1,434 / 1,503
結末
甘酒
しおりを挟む
「チキショウ!あと少し!ああ、今回はアタシのミスだ!」
かなめの叫び声がハンガーにこだまする。誠もカウラもそれぞれ05式のシミュレーターから身を乗り出してぶんぶんと腕を振り回して悔しがるかなめを見つめていた。
「そうね、かなめちゃんのミスだわね」
「アメリア!オメエだって進行プランを完全に中佐に読まれてたじゃねえか!」
ハンガーの真ん中にオペレーションシステムを模したテーブルに座ってアメリアがニヤニヤしながらかなめを見上げていた。タレ目でにらみつけようとしたかなめにアメリアが大爆笑している。
「そう簡単に貴様等に追いつかれるわけにゃーいかねーんだよ。一応、東和陸軍アサルト・モジュール部隊の教導官を勤めてたわけだかんな」
そう言ってランはの姿は何度見ても小学生低学年のなりにしか見えない。
「クバルカ中佐の読みは凄いですからね。完全に神前を無力化なんて」
元気そうに叫ぶとカウラはそう言ってほほ笑んだ。
「それだけテメー等が神前に頼りすぎた戦術を立ててるってこった。ちゃんとテメーの世話も焼けねー奴は戦場じゃ邪魔になるだけだぞ」
そう言うとランもエレベータでシミュレーションの戦闘記録を取っているサラとパーラのところへと向かう。
「ったくなりはロリなのに……」
ぼそりとかなめがつぶやく。当然のようにランは鋭い目つきでかなめをにらめつけた。
「おい、さっきは負けたのは自分のせいだって言ったな。じゃあグラウンド20週して来い!」
ランの目の前で「ロリータ」と「幼女」は禁句である。誠も軍事機密らしいので深くは詮索していないが司法局機動部隊二代目隊長クバルカ・ラン中佐の幼い姿について口にするのは事実上のタブーとなっていた。
「おい、アメリア。おとといの続きは?」
ランがそう言ったのに誠は驚いていた。おとといまで隊全体を振り回して魔法少女モノなのか戦隊モノなのか、あるいはロボットモノかもしれない自主制作映画を作るべく走り回っていたアメリアが何も言わない。それはいかにも不自然だった。
昨日は編集を買って出たアメリアがずっと会議室のモニターに向き合って画面の修正作業をしていたらしい。
「ふっ、さすがに積極的かつ強気な戦術を本分としているクバルカ・ラン中佐。遼南内戦で『人類最強』と呼ばれたのもうなづけるわね。誰かと違って」
「余計なお世話だ」
アメリアが不敵な笑いを浮かべながらそう言うと新藤がすかさず口を挟む。
「いやあ、そんなに力まなくても……」
つまらないものに火をつけてしまった。ランは慌ててそう言ったがすでにアメリアはギアを切り替えてオタクで痛い本性を現そうとしているところだった。
「知らねえよ、アタシは!それじゃあランニング!行ってきます!」
「逃げるんじゃねーよ!」
ランニングと称してそのまま逃げ出そうとしたかなめをランが押さえつける。誠とカウラは仕方が無いというようにすでにシミュレータの撤収を始めたアメリアを生暖かい目で見つめていた。
「正直最後はやっつけで書いたのよね」
端末のコードを抜きながらのアメリアの言葉。アメリアに逆らうのは無駄だと諦めている新藤はメガホンを機材の山に放り投げていた。
「おい、やっつけなのかよ。まったくストーリーができたのは俺のおかげなんだぜ」
新藤はそうこぼすとサラから紙コップを受け取る。サラは奥から鍋を持って出てきた技術部の西高志兵長と紙コップを持った神前ひよこ軍曹からさらに紙コップを受け取る。
「おう、甘酒か。ひよこが朝から何やってるのかと思えば……」
半ば呆れながらランがテーブルに置かれた大きな鍋の蓋を開ける。しろいどろどろの甘酒がかぐわしい香りをハンガー一杯に拡げた。
「そんなことを言うとあげませんよ」
ひよこはそう言いながらいつの間にか監督の後ろに列を作っていた整備兵達に甘酒を振舞い始める。
「しかし、こうしてみるともう冬なんだな」
その列の中にいつの間にかいたカウラがエメラルドグリーンの髪に手をやる。
「なんだ?人造人間でも風雅ってもんが分かるんだ」
かなめの言葉にそれまで隣の甘酒を覗き見ながら機器を片付けていたアメリアが立ち上がる。
「ひどい偏見!私達も一応人間よ!取り消しなさいよ!」
顔を近づけてつばきを飛ばすアメリアにかなめも一歩もひかない。すぐさまジャンプしたランがかなめの頭をはたいた。
「馬鹿やってんじゃねーよ。甘酒やらねーぞ」
そう言いながらランは副長特権で甘酒の列に割り込んで手にしたコップを傾ける。
「それより子供が酒飲むのは…… 」
「アタシは大人だ」
カウラの言葉を切り捨てるとランはそう言って甘酒を飲み干した。
「これ、おいしいですよ。西園寺さん」
誠の一言になぜか機嫌を悪くしたかなめは黙って実働部隊の詰め所のあるハンガー奥の階段に向かって歩き出した。
「素直じゃねーな。あいつも」
その様子をランは紙コップの中の甘酒で体を温めながら見守る。
「あの、じゃあ僕も遠慮します」
誠の言葉にひよこに代わって甘酒を振舞っていたアメリアが目の色を変える。
「そんな、あいつのわがままに付き合う必要なんて無いわよ」
そう言うとアメリアは警備部のスキンヘッドの兵士から甘酒の入ったコップを奪って誠に持たせる。
「別にそんな……」
「いいから!持っていきなさいよ……これもね」
そう言うとアメリアはもう一杯の甘酒のコップを誠に持たせる。彼女の笑顔に背中を押されるようにして誠はそのままかなめのあとをつけた。
誠が甘酒を持って振り返るとかなめの姿は無かった。早足でそのまま階段をあがって管理部の白い視線を浴びながら隣の詰め所に飛び込む。
そして誠はそっぽを向いて机の上に足を投げ出しているかなめを見つめた。
「お姉さま。また喧嘩ですか?」
奥の席でモニターをのぞきながら第二小隊小隊長日野かえで少佐が声をかけてくる。
「うるせえな!」
そう言うとかなめは目を閉じる。
「ここ、置いておきますから」
誠はそう言ってかなめの分の甘酒を机の端に置いた。
「いいですね、甘酒ですか。僕の国でも時々飲むんですよ」
第二小隊三番機担当のアン・ナン・パク軍曹が甘えた声を出して誠の手の中の甘酒を見ている。
「ベルルカンにもあるのか。かえで様……」
いかにも飲みたそうな二番機担当の渡辺リン大尉。そう言われたかえではキーボードを打つ手を止める。
「そうだな。少し休憩と行くか」
そんなかえでの声を聴くとかなめは横を向いてしまう。
「西園寺さん……」
誠は彼女の正面の自分の席に座った。
「あいつ等と一緒にいろよ。アメリアとか……」
「お姉さま!」
いじけたような調子のかなめにかえでが声を荒げた。目を開けてかえでの顔を見ると、すこしばつが悪そうにアメリアが『変形おかっぱ』と呼ぶ耳にかかるまで伸びたこめかみのところが一番長くなっている髪をかきあげるかなめ。
「飲む」
そう言ってかなめは手を伸ばす。誠はようやく笑顔を浮かべて甘酒をかなめに手渡した。かえでは安心したようにまことを見て頷くとアンと渡辺を連れて出て行く。誠とかなめ。二人は詰め所の中に取残された。
「ごめん」
ぶっきらぼうに手を伸ばして軽くコップを包み込むようにして手に取った。そしてゆっくりと香りを嗅いだ後、一口啜ってかなめがそう言った。
「別に謝る必要は無いですよ。ただ西園寺さんにも楽しく飲んで欲しくて……」
「あのさあ、そんなこと言われるとアタシは……」
かえで達が甘酒を求めて出て行って二人きりの部屋。少し照れながらかなめは両手で紙コップの中の甘酒を見つめていた。
「ふう、良いな。ひよこもポエム以外に特技があるじゃねえか」
ようやく気が晴れたのか少し明るい調子で再び甘酒を含んだかなめがため息をつく。酒豪と言う言葉では足りないほどの酒好きなかなめだと言うのに、なぜか頬が赤く染まっていた。
「なんか顔が赤いですよ?」
誠の言葉にかなめは机から足を下ろす。そして素早くコップを置くとひきつけられるように誠を見る。そして突然何かに気づいたように頭を掻いた。
「き、気のせいだ!気のせい」
そう言って慌てたかなめがつい甘酒のコップを振って中身を机にこぼした。
「大丈夫ですか!」
誠はハンカチを取り出してかなめの机に手を伸ばした。その手にかなめの手が触れる。
「うっ……」
かなめは大げさに飛びのく。奇妙な彼女の行動に誠は違和感を感じていた。
「どうしたんですか?」
「うん……」
黙り込んでいたかなめだが、誠の目を見るとすぐに視線をそらしてしまう。
「ああ、ちょっとトイレ行ってくるわ。たぶんアイツ等が来るころには戻るから」
そう言うとかなめは早足で部屋を出て行った。誠はかなめの半分ほど甘酒の残ったコップと取残された。
「ねえ……」
「うわっ」
突然背中から声をかけられ仰け反る誠。明らかに慌てている誠をアメリアはからかうような調子で見つめている。
「なにかやましいことでもあるのかしら?」
「別に……」
「まあ、いいわ。それならその端末しまって頂戴。ラストの撮影の準備、かなめちゃんが戻ったらすぐできるようにしておきましょう」
意味ありげに笑うとアメリアはそのまま部屋を出て行く。あっけに取られる誠も部屋の外を歩いているラン達の姿を見て端末を終了させた。
かなめの叫び声がハンガーにこだまする。誠もカウラもそれぞれ05式のシミュレーターから身を乗り出してぶんぶんと腕を振り回して悔しがるかなめを見つめていた。
「そうね、かなめちゃんのミスだわね」
「アメリア!オメエだって進行プランを完全に中佐に読まれてたじゃねえか!」
ハンガーの真ん中にオペレーションシステムを模したテーブルに座ってアメリアがニヤニヤしながらかなめを見上げていた。タレ目でにらみつけようとしたかなめにアメリアが大爆笑している。
「そう簡単に貴様等に追いつかれるわけにゃーいかねーんだよ。一応、東和陸軍アサルト・モジュール部隊の教導官を勤めてたわけだかんな」
そう言ってランはの姿は何度見ても小学生低学年のなりにしか見えない。
「クバルカ中佐の読みは凄いですからね。完全に神前を無力化なんて」
元気そうに叫ぶとカウラはそう言ってほほ笑んだ。
「それだけテメー等が神前に頼りすぎた戦術を立ててるってこった。ちゃんとテメーの世話も焼けねー奴は戦場じゃ邪魔になるだけだぞ」
そう言うとランもエレベータでシミュレーションの戦闘記録を取っているサラとパーラのところへと向かう。
「ったくなりはロリなのに……」
ぼそりとかなめがつぶやく。当然のようにランは鋭い目つきでかなめをにらめつけた。
「おい、さっきは負けたのは自分のせいだって言ったな。じゃあグラウンド20週して来い!」
ランの目の前で「ロリータ」と「幼女」は禁句である。誠も軍事機密らしいので深くは詮索していないが司法局機動部隊二代目隊長クバルカ・ラン中佐の幼い姿について口にするのは事実上のタブーとなっていた。
「おい、アメリア。おとといの続きは?」
ランがそう言ったのに誠は驚いていた。おとといまで隊全体を振り回して魔法少女モノなのか戦隊モノなのか、あるいはロボットモノかもしれない自主制作映画を作るべく走り回っていたアメリアが何も言わない。それはいかにも不自然だった。
昨日は編集を買って出たアメリアがずっと会議室のモニターに向き合って画面の修正作業をしていたらしい。
「ふっ、さすがに積極的かつ強気な戦術を本分としているクバルカ・ラン中佐。遼南内戦で『人類最強』と呼ばれたのもうなづけるわね。誰かと違って」
「余計なお世話だ」
アメリアが不敵な笑いを浮かべながらそう言うと新藤がすかさず口を挟む。
「いやあ、そんなに力まなくても……」
つまらないものに火をつけてしまった。ランは慌ててそう言ったがすでにアメリアはギアを切り替えてオタクで痛い本性を現そうとしているところだった。
「知らねえよ、アタシは!それじゃあランニング!行ってきます!」
「逃げるんじゃねーよ!」
ランニングと称してそのまま逃げ出そうとしたかなめをランが押さえつける。誠とカウラは仕方が無いというようにすでにシミュレータの撤収を始めたアメリアを生暖かい目で見つめていた。
「正直最後はやっつけで書いたのよね」
端末のコードを抜きながらのアメリアの言葉。アメリアに逆らうのは無駄だと諦めている新藤はメガホンを機材の山に放り投げていた。
「おい、やっつけなのかよ。まったくストーリーができたのは俺のおかげなんだぜ」
新藤はそうこぼすとサラから紙コップを受け取る。サラは奥から鍋を持って出てきた技術部の西高志兵長と紙コップを持った神前ひよこ軍曹からさらに紙コップを受け取る。
「おう、甘酒か。ひよこが朝から何やってるのかと思えば……」
半ば呆れながらランがテーブルに置かれた大きな鍋の蓋を開ける。しろいどろどろの甘酒がかぐわしい香りをハンガー一杯に拡げた。
「そんなことを言うとあげませんよ」
ひよこはそう言いながらいつの間にか監督の後ろに列を作っていた整備兵達に甘酒を振舞い始める。
「しかし、こうしてみるともう冬なんだな」
その列の中にいつの間にかいたカウラがエメラルドグリーンの髪に手をやる。
「なんだ?人造人間でも風雅ってもんが分かるんだ」
かなめの言葉にそれまで隣の甘酒を覗き見ながら機器を片付けていたアメリアが立ち上がる。
「ひどい偏見!私達も一応人間よ!取り消しなさいよ!」
顔を近づけてつばきを飛ばすアメリアにかなめも一歩もひかない。すぐさまジャンプしたランがかなめの頭をはたいた。
「馬鹿やってんじゃねーよ。甘酒やらねーぞ」
そう言いながらランは副長特権で甘酒の列に割り込んで手にしたコップを傾ける。
「それより子供が酒飲むのは…… 」
「アタシは大人だ」
カウラの言葉を切り捨てるとランはそう言って甘酒を飲み干した。
「これ、おいしいですよ。西園寺さん」
誠の一言になぜか機嫌を悪くしたかなめは黙って実働部隊の詰め所のあるハンガー奥の階段に向かって歩き出した。
「素直じゃねーな。あいつも」
その様子をランは紙コップの中の甘酒で体を温めながら見守る。
「あの、じゃあ僕も遠慮します」
誠の言葉にひよこに代わって甘酒を振舞っていたアメリアが目の色を変える。
「そんな、あいつのわがままに付き合う必要なんて無いわよ」
そう言うとアメリアは警備部のスキンヘッドの兵士から甘酒の入ったコップを奪って誠に持たせる。
「別にそんな……」
「いいから!持っていきなさいよ……これもね」
そう言うとアメリアはもう一杯の甘酒のコップを誠に持たせる。彼女の笑顔に背中を押されるようにして誠はそのままかなめのあとをつけた。
誠が甘酒を持って振り返るとかなめの姿は無かった。早足でそのまま階段をあがって管理部の白い視線を浴びながら隣の詰め所に飛び込む。
そして誠はそっぽを向いて机の上に足を投げ出しているかなめを見つめた。
「お姉さま。また喧嘩ですか?」
奥の席でモニターをのぞきながら第二小隊小隊長日野かえで少佐が声をかけてくる。
「うるせえな!」
そう言うとかなめは目を閉じる。
「ここ、置いておきますから」
誠はそう言ってかなめの分の甘酒を机の端に置いた。
「いいですね、甘酒ですか。僕の国でも時々飲むんですよ」
第二小隊三番機担当のアン・ナン・パク軍曹が甘えた声を出して誠の手の中の甘酒を見ている。
「ベルルカンにもあるのか。かえで様……」
いかにも飲みたそうな二番機担当の渡辺リン大尉。そう言われたかえではキーボードを打つ手を止める。
「そうだな。少し休憩と行くか」
そんなかえでの声を聴くとかなめは横を向いてしまう。
「西園寺さん……」
誠は彼女の正面の自分の席に座った。
「あいつ等と一緒にいろよ。アメリアとか……」
「お姉さま!」
いじけたような調子のかなめにかえでが声を荒げた。目を開けてかえでの顔を見ると、すこしばつが悪そうにアメリアが『変形おかっぱ』と呼ぶ耳にかかるまで伸びたこめかみのところが一番長くなっている髪をかきあげるかなめ。
「飲む」
そう言ってかなめは手を伸ばす。誠はようやく笑顔を浮かべて甘酒をかなめに手渡した。かえでは安心したようにまことを見て頷くとアンと渡辺を連れて出て行く。誠とかなめ。二人は詰め所の中に取残された。
「ごめん」
ぶっきらぼうに手を伸ばして軽くコップを包み込むようにして手に取った。そしてゆっくりと香りを嗅いだ後、一口啜ってかなめがそう言った。
「別に謝る必要は無いですよ。ただ西園寺さんにも楽しく飲んで欲しくて……」
「あのさあ、そんなこと言われるとアタシは……」
かえで達が甘酒を求めて出て行って二人きりの部屋。少し照れながらかなめは両手で紙コップの中の甘酒を見つめていた。
「ふう、良いな。ひよこもポエム以外に特技があるじゃねえか」
ようやく気が晴れたのか少し明るい調子で再び甘酒を含んだかなめがため息をつく。酒豪と言う言葉では足りないほどの酒好きなかなめだと言うのに、なぜか頬が赤く染まっていた。
「なんか顔が赤いですよ?」
誠の言葉にかなめは机から足を下ろす。そして素早くコップを置くとひきつけられるように誠を見る。そして突然何かに気づいたように頭を掻いた。
「き、気のせいだ!気のせい」
そう言って慌てたかなめがつい甘酒のコップを振って中身を机にこぼした。
「大丈夫ですか!」
誠はハンカチを取り出してかなめの机に手を伸ばした。その手にかなめの手が触れる。
「うっ……」
かなめは大げさに飛びのく。奇妙な彼女の行動に誠は違和感を感じていた。
「どうしたんですか?」
「うん……」
黙り込んでいたかなめだが、誠の目を見るとすぐに視線をそらしてしまう。
「ああ、ちょっとトイレ行ってくるわ。たぶんアイツ等が来るころには戻るから」
そう言うとかなめは早足で部屋を出て行った。誠はかなめの半分ほど甘酒の残ったコップと取残された。
「ねえ……」
「うわっ」
突然背中から声をかけられ仰け反る誠。明らかに慌てている誠をアメリアはからかうような調子で見つめている。
「なにかやましいことでもあるのかしら?」
「別に……」
「まあ、いいわ。それならその端末しまって頂戴。ラストの撮影の準備、かなめちゃんが戻ったらすぐできるようにしておきましょう」
意味ありげに笑うとアメリアはそのまま部屋を出て行く。あっけに取られる誠も部屋の外を歩いているラン達の姿を見て端末を終了させた。
0
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説
特殊装甲隊 ダグフェロン 『廃帝と永遠の世紀末』 第三部 『暗黒大陸』
橋本 直
SF
遼州司法局も法術特捜の発足とともに実働部隊、機動隊、法術特捜の三部体制が確立することとなった。
それまで東和陸軍教導隊を兼務していた小さな隊長、クバルカ・ラン中佐が実働部隊副隊長として本異動になることが決まった。
彼女の本拠地である東和陸軍教導隊を訪ねた神前誠に法術兵器の実験に任務が課せられた。それは広域にわたり兵士の意識を奪ってしまうという新しい発想の非破壊兵器だった。
実験は成功するがチャージの時間等、運用の難しい兵器と判明する。
一方実働部隊部隊長嵯峨惟基は自分が領邦領主を務めている貴族制国家甲武国へ飛んだ。そこでは彼の両方を西園寺かなめの妹、日野かえでに継がせることに関する会議が行われる予定だった。
一方、南の『魔窟』と呼ばれる大陸ベルルカンの大国、バルキスタンにて総選挙が予定されており、実働部隊も支援部隊を派遣していた。だが選挙に不満を持つ政府軍、反政府軍の駆け引きが続いていた。
嵯峨は万が一の両軍衝突の際アメリカの介入を要請しようとする兄である西園寺義基のシンパである甲武軍部穏健派を牽制しつつ貴族の群れる会議へと向かった。
そしてそんな中、バルキスタンで反政府軍が機動兵器を手に入れ政府軍との全面衝突が発生する。
誠は試験が済んだばかりの非破壊兵器を手に戦線の拡大を防ぐべく出撃するのだった。
潜水艦艦長 深海調査手記
ただのA
SF
深海探査潜水艦ネプトゥヌスの艦長ロバート・L・グレイ が深海で発見した生物、現象、景観などを書き残した手記。
皆さんも艦長の手記を通して深海の神秘に触れてみませんか?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 野球と海と『革命家』
橋本 直
SF
その文明は出会うべきではなかった
その人との出会いは歓迎すべきものではなかった
これは悲しい『出会い』の物語
『特殊な部隊』と出会うことで青年にはある『宿命』がせおわされることになる
法術装甲隊ダグフェロン 第二部
遼州人の青年『神前誠(しんぜんまこと)』が発動した『干渉空間』と『光の剣(つるぎ)により貴族主義者のクーデターを未然に防止することが出来た『近藤事件』が終わってから1か月がたった。
宇宙は誠をはじめとする『法術師』の存在を公表することで混乱に陥っていたが、誠の所属する司法局実働部隊、通称『特殊な部隊』は相変わらずおバカな生活を送っていた。
そんな『特殊な部隊』の運用艦『ふさ』艦長アメリア・クラウゼ中佐と誠の所属するシュツルム・パンツァーパイロット部隊『機動部隊第一小隊』のパイロットでサイボーグの西園寺かなめは『特殊な部隊』の野球部の夏合宿を企画した。
どうせろくな事が起こらないと思いながら仕事をさぼって参加する誠。
そこではかなめがいかに自分とはかけ離れたお嬢様で、貴族主義の国『甲武国』がどれほど自分の暮らす永遠に続く20世紀末の東和共和国と違うのかを誠は知ることになった。
しかし、彼を待っていたのは『法術』を持つ遼州人を地球人から解放しようとする『革命家』の襲撃だった。
この事件をきっかけに誠の身辺警護の必要性から誠の警護にアメリア、かなめ、そして無表情な人造人間『ラスト・バタリオン』の第一小隊小隊長カウラ・ベルガー大尉がつくことになる。
これにより誠の暮らす『男子下士官寮』は有名無実化することになった。
そんなおバカな連中を『駄目人間』嵯峨惟基特務大佐と機動部隊隊長クバルカ・ラン中佐は生暖かい目で見守っていた。
そんな『特殊な部隊』の意図とは関係なく着々と『力ある者の支配する宇宙』の実現を目指す『廃帝ハド』の野望はゆっくりと動き出しつつあった。
SFお仕事ギャグロマン小説。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
レジェンド・オブ・ダーク遼州司法局異聞 2 「新たな敵」
橋本 直
SF
「近藤事件」の決着がついて「法術」の存在が世界に明らかにされた。
そんな緊張にも当事者でありながら相変わらずアバウトに受け流す遼州司法局実働部隊の面々はちょっとした神前誠(しんぜんまこと)とカウラ・ベルガーとの約束を口実に海に出かけることになった。
西園寺かなめの意外なもてなしや海での意外な事件に誠は戸惑う。
ふたりの窮地を救う部隊長嵯峨惟基(さがこれもと)の娘と言う嵯峨茜(さがあかね)警視正。
また、新編成された第四小隊の面々であるアメリカ海軍出身のロナルド・スミスJr特務大尉、ジョージ・岡部中尉、フェデロ・マルケス中尉や、技術士官レベッカ・シンプソン中尉の4名の新入隊員の配属が決まる。
新たなメンバーを加えても相変わらずの司法局実働部隊メンバーだったが嵯峨の気まぐれから西園寺かなめ、カウラ・ベルガー、アイシャ・クラウゼの三人に特殊なミッションが与えられる。
誠はただ振り回されるだけだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる