1,118 / 1,505
第43章 勝利の宴
飲みすぎ注意
しおりを挟む
「大丈夫か?ってカウラ!何してるんだ!」
コップを空にした誠が、かなめの声に気づいて、その視線の先を見た。
カウラが一息でコップの中のビールを空けていた。誠、かなめ、アメリアはじっとその様子を観察している。
「大丈夫みたいだな」
「舐めるな西園寺、別にどうと言う事はない。なるほど。これがビールか」
カウラには特に変化は見られなかった。ごく普通に座っている。
「もう煮えたんじゃないの?」
アメリアはそう言うと土鍋の中を箸でかき回してクエの身を捜す。
「オマエは野菜を食え!」
「かなめちゃんが食えば良いじゃない」
「クエを入れたのはアタシだ」
「釣ってきたのは『釣り部』じゃない!」
「うるせえ!バーカ!」
かなめとアメリアはいろいろ言い合いながらも、土鍋をつつきまわしていた。
「じゃあ水菜を足しますね」
とりあえず二人の対立を何とかしようと誠は皿に乗った水菜の残りを足そうとする。
「神前、気が利くじゃないか?それと豆腐も入れろ!」
「かなめちゃん、豆腐苦手じゃなかったの?」
「馬鹿言うな!鍋の豆腐は絶品なんだ!っておい!」
かなめはカウラを指差して叫んだ。自分用に注いでいたラム酒をカウラが一息で空にした。エメラルドグリーンの髪の下。白い肌がみるみる赤くなっていく。そして彼女を中心としてしばらく奇妙な沈黙が流れる。
「なるほろ。これがラム酒ろいうものなろか?」
ろれつが回っていないカウラが出来上がった。アルコール度数40度のラム酒をグラス一杯開けたカウラがふらふらし始める。
「神前!支えろ!」
かなめがふらふらとし始めたカウラを見てすぐに叫んだ。誠はカウラの背中に手を当て支える。カウラは緩んだ顔をとろんとした緑の瞳で誠を見つめる。
「神前。貴様……気持ち良いのれ、ふらふらしちゃってますれす」
完全に出来上がっている。頬を赤く染めて、ぐるぐると頭を動かすカウラを見て誠は確信していた。
「大丈夫ですか、カウラさん」
「大丈夫れすよ!大丈夫!おい!そこのおっぱい星人!これに何をれらのら!」
「それはアタシのグラスだ!テメエが勝手に飲んだんだろうが!」
「駄目よかなめちゃん。酔っ払いをいじめたら」
かなめは睨みつけ、アメリアはそれをなだめる。初めての状況だと言うのに二人は完全に立ち位置を決めていた。そして当然、誠は介抱役になった。
「カウラさん!しっかりしてくださいよ!」
「貴様!何を言うのら!ベルガー大尉と呼ぶのれす!」
そう言うとカウラは今度は急にしっかりとした足取りで立ち上がる。
「何!どうした……って!カウラ!西園寺!オメーだろ!こいつに飲ませたの!ひよこ!ひよこはどこだ!」
騒ぎを聞きつけたランがやってくる。そして呼ばれたひよこが空いた皿を手にランの後ろを急ぎ足で歩いてくる。
「姐御!アタシじゃねえよ!あの馬鹿が勝手に飲んだんです!それにひよこが必要なほどじゃないですよ!」
ランのまん丸の鋭い眼光は、まるでかなめを信じてないと言う色に染まっていた。
「こりゃーかなり出来上がってんな。まーひよこの力が必要なほどじゃねーな。神前、介抱しろ!これも新入りの仕事だ」
ランはそう言うとそのまま軍医を探しに消えて行った。
騒ぎを聞きつけた嵯峨がお湯割りの焼酎の入ったグラスを手に近づいてきて誠達を眺めた。
「どんだけ飲んだんだ?ベルガーは」
呆れた調子で嵯峨がかなめにめんどくさそうに尋ねた。
「ラム酒をコップ一杯」
かなめも策士で叔父である嵯峨に聞かれたら正直に答えるしかなかった。
「まあ同じ量でアメリアが潰れたこともあったしな。それにしても情けねえ話だな」
嵯峨はそう言うと手にしていた焼酎の入ったグラスをあおいだ。こちらはまったく顔色が変わっていないのに誠は驚かされた。これで自分が先輩達のおもちゃにされることは回避されたことだけが、誠にとっての『救い』だった。
コップを空にした誠が、かなめの声に気づいて、その視線の先を見た。
カウラが一息でコップの中のビールを空けていた。誠、かなめ、アメリアはじっとその様子を観察している。
「大丈夫みたいだな」
「舐めるな西園寺、別にどうと言う事はない。なるほど。これがビールか」
カウラには特に変化は見られなかった。ごく普通に座っている。
「もう煮えたんじゃないの?」
アメリアはそう言うと土鍋の中を箸でかき回してクエの身を捜す。
「オマエは野菜を食え!」
「かなめちゃんが食えば良いじゃない」
「クエを入れたのはアタシだ」
「釣ってきたのは『釣り部』じゃない!」
「うるせえ!バーカ!」
かなめとアメリアはいろいろ言い合いながらも、土鍋をつつきまわしていた。
「じゃあ水菜を足しますね」
とりあえず二人の対立を何とかしようと誠は皿に乗った水菜の残りを足そうとする。
「神前、気が利くじゃないか?それと豆腐も入れろ!」
「かなめちゃん、豆腐苦手じゃなかったの?」
「馬鹿言うな!鍋の豆腐は絶品なんだ!っておい!」
かなめはカウラを指差して叫んだ。自分用に注いでいたラム酒をカウラが一息で空にした。エメラルドグリーンの髪の下。白い肌がみるみる赤くなっていく。そして彼女を中心としてしばらく奇妙な沈黙が流れる。
「なるほろ。これがラム酒ろいうものなろか?」
ろれつが回っていないカウラが出来上がった。アルコール度数40度のラム酒をグラス一杯開けたカウラがふらふらし始める。
「神前!支えろ!」
かなめがふらふらとし始めたカウラを見てすぐに叫んだ。誠はカウラの背中に手を当て支える。カウラは緩んだ顔をとろんとした緑の瞳で誠を見つめる。
「神前。貴様……気持ち良いのれ、ふらふらしちゃってますれす」
完全に出来上がっている。頬を赤く染めて、ぐるぐると頭を動かすカウラを見て誠は確信していた。
「大丈夫ですか、カウラさん」
「大丈夫れすよ!大丈夫!おい!そこのおっぱい星人!これに何をれらのら!」
「それはアタシのグラスだ!テメエが勝手に飲んだんだろうが!」
「駄目よかなめちゃん。酔っ払いをいじめたら」
かなめは睨みつけ、アメリアはそれをなだめる。初めての状況だと言うのに二人は完全に立ち位置を決めていた。そして当然、誠は介抱役になった。
「カウラさん!しっかりしてくださいよ!」
「貴様!何を言うのら!ベルガー大尉と呼ぶのれす!」
そう言うとカウラは今度は急にしっかりとした足取りで立ち上がる。
「何!どうした……って!カウラ!西園寺!オメーだろ!こいつに飲ませたの!ひよこ!ひよこはどこだ!」
騒ぎを聞きつけたランがやってくる。そして呼ばれたひよこが空いた皿を手にランの後ろを急ぎ足で歩いてくる。
「姐御!アタシじゃねえよ!あの馬鹿が勝手に飲んだんです!それにひよこが必要なほどじゃないですよ!」
ランのまん丸の鋭い眼光は、まるでかなめを信じてないと言う色に染まっていた。
「こりゃーかなり出来上がってんな。まーひよこの力が必要なほどじゃねーな。神前、介抱しろ!これも新入りの仕事だ」
ランはそう言うとそのまま軍医を探しに消えて行った。
騒ぎを聞きつけた嵯峨がお湯割りの焼酎の入ったグラスを手に近づいてきて誠達を眺めた。
「どんだけ飲んだんだ?ベルガーは」
呆れた調子で嵯峨がかなめにめんどくさそうに尋ねた。
「ラム酒をコップ一杯」
かなめも策士で叔父である嵯峨に聞かれたら正直に答えるしかなかった。
「まあ同じ量でアメリアが潰れたこともあったしな。それにしても情けねえ話だな」
嵯峨はそう言うと手にしていた焼酎の入ったグラスをあおいだ。こちらはまったく顔色が変わっていないのに誠は驚かされた。これで自分が先輩達のおもちゃにされることは回避されたことだけが、誠にとっての『救い』だった。
0
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
もう、終わった話ですし
志位斗 茂家波
ファンタジー
一国が滅びた。
その知らせを聞いても、私には関係の無い事。
だってね、もう分っていたことなのよね‥‥‥
‥‥‥たまにやりたくなる、ありきたりな婚約破棄ざまぁ(?)もの
少々物足りないような気がするので、気が向いたらオマケ書こうかな?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
「おまえを愛することはない!」と言ってやったのに、なぜ無視するんだ!
七辻ゆゆ
ファンタジー
俺を見ない、俺の言葉を聞かない、そして触れられない。すり抜ける……なぜだ?
俺はいったい、どうなっているんだ。
真実の愛を取り戻したいだけなのに。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
王家も我が家を馬鹿にしてますわよね
章槻雅希
ファンタジー
よくある婚約者が護衛対象の王女を優先して婚約破棄になるパターンのお話。あの手の話を読んで、『なんで王家は王女の醜聞になりかねない噂を放置してるんだろう』『てか、これ、王家が婚約者の家蔑ろにしてるよね?』と思った結果できた話。ひそかなサブタイは『うちも王家を馬鹿にしてますけど』かもしれません。
『小説家になろう』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる