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第41章 戦地
出撃
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『レールガン全弾装着済みましたよ!』
通信に珍しくまじめな顔をした整備班長『ヤンキー』島田正人曹長のつなぎ姿が入り込んできた。
『待ってました!』
巨大なアサルト・モジュール用230mmロングレンジレールガンがクレーンで持ち上げられ、かなめの機体に装備される。
『カタパルトデッキの状況は!』
ランが叫んだ。
『いつでも行けます!』
島田が叫ぶ。
『西園寺、神前、アタシが出て、最後がカウラで出るわ。西園寺!230mmレールガンの設定終了後、すぐに移動開始』
『人使いが荒いねえ。まあアタシは『罪人』が食えりゃあどうでも良いんだけどな』
凶暴そうな笑みが口元からこぼれるかなめに誠は心が寒くなる。
『びびんなって。ちゃんと腕のいい『羊飼い』として『狼』共から守ってやんよ』
かなめは口元だけが見えるサイボーグ用ヘルメットの下の口で誠に話しかける。
「了解しました」
『それより時間だ。島田!第二小隊二番機、αツー西園寺かなめ、出んぞ!』
かなめはそう叫ぶと機体固定部分をパージしてカタパルトデッキへ機体を動かす。その振動で誠はこれがシミュレーションではなく実戦だと言うことを肌で感じていた。
『中佐殿!出ていいか?』
そう言うとかなめは機をカタパルトデッキに固定させる。誠は続いて固定装置をパージして後に続く。
誠は全天周囲モニターのブリッジの管制官の席に座る島田の彼女、サラ・グリファン少尉の姿に目をやった。
『おい!サラ!出撃命令まだか!』
かなめが叫ぶ。
『作戦開始地点に到着!各機発進よろし!』
サラがやけ気味に叫んだ。
『んじゃ行くぞ!αツー!05式狙撃型!出んぞ!』
リニアカタパルトが起動し、爆炎とともにかなめの機体が誠の視線から消えた。誠はオートマチック操作でカタパルトデッキに機体を固定させる。
「クバルカ中佐。何か一言無いんですか?僕は何をするのかとか無いんですか……」
誠は久しぶりの実機搭乗の緊張に脂汗を流しながらそう言った。
『わりーが今回はオメーにババを引いてもらう予定だ』
幼くてかわいらしいランの口元から誠に向けて非情な一言が放たれた。
『うらやましいねえ……神前。殺し放題だぜ、オメエは』
ランの隣の画面の中のかなめが下品な笑みを浮かべている。そのサイボーグ用ヘルメットのバイザーに隠れたたれ目は相変わらずごみを見るような眼で誠を見ていることだろう。
そんな戸惑う誠のことなど無視するかのように、宇宙装備服姿の技術部の男子隊員は手にした誘導灯にはカタパルト射出の準備完了のマークが点滅していた。
「αスリー!05乙!出ます!」
カタパルトが作動するが、重力制御システムの効いたコックピットは、視野が急激に変わるだけで何の手ごたえも感じなかった。ただ周りの風景だけが移り変わる。
「宇宙だ」
誠は射出され、慣性移動からパルス波動エンジンの加速を加えながら目の前に広がる闇の深さに感じ入っていた。
『何、悦にいってるんだ?ちゃっちゃと移動だ。すぐカウラも出てくるぞ!』
目の前に光る点。かなめの言葉が響いた。
『『紅兎』弱×54、クバルカ・ラン!推参!』
ランはさすがに『偉大なる中佐殿』なので、その出撃時の言葉にも『偉大な風格』を感じさせた。確かに彼女がどう見ても8歳女児なのは違和感だらけだが誠もそのリアルを受け止めるようになってきていた。
『αワン!05式電子戦仕様!出る!』
カウラの機体も『ふさ』を発艦した。
『まだ『那珂』からの発艦は確認されていません!先手は取りました!』
ピンクの髪をなびかせてサラが叫んだ。
『なんだ。近藤の馬鹿野郎、こんくらいのことも読めねえとはお先が知れるな』
かなめの言葉には余裕が感じられた。
