良く分かっていた。つまり、彼女は変態だった。

 その彼女を始めとする第二小隊は確かに初日に詰め所に顔を出して以来、誠も『特殊な部隊』でその顔を見ていない。そのことは誠も不思議に思っていた。

「真面目な話をするとだ」

 ランは顔を真剣なものに変えてそう切り出した。

「日野少佐以下、第二小隊の面々にはパイロット経験がねー。元々パイロット上がりのカウラや神前みたいに正規の教育は受けてねーんだ。西園寺、オメーは良い。サイボーグの身体はパイロットに必要な技量をコードをつないで脳にインプリントすれば教育終了だからな。でも、連中はそう言う訳にはいかねーんだ」

 誠もランの言葉を聞いて納得していた。誠もシュツルム・パンツァーの操縦を覚えるまでに一年半の教育を東和宇宙軍で受けた。素人がいきなり乗って戦場で戦えるほどシュツルム・パンツァーの操縦は易しいものでは無い。

「それじゃあ、クバルカ中佐が元居た東和陸軍の教導隊で訓練を受けているんですか?」

 なんとなく誠は勘でそうランに尋ねてみた。ランは大きくため息をつくと助手席から後部座席の二人に向けて振り返った。

「そんな悠長なことを言ってる余裕はうちにはねーんだ。神前のバックアップ要員。今すぐにだって欲しいくれーだ。だから連中には菱川重工豊川の工場でシミュレータで訓練してもらってる。アタシの目の届くところに置いておかねーとアイツ等何をしでかすか分かったもんじゃねー」

 ランの言葉に誠は新たな疑問が沸き上がってくるのを感じていた。わざわざ隊の隣にある菱川重工の工場で訓練をするくらいなら、シミュレータを『特殊な部隊』に持ち込んで訓練する方がより効率的なはずだ。

「神前。オメーの考えは手の取るようにわかる。なんで第二小隊の機材も機体もまだうちに納入されてねーかって話だろ?」

 誠の心を読み切ったようにランはそう言って笑った。

「予算がねーんだ。うちの備品にするためには菱川重工からうちにシミュレータやら05式やらを資産移動させなきゃならねー。だが、うちの予算はもうカツカツだ。高梨渉参事が管理部部長に就任して司法局本局には掛け合ってはいるが、すぐにどうこうできるもんじゃねーんだ」

 そう言って笑うランの表情はどこか乾いた印象を誠に与えた。

「隣の工場に機体とシミュレータが有る限り、どちらもその資産は菱川重工豊川のもんで、うちの予算はかからねー。それをうちの敷地内に運ぶとどちらもうちの予算で買い上げた扱いになった上に資産として計上されることになる。世の中そーゆー仕組みになってんだ。神前、勉強しな」

 ランはいつもの決め台詞を吐いて誠の少ない社会常識に新たな一ページを付け加えることになった。

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