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第3章 警備活動
新たな超兵器
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「噂は前からあったしなでも今のタイミングか……」
「今だからじゃないの?それを装備して同盟の威信を見せ付けて結束を印象付ける。タイミング的にはばっちりだと思うけど」
かなめ、アメリアの緊張した面持ちと言葉。誠はそのファイルの内容が想像もできず、ただぼんやりの三人の顔を眺めていた。
「ああ、それじゃあ裏取ってみるか……」
そう言って腕の通信端末からコードを伸ばして自分の首のスロットに差し込もうとするかなめを見てようやく決心が付いた誠は口を挟むことに決めた。
「なんなんですか?何が搬入されてくるんですか?ヤバい奴ですか?」
誠の言葉にかなめは手を止めて呆れたような表情を作る。カウラは額に手を当てて部下の態度に呆れていた。アメリアもまた呆然として誠をじっくりと眺めている。
「あのさあ、叔父貴の愛機と言えばなんだ?」
手を休めたかなめの一言。誠は何か考えがあるかなめを意識しながら考えてみる。
「あの人パイロットなんですか?知りませんでした」
その言葉にカウラは大きなため息をついた。明らかに自分を非難していることがわかるその態度にさすがの誠も頭に来るところがあった。
「お前がうちに居つかなければ05式乙型は隊長が乗るはずだったんだ」
ため息交じりにカウラはそう漏らした。
「なんですか?新型でも出来るんですか?隊長は現在東和軍の開発の09式をぼろくそに貶してたじゃないですか!07式の配備が中止されて次期主力アサルト・モジュールの研究もほとんどの国で中止している時期に……」
「だからよ。だからこれを出動待機状態に持ち込むのは効果的なのよ」
そう言ってアメリアは端末を操作する。注視していた誠の前に見覚えのある人型兵器のシルエットが浮かび上がった。
「なんです?その機体ですか」
その印象的な外観には誠も見覚えが無かった。
額に打ち付けられた汎用アンテナがまるで平安武者のクワガタのように伸びる姿が印象的な機体だった。誠の05式には装備されていないマルチプル法術空間展開用シールドが肩にぶら下がっている。誠の記憶にはそんなアサルト・モジュールは存在しなかった。
「これがついに……」
誠が唾を飲む様をカウラは緊張した面持ちで見つめていた。
「叔父貴の奴。これは投入しないって話じゃ無かったのか?……『特戦三号計画試作戦機24号』……コードネーム『武悪』」
かなめの言葉は誠にはまるで聞きなれない言葉だった。
「『ブアク』?」
誠はすっとぼけた調子でそうつぶやいた。
「この機体の正式名称は『特戦三号計画試作戦機24号』と言うものでね、先の大戦で法術の可能性に気づいた甲武陸軍兵器工廠。列強。特に甲武は遼帝国との同盟締結以降、アステロイドベルトの紛争で威力を発揮した先遼州文明の決戦兵器『アサルト・モジュール』の開発に着手したのよ。だけど、遼帝国の武帝の肝いりで遼が開発した『方天画戟』……まあランちゃんが前乗ってた機体なんだけど、開発コストがアサルト・モジュールの量産配備を目指す軍部と政府が対立しちゃうくらいのハイエンド機体なのよ」
アメリアはそう言って苦笑いを浮かべた。
「まあ甲武の軍は『サムライ』だからな。人型にこだわって装備的には戦闘車両や攻撃戦闘機などに対抗する兵器を搭載しただけの人型兵器である九七式を圧倒的ローコストで開発して装備することになったんだな、これが」
かなめもまた呆れたような調子でそうつぶやいた。
「だが甲武陸軍はコスト的な問題により『方天画戟』並みの戦闘能力を諦めて九七式を投入したわけだが、技術部門は『方天画戟』の圧倒的な戦闘能力を理解した上で法術師専用の本当の意味でのアサルト・モジュール開発を諦めることは無かったんだ。『特戦三号計画』と名づけられた新規アサルト・モジュール開発計画だが、これは戦争の拡大で予算を削られながらも終戦までその開発計画は継続された。結果開発されたのがこの『武悪』」
カウラはタブレットに映し出される人型兵器を見つめながらそう言った。
「プラットフォームとしては開発中止された九七式の後継機の四式のフレームを使用して干渉空間展開領域利用式新式反応炉搭載による圧倒的な出力による機動性と専用アクチュエーターの開発により実現可能な格闘戦能力を実現した。小脳反応式誘導型空間把握式照準システムなんかもある。どれも先の大戦時の使用アサルト・モジュールとは一線を画す画期的なシステムを導入する予定だったが、物資の不足、技術の未熟、何よりも対応可能な法術師のパイロットがいなかったところから終戦と同時にその資料は闇ルートに売却され表に出ることは無かったのよねえ」
アメリアの言葉で誠もその『武悪』と言う機体が相当な高性能高品質な機体だと分かった。
「隊長は終戦の三年後、アメリカ軍の法術師実験施設から逃走して甲武、東和を経て遼南北部の軍閥、北兼閥に身を投じのよ。その時には隊長は独自ルートで特戦三号計画の資料を入手して自らの専用機として甲武帝国の泉州コロニーで開発を続けさせていたわけ。結果、24号機において要望されるスペックを持つ機体の開発に成功したというらしいわ。開発スタッフは隊長のお気に入りの能、狂言のキャラクターからこの呼称を『武悪』と命名したの。遼南内戦では隊長もパイロットとしても活躍した嵯峨の愛機として名前をとどろかせたのよ……」
「隊長……パイロットだったんだ……」
誠は少しばかりあの駄目人間の意外な一面を知って驚きの表情を浮かべた」
「まあ記録に残ってないから誠ちゃんが知らないのも当然だけど……諜報関係に働きかけて当時の記録を抹消するなんて隊長の十八番ですものね」
続けざまにアメリアに言われて誠は混乱しながら話を聞いていた。
高コストで高性能な機体の搬入作業の計画があるなどと言うことはそれなりのタイミングを計るだろうと誠も思っていたが、言われれば今がそう言う時期だということを思い出した。東和陸軍の暴走が白日の下に晒されて東和軍への国民の不信が表面化した今のタイミング。確かに司法執行機関であり、遼州星系の統一の象徴である司法局への強力な兵器の導入は今しかないとも思えた。
「誠ちゃん。これだけじゃ無いのよ」
アメリアはそう言うと端末の画面を切り替える。
「確かランちゃんの『方天画戟』も豊川の工場でオーバーホール中だったわよね……隣の……」
アメリアはそう言うと菱川重工豊川工場の敷地の方に目を向いた。
「まあな。ランの姐御の05式先行試作型は東和軍からの借り物だからな。あの人の専用機も必要なんだろ」
かなめはそう言うと目を擦る。興奮気味だったのは一瞬でかなめは完全に興味を失ったとでも言うようにコタツの上のみかんに手を伸ばす。
誠が周りを見渡すとカウラも興味なさそうに誠の顔を眺めていた。おそらくは二人ともその情報を知っていたのだろうと思うと少しばかり誠はがっかりした。
「まあ先月には新港にコンテナが運ばれてたって話しだから。後はタイミングの問題だったんじゃないの?」
アメリアもつまらなそうにファイルをかなめから受け取るとそのまま棚に返した。
「今だからじゃないの?それを装備して同盟の威信を見せ付けて結束を印象付ける。タイミング的にはばっちりだと思うけど」
かなめ、アメリアの緊張した面持ちと言葉。誠はそのファイルの内容が想像もできず、ただぼんやりの三人の顔を眺めていた。
「ああ、それじゃあ裏取ってみるか……」
そう言って腕の通信端末からコードを伸ばして自分の首のスロットに差し込もうとするかなめを見てようやく決心が付いた誠は口を挟むことに決めた。
「なんなんですか?何が搬入されてくるんですか?ヤバい奴ですか?」
誠の言葉にかなめは手を止めて呆れたような表情を作る。カウラは額に手を当てて部下の態度に呆れていた。アメリアもまた呆然として誠をじっくりと眺めている。
「あのさあ、叔父貴の愛機と言えばなんだ?」
手を休めたかなめの一言。誠は何か考えがあるかなめを意識しながら考えてみる。
「あの人パイロットなんですか?知りませんでした」
その言葉にカウラは大きなため息をついた。明らかに自分を非難していることがわかるその態度にさすがの誠も頭に来るところがあった。
「お前がうちに居つかなければ05式乙型は隊長が乗るはずだったんだ」
ため息交じりにカウラはそう漏らした。
「なんですか?新型でも出来るんですか?隊長は現在東和軍の開発の09式をぼろくそに貶してたじゃないですか!07式の配備が中止されて次期主力アサルト・モジュールの研究もほとんどの国で中止している時期に……」
「だからよ。だからこれを出動待機状態に持ち込むのは効果的なのよ」
そう言ってアメリアは端末を操作する。注視していた誠の前に見覚えのある人型兵器のシルエットが浮かび上がった。
「なんです?その機体ですか」
その印象的な外観には誠も見覚えが無かった。
額に打ち付けられた汎用アンテナがまるで平安武者のクワガタのように伸びる姿が印象的な機体だった。誠の05式には装備されていないマルチプル法術空間展開用シールドが肩にぶら下がっている。誠の記憶にはそんなアサルト・モジュールは存在しなかった。
「これがついに……」
誠が唾を飲む様をカウラは緊張した面持ちで見つめていた。
「叔父貴の奴。これは投入しないって話じゃ無かったのか?……『特戦三号計画試作戦機24号』……コードネーム『武悪』」
かなめの言葉は誠にはまるで聞きなれない言葉だった。
「『ブアク』?」
誠はすっとぼけた調子でそうつぶやいた。
「この機体の正式名称は『特戦三号計画試作戦機24号』と言うものでね、先の大戦で法術の可能性に気づいた甲武陸軍兵器工廠。列強。特に甲武は遼帝国との同盟締結以降、アステロイドベルトの紛争で威力を発揮した先遼州文明の決戦兵器『アサルト・モジュール』の開発に着手したのよ。だけど、遼帝国の武帝の肝いりで遼が開発した『方天画戟』……まあランちゃんが前乗ってた機体なんだけど、開発コストがアサルト・モジュールの量産配備を目指す軍部と政府が対立しちゃうくらいのハイエンド機体なのよ」
アメリアはそう言って苦笑いを浮かべた。
「まあ甲武の軍は『サムライ』だからな。人型にこだわって装備的には戦闘車両や攻撃戦闘機などに対抗する兵器を搭載しただけの人型兵器である九七式を圧倒的ローコストで開発して装備することになったんだな、これが」
かなめもまた呆れたような調子でそうつぶやいた。
「だが甲武陸軍はコスト的な問題により『方天画戟』並みの戦闘能力を諦めて九七式を投入したわけだが、技術部門は『方天画戟』の圧倒的な戦闘能力を理解した上で法術師専用の本当の意味でのアサルト・モジュール開発を諦めることは無かったんだ。『特戦三号計画』と名づけられた新規アサルト・モジュール開発計画だが、これは戦争の拡大で予算を削られながらも終戦までその開発計画は継続された。結果開発されたのがこの『武悪』」
カウラはタブレットに映し出される人型兵器を見つめながらそう言った。
「プラットフォームとしては開発中止された九七式の後継機の四式のフレームを使用して干渉空間展開領域利用式新式反応炉搭載による圧倒的な出力による機動性と専用アクチュエーターの開発により実現可能な格闘戦能力を実現した。小脳反応式誘導型空間把握式照準システムなんかもある。どれも先の大戦時の使用アサルト・モジュールとは一線を画す画期的なシステムを導入する予定だったが、物資の不足、技術の未熟、何よりも対応可能な法術師のパイロットがいなかったところから終戦と同時にその資料は闇ルートに売却され表に出ることは無かったのよねえ」
アメリアの言葉で誠もその『武悪』と言う機体が相当な高性能高品質な機体だと分かった。
「隊長は終戦の三年後、アメリカ軍の法術師実験施設から逃走して甲武、東和を経て遼南北部の軍閥、北兼閥に身を投じのよ。その時には隊長は独自ルートで特戦三号計画の資料を入手して自らの専用機として甲武帝国の泉州コロニーで開発を続けさせていたわけ。結果、24号機において要望されるスペックを持つ機体の開発に成功したというらしいわ。開発スタッフは隊長のお気に入りの能、狂言のキャラクターからこの呼称を『武悪』と命名したの。遼南内戦では隊長もパイロットとしても活躍した嵯峨の愛機として名前をとどろかせたのよ……」
「隊長……パイロットだったんだ……」
誠は少しばかりあの駄目人間の意外な一面を知って驚きの表情を浮かべた」
「まあ記録に残ってないから誠ちゃんが知らないのも当然だけど……諜報関係に働きかけて当時の記録を抹消するなんて隊長の十八番ですものね」
続けざまにアメリアに言われて誠は混乱しながら話を聞いていた。
高コストで高性能な機体の搬入作業の計画があるなどと言うことはそれなりのタイミングを計るだろうと誠も思っていたが、言われれば今がそう言う時期だということを思い出した。東和陸軍の暴走が白日の下に晒されて東和軍への国民の不信が表面化した今のタイミング。確かに司法執行機関であり、遼州星系の統一の象徴である司法局への強力な兵器の導入は今しかないとも思えた。
「誠ちゃん。これだけじゃ無いのよ」
アメリアはそう言うと端末の画面を切り替える。
「確かランちゃんの『方天画戟』も豊川の工場でオーバーホール中だったわよね……隣の……」
アメリアはそう言うと菱川重工豊川工場の敷地の方に目を向いた。
「まあな。ランの姐御の05式先行試作型は東和軍からの借り物だからな。あの人の専用機も必要なんだろ」
かなめはそう言うと目を擦る。興奮気味だったのは一瞬でかなめは完全に興味を失ったとでも言うようにコタツの上のみかんに手を伸ばす。
誠が周りを見渡すとカウラも興味なさそうに誠の顔を眺めていた。おそらくは二人ともその情報を知っていたのだろうと思うと少しばかり誠はがっかりした。
「まあ先月には新港にコンテナが運ばれてたって話しだから。後はタイミングの問題だったんじゃないの?」
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