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第35章 運用艦『ふさ』と『特殊な趣味』の連中
バスでGo
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その三日後、誠は着替えと製作中の戦車のプラモを入れた大きな荷物を抱えて、本部のでかい駐車場に立っていた。
「神前。貴様は新入りだろ?大型二種の運転免許もあるんだ。バスの運転は貴様では……無理だな。分かった」
隣にはカウラ・ベルガー大尉と言う『パチンコ依存症』の小隊長が立っていた。
「カウラさん。宇宙に『パチンコ屋』は無いですよ」
カウラ=パチンコと言う刷り込まれた意識から、誠はそう言った。
「大丈夫だ。『ふさ』には私の『コレクションルーム』がある。当然新台もある。楽しい演習になるだろう」
そう言ってカウラは誠を見上げて右手を握りしめていい顔をした。エメラルドグリーンのポニーテールにその真剣な表情が似合っていて誠は照れ笑いを浮かべた。
「新台……もしかしてメーカーから直接買ってるんですか?」
誠がそう言ったところで大型バスが駐車場に入ってくる。
「それより、貴様。酔い止めは?」
そう言ってカウラは誠を見つめた。
「今朝、起きた時とさっき強いのを飲みました。エチケット袋も10枚用意してあるので大丈夫です!」
誠は常に『乗り物酔い』と付き合うことに慣れていたので朗らかにそう答えた。
「そうか……貴様の為に用意をしたんだが……」
うつむいてカウラは恥ずかしそうにそうつぶやく。
「なんですか?カウラさん」
誠はカウラの言葉を再確認しようとした。そこで後ろからの蹴りで地面に体を叩きつけられた。
「元気!」
でかい糸目の運航部部長。アメリア・クラウゼ少佐が糸目をさらに細くして立っていた。
「いきなり蹴らないでください!」
誠は実働部隊の夏服についた埃を払いながらそう言った。
「いいじゃない!誠ちゃん!それよりあれ」
アメリアはそう言って駐車場の入り口を指さした。そこには大きな観光バスがあった。その車体には地元では名の知れた私鉄系バス会社のエンブレムが塗装されている。
「レンタルしたんですか?うちってそんなに金がないんですか?」
誠は『特殊な部隊』のドケチ気質に呆れつつそう言った。
「だって、『ふさ』のある『多賀港』が最寄り駅まで車で2時間かかる辺鄙なところにあるんだもん!電車で行っても意味ないもん!」
180㎝の美女とは思えない駄々っ子ぶりに誠は呆れて、近づいてくるバスに目をやる。
いつの間にか誠の周りには、『特殊な部隊』の隊員達であふれていた。誰もが油断しきった表情でめんどくさそうに夏の日差しの下で突っ立っていた。
バスは三台だった。その一番最初に見えた車両の自動扉が誠の目の前で開いた。
「誠ちゃんは最前列の窓側よね、酔うから」
一番乗りをしたアメリアはそう言って誠の手を引っ張った。
「荷物が……」
そう言って誠はノリノリのアメリアに抵抗した。しかし、いつの間にか誠の荷物は、カウラによってバスの中央にあるトランクスペースに運ばれていた。誠の手には10枚のエチケット袋と最終手段の強力酔い止め錠剤が残されていた。
「じゃあ!行きましょう!」
アメリアはバスの運転手の肩を叩きながらそう叫んだ。
迷惑そうなバスの運転手に誠は静かに頭を下げた。そして、誠も十分迷惑だった。
「神前。貴様は新入りだろ?大型二種の運転免許もあるんだ。バスの運転は貴様では……無理だな。分かった」
隣にはカウラ・ベルガー大尉と言う『パチンコ依存症』の小隊長が立っていた。
「カウラさん。宇宙に『パチンコ屋』は無いですよ」
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「大丈夫だ。『ふさ』には私の『コレクションルーム』がある。当然新台もある。楽しい演習になるだろう」
そう言ってカウラは誠を見上げて右手を握りしめていい顔をした。エメラルドグリーンのポニーテールにその真剣な表情が似合っていて誠は照れ笑いを浮かべた。
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そう言ってカウラは誠を見つめた。
「今朝、起きた時とさっき強いのを飲みました。エチケット袋も10枚用意してあるので大丈夫です!」
誠は常に『乗り物酔い』と付き合うことに慣れていたので朗らかにそう答えた。
「そうか……貴様の為に用意をしたんだが……」
うつむいてカウラは恥ずかしそうにそうつぶやく。
「なんですか?カウラさん」
誠はカウラの言葉を再確認しようとした。そこで後ろからの蹴りで地面に体を叩きつけられた。
「元気!」
でかい糸目の運航部部長。アメリア・クラウゼ少佐が糸目をさらに細くして立っていた。
「いきなり蹴らないでください!」
誠は実働部隊の夏服についた埃を払いながらそう言った。
「いいじゃない!誠ちゃん!それよりあれ」
アメリアはそう言って駐車場の入り口を指さした。そこには大きな観光バスがあった。その車体には地元では名の知れた私鉄系バス会社のエンブレムが塗装されている。
「レンタルしたんですか?うちってそんなに金がないんですか?」
誠は『特殊な部隊』のドケチ気質に呆れつつそう言った。
「だって、『ふさ』のある『多賀港』が最寄り駅まで車で2時間かかる辺鄙なところにあるんだもん!電車で行っても意味ないもん!」
180㎝の美女とは思えない駄々っ子ぶりに誠は呆れて、近づいてくるバスに目をやる。
いつの間にか誠の周りには、『特殊な部隊』の隊員達であふれていた。誰もが油断しきった表情でめんどくさそうに夏の日差しの下で突っ立っていた。
バスは三台だった。その一番最初に見えた車両の自動扉が誠の目の前で開いた。
「誠ちゃんは最前列の窓側よね、酔うから」
一番乗りをしたアメリアはそう言って誠の手を引っ張った。
「荷物が……」
そう言って誠はノリノリのアメリアに抵抗した。しかし、いつの間にか誠の荷物は、カウラによってバスの中央にあるトランクスペースに運ばれていた。誠の手には10枚のエチケット袋と最終手段の強力酔い止め錠剤が残されていた。
「じゃあ!行きましょう!」
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