1,101 / 1,503
第41章 戦地
出撃
しおりを挟む
『レールガン全弾装着済みましたよ!』
通信に珍しくまじめな顔をした整備班長『ヤンキー』島田正人曹長のつなぎ姿が入り込んできた。
『待ってました!』
巨大なアサルト・モジュール用230mmロングレンジレールガンがクレーンで持ち上げられ、かなめの機体に装備される。
『カタパルトデッキの状況は!』
ランが叫んだ。
『いつでも行けます!』
島田が叫ぶ。
『西園寺、神前、アタシが出て、最後がカウラで出るわ。西園寺!230mmレールガンの設定終了後、すぐに移動開始』
『人使いが荒いねえ。まあアタシは『罪人』が食えりゃあどうでも良いんだけどな』
凶暴そうな笑みが口元からこぼれるかなめに誠は心が寒くなる。
『びびんなって。ちゃんと腕のいい『羊飼い』として『狼』共から守ってやんよ』
かなめは口元だけが見えるサイボーグ用ヘルメットの下の口で誠に話しかける。
「了解しました」
『それより時間だ。島田!第二小隊二番機、αツー西園寺かなめ、出んぞ!』
かなめはそう叫ぶと機体固定部分をパージしてカタパルトデッキへ機体を動かす。その振動で誠はこれがシミュレーションではなく実戦だと言うことを肌で感じていた。
『中佐殿!出ていいか?』
そう言うとかなめは機をカタパルトデッキに固定させる。誠は続いて固定装置をパージして後に続く。
誠は全天周囲モニターのブリッジの管制官の席に座る島田の彼女、サラ・グリファン少尉の姿に目をやった。
『おい!サラ!出撃命令まだか!』
かなめが叫ぶ。
『作戦開始地点に到着!各機発進よろし!』
サラがやけ気味に叫んだ。
『んじゃ行くぞ!αツー!05式狙撃型!出んぞ!』
リニアカタパルトが起動し、爆炎とともにかなめの機体が誠の視線から消えた。誠はオートマチック操作でカタパルトデッキに機体を固定させる。
「クバルカ中佐。何か一言無いんですか?僕は何をするのかとか無いんですか……」
誠は久しぶりの実機搭乗の緊張に脂汗を流しながらそう言った。
『わりーが今回はオメーにババを引いてもらう予定だ』
幼くてかわいらしいランの口元から誠に向けて非情な一言が放たれた。
『うらやましいねえ……神前。殺し放題だぜ、オメエは』
ランの隣の画面の中のかなめが下品な笑みを浮かべている。そのサイボーグ用ヘルメットのバイザーに隠れたたれ目は相変わらずごみを見るような眼で誠を見ていることだろう。
そんな戸惑う誠のことなど無視するかのように、宇宙装備服姿の技術部の男子隊員は手にした誘導灯にはカタパルト射出の準備完了のマークが点滅していた。
「αスリー!05乙!出ます!」
カタパルトが作動するが、重力制御システムの効いたコックピットは、視野が急激に変わるだけで何の手ごたえも感じなかった。ただ周りの風景だけが移り変わる。
「宇宙だ」
誠は射出され、慣性移動からパルス波動エンジンの加速を加えながら目の前に広がる闇の深さに感じ入っていた。
『何、悦にいってるんだ?ちゃっちゃと移動だ。すぐカウラも出てくるぞ!』
目の前に光る点。かなめの言葉が響いた。
『『紅兎』弱×54、クバルカ・ラン!推参!』
ランはさすがに『偉大なる中佐殿』なので、その出撃時の言葉にも『偉大な風格』を感じさせた。確かに彼女がどう見ても8歳女児なのは違和感だらけだが誠もそのリアルを受け止めるようになってきていた。
『αワン!05式電子戦仕様!出る!』
カウラの機体も『ふさ』を発艦した。
『まだ『那珂』からの発艦は確認されていません!先手は取りました!』
ピンクの髪をなびかせてサラが叫んだ。
『なんだ。近藤の馬鹿野郎、こんくらいのことも読めねえとはお先が知れるな』
かなめの言葉には余裕が感じられた。
ランもカウラも特に何も言わない。
機動性に劣る05式4機は『那珂』に向けてゆっくりとした加速を続けた。
通信に珍しくまじめな顔をした整備班長『ヤンキー』島田正人曹長のつなぎ姿が入り込んできた。
『待ってました!』
巨大なアサルト・モジュール用230mmロングレンジレールガンがクレーンで持ち上げられ、かなめの機体に装備される。
『カタパルトデッキの状況は!』
ランが叫んだ。
『いつでも行けます!』
島田が叫ぶ。
『西園寺、神前、アタシが出て、最後がカウラで出るわ。西園寺!230mmレールガンの設定終了後、すぐに移動開始』
『人使いが荒いねえ。まあアタシは『罪人』が食えりゃあどうでも良いんだけどな』
凶暴そうな笑みが口元からこぼれるかなめに誠は心が寒くなる。
『びびんなって。ちゃんと腕のいい『羊飼い』として『狼』共から守ってやんよ』
かなめは口元だけが見えるサイボーグ用ヘルメットの下の口で誠に話しかける。
「了解しました」
『それより時間だ。島田!第二小隊二番機、αツー西園寺かなめ、出んぞ!』
かなめはそう叫ぶと機体固定部分をパージしてカタパルトデッキへ機体を動かす。その振動で誠はこれがシミュレーションではなく実戦だと言うことを肌で感じていた。
『中佐殿!出ていいか?』
そう言うとかなめは機をカタパルトデッキに固定させる。誠は続いて固定装置をパージして後に続く。
誠は全天周囲モニターのブリッジの管制官の席に座る島田の彼女、サラ・グリファン少尉の姿に目をやった。
『おい!サラ!出撃命令まだか!』
かなめが叫ぶ。
『作戦開始地点に到着!各機発進よろし!』
サラがやけ気味に叫んだ。
『んじゃ行くぞ!αツー!05式狙撃型!出んぞ!』
リニアカタパルトが起動し、爆炎とともにかなめの機体が誠の視線から消えた。誠はオートマチック操作でカタパルトデッキに機体を固定させる。
「クバルカ中佐。何か一言無いんですか?僕は何をするのかとか無いんですか……」
誠は久しぶりの実機搭乗の緊張に脂汗を流しながらそう言った。
『わりーが今回はオメーにババを引いてもらう予定だ』
幼くてかわいらしいランの口元から誠に向けて非情な一言が放たれた。
『うらやましいねえ……神前。殺し放題だぜ、オメエは』
ランの隣の画面の中のかなめが下品な笑みを浮かべている。そのサイボーグ用ヘルメットのバイザーに隠れたたれ目は相変わらずごみを見るような眼で誠を見ていることだろう。
そんな戸惑う誠のことなど無視するかのように、宇宙装備服姿の技術部の男子隊員は手にした誘導灯にはカタパルト射出の準備完了のマークが点滅していた。
「αスリー!05乙!出ます!」
カタパルトが作動するが、重力制御システムの効いたコックピットは、視野が急激に変わるだけで何の手ごたえも感じなかった。ただ周りの風景だけが移り変わる。
「宇宙だ」
誠は射出され、慣性移動からパルス波動エンジンの加速を加えながら目の前に広がる闇の深さに感じ入っていた。
『何、悦にいってるんだ?ちゃっちゃと移動だ。すぐカウラも出てくるぞ!』
目の前に光る点。かなめの言葉が響いた。
『『紅兎』弱×54、クバルカ・ラン!推参!』
ランはさすがに『偉大なる中佐殿』なので、その出撃時の言葉にも『偉大な風格』を感じさせた。確かに彼女がどう見ても8歳女児なのは違和感だらけだが誠もそのリアルを受け止めるようになってきていた。
『αワン!05式電子戦仕様!出る!』
カウラの機体も『ふさ』を発艦した。
『まだ『那珂』からの発艦は確認されていません!先手は取りました!』
ピンクの髪をなびかせてサラが叫んだ。
『なんだ。近藤の馬鹿野郎、こんくらいのことも読めねえとはお先が知れるな』
かなめの言葉には余裕が感じられた。
ランもカウラも特に何も言わない。
機動性に劣る05式4機は『那珂』に向けてゆっくりとした加速を続けた。
0
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説
特殊装甲隊 ダグフェロン 『廃帝と永遠の世紀末』 第三部 『暗黒大陸』
橋本 直
SF
遼州司法局も法術特捜の発足とともに実働部隊、機動隊、法術特捜の三部体制が確立することとなった。
それまで東和陸軍教導隊を兼務していた小さな隊長、クバルカ・ラン中佐が実働部隊副隊長として本異動になることが決まった。
彼女の本拠地である東和陸軍教導隊を訪ねた神前誠に法術兵器の実験に任務が課せられた。それは広域にわたり兵士の意識を奪ってしまうという新しい発想の非破壊兵器だった。
実験は成功するがチャージの時間等、運用の難しい兵器と判明する。
一方実働部隊部隊長嵯峨惟基は自分が領邦領主を務めている貴族制国家甲武国へ飛んだ。そこでは彼の両方を西園寺かなめの妹、日野かえでに継がせることに関する会議が行われる予定だった。
一方、南の『魔窟』と呼ばれる大陸ベルルカンの大国、バルキスタンにて総選挙が予定されており、実働部隊も支援部隊を派遣していた。だが選挙に不満を持つ政府軍、反政府軍の駆け引きが続いていた。
嵯峨は万が一の両軍衝突の際アメリカの介入を要請しようとする兄である西園寺義基のシンパである甲武軍部穏健派を牽制しつつ貴族の群れる会議へと向かった。
そしてそんな中、バルキスタンで反政府軍が機動兵器を手に入れ政府軍との全面衝突が発生する。
誠は試験が済んだばかりの非破壊兵器を手に戦線の拡大を防ぐべく出撃するのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 野球と海と『革命家』
橋本 直
SF
その文明は出会うべきではなかった
その人との出会いは歓迎すべきものではなかった
これは悲しい『出会い』の物語
『特殊な部隊』と出会うことで青年にはある『宿命』がせおわされることになる
法術装甲隊ダグフェロン 第二部
遼州人の青年『神前誠(しんぜんまこと)』が発動した『干渉空間』と『光の剣(つるぎ)により貴族主義者のクーデターを未然に防止することが出来た『近藤事件』が終わってから1か月がたった。
宇宙は誠をはじめとする『法術師』の存在を公表することで混乱に陥っていたが、誠の所属する司法局実働部隊、通称『特殊な部隊』は相変わらずおバカな生活を送っていた。
そんな『特殊な部隊』の運用艦『ふさ』艦長アメリア・クラウゼ中佐と誠の所属するシュツルム・パンツァーパイロット部隊『機動部隊第一小隊』のパイロットでサイボーグの西園寺かなめは『特殊な部隊』の野球部の夏合宿を企画した。
どうせろくな事が起こらないと思いながら仕事をさぼって参加する誠。
そこではかなめがいかに自分とはかけ離れたお嬢様で、貴族主義の国『甲武国』がどれほど自分の暮らす永遠に続く20世紀末の東和共和国と違うのかを誠は知ることになった。
しかし、彼を待っていたのは『法術』を持つ遼州人を地球人から解放しようとする『革命家』の襲撃だった。
この事件をきっかけに誠の身辺警護の必要性から誠の警護にアメリア、かなめ、そして無表情な人造人間『ラスト・バタリオン』の第一小隊小隊長カウラ・ベルガー大尉がつくことになる。
これにより誠の暮らす『男子下士官寮』は有名無実化することになった。
そんなおバカな連中を『駄目人間』嵯峨惟基特務大佐と機動部隊隊長クバルカ・ラン中佐は生暖かい目で見守っていた。
そんな『特殊な部隊』の意図とは関係なく着々と『力ある者の支配する宇宙』の実現を目指す『廃帝ハド』の野望はゆっくりと動き出しつつあった。
SFお仕事ギャグロマン小説。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる