1,153 / 1,505
第8章 海と特殊な部隊
危険な『仲間』
しおりを挟む
「しかし暑いですよねえ……」
「他に言うことねえのかよ?それより気をつけろよ」
少しうつむき加減にかなめがサングラスをはずす。真剣なときの彼女らしい鉛のような瞳がそこにあった。
「今日のアンとか言う少年兵だ。ベルルカンの少年兵上りとなると結構扱いが微妙だぞ」
誠は残ったビールを一気に流し込むようにして飲むと、缶をゴミ箱に捨てた。
「でも……おとなしそうないい子じゃないですか」
「見た目はそうだな。でも民兵に軍の規律は通用しねえ……自分が生き残るためには何をするかわからねえ連中だ……『仲間』だと思ってると痛い目見るぞ。東都戦争じゃそれで痛い目見たことがあるからな……」
それだけ言うと、かなめは再びサングラスをかけた。
「まあそれぐらいにして……今日は仕事の話は止めようや。とっとと付いて来いよ!」
そう言うと軽々と二箱のビールを抱えて、早足でかなめは歩き始めた。
「んだ。暑いなあ。やっぱ島田辺りに押しつけりゃ良かったかな」
焼けたアスファルトを歩きながらかなめは独り言を繰り返す。海からの風もさすがに慣れてしまえばコンビニの空調の効いた世界とは別のものだった。代謝機能が人間のそれとあまり差の無い型の義体を使用しているかなめも暑さに参っているように見えた。
「やっぱり僕が持ちましょうか?」
気を利かせた誠だがかなめは首を横に振る。
「言い出したのはアタシだ、もうすぐだから持ってくよ」
重さよりも汗を拭えないことが誠にとっては苦痛だった。容赦なく額を流れる汗は目に入り込み、視界をぼやけさせる。
「ちょっと休憩」
かなめがそう言って抱えていたビールの箱を置いた。付き従うようにその横に箱を置いた誠はズボンからハンカチを取り出して汗を拭うが、あっという間にハンカチは絞れるほどに汗を吸い取った。
「遅いよ!二人とも!」
休んでいたところに現れたのはピンク色のワンピースの水着姿のひよこと意外に際どい紫色のビキニを着たパーラだった。
「迎えに来たんだ……ちょうどいいや。おいパーラにひよこ。それ持っていけ。アタシも着替えるわ」
そう言うとかなめはそのまま三人を置いて歩き出す。ビールの缶が入ったダンボールが三箱。それを見つめた後去っていくかなめにひよこは目を向ける。
「そんなの聞いてないわよ!」
パーラは絶望したように叫ぶが、かなめは軽く手を振って振り向くことも無く歩いていく。
「僕が二つ持ちますから、あと一箱は……」
「いいのよ神前君。あなたも着替えてらっしゃいよ」
パーラのその言葉に誠は荷物のある先ほどの恥ずかしいのぼりのあるところに向かって歩き出した。
誠が堤防の階段を登るとそこでは、島田と菰田が怒鳴りあっている光景が目に飛び込んできた。
「うるせえ!魔法使い!そんなだから彼女も出来ねえんだよ!」
島田が菰田にタンカを吐き捨てた。
「馬鹿野郎!俺はまだ30超えてねえんだ!」
「あと4年だろ?」
島田が優勢に口げんかを続ける。二人が犬猿の仲だと分かっている部隊員達は静かに動静を見守っている。
「誠君。はい、このバッグでしょ?」
笑いながら小夏の母、家村春子が誠にバッグを手渡した。
「大丈夫ですか?あの二人」
誠はやんやと煽り立てる隊員達を見守っているただ一人冷静そうな春子に尋ねた。
「大丈夫よ。二人とも手を出したらかなめさんにしめられるの分かってるから。どうせ口だけよ」
「だと良いんですけどね……」
春子は落ち着いていた。その落ち着きぶりに感心しながら誠はバッグを抱えて近くにあった海の家へと歩き始めた。
「他に言うことねえのかよ?それより気をつけろよ」
少しうつむき加減にかなめがサングラスをはずす。真剣なときの彼女らしい鉛のような瞳がそこにあった。
「今日のアンとか言う少年兵だ。ベルルカンの少年兵上りとなると結構扱いが微妙だぞ」
誠は残ったビールを一気に流し込むようにして飲むと、缶をゴミ箱に捨てた。
「でも……おとなしそうないい子じゃないですか」
「見た目はそうだな。でも民兵に軍の規律は通用しねえ……自分が生き残るためには何をするかわからねえ連中だ……『仲間』だと思ってると痛い目見るぞ。東都戦争じゃそれで痛い目見たことがあるからな……」
それだけ言うと、かなめは再びサングラスをかけた。
「まあそれぐらいにして……今日は仕事の話は止めようや。とっとと付いて来いよ!」
そう言うと軽々と二箱のビールを抱えて、早足でかなめは歩き始めた。
「んだ。暑いなあ。やっぱ島田辺りに押しつけりゃ良かったかな」
焼けたアスファルトを歩きながらかなめは独り言を繰り返す。海からの風もさすがに慣れてしまえばコンビニの空調の効いた世界とは別のものだった。代謝機能が人間のそれとあまり差の無い型の義体を使用しているかなめも暑さに参っているように見えた。
「やっぱり僕が持ちましょうか?」
気を利かせた誠だがかなめは首を横に振る。
「言い出したのはアタシだ、もうすぐだから持ってくよ」
重さよりも汗を拭えないことが誠にとっては苦痛だった。容赦なく額を流れる汗は目に入り込み、視界をぼやけさせる。
「ちょっと休憩」
かなめがそう言って抱えていたビールの箱を置いた。付き従うようにその横に箱を置いた誠はズボンからハンカチを取り出して汗を拭うが、あっという間にハンカチは絞れるほどに汗を吸い取った。
「遅いよ!二人とも!」
休んでいたところに現れたのはピンク色のワンピースの水着姿のひよこと意外に際どい紫色のビキニを着たパーラだった。
「迎えに来たんだ……ちょうどいいや。おいパーラにひよこ。それ持っていけ。アタシも着替えるわ」
そう言うとかなめはそのまま三人を置いて歩き出す。ビールの缶が入ったダンボールが三箱。それを見つめた後去っていくかなめにひよこは目を向ける。
「そんなの聞いてないわよ!」
パーラは絶望したように叫ぶが、かなめは軽く手を振って振り向くことも無く歩いていく。
「僕が二つ持ちますから、あと一箱は……」
「いいのよ神前君。あなたも着替えてらっしゃいよ」
パーラのその言葉に誠は荷物のある先ほどの恥ずかしいのぼりのあるところに向かって歩き出した。
誠が堤防の階段を登るとそこでは、島田と菰田が怒鳴りあっている光景が目に飛び込んできた。
「うるせえ!魔法使い!そんなだから彼女も出来ねえんだよ!」
島田が菰田にタンカを吐き捨てた。
「馬鹿野郎!俺はまだ30超えてねえんだ!」
「あと4年だろ?」
島田が優勢に口げんかを続ける。二人が犬猿の仲だと分かっている部隊員達は静かに動静を見守っている。
「誠君。はい、このバッグでしょ?」
笑いながら小夏の母、家村春子が誠にバッグを手渡した。
「大丈夫ですか?あの二人」
誠はやんやと煽り立てる隊員達を見守っているただ一人冷静そうな春子に尋ねた。
「大丈夫よ。二人とも手を出したらかなめさんにしめられるの分かってるから。どうせ口だけよ」
「だと良いんですけどね……」
春子は落ち着いていた。その落ち着きぶりに感心しながら誠はバッグを抱えて近くにあった海の家へと歩き始めた。
0
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
あなたがそう望んだから
まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」
思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。
確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。
喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。
○○○○○○○○○○
誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる