1,169 / 1,503
第9章 護衛について
追跡者
しおりを挟む
「おい、カウラ……気づいてるな」
ふざけていたかなめの目が急に光を失ってにごったような表情を浮かべた。
「わかっている。後ろのセダン」
信号につかまって、止まった車。誠が振り向けばその運転席と助手席にサングラスをした男の姿が映っていた。
「どこかしらね……噂の遼帝国だったりして」
アメリアは小突かれた頭をさすっている。
「捲くか?」
「いや、どうせあちらさんもこっちの行き先はご存知だろうからな。アメリアはこれを使え」
そう言うとかなめは自分のバッグからコンパクトなサブマシンガンを取り出した。
「あきれた。こんなの持ち歩いてたわけ?」
アメリアは受け取ったサブマシンガンにマガジンを差込んで眺めている。
「PP91ケダールサブマシンガン。コンパクトだからとりあえず持ち歩くには結構便利なんだぜ」
「私はこう言うのは持ち歩かないの」
そう言いながらもアメリアはボルトを引いて初弾を装填する。
「神前、ダッシュボードを開けてくれ」
運転中のカウラの指示に従って、ダッシュボードに入っているカウラの愛用のアストラM903ピストルを取り出す。
「西園寺、どこで仕掛けるつもりだ」
「次のコンビニのある交差点を左だ。ウィンカーは直前で出せよ。捲こうとする振りだけしとけ」
かなめはそう言いながら、昼間弾を撃ちきった愛銃XD40のマガジンに一発、また一発とS&W40ホローポイント弾を装填している。
カウラは急にウィンカーを出し、すばやくハンドルを切る。後ろのセダンは振り切られまいと、タイヤで悲鳴を上げながらそれに続く。
細い建売住宅の並ぶ小道。カウラはこの道には似合わない速度で車を走らせる。後ろのセダンは振り切られまいと速度を上げるが、カウラはすばやくさらに細い小道に入り込む。
一瞬、タイミングをずらされてセダンは行き過ぎた。その間にもカウラの『ハコスカ』はくねり始めた時にねぎ畑の見える道を爆走する。
「この道だと行き止まりますよ!」
誠が叫んだ。しかし、三人はそれぞれ手にした銃を眺めながら、まるでこれから起きることがわかっているかのように正面を見つめていた。
県立豊川商業高校が見える路地でカウラは車を止めた。そして誠はカウラのハンドサインで車を降りて、いかにも楽しそうなかなめ達に連れられて藪に身を潜めた。
遅れてたどり着いたサングラスの二人の男は車停めると素早く降りたった。彼等の追っていたハコスカには人の気配が無い。
「とりあえず確認だ」
助手席から降りた男は、そう言うとそのまま車のシートを確認するべく駆け寄った。エンジンは切られてすぐらしく、熱気を帯びた風が頬を撫でる。二人は辺りを見渡す。明かりの消えた高校の裏門、ムッとするコンクリートの焼ける匂いが二人を包んでいた。
とりあえず確認を終えた二人が車に戻ろうとした時だった。
「動くな」
カウラの声に振り向こうとする助手席の男の背中に硬いものが当たる。相棒はかなめに手を取られてもがいている。
「そのまま手を車につけろ」
指示されるままに男はスポーツカーに手をつく。
「おい、どこのお使いだ?」
かなめに右腕をねじり上げられた運転手が悲鳴を上げる。
「かなめちゃんさあ。二、三発、腿にでも撃ち込んであげれば、べらべらしゃべりだすんじゃないの?」
サブマシンガンを肩に乗せたアメリアが、体格に似合わず気の弱そうな表情を浮かべる誠を連れてきた。
「それより神前。せっかく叔父貴からダンビラ受け取ったんだ。試し斬りってのもおつじゃないのか?」
「わかった、話す!」
スポーツカーに両手をついていた男がかなめの言葉に驚いたように、背中に銃を突きつける緑のポニーテールのカウラに言った。
「我々は甲武国海軍情報部のものだ!」
「甲武海軍ねえ、それにしちゃあずいぶんまずい尾行だな。もう少しましな嘘をつけよ」
かなめはさらに男の右腕を強くねじり上げる。男は左手でもれそうになる悲鳴を押さえ込んでいる。
「本当だ!何なら大使館に確認してもらってもかまわない。それに尾行ではない!護衛だ」
両手をついている男が、相棒に視線を移す。
「それならなおのこともっとうまくやんな。護衛する相手に気づかれるようじゃ転職を考えた方がいいぜ」
そう言うとかなめは右腕をねじり上げていた男を突き放す。カウラは銃を収め、不服そうに眺めているアメリアを見た。
「上は親父か?」
「いえ、海軍大臣の指示です、藤太姫様。神前誠曹長の安全を確保せよとの指示をうけて……」
安心したようにかなめはタバコに火をともす。
「紛らわしいことすんじゃねえよ。そう言うことするならアタシに一声かけろっつうの!」
「かなめちゃんなら怒鳴りつけて断るんじゃないの?」
アメリアはサブマシンガンのマガジンを抜いて、薬室の中の残弾を取り出す。
「そんなことねえよ……アタシだって不安になる時あるし」
小声でつぶやいたかなめの言葉にカウラとアメリアは思わず目を合わせた。
「まあこの程度の腕の護衛なら私だって断るわねえ」
アメリアは取り出したサブマシンガンの弾をマガジンに差し込む。
「それじゃあもうちょっと揉んでやろうか?」
こぶしを握り締めるかなめを見て、後ろに引く二人。
「それくらいにしておけ。しかし、この程度では確かに護衛にはならんな」
「そうよねえ。第三艦隊第一教導連隊の連隊長くらい強くなくちゃあ……」
軽口を叩くアメリアをかなめがにらみつけた。
「つまり、かえでを連れて来いってことか?」
かなめはタバコに手を伸ばす。
「わかってるじゃない!いとしの妹君にお姫様だっこしてもらってー……」
またアメリアの妄想が始まる。呆れ果てたようにかなめの目が死んでいる。
「アメリア、灰皿がいるんだ。ちょっと手を貸せ!」
かなめはタバコに火をつけるとそのままアメリアの右手を引っ張って押し付けようとする。
「冗談だって!冗談!」
かなめの剣幕に笑いながらアメリアは逃げようとする。
「冗談になってないなそれは」
「カウラ良いこと言うじゃねえか!そうだ、何だってあの……」
あきれている二人の男達に見守られながらカウラの顔を見るかなめだったが、そのまじめそうな表情に思わず肩を押さえていたアメリアに逃げられる。
「それにかえでさんのうちへの配属は時間の問題みたいだからね」
アメリアは笑っている。
「……マジかよ」
アメリアの言葉にかなめはくわえていたタバコを落とした。
「うれしそうだな、オメエ」
「別に……、それじゃあ君達は帰ってもいいわよ。護衛の任務は私達が引き継ぐから」
かなめ達の会話にあきれていた海軍士官達は、アメリアの声を聞いてようやく解放されたとでも言うようにすごすごと車に乗り込むと路地から出て行った。
「それじゃあ行きましょう!」
「ちゃんと話せ!ごまかすんじゃねえ!」
かなめの叫び声を無視してカウラとアメリアは車に乗り込む。仕方なくその後ろに誠は続いた。
ふざけていたかなめの目が急に光を失ってにごったような表情を浮かべた。
「わかっている。後ろのセダン」
信号につかまって、止まった車。誠が振り向けばその運転席と助手席にサングラスをした男の姿が映っていた。
「どこかしらね……噂の遼帝国だったりして」
アメリアは小突かれた頭をさすっている。
「捲くか?」
「いや、どうせあちらさんもこっちの行き先はご存知だろうからな。アメリアはこれを使え」
そう言うとかなめは自分のバッグからコンパクトなサブマシンガンを取り出した。
「あきれた。こんなの持ち歩いてたわけ?」
アメリアは受け取ったサブマシンガンにマガジンを差込んで眺めている。
「PP91ケダールサブマシンガン。コンパクトだからとりあえず持ち歩くには結構便利なんだぜ」
「私はこう言うのは持ち歩かないの」
そう言いながらもアメリアはボルトを引いて初弾を装填する。
「神前、ダッシュボードを開けてくれ」
運転中のカウラの指示に従って、ダッシュボードに入っているカウラの愛用のアストラM903ピストルを取り出す。
「西園寺、どこで仕掛けるつもりだ」
「次のコンビニのある交差点を左だ。ウィンカーは直前で出せよ。捲こうとする振りだけしとけ」
かなめはそう言いながら、昼間弾を撃ちきった愛銃XD40のマガジンに一発、また一発とS&W40ホローポイント弾を装填している。
カウラは急にウィンカーを出し、すばやくハンドルを切る。後ろのセダンは振り切られまいと、タイヤで悲鳴を上げながらそれに続く。
細い建売住宅の並ぶ小道。カウラはこの道には似合わない速度で車を走らせる。後ろのセダンは振り切られまいと速度を上げるが、カウラはすばやくさらに細い小道に入り込む。
一瞬、タイミングをずらされてセダンは行き過ぎた。その間にもカウラの『ハコスカ』はくねり始めた時にねぎ畑の見える道を爆走する。
「この道だと行き止まりますよ!」
誠が叫んだ。しかし、三人はそれぞれ手にした銃を眺めながら、まるでこれから起きることがわかっているかのように正面を見つめていた。
県立豊川商業高校が見える路地でカウラは車を止めた。そして誠はカウラのハンドサインで車を降りて、いかにも楽しそうなかなめ達に連れられて藪に身を潜めた。
遅れてたどり着いたサングラスの二人の男は車停めると素早く降りたった。彼等の追っていたハコスカには人の気配が無い。
「とりあえず確認だ」
助手席から降りた男は、そう言うとそのまま車のシートを確認するべく駆け寄った。エンジンは切られてすぐらしく、熱気を帯びた風が頬を撫でる。二人は辺りを見渡す。明かりの消えた高校の裏門、ムッとするコンクリートの焼ける匂いが二人を包んでいた。
とりあえず確認を終えた二人が車に戻ろうとした時だった。
「動くな」
カウラの声に振り向こうとする助手席の男の背中に硬いものが当たる。相棒はかなめに手を取られてもがいている。
「そのまま手を車につけろ」
指示されるままに男はスポーツカーに手をつく。
「おい、どこのお使いだ?」
かなめに右腕をねじり上げられた運転手が悲鳴を上げる。
「かなめちゃんさあ。二、三発、腿にでも撃ち込んであげれば、べらべらしゃべりだすんじゃないの?」
サブマシンガンを肩に乗せたアメリアが、体格に似合わず気の弱そうな表情を浮かべる誠を連れてきた。
「それより神前。せっかく叔父貴からダンビラ受け取ったんだ。試し斬りってのもおつじゃないのか?」
「わかった、話す!」
スポーツカーに両手をついていた男がかなめの言葉に驚いたように、背中に銃を突きつける緑のポニーテールのカウラに言った。
「我々は甲武国海軍情報部のものだ!」
「甲武海軍ねえ、それにしちゃあずいぶんまずい尾行だな。もう少しましな嘘をつけよ」
かなめはさらに男の右腕を強くねじり上げる。男は左手でもれそうになる悲鳴を押さえ込んでいる。
「本当だ!何なら大使館に確認してもらってもかまわない。それに尾行ではない!護衛だ」
両手をついている男が、相棒に視線を移す。
「それならなおのこともっとうまくやんな。護衛する相手に気づかれるようじゃ転職を考えた方がいいぜ」
そう言うとかなめは右腕をねじり上げていた男を突き放す。カウラは銃を収め、不服そうに眺めているアメリアを見た。
「上は親父か?」
「いえ、海軍大臣の指示です、藤太姫様。神前誠曹長の安全を確保せよとの指示をうけて……」
安心したようにかなめはタバコに火をともす。
「紛らわしいことすんじゃねえよ。そう言うことするならアタシに一声かけろっつうの!」
「かなめちゃんなら怒鳴りつけて断るんじゃないの?」
アメリアはサブマシンガンのマガジンを抜いて、薬室の中の残弾を取り出す。
「そんなことねえよ……アタシだって不安になる時あるし」
小声でつぶやいたかなめの言葉にカウラとアメリアは思わず目を合わせた。
「まあこの程度の腕の護衛なら私だって断るわねえ」
アメリアは取り出したサブマシンガンの弾をマガジンに差し込む。
「それじゃあもうちょっと揉んでやろうか?」
こぶしを握り締めるかなめを見て、後ろに引く二人。
「それくらいにしておけ。しかし、この程度では確かに護衛にはならんな」
「そうよねえ。第三艦隊第一教導連隊の連隊長くらい強くなくちゃあ……」
軽口を叩くアメリアをかなめがにらみつけた。
「つまり、かえでを連れて来いってことか?」
かなめはタバコに手を伸ばす。
「わかってるじゃない!いとしの妹君にお姫様だっこしてもらってー……」
またアメリアの妄想が始まる。呆れ果てたようにかなめの目が死んでいる。
「アメリア、灰皿がいるんだ。ちょっと手を貸せ!」
かなめはタバコに火をつけるとそのままアメリアの右手を引っ張って押し付けようとする。
「冗談だって!冗談!」
かなめの剣幕に笑いながらアメリアは逃げようとする。
「冗談になってないなそれは」
「カウラ良いこと言うじゃねえか!そうだ、何だってあの……」
あきれている二人の男達に見守られながらカウラの顔を見るかなめだったが、そのまじめそうな表情に思わず肩を押さえていたアメリアに逃げられる。
「それにかえでさんのうちへの配属は時間の問題みたいだからね」
アメリアは笑っている。
「……マジかよ」
アメリアの言葉にかなめはくわえていたタバコを落とした。
「うれしそうだな、オメエ」
「別に……、それじゃあ君達は帰ってもいいわよ。護衛の任務は私達が引き継ぐから」
かなめ達の会話にあきれていた海軍士官達は、アメリアの声を聞いてようやく解放されたとでも言うようにすごすごと車に乗り込むと路地から出て行った。
「それじゃあ行きましょう!」
「ちゃんと話せ!ごまかすんじゃねえ!」
かなめの叫び声を無視してカウラとアメリアは車に乗り込む。仕方なくその後ろに誠は続いた。
0
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説
特殊装甲隊 ダグフェロン 『廃帝と永遠の世紀末』 第三部 『暗黒大陸』
橋本 直
SF
遼州司法局も法術特捜の発足とともに実働部隊、機動隊、法術特捜の三部体制が確立することとなった。
それまで東和陸軍教導隊を兼務していた小さな隊長、クバルカ・ラン中佐が実働部隊副隊長として本異動になることが決まった。
彼女の本拠地である東和陸軍教導隊を訪ねた神前誠に法術兵器の実験に任務が課せられた。それは広域にわたり兵士の意識を奪ってしまうという新しい発想の非破壊兵器だった。
実験は成功するがチャージの時間等、運用の難しい兵器と判明する。
一方実働部隊部隊長嵯峨惟基は自分が領邦領主を務めている貴族制国家甲武国へ飛んだ。そこでは彼の両方を西園寺かなめの妹、日野かえでに継がせることに関する会議が行われる予定だった。
一方、南の『魔窟』と呼ばれる大陸ベルルカンの大国、バルキスタンにて総選挙が予定されており、実働部隊も支援部隊を派遣していた。だが選挙に不満を持つ政府軍、反政府軍の駆け引きが続いていた。
嵯峨は万が一の両軍衝突の際アメリカの介入を要請しようとする兄である西園寺義基のシンパである甲武軍部穏健派を牽制しつつ貴族の群れる会議へと向かった。
そしてそんな中、バルキスタンで反政府軍が機動兵器を手に入れ政府軍との全面衝突が発生する。
誠は試験が済んだばかりの非破壊兵器を手に戦線の拡大を防ぐべく出撃するのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 野球と海と『革命家』
橋本 直
SF
その文明は出会うべきではなかった
その人との出会いは歓迎すべきものではなかった
これは悲しい『出会い』の物語
『特殊な部隊』と出会うことで青年にはある『宿命』がせおわされることになる
法術装甲隊ダグフェロン 第二部
遼州人の青年『神前誠(しんぜんまこと)』が発動した『干渉空間』と『光の剣(つるぎ)により貴族主義者のクーデターを未然に防止することが出来た『近藤事件』が終わってから1か月がたった。
宇宙は誠をはじめとする『法術師』の存在を公表することで混乱に陥っていたが、誠の所属する司法局実働部隊、通称『特殊な部隊』は相変わらずおバカな生活を送っていた。
そんな『特殊な部隊』の運用艦『ふさ』艦長アメリア・クラウゼ中佐と誠の所属するシュツルム・パンツァーパイロット部隊『機動部隊第一小隊』のパイロットでサイボーグの西園寺かなめは『特殊な部隊』の野球部の夏合宿を企画した。
どうせろくな事が起こらないと思いながら仕事をさぼって参加する誠。
そこではかなめがいかに自分とはかけ離れたお嬢様で、貴族主義の国『甲武国』がどれほど自分の暮らす永遠に続く20世紀末の東和共和国と違うのかを誠は知ることになった。
しかし、彼を待っていたのは『法術』を持つ遼州人を地球人から解放しようとする『革命家』の襲撃だった。
この事件をきっかけに誠の身辺警護の必要性から誠の警護にアメリア、かなめ、そして無表情な人造人間『ラスト・バタリオン』の第一小隊小隊長カウラ・ベルガー大尉がつくことになる。
これにより誠の暮らす『男子下士官寮』は有名無実化することになった。
そんなおバカな連中を『駄目人間』嵯峨惟基特務大佐と機動部隊隊長クバルカ・ラン中佐は生暖かい目で見守っていた。
そんな『特殊な部隊』の意図とは関係なく着々と『力ある者の支配する宇宙』の実現を目指す『廃帝ハド』の野望はゆっくりと動き出しつつあった。
SFお仕事ギャグロマン小説。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる