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第8章 海と特殊な部隊
守護騎士登場
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「つまり交渉決裂と言うわけですか」
『そうみたいですわね』
三人の頭の中に言葉が響く。男は周りを見回している。
「この声……茜?」
かなめがつぶやくその視線の前に金色の干渉空間が拡がる。
そこから現れたのは金色の髪。それは肩にかからない程度に切りそろえられなびいている。まとっているのは軍服か警察の制服か、凛々しい顔立ちの女性が金色の干渉空間から現れようとしていた。
アロハの男は突然表情を変えて走り始めた。
逃げている、誠達が男の状況を把握したとき、かなめに茜と呼ばれた女性はそのまま腰に下げていたサーベルを抜いた。そのまま彼女は大地をすべるように滑空して男に迫る。
男が銀色の干渉空間を形成し、茜の剣を凌いだ。
「違法法術使用の現行犯で逮捕させていただきますわ!」
そう叫んだ茜が再び剣を振り上げたとき、男の後ろに干渉空間が展開され、その中に引き込まれるようにして男は消えた。
「逃げましたわね」
その場に立ち止まった茜は剣を収める。誠は突然の出来事と極度の緊張でその場にへたり込んだ。
「茜さん?もしかして、隊長の娘さんの……」
近づいてくる東都警察の制服を着た女性を誠は見上げた。
「お久しぶりですわね、誠君……ってちっちゃいころ一回くらいしか会ったこと無いから覚えていないかしら?それとかなめお姉さま」
「その呼び方止め!気持ちわりいから呼び捨てにしろ!」
頭をかきながらかなめがそう言った。
「それよりその制服は?」
誠の言葉に茜は自分の着ている制服を見回す。青を基調とした東都警察の制服に茜の後ろにまとめた長い髪がなびいていた。
「ああ、これですね。かなめさん、私一応、司法局法術特捜の筆頭捜査官を拝命させていただきましたの」
誠とかなめはその言葉に思わず顔を見合わせた。
「マジで?」
明らかにあきれているようにかなめがつぶやく。
「嘘をついても得になりませんわ。まあお父様が推薦したとか聞きましたけど」
淡々と答える茜に、かなめは天を見上げた。
「最悪だぜ……叔父貴の奴」
かなめの叫びがむなしく傾いた日差しが照らす岬の公園に響いた。
「話が読めないんですけど……?」
「誠君には子供のころ会ったっきりですものね。自己紹介をしましょう。私は嵯峨茜ですわ。誠君の部隊の隊長、嵯峨惟基は父に当たりますの」
「そう、そしてアタシの従姉妹」
茜はにこやかに笑う。かなめはそれを見てどっと疲れたようにつぶやく。誠はまた現れた女性の上官に敬礼をする。
「かなめお姉さまの彼氏の割にちゃんとしているんですのね」
「誰の彼氏だ誰の」
「え?お父様からそう聞いているんですけど……」
「あのおっさんいつかシメる」
かなめは力強く右手を握り締めた。誠はただ二人の会話を聞いて苦笑いを浮かべていた。
「それにしてもかなめ様の水着姿って初めて見ましたわ。たぶんクラウゼ少佐は写真を撮られているでしょうからかえでさんに送ってあげましょうかしら?」
ポツリと茜がつぶやく。銃をホルスターにしまっていたかなめが鬼の形相で茜をにらみつける。
「おい、茜!そんなことしたらどうなるかわかってるだろ?」
こめかみをひく付かせてかなめが答える。日は大きく傾き始めていた。夕日がこの海岸を彩る時間もそう先ではないだろう。
「でも、茜さんの剣裁き、見事でしたよ」
ようやく平静を取り戻して誠は立ち上がった。茜は誠の言葉に笑みを残すとそのまま歩き始める。
「待てよ!」
かなめはそう言って茜を追いかける。誠もその後に続いて早足で歩く茜に追いついた。
そこにもう着替えを済ませたのかカウラとアメリアが走ってくる。
「何してたのよ!」
「発砲音があったろ。心配したぞ」
肩で息をしながら二人は誠達の前に立ちはだかった。そして二人は先頭を歩く東都警察の制服を着た茜に驚いた表情を浮かべていた。
「なあに。奇特なテロリストとお話してたんだよ」
かなめが吐いたその言葉にカウラとアメリアは理解できないというように顔を見合わせた。
「そして私がそれを追い払っただけですわ」
茜は得意げに話す。初対面では無いものの、東都警察の制服を着た彼女に違和感を感じているような二人の面差しが誠にも見えた。
「何で茜さんがここにいるの?」
アメリアは怪訝そうな顔をして誠の方を見る。
「そうね、お二人の危機を知って宇宙の果てからやってきたと言うことにでもしましょうか?」
さすがに嵯峨の娘である。とぼけてみせる話題の振り方がそのまんまだと誠は感心した。
「まじめに答えてくださいよ。しかもその制服は?」
人のペースを崩すことには慣れていても、自分が崩されることには慣れていない。そんな感じでアメリアが茜の顔を見た。
「法術特捜の主席捜査官と言うお仕事が見つかったんですもの。同盟機構の後ろ盾つきの安定したお仕事ですわ。フリーの弁護士のお仕事は収入にムラがあるのがどうしても気になるものですから」
