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第8章 超兵器到着
勤務
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「ちょっとついてきてくれ」
カウラは実働部隊の部屋の前でかなめと誠に声をかけた。いつもなら反応するアメリアだが、額に濡れタオルを当てたままぼんやりした表情で廊下を更衣室へと歩いていく。
「おう、来たか」
誠達が所属している機動部隊の隊長の机にはちょこんとランが座っている。昨日、ビールの量ならばかなり飲んでいたはずだというのに平気の体で端末の画面を覗き込んでいた。
「ハンガーのあれのことだろ?言わねーでもわかるよ」
そう言いながらランは苦笑いを浮かべる。
「オメー等は良いねー平和で。アタシは発狂寸前だよ」
先手を打ってランはそう言って笑う。
「……やはりクバルカ中佐の機体も押し付けられたんですか?」
カウラの一言にランは誠を見つめた。なぜ自分に視線が飛んだかわからない誠は茫然とランを見つめていた。それを見てランは大きくため息をつく。
「まあ同盟厚生局の事件が今回の急な搬入の直接のきっかけだな。厚生局とつるんでクーデターを画策していたシンパが芋づる的に見つかってな。特に東和軍はひどい有様だ。表には出ていないが内部調査で士官の10パーセントが何らかのつながりがあるという結果が出た。来年までにその全員が諭旨退職処分になる予定だ」
自分が動いた結果で起きた大変な事態。誠はそれに打ちのめされたように顔を青く染めていく。そんな誠の肩をかなめが叩いた。
「そりゃあ人件費が浮いていいことなんじゃないのか?」
そのままランの机の端に腰掛けてかなめはにんまりと笑う。ランは大きくため息をついてかなめを見上げた後、そのまま話を続けた。
「同盟加盟国では東和の二の舞を避けようと内部調査を実施したんだ。遼帝国の反地球運動とつながっている連中、甲武の貴族主義のはねっかえり、西モスレムの原理主義者、ゲルパルトのネオナチ、遼北の左翼教条主義者。どれもまあシンパと思える連中のよく見つかること……」
あきれたような調子でランは画面を切り替えた。そこには次々と各国の軍幹部の経歴書が映し出されては消える。
「つまりそいつ等に持たせとくとあの化け物を実際戦場で使っちゃいそうだからうちで引き受けたわけか……迷惑な話だな」
かなめの言葉にカウラもうなづいてみせる。ランもまた複雑な表情で誠達の顔を見渡した。
「まったく迷惑な話だぜ。アタシ機体はできればどこぞの海にでも沈めたいのが本音だが……えらいさんは許さないだろうからなー」
そう言ってランは大きく伸びをした。
そんなランを置いてカウラは自分の席に着いた。誠もさすがにいつまでも手の届かない幹部の人事の話に付き合うつもりは無いので自分の席に着く。かなめは興味深げにランの端末の画面を見つめながら小声でランと話をしていた。
「そう言えばどうするんですか?クリスマス」
誠はそう言ってカウラを見つめる。
「仕事中だぞ、後にしろ」
そうは言っては見たものの、カウラに急ぎの仕事が無いのは誠も知っていた。
「ああ、アメリアが任せろって言ってたな。それとこいつのお袋が……」
そう言ってかなめが誠の隣まで来ると誠の髪の毛を左手でぐしゃぐしゃにする。
「止めてくださいよ、まったく」
誠は何とか手ぐしでもとの髪型に戻す。
「ああ、アメリアから頼まれてたんだ……端末見ろや」
ランの言葉にカウラは端末の勤務予定表を開く。誠もあわててそれに倣った。
12月19日、つまり明日から1月4日までが非番になっている。
「これ……どうしてですか?」
さすがに誠もランに声をかけたくなっていた。
「アメリアの奴がねえ……。それとアタシもハンガーのブツの慣らしがすんだら休みとりたいしな……ついでだついで」
ランの笑顔がどこかはかなげに見える。さすがのかなめも毒舌を吐く気も起きないほど弱りきっているランの笑顔がそこにあった。
「我々が休む分がそちらに回っただけだ。羽根を伸ばすと良いんじゃないのか?」
カウラの言葉にランは安心したような笑みを浮かべてうなづいた。
カウラは実働部隊の部屋の前でかなめと誠に声をかけた。いつもなら反応するアメリアだが、額に濡れタオルを当てたままぼんやりした表情で廊下を更衣室へと歩いていく。
「おう、来たか」
誠達が所属している機動部隊の隊長の机にはちょこんとランが座っている。昨日、ビールの量ならばかなり飲んでいたはずだというのに平気の体で端末の画面を覗き込んでいた。
「ハンガーのあれのことだろ?言わねーでもわかるよ」
そう言いながらランは苦笑いを浮かべる。
「オメー等は良いねー平和で。アタシは発狂寸前だよ」
先手を打ってランはそう言って笑う。
「……やはりクバルカ中佐の機体も押し付けられたんですか?」
カウラの一言にランは誠を見つめた。なぜ自分に視線が飛んだかわからない誠は茫然とランを見つめていた。それを見てランは大きくため息をつく。
「まあ同盟厚生局の事件が今回の急な搬入の直接のきっかけだな。厚生局とつるんでクーデターを画策していたシンパが芋づる的に見つかってな。特に東和軍はひどい有様だ。表には出ていないが内部調査で士官の10パーセントが何らかのつながりがあるという結果が出た。来年までにその全員が諭旨退職処分になる予定だ」
自分が動いた結果で起きた大変な事態。誠はそれに打ちのめされたように顔を青く染めていく。そんな誠の肩をかなめが叩いた。
「そりゃあ人件費が浮いていいことなんじゃないのか?」
そのままランの机の端に腰掛けてかなめはにんまりと笑う。ランは大きくため息をついてかなめを見上げた後、そのまま話を続けた。
「同盟加盟国では東和の二の舞を避けようと内部調査を実施したんだ。遼帝国の反地球運動とつながっている連中、甲武の貴族主義のはねっかえり、西モスレムの原理主義者、ゲルパルトのネオナチ、遼北の左翼教条主義者。どれもまあシンパと思える連中のよく見つかること……」
あきれたような調子でランは画面を切り替えた。そこには次々と各国の軍幹部の経歴書が映し出されては消える。
「つまりそいつ等に持たせとくとあの化け物を実際戦場で使っちゃいそうだからうちで引き受けたわけか……迷惑な話だな」
かなめの言葉にカウラもうなづいてみせる。ランもまた複雑な表情で誠達の顔を見渡した。
「まったく迷惑な話だぜ。アタシ機体はできればどこぞの海にでも沈めたいのが本音だが……えらいさんは許さないだろうからなー」
そう言ってランは大きく伸びをした。
そんなランを置いてカウラは自分の席に着いた。誠もさすがにいつまでも手の届かない幹部の人事の話に付き合うつもりは無いので自分の席に着く。かなめは興味深げにランの端末の画面を見つめながら小声でランと話をしていた。
「そう言えばどうするんですか?クリスマス」
誠はそう言ってカウラを見つめる。
「仕事中だぞ、後にしろ」
そうは言っては見たものの、カウラに急ぎの仕事が無いのは誠も知っていた。
「ああ、アメリアが任せろって言ってたな。それとこいつのお袋が……」
そう言ってかなめが誠の隣まで来ると誠の髪の毛を左手でぐしゃぐしゃにする。
「止めてくださいよ、まったく」
誠は何とか手ぐしでもとの髪型に戻す。
「ああ、アメリアから頼まれてたんだ……端末見ろや」
ランの言葉にカウラは端末の勤務予定表を開く。誠もあわててそれに倣った。
12月19日、つまり明日から1月4日までが非番になっている。
「これ……どうしてですか?」
さすがに誠もランに声をかけたくなっていた。
「アメリアの奴がねえ……。それとアタシもハンガーのブツの慣らしがすんだら休みとりたいしな……ついでだついで」
ランの笑顔がどこかはかなげに見える。さすがのかなめも毒舌を吐く気も起きないほど弱りきっているランの笑顔がそこにあった。
「我々が休む分がそちらに回っただけだ。羽根を伸ばすと良いんじゃないのか?」
カウラの言葉にランは安心したような笑みを浮かべてうなづいた。
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