ランもカウラも特に何も言わない。
機動性に劣る05式4機は『那珂』に向けてゆっくりとした加速を続けた。
通信に珍しくまじめな顔をした整備班長『ヤンキー』島田正人曹長のつなぎ姿が入り込んできた。
『待ってました!』
巨大なアサルト・モジュール用230mmロングレンジレールガンがクレーンで持ち上げられ、かなめの機体に装備される。
『カタパルトデッキの状況は!』
ランが叫んだ。
『いつでも行けます!』
島田が叫ぶ。
『西園寺、神前、アタシが出て、最後がカウラで出るわ。西園寺!230mmレールガンの設定終了後、すぐに移動開始』
『人使いが荒いねえ。まあアタシは『罪人』が食えりゃあどうでも良いんだけどな』
凶暴そうな笑みが口元からこぼれるかなめに誠は心が寒くなる。
『びびんなって。ちゃんと腕のいい『羊飼い』として『狼』共から守ってやんよ』
かなめは口元だけが見えるサイボーグ用ヘルメットの下の口で誠に話しかける。
「了解しました」
『それより時間だ。島田!第二小隊二番機、αツー西園寺かなめ、出んぞ!』
かなめはそう叫ぶと機体固定部分をパージしてカタパルトデッキへ機体を動かす。その振動で誠はこれがシミュレーションではなく実戦だと言うことを肌で感じていた。
『中佐殿!出ていいか?』
そう言うとかなめは機をカタパルトデッキに固定させる。誠は続いて固定装置をパージして後に続く。
誠は全天周囲モニターのブリッジの管制官の席に座る島田の彼女、サラ・グリファン少尉の姿に目をやった。
『おい!サラ!出撃命令まだか!』
かなめが叫ぶ。
『作戦開始地点に到着!各機発進よろし!』
サラがやけ気味に叫んだ。
『んじゃ行くぞ!αツー!05式狙撃型!出んぞ!』
リニアカタパルトが起動し、爆炎とともにかなめの機体が誠の視線から消えた。誠はオートマチック操作でカタパルトデッキに機体を固定させる。
「クバルカ中佐。何か一言無いんですか?僕は何をするのかとか無いんですか……」
誠は久しぶりの実機搭乗の緊張に脂汗を流しながらそう言った。
『わりーが今回はオメーにババを引いてもらう予定だ』
幼くてかわいらしいランの口元から誠に向けて非情な一言が放たれた。
『うらやましいねえ……神前。殺し放題だぜ、オメエは』
ランの隣の画面の中のかなめが下品な笑みを浮かべている。そのサイボーグ用ヘルメットのバイザーに隠れたたれ目は相変わらずごみを見るような眼で誠を見ていることだろう。
そんな戸惑う誠のことなど無視するかのように、宇宙装備服姿の技術部の男子隊員は手にした誘導灯にはカタパルト射出の準備完了のマークが点滅していた。
「αスリー!05乙!出ます!」
カタパルトが作動するが、重力制御システムの効いたコックピットは、視野が急激に変わるだけで何の手ごたえも感じなかった。ただ周りの風景だけが移り変わる。
「宇宙だ」
誠は射出され、慣性移動からパルス波動エンジンの加速を加えながら目の前に広がる闇の深さに感じ入っていた。
『何、悦にいってるんだ?ちゃっちゃと移動だ。すぐカウラも出てくるぞ!』
目の前に光る点。かなめの言葉が響いた。
『『紅兎』弱×54、クバルカ・ラン!推参!』
ランはさすがに『偉大なる中佐殿』なので、その出撃時の言葉にも『偉大な風格』を感じさせた。確かに彼女がどう見ても8歳女児なのは違和感だらけだが誠もそのリアルを受け止めるようになってきていた。
『αワン!05式電子戦仕様!出る!』
カウラの機体も『ふさ』を発艦した。
『まだ『那珂』からの発艦は確認されていません!先手は取りました!』
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『なんだ。近藤の馬鹿野郎、こんくらいのことも読めねえとはお先が知れるな』
かなめの言葉には余裕が感じられた。
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