そう言うと茜は四人を置いて浜辺に向かう道を進む。どこまでもそれが嵯峨の娘らしいと感じられて思わずにやけそうになる誠を誤解したかなめが叩いた。
『そうみたいですわね』
三人の頭の中に言葉が響く。男は周りを見回している。
「この声……茜?」
かなめがつぶやくその視線の前に金色の干渉空間が拡がる。
そこから現れたのは金色の髪。それは肩にかからない程度に切りそろえられなびいている。まとっているのは軍服か警察の制服か、凛々しい顔立ちの女性が金色の干渉空間から現れようとしていた。
アロハの男は突然表情を変えて走り始めた。
逃げている、誠達が男の状況を把握したとき、かなめに茜と呼ばれた女性はそのまま腰に下げていたサーベルを抜いた。そのまま彼女は大地をすべるように滑空して男に迫る。
男が銀色の干渉空間を形成し、茜の剣を凌いだ。
「違法法術使用の現行犯で逮捕させていただきますわ!」
そう叫んだ茜が再び剣を振り上げたとき、男の後ろに干渉空間が展開され、その中に引き込まれるようにして男は消えた。
「逃げましたわね」
その場に立ち止まった茜は剣を収める。誠は突然の出来事と極度の緊張でその場にへたり込んだ。
「茜さん?もしかして、隊長の娘さんの……」
近づいてくる東都警察の制服を着た女性を誠は見上げた。
「お久しぶりですわね、誠君……ってちっちゃいころ一回くらいしか会ったこと無いから覚えていないかしら?それとかなめお姉さま」
「その呼び方止め!気持ちわりいから呼び捨てにしろ!」
頭をかきながらかなめがそう言った。
「それよりその制服は?」
誠の言葉に茜は自分の着ている制服を見回す。青を基調とした東都警察の制服に茜の後ろにまとめた長い髪がなびいていた。
「ああ、これですね。かなめさん、私一応、司法局法術特捜の筆頭捜査官を拝命させていただきましたの」
誠とかなめはその言葉に思わず顔を見合わせた。
「マジで?」
明らかにあきれているようにかなめがつぶやく。
「嘘をついても得になりませんわ。まあお父様が推薦したとか聞きましたけど」
淡々と答える茜に、かなめは天を見上げた。
「最悪だぜ……叔父貴の奴」
かなめの叫びがむなしく傾いた日差しが照らす岬の公園に響いた。
「話が読めないんですけど……?」
「誠君には子供のころ会ったっきりですものね。自己紹介をしましょう。私は嵯峨茜ですわ。誠君の部隊の隊長、嵯峨惟基は父に当たりますの」
「そう、そしてアタシの従姉妹」
茜はにこやかに笑う。かなめはそれを見てどっと疲れたようにつぶやく。誠はまた現れた女性の上官に敬礼をする。
「かなめお姉さまの彼氏の割にちゃんとしているんですのね」
「誰の彼氏だ誰の」
「え?お父様からそう聞いているんですけど……」
「あのおっさんいつかシメる」
かなめは力強く右手を握り締めた。誠はただ二人の会話を聞いて苦笑いを浮かべていた。
「それにしてもかなめ様の水着姿って初めて見ましたわ。たぶんクラウゼ少佐は写真を撮られているでしょうからかえでさんに送ってあげましょうかしら?」
ポツリと茜がつぶやく。銃をホルスターにしまっていたかなめが鬼の形相で茜をにらみつける。
「おい、茜!そんなことしたらどうなるかわかってるだろ?」
こめかみをひく付かせてかなめが答える。日は大きく傾き始めていた。夕日がこの海岸を彩る時間もそう先ではないだろう。
「でも、茜さんの剣裁き、見事でしたよ」
ようやく平静を取り戻して誠は立ち上がった。茜は誠の言葉に笑みを残すとそのまま歩き始める。
「待てよ!」
かなめはそう言って茜を追いかける。誠もその後に続いて早足で歩く茜に追いついた。
そこにもう着替えを済ませたのかカウラとアメリアが走ってくる。
「何してたのよ!」
「発砲音があったろ。心配したぞ」
肩で息をしながら二人は誠達の前に立ちはだかった。そして二人は先頭を歩く東都警察の制服を着た茜に驚いた表情を浮かべていた。
「なあに。奇特なテロリストとお話してたんだよ」
かなめが吐いたその言葉にカウラとアメリアは理解できないというように顔を見合わせた。
「そして私がそれを追い払っただけですわ」
茜は得意げに話す。初対面では無いものの、東都警察の制服を着た彼女に違和感を感じているような二人の面差しが誠にも見えた。
「何で茜さんがここにいるの?」
アメリアは怪訝そうな顔をして誠の方を見る。
「そうね、お二人の危機を知って宇宙の果てからやってきたと言うことにでもしましょうか?」
さすがに嵯峨の娘である。とぼけてみせる話題の振り方がそのまんまだと誠は感心した。
「まじめに答えてくださいよ。しかもその制服は?」
人のペースを崩すことには慣れていても、自分が崩されることには慣れていない。そんな感じでアメリアが茜の顔を見た。
「法術特捜の主席捜査官と言うお仕事が見つかったんですもの。同盟機構の後ろ盾つきの安定したお仕事ですわ。フリーの弁護士のお仕事は収入にムラがあるのがどうしても気になるものですから」
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