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第41章 戦地
標的は女サイボーグ
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『姐御!『那珂』がセンサーの感度上げてきたぜ!どうすんよ』
かなめからの音声通信が誠の機体にも届いた。
『西園寺!通信をしてくんじゃねー!貴様はスタンドアローンじゃなきゃ意味がねーんだ!そんなこともわからんから『女王様』なんだ!』
いかにも『特殊な部隊』らしいカウラの『特殊』なツッコミが走る。
『まーしゃーねーや。どうせ死ぬのは西園寺だけだろ?いーんじゃねーの?無駄遣いばっかりのオメーが死ねば、庶民の迷惑も半減するわけだ。甲武の闇も近藤のおっさんを潰せば軽減するからそのついでにこいつも死んだらちょうどいいじゃん』
ランはあっさりとそう言った。
『ひでーぜ、姐御。見殺しかよ』
相変わらず顔も見せず、レーダーにも引っかからないかなめの通信が続いていた。
『サラ!『那珂』と僚艦の動きは!』
さすがに虐めすぎたと悟ったようにランは背後で起きた爆発の調査にあたっていた管制官のサラ・グリファン少尉に連絡を入れる。
『はっ、はい!現在、『那珂』と行動を共にしている『官派』反決起派のアサルト・モジュールパイロットは近藤中佐には同調せずに出撃を拒否していたのですが……かなめちゃん『だけ』が相手になったとなると何機か出てくるんじゃないかって……隊長が言ってました』
サラは隊長室でこの状況を見守っているであろう嵯峨の言葉を伝達した。
「西園寺さんって……嫌われてるんですか?」
誠はサラの言葉を聞くと自然にそうつぶやいていた。
『連中は西園寺の親父に冷や飯食わされてクーデターなんて真似を始めたんだ。西園寺が恨まれない訳がない』
カウラはあっさりそう言って、05式電子戦特化型の背中のランチャーからミサイルを射出する。それは『那珂』の手前で自爆し大量の金属粉を撒くレーダーや誘導兵器を混乱させるチャフだった。
『カウラ、済まねえな、チャフを撒いてくれたか。これで近藤の旦那の兵隊の目からしばらく逃げられる』
静かな口調のかなめの音声通信が誠にも聞こえてきた。
『アタシは結局『スナイパー』なんだよ。アタシは確実にそいつを『無力化』する。それが『スナイパー』。そしてそれがアタシ流の『女の闘い』』
『那珂』の後方から6機の機体が誠達の待つ宙域へ進軍してきた。
『やべーな。今度出てきたのは旧式の火龍じゃねー。最新式のアサルト・モジュール『飛燕』だ……しかもおそらく有人……凄腕が出てくんぞ』
ランはそう言うと誠を置いて機体を進攻させた。カウラの機体もそれに続いた。
「カウラさん!電子戦用の機体で最新式の『飛燕』とやりあうなんて無理ですよ!待っててください!」
誠はついそう叫んでいた。
『神前か?貴様のように普通に『人間』として生まれた男にはわからないだろうな……私は結局『ラスト・バタリオン』なんだ。かつてのナチスドイツの理想とした『戦闘の身のために作られた先兵』そのものだ。戦場以外では、私は単なる『依存症』患者。だから戦う。それでいい』
カウラはそれまで手にしていた指向性ECMの放出装置を背中のラックに引っ掛けると、代わりにそこにあった230mmカービンを構えた。
『要らねえよ、カウラの支援なんざ。おめえの狙撃は1ヒット1キルの戦いだろ?弾の無駄だ。アタシはサイボーグ。弾が届けば当たって当然。外れる生身の気が知れねえな。生身の射撃のお上手な連中とは格が違うんだよ』
そう言った瞬間、レーダーの左端の『飛燕』のコックピットが吹き飛んだ。
かなめは言葉を続ける。
『神前、いいこと教えてやんよ。アタシの体は『軍用義体』なんて呼ばれちゃいるが、本当に『軍』が戦争にこの手の体を持ち込むのは『違法』なんだ』
「違法?使っちゃダメなんですか?」
誠は戦争法規についてはついていくのがやっとと言う知識しかなかった。
『そうだ。兵隊をサイボーグにしたら強い軍隊ができるが……人道的にどうか?って話だ。だから、対人地雷や毒ガスや核兵器なんかと同じで、どこの星系でも自分からサイボーグを戦線に投入することはしねえんだ。だが、それは『兵隊さん限定』のルールなんだ。アタシ等『警察官』には当てはまんねえんだな……これが』
かなめがそう言うと先ほどのとなりの『飛燕』のコックピット付近が爆散した。
「警察官は戦争法規を無視してもいいんですか?」
誠は軍の幹部候補生の教育は受けたが警察官の教育は受けていなかった。
『無知だな。本当におめえは。警察は治安出動で『催涙ガス』とか撒いてるだろ?あれを軍がやったら『毒ガス』認定されて大変なことになるんだよ!他にも軍は使っちゃだめだが警察ならOKな武器がいっぱいあるんだ……遊んでやるよ……『家畜ちゃん』』
再びかなめの言葉に冷酷な響きが帯びているのを感じて誠は冷や汗をかいた。
かなめからの音声通信が誠の機体にも届いた。
『西園寺!通信をしてくんじゃねー!貴様はスタンドアローンじゃなきゃ意味がねーんだ!そんなこともわからんから『女王様』なんだ!』
いかにも『特殊な部隊』らしいカウラの『特殊』なツッコミが走る。
『まーしゃーねーや。どうせ死ぬのは西園寺だけだろ?いーんじゃねーの?無駄遣いばっかりのオメーが死ねば、庶民の迷惑も半減するわけだ。甲武の闇も近藤のおっさんを潰せば軽減するからそのついでにこいつも死んだらちょうどいいじゃん』
ランはあっさりとそう言った。
『ひでーぜ、姐御。見殺しかよ』
相変わらず顔も見せず、レーダーにも引っかからないかなめの通信が続いていた。
『サラ!『那珂』と僚艦の動きは!』
さすがに虐めすぎたと悟ったようにランは背後で起きた爆発の調査にあたっていた管制官のサラ・グリファン少尉に連絡を入れる。
『はっ、はい!現在、『那珂』と行動を共にしている『官派』反決起派のアサルト・モジュールパイロットは近藤中佐には同調せずに出撃を拒否していたのですが……かなめちゃん『だけ』が相手になったとなると何機か出てくるんじゃないかって……隊長が言ってました』
サラは隊長室でこの状況を見守っているであろう嵯峨の言葉を伝達した。
「西園寺さんって……嫌われてるんですか?」
誠はサラの言葉を聞くと自然にそうつぶやいていた。
『連中は西園寺の親父に冷や飯食わされてクーデターなんて真似を始めたんだ。西園寺が恨まれない訳がない』
カウラはあっさりそう言って、05式電子戦特化型の背中のランチャーからミサイルを射出する。それは『那珂』の手前で自爆し大量の金属粉を撒くレーダーや誘導兵器を混乱させるチャフだった。
『カウラ、済まねえな、チャフを撒いてくれたか。これで近藤の旦那の兵隊の目からしばらく逃げられる』
静かな口調のかなめの音声通信が誠にも聞こえてきた。
『アタシは結局『スナイパー』なんだよ。アタシは確実にそいつを『無力化』する。それが『スナイパー』。そしてそれがアタシ流の『女の闘い』』
『那珂』の後方から6機の機体が誠達の待つ宙域へ進軍してきた。
『やべーな。今度出てきたのは旧式の火龍じゃねー。最新式のアサルト・モジュール『飛燕』だ……しかもおそらく有人……凄腕が出てくんぞ』
ランはそう言うと誠を置いて機体を進攻させた。カウラの機体もそれに続いた。
「カウラさん!電子戦用の機体で最新式の『飛燕』とやりあうなんて無理ですよ!待っててください!」
誠はついそう叫んでいた。
『神前か?貴様のように普通に『人間』として生まれた男にはわからないだろうな……私は結局『ラスト・バタリオン』なんだ。かつてのナチスドイツの理想とした『戦闘の身のために作られた先兵』そのものだ。戦場以外では、私は単なる『依存症』患者。だから戦う。それでいい』
カウラはそれまで手にしていた指向性ECMの放出装置を背中のラックに引っ掛けると、代わりにそこにあった230mmカービンを構えた。
『要らねえよ、カウラの支援なんざ。おめえの狙撃は1ヒット1キルの戦いだろ?弾の無駄だ。アタシはサイボーグ。弾が届けば当たって当然。外れる生身の気が知れねえな。生身の射撃のお上手な連中とは格が違うんだよ』
そう言った瞬間、レーダーの左端の『飛燕』のコックピットが吹き飛んだ。
かなめは言葉を続ける。
『神前、いいこと教えてやんよ。アタシの体は『軍用義体』なんて呼ばれちゃいるが、本当に『軍』が戦争にこの手の体を持ち込むのは『違法』なんだ』
「違法?使っちゃダメなんですか?」
誠は戦争法規についてはついていくのがやっとと言う知識しかなかった。
『そうだ。兵隊をサイボーグにしたら強い軍隊ができるが……人道的にどうか?って話だ。だから、対人地雷や毒ガスや核兵器なんかと同じで、どこの星系でも自分からサイボーグを戦線に投入することはしねえんだ。だが、それは『兵隊さん限定』のルールなんだ。アタシ等『警察官』には当てはまんねえんだな……これが』
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『無知だな。本当におめえは。警察は治安出動で『催涙ガス』とか撒いてるだろ?あれを軍がやったら『毒ガス』認定されて大変なことになるんだよ!他にも軍は使っちゃだめだが警察ならOKな武器がいっぱいあるんだ……遊んでやるよ……『家畜ちゃん』』
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