レジェンド・オブ・ダーク 遼州司法局異聞

橋本 直

文字の大きさ
上 下
1,174 / 1,505
第10章 引っ越し準備

夏の風物詩

しおりを挟む
「そういえば、アオイくん、イヤーカフしかつけてないみたいだったけど、潜入後の映像って見れたりするの?さっきは普通に、スマホで中継してたけど」

スムージーをおいしくいただきながら、ハヤミに疑問をぶつける。

「この前は、ニシジマがお前を襲おうとするかもしれなかったから、正面から鮮明な動画が撮れるようにヘアピンも仕込んだけど、イヤーカフにもカメラ機能あるから大丈夫だ」

「へぇえ…イヤーカフにも撮影機能が…」

と納得しかけて、

「ちょっと!そんなこと、聞いてない!」

レナは、思わず真っ赤になって立ち上がる。

そんなレナを冷めた目で見つめながら、

「おい、何か勘違いしてないか?別に俺たちは、お前の私生活に興味があるわけじゃないんだからさ、普通にオフにしてるよ」

そうザッと説明してから、

「お前が家に帰るときには、ちゃんとイヤーカフの機能はオフにしてあるから」

丁寧に説明し、「お前のほうでも電源はオフにできるから」と、イヤーカフの裏側に小さな突起があることを教えた。

そのとき、ハヤミの手が耳たぶや頬に触れてドキっとした。

…しかも…顔が…近い…

ぶわっと、顔中に全身の血が集結していくのがわかる。

嫌だ、どうしよう…

これ、絶対に顔、真っ赤だ…ヤバイ…

思いっきり目を閉じていると、

「おい、聞いてんのか?」

不機嫌そうなハヤミの声が聞こえて、ひとまず「あ、ありがとう」と誤魔化した。

やばい…

もう、心臓が爆発しちゃうよ。

レナは、ゆっくりと大きな深呼吸をして呼吸を整えた。

「お、アオイ、順調じゃん?」

ハヤミの声にモニターを見ると、ニシジマ、それから橋本、それから、面接官らしい男の3人が見える。

肝心のアオイの姿は、イヤーカフの死角になっているため映っていないが、3人は楽しそうな表情を浮かべていい雰囲気だ。

「それにしても、この映像、すごく鮮明だよね」

「当たり前だろ。うちで使ってる機械系の商品、全部、天才が作ってんだから」

「天才…?」

レナは聞き返したが、ハヤミはモニターを真剣な眼差しでみつめたまま、回答はなかった。

しばらくして、

「即採用だってー!」

と、ニシジマの会社から飛び出すように走り出てきたアオイが、スマホを片手に大はしゃぎ。

「お疲れ」

ハヤミがニヤリと笑い、

「今回の面接で、いろいろとわかったな」

そう言った。

「え、え?ええっ?何?何がわかったっていうの?」

レナが思わず立ち上がってがっつきながら尋ねると、

「うぜぇ、とにかく座れ」

本当にウザイという様子でレナを睨み、羊や牛を扱うような様子でイスに座らせた。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

お爺様の贈り物

豆狸
ファンタジー
お爺様、素晴らしい贈り物を本当にありがとうございました。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

【完結】そして、誰もいなくなった

杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」 愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。 「触るな!」 だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。 「突き飛ばしたぞ」 「彼が手を上げた」 「誰か衛兵を呼べ!」 騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。 そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。 そして誰もいなくなった。 彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。 これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。 ◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。 3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。 3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました! 4/1、完結しました。全14話。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

仰っている意味が分かりません

水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか? 常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。 ※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。

処理中です...