1,463 / 1,505
切り替え
飲み屋
しおりを挟む
「何か作戦会議でもしてたんでしょ?続けてくださいよ……何かいいアイデアとかあったら教えますから」
島田は自分が原因だと分かっているくせにニヤニヤ笑いながら誠達を面白そうに眺めていた。
「続けろったって……よう」
かなめはそう言うと再び酒の入ったグラスに手を伸ばす。島田はそれを奪い取った。むっとした表情のかなめだが、すぐに彼女はいつもどおりつまらなそうに視線をそらすとそのまま立ち上がろうとする。
「酒に逃げるのは辞めた方がいいですよ。限界なんでしょ?通常の捜査なら……」
「令状無しじゃ何にもできねえんだよ!犯人は確実に東都都心からこっちに移って来た!しかもこの一月の間でだ!そこまでわかっていながら……」
そこまで言うと悔しそうにどっかりと腰を下ろすかなめ。同じようにカウラとパーラが頷きながら唇を噛み締めていた。
「俺は難しいことは分からねえですから」
あっさりと島田はそう言う。彼の部下の技術部の士官達なら警察上層部に知られずに楽に不動産取引のネットワークに侵入して情報を得ることができることは知っていた。だが犯人を闇に葬ることが目的の非正規作戦任務ならともかく警察官の身分の誠達にはどれも無理な話だった。
「それに今回は足を使うしかねえですかね……隊長は『放っておけ』って話ですし」
「叔父貴が?アイツはサドだな」
かなめの言葉にサラが噴出す。かなめがにらみつけるが迫力不足のようで二人は相変わらず笑い続けていた。
「大変みたいね……私のおごり」
厨房から出ていた春子が鶏の刺身の盛り合わせを持って現れた。
「いいんですか?」
誠の言葉に笑みを浮かべて春子がうなづく。母親の甘さに小夏がいつものようにかなめをにらんだ。
「ええ、色々大変なんでしょ?でもいつでも嵯峨さんの力を借りてばかりじゃ駄目でしょうしね」
「あー!頭にきた!」
そう言いながらかなめは立ち上がると厨房に飛び込んだ。
「大丈夫かな……かなめちゃん」
アメリアの心配そうな声だが厨房ではまったく音がしなかった。
誠達が黙っていると無表情のかなめが手に取り皿を持って現れる。そしてそのまま一同に配り始めた。必死に怒りを押し殺している。そのかなめの奇行を見ながら誠にはそんな彼女の思いが痛いほど分かった。
「そうカリカリしなくてもいいじゃないですか」
島田はそう言うとにんまり笑う。その表情にあわせるように小夏が笑みを浮かべる。
「なんで笑ってるんだよ」
そう言いながらかなめは刺身に一番に手をつけた。うまそうに頬張りまた酒を口に流し込む。
「捜査の基本は……餅は餅屋だ。真摯にお巡りさん達に教わればいいだろ?豊川署の連中が信用なら無いなら茜警視正からラーナ巡査でも借りれば良いじゃないですか」
島田の一言はまるで天啓のように一同を驚かせた。
「そう言えばいたわね。影の薄い捜査官が」
「今頃くしゃみでもしてるんじゃないか?」
アメリアとカウラが笑顔で顔を見合わせる。誠はようやく明るい兆しが見えてきたのでおいしく見えた白身魚の刺身に箸を伸ばした。
「何事も一人で解決するのはなかなか難しいぞ……まあ俺もクバルカ中佐と出会うまでは一人で何でもできる気でいたからな」
「島田先輩にもそんな時期があったんですか?」
口に刺身を入れたまま誠がつぶやいた言葉に仕方がないというようにうなづきながら島田は烏龍茶を飲む。
「まあな。グレてた俺を立ち直らせてくれた中佐のおかげで今の俺があるわけだ」
「グレてたんですか……予想通りですけど」
誠はそう言って島田を見つめた。
「そうよ。相談すれば知恵も出てくるものよ。だから皆さん元気出してね」
「ガンバレー!」
春子と小夏の言葉になんとなく癒されながら誠はビールに手を伸ばす。
「善は急げだ。とりあえずメールくらいはいいだろう」
そう言いながらカウラは端末に手を伸ばす。
「なんだか忙しくなりそうね。なんなら私も運行部の非番のメンバーにも招集かけるわよ」
「サラ……それは勘弁な」
かなめはそう言うと笑顔で酒を呷った。誠もようやく捜査の核になる人物が現れると言うことに最後の望みをつなぐことに心を決めた。
島田は自分が原因だと分かっているくせにニヤニヤ笑いながら誠達を面白そうに眺めていた。
「続けろったって……よう」
かなめはそう言うと再び酒の入ったグラスに手を伸ばす。島田はそれを奪い取った。むっとした表情のかなめだが、すぐに彼女はいつもどおりつまらなそうに視線をそらすとそのまま立ち上がろうとする。
「酒に逃げるのは辞めた方がいいですよ。限界なんでしょ?通常の捜査なら……」
「令状無しじゃ何にもできねえんだよ!犯人は確実に東都都心からこっちに移って来た!しかもこの一月の間でだ!そこまでわかっていながら……」
そこまで言うと悔しそうにどっかりと腰を下ろすかなめ。同じようにカウラとパーラが頷きながら唇を噛み締めていた。
「俺は難しいことは分からねえですから」
あっさりと島田はそう言う。彼の部下の技術部の士官達なら警察上層部に知られずに楽に不動産取引のネットワークに侵入して情報を得ることができることは知っていた。だが犯人を闇に葬ることが目的の非正規作戦任務ならともかく警察官の身分の誠達にはどれも無理な話だった。
「それに今回は足を使うしかねえですかね……隊長は『放っておけ』って話ですし」
「叔父貴が?アイツはサドだな」
かなめの言葉にサラが噴出す。かなめがにらみつけるが迫力不足のようで二人は相変わらず笑い続けていた。
「大変みたいね……私のおごり」
厨房から出ていた春子が鶏の刺身の盛り合わせを持って現れた。
「いいんですか?」
誠の言葉に笑みを浮かべて春子がうなづく。母親の甘さに小夏がいつものようにかなめをにらんだ。
「ええ、色々大変なんでしょ?でもいつでも嵯峨さんの力を借りてばかりじゃ駄目でしょうしね」
「あー!頭にきた!」
そう言いながらかなめは立ち上がると厨房に飛び込んだ。
「大丈夫かな……かなめちゃん」
アメリアの心配そうな声だが厨房ではまったく音がしなかった。
誠達が黙っていると無表情のかなめが手に取り皿を持って現れる。そしてそのまま一同に配り始めた。必死に怒りを押し殺している。そのかなめの奇行を見ながら誠にはそんな彼女の思いが痛いほど分かった。
「そうカリカリしなくてもいいじゃないですか」
島田はそう言うとにんまり笑う。その表情にあわせるように小夏が笑みを浮かべる。
「なんで笑ってるんだよ」
そう言いながらかなめは刺身に一番に手をつけた。うまそうに頬張りまた酒を口に流し込む。
「捜査の基本は……餅は餅屋だ。真摯にお巡りさん達に教わればいいだろ?豊川署の連中が信用なら無いなら茜警視正からラーナ巡査でも借りれば良いじゃないですか」
島田の一言はまるで天啓のように一同を驚かせた。
「そう言えばいたわね。影の薄い捜査官が」
「今頃くしゃみでもしてるんじゃないか?」
アメリアとカウラが笑顔で顔を見合わせる。誠はようやく明るい兆しが見えてきたのでおいしく見えた白身魚の刺身に箸を伸ばした。
「何事も一人で解決するのはなかなか難しいぞ……まあ俺もクバルカ中佐と出会うまでは一人で何でもできる気でいたからな」
「島田先輩にもそんな時期があったんですか?」
口に刺身を入れたまま誠がつぶやいた言葉に仕方がないというようにうなづきながら島田は烏龍茶を飲む。
「まあな。グレてた俺を立ち直らせてくれた中佐のおかげで今の俺があるわけだ」
「グレてたんですか……予想通りですけど」
誠はそう言って島田を見つめた。
「そうよ。相談すれば知恵も出てくるものよ。だから皆さん元気出してね」
「ガンバレー!」
春子と小夏の言葉になんとなく癒されながら誠はビールに手を伸ばす。
「善は急げだ。とりあえずメールくらいはいいだろう」
そう言いながらカウラは端末に手を伸ばす。
「なんだか忙しくなりそうね。なんなら私も運行部の非番のメンバーにも招集かけるわよ」
「サラ……それは勘弁な」
かなめはそう言うと笑顔で酒を呷った。誠もようやく捜査の核になる人物が現れると言うことに最後の望みをつなぐことに心を決めた。
0
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
あなたがそう望んだから
まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」
思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。
確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。
喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。
○○○○○○○○○○
誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる