1,085 / 1,505
第35章 運用艦『ふさ』と『特殊な趣味』の連中
バスでGo
しおりを挟む
その三日後、誠は着替えと製作中の戦車のプラモを入れた大きな荷物を抱えて、本部のでかい駐車場に立っていた。
「神前。貴様は新入りだろ?大型二種の運転免許もあるんだ。バスの運転は貴様では……無理だな。分かった」
隣にはカウラ・ベルガー大尉と言う『パチンコ依存症』の小隊長が立っていた。
「カウラさん。宇宙に『パチンコ屋』は無いですよ」
カウラ=パチンコと言う刷り込まれた意識から、誠はそう言った。
「大丈夫だ。『ふさ』には私の『コレクションルーム』がある。当然新台もある。楽しい演習になるだろう」
そう言ってカウラは誠を見上げて右手を握りしめていい顔をした。エメラルドグリーンのポニーテールにその真剣な表情が似合っていて誠は照れ笑いを浮かべた。
「新台……もしかしてメーカーから直接買ってるんですか?」
誠がそう言ったところで大型バスが駐車場に入ってくる。
「それより、貴様。酔い止めは?」
そう言ってカウラは誠を見つめた。
「今朝、起きた時とさっき強いのを飲みました。エチケット袋も10枚用意してあるので大丈夫です!」
誠は常に『乗り物酔い』と付き合うことに慣れていたので朗らかにそう答えた。
「そうか……貴様の為に用意をしたんだが……」
うつむいてカウラは恥ずかしそうにそうつぶやく。
「なんですか?カウラさん」
誠はカウラの言葉を再確認しようとした。そこで後ろからの蹴りで地面に体を叩きつけられた。
「元気!」
でかい糸目の運航部部長。アメリア・クラウゼ少佐が糸目をさらに細くして立っていた。
「いきなり蹴らないでください!」
誠は実働部隊の夏服についた埃を払いながらそう言った。
「いいじゃない!誠ちゃん!それよりあれ」
アメリアはそう言って駐車場の入り口を指さした。そこには大きな観光バスがあった。その車体には地元では名の知れた私鉄系バス会社のエンブレムが塗装されている。
「レンタルしたんですか?うちってそんなに金がないんですか?」
誠は『特殊な部隊』のドケチ気質に呆れつつそう言った。
「だって、『ふさ』のある『多賀港』が最寄り駅まで車で2時間かかる辺鄙なところにあるんだもん!電車で行っても意味ないもん!」
180㎝の美女とは思えない駄々っ子ぶりに誠は呆れて、近づいてくるバスに目をやる。
いつの間にか誠の周りには、『特殊な部隊』の隊員達であふれていた。誰もが油断しきった表情でめんどくさそうに夏の日差しの下で突っ立っていた。
バスは三台だった。その一番最初に見えた車両の自動扉が誠の目の前で開いた。
「誠ちゃんは最前列の窓側よね、酔うから」
一番乗りをしたアメリアはそう言って誠の手を引っ張った。
「荷物が……」
そう言って誠はノリノリのアメリアに抵抗した。しかし、いつの間にか誠の荷物は、カウラによってバスの中央にあるトランクスペースに運ばれていた。誠の手には10枚のエチケット袋と最終手段の強力酔い止め錠剤が残されていた。
「じゃあ!行きましょう!」
アメリアはバスの運転手の肩を叩きながらそう叫んだ。
迷惑そうなバスの運転手に誠は静かに頭を下げた。そして、誠も十分迷惑だった。
「神前。貴様は新入りだろ?大型二種の運転免許もあるんだ。バスの運転は貴様では……無理だな。分かった」
隣にはカウラ・ベルガー大尉と言う『パチンコ依存症』の小隊長が立っていた。
「カウラさん。宇宙に『パチンコ屋』は無いですよ」
カウラ=パチンコと言う刷り込まれた意識から、誠はそう言った。
「大丈夫だ。『ふさ』には私の『コレクションルーム』がある。当然新台もある。楽しい演習になるだろう」
そう言ってカウラは誠を見上げて右手を握りしめていい顔をした。エメラルドグリーンのポニーテールにその真剣な表情が似合っていて誠は照れ笑いを浮かべた。
「新台……もしかしてメーカーから直接買ってるんですか?」
誠がそう言ったところで大型バスが駐車場に入ってくる。
「それより、貴様。酔い止めは?」
そう言ってカウラは誠を見つめた。
「今朝、起きた時とさっき強いのを飲みました。エチケット袋も10枚用意してあるので大丈夫です!」
誠は常に『乗り物酔い』と付き合うことに慣れていたので朗らかにそう答えた。
「そうか……貴様の為に用意をしたんだが……」
うつむいてカウラは恥ずかしそうにそうつぶやく。
「なんですか?カウラさん」
誠はカウラの言葉を再確認しようとした。そこで後ろからの蹴りで地面に体を叩きつけられた。
「元気!」
でかい糸目の運航部部長。アメリア・クラウゼ少佐が糸目をさらに細くして立っていた。
「いきなり蹴らないでください!」
誠は実働部隊の夏服についた埃を払いながらそう言った。
「いいじゃない!誠ちゃん!それよりあれ」
アメリアはそう言って駐車場の入り口を指さした。そこには大きな観光バスがあった。その車体には地元では名の知れた私鉄系バス会社のエンブレムが塗装されている。
「レンタルしたんですか?うちってそんなに金がないんですか?」
誠は『特殊な部隊』のドケチ気質に呆れつつそう言った。
「だって、『ふさ』のある『多賀港』が最寄り駅まで車で2時間かかる辺鄙なところにあるんだもん!電車で行っても意味ないもん!」
180㎝の美女とは思えない駄々っ子ぶりに誠は呆れて、近づいてくるバスに目をやる。
いつの間にか誠の周りには、『特殊な部隊』の隊員達であふれていた。誰もが油断しきった表情でめんどくさそうに夏の日差しの下で突っ立っていた。
バスは三台だった。その一番最初に見えた車両の自動扉が誠の目の前で開いた。
「誠ちゃんは最前列の窓側よね、酔うから」
一番乗りをしたアメリアはそう言って誠の手を引っ張った。
「荷物が……」
そう言って誠はノリノリのアメリアに抵抗した。しかし、いつの間にか誠の荷物は、カウラによってバスの中央にあるトランクスペースに運ばれていた。誠の手には10枚のエチケット袋と最終手段の強力酔い止め錠剤が残されていた。
「じゃあ!行きましょう!」
アメリアはバスの運転手の肩を叩きながらそう叫んだ。
迷惑そうなバスの運転手に誠は静かに頭を下げた。そして、誠も十分迷惑だった。
0
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
もう、終わった話ですし
志位斗 茂家波
ファンタジー
一国が滅びた。
その知らせを聞いても、私には関係の無い事。
だってね、もう分っていたことなのよね‥‥‥
‥‥‥たまにやりたくなる、ありきたりな婚約破棄ざまぁ(?)もの
少々物足りないような気がするので、気が向いたらオマケ書こうかな?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
「おまえを愛することはない!」と言ってやったのに、なぜ無視するんだ!
七辻ゆゆ
ファンタジー
俺を見ない、俺の言葉を聞かない、そして触れられない。すり抜ける……なぜだ?
俺はいったい、どうなっているんだ。
真実の愛を取り戻したいだけなのに。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
王家も我が家を馬鹿にしてますわよね
章槻雅希
ファンタジー
よくある婚約者が護衛対象の王女を優先して婚約破棄になるパターンのお話。あの手の話を読んで、『なんで王家は王女の醜聞になりかねない噂を放置してるんだろう』『てか、これ、王家が婚約者の家蔑ろにしてるよね?』と思った結果できた話。ひそかなサブタイは『うちも王家を馬鹿にしてますけど』かもしれません。
『小説家になろう』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる