1,127 / 1,505
第44章 再開する日常
愛称『ダグフェロン』
しおりを挟む
「でだ、実は05式特戦の愛称が決まったんだわ」
突然話題を変えた嵯峨に全員が丸い目を向けた。
「なんだ?愛称って」
かなめは明らかにやる気が無いようにそう尋ねた。
「あってもいいだろうな。その方が親しみが持てる」
カウラはうなづきつつ嵯峨の言葉に耳を貸した。
「面白い奴だといいわよね」
アメリアと言えば、とりあえずギャグになるかと言うことばかり考えているようだった。
「僕のせいですか?」
誠はおずおずとそう言った。誠が遼州人にしかない能力である『法術』を使用してしまったために遼州同盟の『特殊な部隊』の使用アサルト・モジュールに変な名前がついてしまうことに少し気後れしているのは事実だった。
「まあな。あんな化け物みたいな力を出したってんで、前々から決まってた名称の正式決定が出たのは事実だから」
嵯峨はそう言うといかがわしい雑誌の下から長めの和紙を取り出す。
「じゃーん」
相変わらず『駄目人間』らしいやる気のない言葉の後に嵯峨はその和紙に書かれたカタカナを見せびらかした。
『ダグフェロン?』
全員が合わせたようにそう叫んだ。
「『ダグ』は古代リャオ語で『始まり』の意味。『フェ』は……ようするに日本語の『の』って感じの意味。そして『ロン』は『鎧』って意味なんだ。この遼州星系にやってきたと言う神が乗ってた『始まりの鎧』って意味。わかる?」
嵯峨の出来の悪い子供に教え諭すような言葉に誠達は大きく首を横に振った。
「まあいいや。どうせこんなおかみが決めた名前なんて浸透するわけねえんだから……これまで通り05式でいいじゃん」
身もふたもない嵯峨の言葉を聞いてかなめ達は飽きたというように隊長室を出て行った。
『脳ピンク』な嵯峨と取り残された誠はただ茫然と嵯峨の持っている『ダグフェロン』と書かれた和紙を眺めていた。
「お役所仕事ね」
「まあ、我々は公務員だからな」
アメリアとカウラは納得したようにうなづく。
「なんでもカタカナにすりゃあいいってもんじゃねえだろうが……姐御は知ってんのか?」
かなめはそう言って嵯峨に詰め寄った。
「アイツは別にどうでもいいんだって。どうせ自分の機体は『紅兎』って呼ぶんだからってことらしいよ」
嵯峨のめんどくさそうな返答にかなめは口をへの字にゆがめてうなづいた。
「『ダグフェロン』……」
誠は嵯峨の書いた文字を見つめて感慨深げにそうつぶやいた。
「いよいよ填まっちゃったね……神前、今が逃げる最後のチャンスだぞ」
嵯峨は誠がかなめ達と出て行かない様子を見てそう言った。
「なんだか、隊長は僕に逃げてほしいみたいな言い方ですね」
少し馬鹿にされたような感じがして誠はそう答えた。
「逃げるってのはね。逃げないよりも長生きする可能性が上がるんだ。そうすると少しは『頭を使う』必要が出てくる。だから辛いことも多い。俺は逃げる人間の方が勇気がある人間だと思うわけ」
嵯峨はそう言いながら出した和紙を静かにたたんだ。
「逃げる方が勇敢だとでもいうんですか?」
誠の問いに『駄目人間』嵯峨は素直にうなづいた。
「そうだね。逃げたら死なないからね。あの世に逃げ出す機会を失うわけだ。あの世に逃げれば恥はかかないわ、それから先の苦労は考えずに済むはいいことずくめだわな。だから臆病な人間ほど『逃げない』んだ。『逃げちゃだめだ』なんて考えてるなら迷わず逃げなって。その方がよっぽど勇敢だよ。あの諸葛孔明だって、逃げ出したら敵が『孔明の罠だ!』ってビビッて敵が追ってこないんだから。素直に逃げた方がまし」
嵯峨の『諸葛孔明』の話は歴史に知識のない誠にはわからなかったが『駄目人間』の意見がかなり『特殊』であることは想像ができた。
「でも……僕は逃げ場なんて……」
誠はそう言って静かにうつむいた。
そう言う誠を嵯峨は腕組みをして見上げた。
「そりゃあ、おまえさんが『高偏差値』の薄ら馬鹿だからわからねえんだな。まず、『偉大なる中佐殿』の教育方針がかなり『パワハラ』を帯びてる段階で、なんでお袋とか大学の就職課に連絡しなかったの?」
「あ……」
嵯峨に指摘されて初めて誠はこの『特殊な部隊』からごく普通に逃げ出す方策に気づいた。
「それってありなんですか?」
「ありも何も……普通の社会人ならそのくらいの常識はあるだろ……自分の置かれている環境が異常だったら人に言う。そのくらいの発想ができないとこの世にうんざりして来世に救いを求めちゃうようになるよ……新興宗教でも入っとけよおまえさんは……あれはいい金になるみたいだね、俺は興味ないけど」
あっさりと嵯峨はそう言って誠を同情を込めた瞳で見上げた。
「でも……一応、東和宇宙軍は公務員なんで。安定してるんで」
誠はそう言って嵯峨に食い下がろうとした。
「そうなんだ……それもね、実のところ俺やランに『ここは特殊すぎるんで』と言えば何とか逃げられたんだ……」
あっさりと嵯峨はそう言ってにやりと笑った。
「逃げるって……どこに?」
誠は嵯峨の言葉が理解できずに戸惑ってそう言った。
「だって……うち、『お役所』だもん。いろんな取引先とか、隣の『菱川重工業』との取引とかあるわけだ。そうするとね、うちで要らない人材とか欲しがるわけよ……あっちもいい人材の確保には苦労してるから。だから、『出向』と言う形で、とりあえずこの『特殊な部隊』から外れて、他の生きる道を探せる人生があるの」
驚愕の事実を嵯峨はさらりとさも当然のように言い放った。
「そんな……僕の友達もそんな話はしてませんでしたよ!僕の大学は理系では私大屈指の難易度の大学ですけど!」
反論する誠に嵯峨は明らかに見下したような視線を浴びせた。
「そんなもん、大学の難易度と就職先のレベルは比例しないもんだよ。『ベンチャー』の株式上場すらしてない小さな会社や経営者が『独裁者』している会社は別だけど、普通に株式を一部上場している会社ならそんな『出向』なんて話は普通だよ。当然うちは『お役所』だもん。うちの水が合わなけりゃ他にいくらでも生きるすべはあるんだ。自分の置かれた環境がすべてだなんて考えるのは『お馬鹿』の思い込みだね。おまえさんにも『倉庫作業員』や『体力馬鹿営業』以外にも、『技術の分かる経営顧問のサブ』なんかの引き合いは今でもあるんだ……どうする?今からでもそっちに『逃げ出す』ことはできるけど……」
嵯峨はあっさりと誠の社会経験不足の裏を突く大人の事情を誠に告げた。
「でも……西園寺さんは僕を認めてくれていますし……カウラさんはなんか僕を成長させることに生きがいを見出したみたいですし……アメリアさんは笑い屋として僕が必要みたいですし……島田先輩は舎弟の僕を見逃してくれるはずもなさそうですし……」
誠は思っていた。もうすでに自分はこの『特殊な部隊』の一員になっていると。
「そうなんだ……おまえさんの奴隷根性はよくわかった。まあ、おまえと心中するつもりのパーラの名前が出てこなかったのは本人に直接伝えておくわ」
またもや嵯峨はとんでもない発言をした。パーラがそれほど自分を思ってくれているはずは無いと思っていた。行きつく先が『心中』だということは、遼州星系では愛する男女が『心中』するのがごく普通なことだという地球人には理解不能な事実を認めたとしても、それはそれで自分は死にたくないので嫌だった。
「僕は逃げません!」
誠の宣言に嵯峨は本当にめんどくさそうな顔をした。
「逃げてもいいのに……本当に逃げないの?今からでも遅くないよ……東都警察はおまえさんを交番勤務の剣道部の部員として欲しがってるんだから」
相変わらずなんとか誠をこの『特殊な部隊』から逃げ出すように仕向けたい『駄目人間』の意図に反したい誠は首を横に振った。
「あっそうなんだ。まあ、逃げたくなったら言ってよ。俺や『偉大なる中佐殿』は出入りの業者なんかにいつも『使える人材はいないか』って聞かれてばっかで疲れてるんだ」
そう言って嵯峨は誠に出ていくように手を振った。
誠は嵯峨の馬鹿話につかれたので敬礼をしてその場を立ち去った。
突然話題を変えた嵯峨に全員が丸い目を向けた。
「なんだ?愛称って」
かなめは明らかにやる気が無いようにそう尋ねた。
「あってもいいだろうな。その方が親しみが持てる」
カウラはうなづきつつ嵯峨の言葉に耳を貸した。
「面白い奴だといいわよね」
アメリアと言えば、とりあえずギャグになるかと言うことばかり考えているようだった。
「僕のせいですか?」
誠はおずおずとそう言った。誠が遼州人にしかない能力である『法術』を使用してしまったために遼州同盟の『特殊な部隊』の使用アサルト・モジュールに変な名前がついてしまうことに少し気後れしているのは事実だった。
「まあな。あんな化け物みたいな力を出したってんで、前々から決まってた名称の正式決定が出たのは事実だから」
嵯峨はそう言うといかがわしい雑誌の下から長めの和紙を取り出す。
「じゃーん」
相変わらず『駄目人間』らしいやる気のない言葉の後に嵯峨はその和紙に書かれたカタカナを見せびらかした。
『ダグフェロン?』
全員が合わせたようにそう叫んだ。
「『ダグ』は古代リャオ語で『始まり』の意味。『フェ』は……ようするに日本語の『の』って感じの意味。そして『ロン』は『鎧』って意味なんだ。この遼州星系にやってきたと言う神が乗ってた『始まりの鎧』って意味。わかる?」
嵯峨の出来の悪い子供に教え諭すような言葉に誠達は大きく首を横に振った。
「まあいいや。どうせこんなおかみが決めた名前なんて浸透するわけねえんだから……これまで通り05式でいいじゃん」
身もふたもない嵯峨の言葉を聞いてかなめ達は飽きたというように隊長室を出て行った。
『脳ピンク』な嵯峨と取り残された誠はただ茫然と嵯峨の持っている『ダグフェロン』と書かれた和紙を眺めていた。
「お役所仕事ね」
「まあ、我々は公務員だからな」
アメリアとカウラは納得したようにうなづく。
「なんでもカタカナにすりゃあいいってもんじゃねえだろうが……姐御は知ってんのか?」
かなめはそう言って嵯峨に詰め寄った。
「アイツは別にどうでもいいんだって。どうせ自分の機体は『紅兎』って呼ぶんだからってことらしいよ」
嵯峨のめんどくさそうな返答にかなめは口をへの字にゆがめてうなづいた。
「『ダグフェロン』……」
誠は嵯峨の書いた文字を見つめて感慨深げにそうつぶやいた。
「いよいよ填まっちゃったね……神前、今が逃げる最後のチャンスだぞ」
嵯峨は誠がかなめ達と出て行かない様子を見てそう言った。
「なんだか、隊長は僕に逃げてほしいみたいな言い方ですね」
少し馬鹿にされたような感じがして誠はそう答えた。
「逃げるってのはね。逃げないよりも長生きする可能性が上がるんだ。そうすると少しは『頭を使う』必要が出てくる。だから辛いことも多い。俺は逃げる人間の方が勇気がある人間だと思うわけ」
嵯峨はそう言いながら出した和紙を静かにたたんだ。
「逃げる方が勇敢だとでもいうんですか?」
誠の問いに『駄目人間』嵯峨は素直にうなづいた。
「そうだね。逃げたら死なないからね。あの世に逃げ出す機会を失うわけだ。あの世に逃げれば恥はかかないわ、それから先の苦労は考えずに済むはいいことずくめだわな。だから臆病な人間ほど『逃げない』んだ。『逃げちゃだめだ』なんて考えてるなら迷わず逃げなって。その方がよっぽど勇敢だよ。あの諸葛孔明だって、逃げ出したら敵が『孔明の罠だ!』ってビビッて敵が追ってこないんだから。素直に逃げた方がまし」
嵯峨の『諸葛孔明』の話は歴史に知識のない誠にはわからなかったが『駄目人間』の意見がかなり『特殊』であることは想像ができた。
「でも……僕は逃げ場なんて……」
誠はそう言って静かにうつむいた。
そう言う誠を嵯峨は腕組みをして見上げた。
「そりゃあ、おまえさんが『高偏差値』の薄ら馬鹿だからわからねえんだな。まず、『偉大なる中佐殿』の教育方針がかなり『パワハラ』を帯びてる段階で、なんでお袋とか大学の就職課に連絡しなかったの?」
「あ……」
嵯峨に指摘されて初めて誠はこの『特殊な部隊』からごく普通に逃げ出す方策に気づいた。
「それってありなんですか?」
「ありも何も……普通の社会人ならそのくらいの常識はあるだろ……自分の置かれている環境が異常だったら人に言う。そのくらいの発想ができないとこの世にうんざりして来世に救いを求めちゃうようになるよ……新興宗教でも入っとけよおまえさんは……あれはいい金になるみたいだね、俺は興味ないけど」
あっさりと嵯峨はそう言って誠を同情を込めた瞳で見上げた。
「でも……一応、東和宇宙軍は公務員なんで。安定してるんで」
誠はそう言って嵯峨に食い下がろうとした。
「そうなんだ……それもね、実のところ俺やランに『ここは特殊すぎるんで』と言えば何とか逃げられたんだ……」
あっさりと嵯峨はそう言ってにやりと笑った。
「逃げるって……どこに?」
誠は嵯峨の言葉が理解できずに戸惑ってそう言った。
「だって……うち、『お役所』だもん。いろんな取引先とか、隣の『菱川重工業』との取引とかあるわけだ。そうするとね、うちで要らない人材とか欲しがるわけよ……あっちもいい人材の確保には苦労してるから。だから、『出向』と言う形で、とりあえずこの『特殊な部隊』から外れて、他の生きる道を探せる人生があるの」
驚愕の事実を嵯峨はさらりとさも当然のように言い放った。
「そんな……僕の友達もそんな話はしてませんでしたよ!僕の大学は理系では私大屈指の難易度の大学ですけど!」
反論する誠に嵯峨は明らかに見下したような視線を浴びせた。
「そんなもん、大学の難易度と就職先のレベルは比例しないもんだよ。『ベンチャー』の株式上場すらしてない小さな会社や経営者が『独裁者』している会社は別だけど、普通に株式を一部上場している会社ならそんな『出向』なんて話は普通だよ。当然うちは『お役所』だもん。うちの水が合わなけりゃ他にいくらでも生きるすべはあるんだ。自分の置かれた環境がすべてだなんて考えるのは『お馬鹿』の思い込みだね。おまえさんにも『倉庫作業員』や『体力馬鹿営業』以外にも、『技術の分かる経営顧問のサブ』なんかの引き合いは今でもあるんだ……どうする?今からでもそっちに『逃げ出す』ことはできるけど……」
嵯峨はあっさりと誠の社会経験不足の裏を突く大人の事情を誠に告げた。
「でも……西園寺さんは僕を認めてくれていますし……カウラさんはなんか僕を成長させることに生きがいを見出したみたいですし……アメリアさんは笑い屋として僕が必要みたいですし……島田先輩は舎弟の僕を見逃してくれるはずもなさそうですし……」
誠は思っていた。もうすでに自分はこの『特殊な部隊』の一員になっていると。
「そうなんだ……おまえさんの奴隷根性はよくわかった。まあ、おまえと心中するつもりのパーラの名前が出てこなかったのは本人に直接伝えておくわ」
またもや嵯峨はとんでもない発言をした。パーラがそれほど自分を思ってくれているはずは無いと思っていた。行きつく先が『心中』だということは、遼州星系では愛する男女が『心中』するのがごく普通なことだという地球人には理解不能な事実を認めたとしても、それはそれで自分は死にたくないので嫌だった。
「僕は逃げません!」
誠の宣言に嵯峨は本当にめんどくさそうな顔をした。
「逃げてもいいのに……本当に逃げないの?今からでも遅くないよ……東都警察はおまえさんを交番勤務の剣道部の部員として欲しがってるんだから」
相変わらずなんとか誠をこの『特殊な部隊』から逃げ出すように仕向けたい『駄目人間』の意図に反したい誠は首を横に振った。
「あっそうなんだ。まあ、逃げたくなったら言ってよ。俺や『偉大なる中佐殿』は出入りの業者なんかにいつも『使える人材はいないか』って聞かれてばっかで疲れてるんだ」
そう言って嵯峨は誠に出ていくように手を振った。
誠は嵯峨の馬鹿話につかれたので敬礼をしてその場を立ち去った。
0
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
あなたがそう望んだから
まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」
思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。
確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。
喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。
○○○○○○○○○○
誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる