1,489 / 1,503
安息日
山積の難題
しおりを挟む
「馬鹿な遊びをしてるじゃねーか。烏賊?タコ?どっちだっていーじゃねーか」
入り口すぐのテーブルをランは占拠した。その正面には珍しそうに島田の悩む姿を眺めている茜とラーナの姿がある。
「お待たせしました!」
セーラー服にエプロン姿の小夏がビールを持ってランに迫る。その後ろには猫耳をつけたままのサラがコップと付き出しを持って並んでいた。
「サラ……なんだ他所の格好は」
「良いじゃない……似合うんだから」
そう言う島田はそう言われて照れ笑いを浮かべた。
かなめはそれを見て一度誠の顔をまじまじと眺めた後少し斜に構えるようにして笑みを浮かべた。
「西園寺さん。何が言いたいんですか?」
「いや、なんでも……」
「かなめちゃんはボトルよね。……ラム?ジン?」
「ラムで。それと!食うもん頼もうぜ。アタシはボンジリ!」
かなめの注文を聞いてそのまま厨房に春子は消えた。手伝いの小夏はエプロンからメモ帳を取り出して周りを見渡す。
「私は……串焼き盛り合わせにしようかしら……カウラちゃんは?」
「そうだな……とりあえずシシトウかな」
カウラはそう言いながら視線を背後のラン達に向けた。
「アタシも盛り合わせで……ラーナもか。茜、どうするよ」
「わたくしは……あまりたっぷり食べる気にはなりませんの。つまみ程度で数品見繕ってくださいな」
「じゃあアンコウ肝のいいのが入ったって源さんが言ってたからそれをメインで行きます?」
「お願いするわ」
ラン達幹部連の注文を受けるとメモを持って奥に小夏は消えた。
「まだ決まらないのか?」
「ちょっと量を食べたい気分なんで」
機嫌がよさそうなカウラに急かされながら誠はしばらくお品書きに目を向けて黙っていた。
足早に厨房から現れた春子は手にしたラム酒の瓶をかなめに差し出した。
「飲みすぎないでよ」
「気をつけまーす」
春子の言葉の意味など解さぬようにかなめはたっぷりとグラスにラム酒を注ぐ。呆れたようにカウラはかなめの手元のグラスに目をやった。
「飲みたいのか?」
「まさか」
「はい!お待たせです!」
失笑するカウラを見ていた誠の耳元で手に盆を持った小夏が現れて注文の品をテーブルに並べていく。
ついその動作に見とれて誠は手元のメニューを取り落とす。
「神前の兄貴。しっかりしてくださいよ。それより注文は?」
「焼鳥盛り合わせダブルで」
「誠ちゃん!それアタシの真似じゃないの!小夏ちゃん、私も」
島田の隣のカウンターでビールを手酌でやりながらサラが叫ぶ。小夏は笑顔を浮かべながら厨房に消えていく。
「上、妙に静かじゃねーか。島田の。上は法事でもやってんのか?」
ビールを飲んで顔を赤くしながらランがたこ焼きの中身当てに失敗してうつむいている島田に声をかけた。二階を占拠して飲み続けているという技術部の情報士官達の沈黙。その事態に隣のサラもパーラもランの質問に首をひねる。
「女将さん。アイツ等……」
「始めたのが昼間からだったから……潰れてるんじゃないかしら」
阿鼻叫喚の地獄絵図にならずに済んでよかったというような表情で春子は笑う。彼女を見ながら誠もビールを飲み続ける。
「しかしアイツ等も今回色々動いてくれたからな……大変なんだろ」
相変わらずカウンターを背にテーブル席の誠達を眺めていた島田はそう言うと烏龍茶を飲み干した。
「まあうちも大変だけど」
『何か言った?』
かなめの言葉にランと茜が同時にステレオで叫んでいた。思わずその様子に誠は苦笑いを浮かべた。
「それにしても大変そうだな」
烏賊が入っているたこ焼きを当てられずに島田は懐からガソリンスタンドのカードを取り出してパーラに手渡しながらつぶやいた。
「何?正人君も入りたかったの?」
「そんなことは無いですけど……法術を乗っ取る犯人でしょ?俺みたいに死なないだけが取り得の法術師の方が適しているんじゃないかなあとか思っただけですよ。力を乗っ取られても別に何も起きないですから」
そう言いながら最後のたこ焼きを口に入れる。
「オメーはバックアップだよ。同盟厚生局の事件じゃあオメーにぜひ参加してもらえって隊長に言われてたからな。まああれだ、今はじっくり構えておけってことだ……『武悪』と『方天画戟』のエンジン交換のシミュレーション。終わってねーんだろ?」
ランはすでに手酌でビールを飲み始めていた。
「そうだぞ、島田。あれの整備の手順とかは初めてだからな」
「わかりました。とりあえず目の前の仕事に……」
「そうだ精進してくれ」
ランはそう言ってカラカラと笑った。
入り口すぐのテーブルをランは占拠した。その正面には珍しそうに島田の悩む姿を眺めている茜とラーナの姿がある。
「お待たせしました!」
セーラー服にエプロン姿の小夏がビールを持ってランに迫る。その後ろには猫耳をつけたままのサラがコップと付き出しを持って並んでいた。
「サラ……なんだ他所の格好は」
「良いじゃない……似合うんだから」
そう言う島田はそう言われて照れ笑いを浮かべた。
かなめはそれを見て一度誠の顔をまじまじと眺めた後少し斜に構えるようにして笑みを浮かべた。
「西園寺さん。何が言いたいんですか?」
「いや、なんでも……」
「かなめちゃんはボトルよね。……ラム?ジン?」
「ラムで。それと!食うもん頼もうぜ。アタシはボンジリ!」
かなめの注文を聞いてそのまま厨房に春子は消えた。手伝いの小夏はエプロンからメモ帳を取り出して周りを見渡す。
「私は……串焼き盛り合わせにしようかしら……カウラちゃんは?」
「そうだな……とりあえずシシトウかな」
カウラはそう言いながら視線を背後のラン達に向けた。
「アタシも盛り合わせで……ラーナもか。茜、どうするよ」
「わたくしは……あまりたっぷり食べる気にはなりませんの。つまみ程度で数品見繕ってくださいな」
「じゃあアンコウ肝のいいのが入ったって源さんが言ってたからそれをメインで行きます?」
「お願いするわ」
ラン達幹部連の注文を受けるとメモを持って奥に小夏は消えた。
「まだ決まらないのか?」
「ちょっと量を食べたい気分なんで」
機嫌がよさそうなカウラに急かされながら誠はしばらくお品書きに目を向けて黙っていた。
足早に厨房から現れた春子は手にしたラム酒の瓶をかなめに差し出した。
「飲みすぎないでよ」
「気をつけまーす」
春子の言葉の意味など解さぬようにかなめはたっぷりとグラスにラム酒を注ぐ。呆れたようにカウラはかなめの手元のグラスに目をやった。
「飲みたいのか?」
「まさか」
「はい!お待たせです!」
失笑するカウラを見ていた誠の耳元で手に盆を持った小夏が現れて注文の品をテーブルに並べていく。
ついその動作に見とれて誠は手元のメニューを取り落とす。
「神前の兄貴。しっかりしてくださいよ。それより注文は?」
「焼鳥盛り合わせダブルで」
「誠ちゃん!それアタシの真似じゃないの!小夏ちゃん、私も」
島田の隣のカウンターでビールを手酌でやりながらサラが叫ぶ。小夏は笑顔を浮かべながら厨房に消えていく。
「上、妙に静かじゃねーか。島田の。上は法事でもやってんのか?」
ビールを飲んで顔を赤くしながらランがたこ焼きの中身当てに失敗してうつむいている島田に声をかけた。二階を占拠して飲み続けているという技術部の情報士官達の沈黙。その事態に隣のサラもパーラもランの質問に首をひねる。
「女将さん。アイツ等……」
「始めたのが昼間からだったから……潰れてるんじゃないかしら」
阿鼻叫喚の地獄絵図にならずに済んでよかったというような表情で春子は笑う。彼女を見ながら誠もビールを飲み続ける。
「しかしアイツ等も今回色々動いてくれたからな……大変なんだろ」
相変わらずカウンターを背にテーブル席の誠達を眺めていた島田はそう言うと烏龍茶を飲み干した。
「まあうちも大変だけど」
『何か言った?』
かなめの言葉にランと茜が同時にステレオで叫んでいた。思わずその様子に誠は苦笑いを浮かべた。
「それにしても大変そうだな」
烏賊が入っているたこ焼きを当てられずに島田は懐からガソリンスタンドのカードを取り出してパーラに手渡しながらつぶやいた。
「何?正人君も入りたかったの?」
「そんなことは無いですけど……法術を乗っ取る犯人でしょ?俺みたいに死なないだけが取り得の法術師の方が適しているんじゃないかなあとか思っただけですよ。力を乗っ取られても別に何も起きないですから」
そう言いながら最後のたこ焼きを口に入れる。
「オメーはバックアップだよ。同盟厚生局の事件じゃあオメーにぜひ参加してもらえって隊長に言われてたからな。まああれだ、今はじっくり構えておけってことだ……『武悪』と『方天画戟』のエンジン交換のシミュレーション。終わってねーんだろ?」
ランはすでに手酌でビールを飲み始めていた。
「そうだぞ、島田。あれの整備の手順とかは初めてだからな」
「わかりました。とりあえず目の前の仕事に……」
「そうだ精進してくれ」
ランはそう言ってカラカラと笑った。
0
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説
特殊装甲隊 ダグフェロン 『廃帝と永遠の世紀末』 第三部 『暗黒大陸』
橋本 直
SF
遼州司法局も法術特捜の発足とともに実働部隊、機動隊、法術特捜の三部体制が確立することとなった。
それまで東和陸軍教導隊を兼務していた小さな隊長、クバルカ・ラン中佐が実働部隊副隊長として本異動になることが決まった。
彼女の本拠地である東和陸軍教導隊を訪ねた神前誠に法術兵器の実験に任務が課せられた。それは広域にわたり兵士の意識を奪ってしまうという新しい発想の非破壊兵器だった。
実験は成功するがチャージの時間等、運用の難しい兵器と判明する。
一方実働部隊部隊長嵯峨惟基は自分が領邦領主を務めている貴族制国家甲武国へ飛んだ。そこでは彼の両方を西園寺かなめの妹、日野かえでに継がせることに関する会議が行われる予定だった。
一方、南の『魔窟』と呼ばれる大陸ベルルカンの大国、バルキスタンにて総選挙が予定されており、実働部隊も支援部隊を派遣していた。だが選挙に不満を持つ政府軍、反政府軍の駆け引きが続いていた。
嵯峨は万が一の両軍衝突の際アメリカの介入を要請しようとする兄である西園寺義基のシンパである甲武軍部穏健派を牽制しつつ貴族の群れる会議へと向かった。
そしてそんな中、バルキスタンで反政府軍が機動兵器を手に入れ政府軍との全面衝突が発生する。
誠は試験が済んだばかりの非破壊兵器を手に戦線の拡大を防ぐべく出撃するのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 野球と海と『革命家』
橋本 直
SF
その文明は出会うべきではなかった
その人との出会いは歓迎すべきものではなかった
これは悲しい『出会い』の物語
『特殊な部隊』と出会うことで青年にはある『宿命』がせおわされることになる
法術装甲隊ダグフェロン 第二部
遼州人の青年『神前誠(しんぜんまこと)』が発動した『干渉空間』と『光の剣(つるぎ)により貴族主義者のクーデターを未然に防止することが出来た『近藤事件』が終わってから1か月がたった。
宇宙は誠をはじめとする『法術師』の存在を公表することで混乱に陥っていたが、誠の所属する司法局実働部隊、通称『特殊な部隊』は相変わらずおバカな生活を送っていた。
そんな『特殊な部隊』の運用艦『ふさ』艦長アメリア・クラウゼ中佐と誠の所属するシュツルム・パンツァーパイロット部隊『機動部隊第一小隊』のパイロットでサイボーグの西園寺かなめは『特殊な部隊』の野球部の夏合宿を企画した。
どうせろくな事が起こらないと思いながら仕事をさぼって参加する誠。
そこではかなめがいかに自分とはかけ離れたお嬢様で、貴族主義の国『甲武国』がどれほど自分の暮らす永遠に続く20世紀末の東和共和国と違うのかを誠は知ることになった。
しかし、彼を待っていたのは『法術』を持つ遼州人を地球人から解放しようとする『革命家』の襲撃だった。
この事件をきっかけに誠の身辺警護の必要性から誠の警護にアメリア、かなめ、そして無表情な人造人間『ラスト・バタリオン』の第一小隊小隊長カウラ・ベルガー大尉がつくことになる。
これにより誠の暮らす『男子下士官寮』は有名無実化することになった。
そんなおバカな連中を『駄目人間』嵯峨惟基特務大佐と機動部隊隊長クバルカ・ラン中佐は生暖かい目で見守っていた。
そんな『特殊な部隊』の意図とは関係なく着々と『力ある者の支配する宇宙』の実現を目指す『廃帝ハド』の野望はゆっくりと動き出しつつあった。
SFお仕事ギャグロマン小説。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる