1,106 / 1,503
第41章 戦地
標的は女サイボーグ
しおりを挟む
『姐御!『那珂』がセンサーの感度上げてきたぜ!どうすんよ』
かなめからの音声通信が誠の機体にも届いた。
『西園寺!通信をしてくんじゃねー!貴様はスタンドアローンじゃなきゃ意味がねーんだ!そんなこともわからんから『女王様』なんだ!』
いかにも『特殊な部隊』らしいカウラの『特殊』なツッコミが走る。
『まーしゃーねーや。どうせ死ぬのは西園寺だけだろ?いーんじゃねーの?無駄遣いばっかりのオメーが死ねば、庶民の迷惑も半減するわけだ。甲武の闇も近藤のおっさんを潰せば軽減するからそのついでにこいつも死んだらちょうどいいじゃん』
ランはあっさりとそう言った。
『ひでーぜ、姐御。見殺しかよ』
相変わらず顔も見せず、レーダーにも引っかからないかなめの通信が続いていた。
『サラ!『那珂』と僚艦の動きは!』
さすがに虐めすぎたと悟ったようにランは背後で起きた爆発の調査にあたっていた管制官のサラ・グリファン少尉に連絡を入れる。
『はっ、はい!現在、『那珂』と行動を共にしている『官派』反決起派のアサルト・モジュールパイロットは近藤中佐には同調せずに出撃を拒否していたのですが……かなめちゃん『だけ』が相手になったとなると何機か出てくるんじゃないかって……隊長が言ってました』
サラは隊長室でこの状況を見守っているであろう嵯峨の言葉を伝達した。
「西園寺さんって……嫌われてるんですか?」
誠はサラの言葉を聞くと自然にそうつぶやいていた。
『連中は西園寺の親父に冷や飯食わされてクーデターなんて真似を始めたんだ。西園寺が恨まれない訳がない』
カウラはあっさりそう言って、05式電子戦特化型の背中のランチャーからミサイルを射出する。それは『那珂』の手前で自爆し大量の金属粉を撒くレーダーや誘導兵器を混乱させるチャフだった。
『カウラ、済まねえな、チャフを撒いてくれたか。これで近藤の旦那の兵隊の目からしばらく逃げられる』
静かな口調のかなめの音声通信が誠にも聞こえてきた。
『アタシは結局『スナイパー』なんだよ。アタシは確実にそいつを『無力化』する。それが『スナイパー』。そしてそれがアタシ流の『女の闘い』』
『那珂』の後方から6機の機体が誠達の待つ宙域へ進軍してきた。
『やべーな。今度出てきたのは旧式の火龍じゃねー。最新式のアサルト・モジュール『飛燕』だ……しかもおそらく有人……凄腕が出てくんぞ』
ランはそう言うと誠を置いて機体を進攻させた。カウラの機体もそれに続いた。
「カウラさん!電子戦用の機体で最新式の『飛燕』とやりあうなんて無理ですよ!待っててください!」
誠はついそう叫んでいた。
『神前か?貴様のように普通に『人間』として生まれた男にはわからないだろうな……私は結局『ラスト・バタリオン』なんだ。かつてのナチスドイツの理想とした『戦闘の身のために作られた先兵』そのものだ。戦場以外では、私は単なる『依存症』患者。だから戦う。それでいい』
カウラはそれまで手にしていた指向性ECMの放出装置を背中のラックに引っ掛けると、代わりにそこにあった230mmカービンを構えた。
『要らねえよ、カウラの支援なんざ。おめえの狙撃は1ヒット1キルの戦いだろ?弾の無駄だ。アタシはサイボーグ。弾が届けば当たって当然。外れる生身の気が知れねえな。生身の射撃のお上手な連中とは格が違うんだよ』
そう言った瞬間、レーダーの左端の『飛燕』のコックピットが吹き飛んだ。
かなめは言葉を続ける。
『神前、いいこと教えてやんよ。アタシの体は『軍用義体』なんて呼ばれちゃいるが、本当に『軍』が戦争にこの手の体を持ち込むのは『違法』なんだ』
「違法?使っちゃダメなんですか?」
誠は戦争法規についてはついていくのがやっとと言う知識しかなかった。
『そうだ。兵隊をサイボーグにしたら強い軍隊ができるが……人道的にどうか?って話だ。だから、対人地雷や毒ガスや核兵器なんかと同じで、どこの星系でも自分からサイボーグを戦線に投入することはしねえんだ。だが、それは『兵隊さん限定』のルールなんだ。アタシ等『警察官』には当てはまんねえんだな……これが』
かなめがそう言うと先ほどのとなりの『飛燕』のコックピット付近が爆散した。
「警察官は戦争法規を無視してもいいんですか?」
誠は軍の幹部候補生の教育は受けたが警察官の教育は受けていなかった。
『無知だな。本当におめえは。警察は治安出動で『催涙ガス』とか撒いてるだろ?あれを軍がやったら『毒ガス』認定されて大変なことになるんだよ!他にも軍は使っちゃだめだが警察ならOKな武器がいっぱいあるんだ……遊んでやるよ……『家畜ちゃん』』
再びかなめの言葉に冷酷な響きが帯びているのを感じて誠は冷や汗をかいた。
かなめからの音声通信が誠の機体にも届いた。
『西園寺!通信をしてくんじゃねー!貴様はスタンドアローンじゃなきゃ意味がねーんだ!そんなこともわからんから『女王様』なんだ!』
いかにも『特殊な部隊』らしいカウラの『特殊』なツッコミが走る。
『まーしゃーねーや。どうせ死ぬのは西園寺だけだろ?いーんじゃねーの?無駄遣いばっかりのオメーが死ねば、庶民の迷惑も半減するわけだ。甲武の闇も近藤のおっさんを潰せば軽減するからそのついでにこいつも死んだらちょうどいいじゃん』
ランはあっさりとそう言った。
『ひでーぜ、姐御。見殺しかよ』
相変わらず顔も見せず、レーダーにも引っかからないかなめの通信が続いていた。
『サラ!『那珂』と僚艦の動きは!』
さすがに虐めすぎたと悟ったようにランは背後で起きた爆発の調査にあたっていた管制官のサラ・グリファン少尉に連絡を入れる。
『はっ、はい!現在、『那珂』と行動を共にしている『官派』反決起派のアサルト・モジュールパイロットは近藤中佐には同調せずに出撃を拒否していたのですが……かなめちゃん『だけ』が相手になったとなると何機か出てくるんじゃないかって……隊長が言ってました』
サラは隊長室でこの状況を見守っているであろう嵯峨の言葉を伝達した。
「西園寺さんって……嫌われてるんですか?」
誠はサラの言葉を聞くと自然にそうつぶやいていた。
『連中は西園寺の親父に冷や飯食わされてクーデターなんて真似を始めたんだ。西園寺が恨まれない訳がない』
カウラはあっさりそう言って、05式電子戦特化型の背中のランチャーからミサイルを射出する。それは『那珂』の手前で自爆し大量の金属粉を撒くレーダーや誘導兵器を混乱させるチャフだった。
『カウラ、済まねえな、チャフを撒いてくれたか。これで近藤の旦那の兵隊の目からしばらく逃げられる』
静かな口調のかなめの音声通信が誠にも聞こえてきた。
『アタシは結局『スナイパー』なんだよ。アタシは確実にそいつを『無力化』する。それが『スナイパー』。そしてそれがアタシ流の『女の闘い』』
『那珂』の後方から6機の機体が誠達の待つ宙域へ進軍してきた。
『やべーな。今度出てきたのは旧式の火龍じゃねー。最新式のアサルト・モジュール『飛燕』だ……しかもおそらく有人……凄腕が出てくんぞ』
ランはそう言うと誠を置いて機体を進攻させた。カウラの機体もそれに続いた。
「カウラさん!電子戦用の機体で最新式の『飛燕』とやりあうなんて無理ですよ!待っててください!」
誠はついそう叫んでいた。
『神前か?貴様のように普通に『人間』として生まれた男にはわからないだろうな……私は結局『ラスト・バタリオン』なんだ。かつてのナチスドイツの理想とした『戦闘の身のために作られた先兵』そのものだ。戦場以外では、私は単なる『依存症』患者。だから戦う。それでいい』
カウラはそれまで手にしていた指向性ECMの放出装置を背中のラックに引っ掛けると、代わりにそこにあった230mmカービンを構えた。
『要らねえよ、カウラの支援なんざ。おめえの狙撃は1ヒット1キルの戦いだろ?弾の無駄だ。アタシはサイボーグ。弾が届けば当たって当然。外れる生身の気が知れねえな。生身の射撃のお上手な連中とは格が違うんだよ』
そう言った瞬間、レーダーの左端の『飛燕』のコックピットが吹き飛んだ。
かなめは言葉を続ける。
『神前、いいこと教えてやんよ。アタシの体は『軍用義体』なんて呼ばれちゃいるが、本当に『軍』が戦争にこの手の体を持ち込むのは『違法』なんだ』
「違法?使っちゃダメなんですか?」
誠は戦争法規についてはついていくのがやっとと言う知識しかなかった。
『そうだ。兵隊をサイボーグにしたら強い軍隊ができるが……人道的にどうか?って話だ。だから、対人地雷や毒ガスや核兵器なんかと同じで、どこの星系でも自分からサイボーグを戦線に投入することはしねえんだ。だが、それは『兵隊さん限定』のルールなんだ。アタシ等『警察官』には当てはまんねえんだな……これが』
かなめがそう言うと先ほどのとなりの『飛燕』のコックピット付近が爆散した。
「警察官は戦争法規を無視してもいいんですか?」
誠は軍の幹部候補生の教育は受けたが警察官の教育は受けていなかった。
『無知だな。本当におめえは。警察は治安出動で『催涙ガス』とか撒いてるだろ?あれを軍がやったら『毒ガス』認定されて大変なことになるんだよ!他にも軍は使っちゃだめだが警察ならOKな武器がいっぱいあるんだ……遊んでやるよ……『家畜ちゃん』』
再びかなめの言葉に冷酷な響きが帯びているのを感じて誠は冷や汗をかいた。
0
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説
潜水艦艦長 深海調査手記
ただのA
SF
深海探査潜水艦ネプトゥヌスの艦長ロバート・L・グレイ が深海で発見した生物、現象、景観などを書き残した手記。
皆さんも艦長の手記を通して深海の神秘に触れてみませんか?
特殊装甲隊 ダグフェロン 『廃帝と永遠の世紀末』 第三部 『暗黒大陸』
橋本 直
SF
遼州司法局も法術特捜の発足とともに実働部隊、機動隊、法術特捜の三部体制が確立することとなった。
それまで東和陸軍教導隊を兼務していた小さな隊長、クバルカ・ラン中佐が実働部隊副隊長として本異動になることが決まった。
彼女の本拠地である東和陸軍教導隊を訪ねた神前誠に法術兵器の実験に任務が課せられた。それは広域にわたり兵士の意識を奪ってしまうという新しい発想の非破壊兵器だった。
実験は成功するがチャージの時間等、運用の難しい兵器と判明する。
一方実働部隊部隊長嵯峨惟基は自分が領邦領主を務めている貴族制国家甲武国へ飛んだ。そこでは彼の両方を西園寺かなめの妹、日野かえでに継がせることに関する会議が行われる予定だった。
一方、南の『魔窟』と呼ばれる大陸ベルルカンの大国、バルキスタンにて総選挙が予定されており、実働部隊も支援部隊を派遣していた。だが選挙に不満を持つ政府軍、反政府軍の駆け引きが続いていた。
嵯峨は万が一の両軍衝突の際アメリカの介入を要請しようとする兄である西園寺義基のシンパである甲武軍部穏健派を牽制しつつ貴族の群れる会議へと向かった。
そしてそんな中、バルキスタンで反政府軍が機動兵器を手に入れ政府軍との全面衝突が発生する。
誠は試験が済んだばかりの非破壊兵器を手に戦線の拡大を防ぐべく出撃するのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 野球と海と『革命家』
橋本 直
SF
その文明は出会うべきではなかった
その人との出会いは歓迎すべきものではなかった
これは悲しい『出会い』の物語
『特殊な部隊』と出会うことで青年にはある『宿命』がせおわされることになる
法術装甲隊ダグフェロン 第二部
遼州人の青年『神前誠(しんぜんまこと)』が発動した『干渉空間』と『光の剣(つるぎ)により貴族主義者のクーデターを未然に防止することが出来た『近藤事件』が終わってから1か月がたった。
宇宙は誠をはじめとする『法術師』の存在を公表することで混乱に陥っていたが、誠の所属する司法局実働部隊、通称『特殊な部隊』は相変わらずおバカな生活を送っていた。
そんな『特殊な部隊』の運用艦『ふさ』艦長アメリア・クラウゼ中佐と誠の所属するシュツルム・パンツァーパイロット部隊『機動部隊第一小隊』のパイロットでサイボーグの西園寺かなめは『特殊な部隊』の野球部の夏合宿を企画した。
どうせろくな事が起こらないと思いながら仕事をさぼって参加する誠。
そこではかなめがいかに自分とはかけ離れたお嬢様で、貴族主義の国『甲武国』がどれほど自分の暮らす永遠に続く20世紀末の東和共和国と違うのかを誠は知ることになった。
しかし、彼を待っていたのは『法術』を持つ遼州人を地球人から解放しようとする『革命家』の襲撃だった。
この事件をきっかけに誠の身辺警護の必要性から誠の警護にアメリア、かなめ、そして無表情な人造人間『ラスト・バタリオン』の第一小隊小隊長カウラ・ベルガー大尉がつくことになる。
これにより誠の暮らす『男子下士官寮』は有名無実化することになった。
そんなおバカな連中を『駄目人間』嵯峨惟基特務大佐と機動部隊隊長クバルカ・ラン中佐は生暖かい目で見守っていた。
そんな『特殊な部隊』の意図とは関係なく着々と『力ある者の支配する宇宙』の実現を目指す『廃帝ハド』の野望はゆっくりと動き出しつつあった。
SFお仕事ギャグロマン小説。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる