1,352 / 1,505
第14章 ある一日
ラーメン
しおりを挟む
「なんだ?薄ら笑いなんか浮かべて……例のプレゼントが仕上がったのか?」
昼はラーメンだった。どんぶりのスープをすすり上げたかなめがニヤつきながら誠に声をかける。確かにカウラのイラストを仕上げた誠の気分は良かった。カウラを見て、誠は別にアメリアに頼まれて描いた女魔族と先ほど描き上げたイラストが似ていてもどうでもいいと言うような気分になっていた。
「別に……」
「別にって顔じゃないわね。まあ今日はこれからクリスマスの料理の材料を買いに行く予定なんだけど」
アメリアはそう言うと麺をすすり上げる。見事な食べっぷりにうれしそうに誠の母、薫はうなづく。
「お誕生日の料理……でも、オードブルはクリスマスっぽくなっちゃうわよ」
そう言いながらも満面の笑みの母に誠は苦笑いを浮かべていた。明後日のカウラの誕生日会と称したクリスマスを一番楽しみにしているのは母かもしれない。そんなことを思いながら誠はどんぶりの底のスープを飲み干す。
「そんなにスープを飲むと塩分を取りすぎるぞ」
「いいんだよ!これがラーメンの醍醐味だ」
カウラを無視してかなめもスープを飲み干した。体内プラントで塩分ろ過の能力もあるかなめの台詞には説得力はまるで無かった。
「でも鶏の丸焼きは欲しいわよね」
すでに食べ終えてお茶をすすっているアメリアがつぶやく。
「だったらオメエが買え。止めねえから」
かなめの言葉にアメリアが鋭い軽蔑するような視線をかなめに向ける。そんな二人を暖かい視線で見守る薫に安心感を覚えた誠だった。
「結局お前達が楽しむのが目的なんだな?」
「悪いか?」
嫌味のつもりで言った言葉を完全に肯定されてカウラは少しばかり不機嫌そうな表情になる。かなめは立ち上がると居間から漫画を持ってくる。
「『女検察官』シリーズね。誠ちゃん。ずいぶん渋い趣味してるじゃないの」
アメリアが最後までとっていたチャーシューを齧りながらつぶやく。誠のコレクションでは珍しい大衆紙の連載漫画である。
「これは絵が好きだったんで。それとそれを買った高校時代の先輩が『たまには硬派な大人向けの漫画も読め!』って言うもので……」
「ふーん」
アメリアはどちらかと言うと劇画調に近い表紙をめくって先ほどまでカウラが読んでいた漫画を読み始める。
「クラウゼさん。片づけが終わったらすぐに出るからね」
「はいはーい!」
薫の言葉にアメリアはあっさりと返事をする。誠は妙に張り切っている母を眺めていた。かなめはそのまま居間の座椅子に腰掛けて漫画を読み始めたアメリアの後ろで彼女が読んでいる漫画を眺めている。
「邪魔」
「なんだよ!そう邪険にするなって」
後ろから覗き込まれてアメリアは口を尖らせる。それを見ていて誠は朝のサラを思い出した。
「そう言えば西園寺さんさっきどこかと通信してましたね」
「は?」
アメリアの後頭部の紺色の髪の根元を引っ張っていじっていたかなめが不機嫌そうに振り返る。そしてしばらく誠の顔をまじまじと見た後、ようやく思い出したように頭を掻いた。
「ああ、銃の話でサラから連絡があってな」
「サラさんが銃……どう考えてもつながらないんですけど」
誠の間抜けな質問にかなめは大きくため息をつく。
「拳銃だよ拳銃。なんでも珍しいのを手に入れたって小火器担当の奴から連絡があったんだ……どこで手に入れたかは知らねえけどな」
「はあ……」
今度はしばらく誠が黙り込む。誠にはかなめの言葉の意味がはっきりとは分からなかった。銃を一番使うかなめに連絡があったのは当然だということで自分を納得させた。
不機嫌そうなかなめから目をそらすと荒いものを終えた母が誠を手招きしていた。
「ああ、出かけるみたいですよ」
誠の言葉にさっさと立ち上がるアメリア。しゃべり足りないかなめは不機嫌そうにゆっくりと腰を上げる。すでに暖かそうなダウンジャケットを着込んだ母とカウラを見ながら誠はそのまま居間にかけてあったスタジアムジャンバーに手を伸ばした。
「この格好だと変かな?」
「この寒空にタンクトップ?馬鹿じゃないの?」
カウラから渡された濃紺のコートを羽織ながら鼻で笑うアメリアをにらんだかなめだが、あきらめたようにダウンジャケットを羽織る。
「じゃあ、いいかしら」
薫の言葉で誠達は出かけることにした。
昼はラーメンだった。どんぶりのスープをすすり上げたかなめがニヤつきながら誠に声をかける。確かにカウラのイラストを仕上げた誠の気分は良かった。カウラを見て、誠は別にアメリアに頼まれて描いた女魔族と先ほど描き上げたイラストが似ていてもどうでもいいと言うような気分になっていた。
「別に……」
「別にって顔じゃないわね。まあ今日はこれからクリスマスの料理の材料を買いに行く予定なんだけど」
アメリアはそう言うと麺をすすり上げる。見事な食べっぷりにうれしそうに誠の母、薫はうなづく。
「お誕生日の料理……でも、オードブルはクリスマスっぽくなっちゃうわよ」
そう言いながらも満面の笑みの母に誠は苦笑いを浮かべていた。明後日のカウラの誕生日会と称したクリスマスを一番楽しみにしているのは母かもしれない。そんなことを思いながら誠はどんぶりの底のスープを飲み干す。
「そんなにスープを飲むと塩分を取りすぎるぞ」
「いいんだよ!これがラーメンの醍醐味だ」
カウラを無視してかなめもスープを飲み干した。体内プラントで塩分ろ過の能力もあるかなめの台詞には説得力はまるで無かった。
「でも鶏の丸焼きは欲しいわよね」
すでに食べ終えてお茶をすすっているアメリアがつぶやく。
「だったらオメエが買え。止めねえから」
かなめの言葉にアメリアが鋭い軽蔑するような視線をかなめに向ける。そんな二人を暖かい視線で見守る薫に安心感を覚えた誠だった。
「結局お前達が楽しむのが目的なんだな?」
「悪いか?」
嫌味のつもりで言った言葉を完全に肯定されてカウラは少しばかり不機嫌そうな表情になる。かなめは立ち上がると居間から漫画を持ってくる。
「『女検察官』シリーズね。誠ちゃん。ずいぶん渋い趣味してるじゃないの」
アメリアが最後までとっていたチャーシューを齧りながらつぶやく。誠のコレクションでは珍しい大衆紙の連載漫画である。
「これは絵が好きだったんで。それとそれを買った高校時代の先輩が『たまには硬派な大人向けの漫画も読め!』って言うもので……」
「ふーん」
アメリアはどちらかと言うと劇画調に近い表紙をめくって先ほどまでカウラが読んでいた漫画を読み始める。
「クラウゼさん。片づけが終わったらすぐに出るからね」
「はいはーい!」
薫の言葉にアメリアはあっさりと返事をする。誠は妙に張り切っている母を眺めていた。かなめはそのまま居間の座椅子に腰掛けて漫画を読み始めたアメリアの後ろで彼女が読んでいる漫画を眺めている。
「邪魔」
「なんだよ!そう邪険にするなって」
後ろから覗き込まれてアメリアは口を尖らせる。それを見ていて誠は朝のサラを思い出した。
「そう言えば西園寺さんさっきどこかと通信してましたね」
「は?」
アメリアの後頭部の紺色の髪の根元を引っ張っていじっていたかなめが不機嫌そうに振り返る。そしてしばらく誠の顔をまじまじと見た後、ようやく思い出したように頭を掻いた。
「ああ、銃の話でサラから連絡があってな」
「サラさんが銃……どう考えてもつながらないんですけど」
誠の間抜けな質問にかなめは大きくため息をつく。
「拳銃だよ拳銃。なんでも珍しいのを手に入れたって小火器担当の奴から連絡があったんだ……どこで手に入れたかは知らねえけどな」
「はあ……」
今度はしばらく誠が黙り込む。誠にはかなめの言葉の意味がはっきりとは分からなかった。銃を一番使うかなめに連絡があったのは当然だということで自分を納得させた。
不機嫌そうなかなめから目をそらすと荒いものを終えた母が誠を手招きしていた。
「ああ、出かけるみたいですよ」
誠の言葉にさっさと立ち上がるアメリア。しゃべり足りないかなめは不機嫌そうにゆっくりと腰を上げる。すでに暖かそうなダウンジャケットを着込んだ母とカウラを見ながら誠はそのまま居間にかけてあったスタジアムジャンバーに手を伸ばした。
「この格好だと変かな?」
「この寒空にタンクトップ?馬鹿じゃないの?」
カウラから渡された濃紺のコートを羽織ながら鼻で笑うアメリアをにらんだかなめだが、あきらめたようにダウンジャケットを羽織る。
「じゃあ、いいかしら」
薫の言葉で誠達は出かけることにした。
0
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
もう、終わった話ですし
志位斗 茂家波
ファンタジー
一国が滅びた。
その知らせを聞いても、私には関係の無い事。
だってね、もう分っていたことなのよね‥‥‥
‥‥‥たまにやりたくなる、ありきたりな婚約破棄ざまぁ(?)もの
少々物足りないような気がするので、気が向いたらオマケ書こうかな?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
「おまえを愛することはない!」と言ってやったのに、なぜ無視するんだ!
七辻ゆゆ
ファンタジー
俺を見ない、俺の言葉を聞かない、そして触れられない。すり抜ける……なぜだ?
俺はいったい、どうなっているんだ。
真実の愛を取り戻したいだけなのに。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
王家も我が家を馬鹿にしてますわよね
章槻雅希
ファンタジー
よくある婚約者が護衛対象の王女を優先して婚約破棄になるパターンのお話。あの手の話を読んで、『なんで王家は王女の醜聞になりかねない噂を放置してるんだろう』『てか、これ、王家が婚約者の家蔑ろにしてるよね?』と思った結果できた話。ひそかなサブタイは『うちも王家を馬鹿にしてますけど』かもしれません。
『小説家になろう』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる