レジェンド・オブ・ダーク 遼州司法局異聞

橋本 直

文字の大きさ
上 下
1,029 / 1,505
第11章 お姉さん達と飲み会

脱落者④ 『水鉄砲』

しおりを挟む
「次の奴が『水鉄砲』……アイツは嫌な奴だったな」

 ラム酒を飲みながらかなめは一刀両断に誠の先任者を斬り捨てた。

「嫌な奴って……」

 何とかフォローを入れないとあとでひどい目に逢いそうな予感がして誠はそう言って見せた。

「そう?自分の立ち位置は分かってなかったけど『バケツ』よりはマシよ。いい男ギャグは私は認めないから」

 個人的な好き嫌いを前面に出してアメリアはそう言った。

「二人とも腕は確かだぞ」

「腕なんて代わりはいくらでもいんだよ!アタシはこいつは嫌いだった!」

 カウラの言葉に今度はかなめが嫌悪感をあらわにした。

「どこ出身なんです?」

 誠の向けた言葉にかなめはグラスを手にしたままそっぽを向く。

「遼北人民国。軍大学出のエリートパイロットよ。かなめちゃんも甲武国の陸軍士官学校出のエリートじゃない」

「アタシは士官学校時代の野郎にはいい思い出無いからな。まあ、エリートはうちの水は合わねえだろ?ランの姐御もエリート嫌いだし」

 アメリアの問いにかなめは全責任をちっちゃな機動部隊長のランに押し付けた。

「しかし、射撃の素養は高かったろ?」

「まあ『生身では』の限定がつくがな」

 それとなく言ったカウラの言葉をかなめはあっさり覆してみせる。

「まあ、上からの指示で来たってのは見ればわかったけどね」

 アメリアはビールを飲みながらそう言って笑って見せた。

「その人も一週間持たなかったんですか?」

 誠が水を向けると三人は静かにうなづいた。

「まあ、隊長が一週間様子を見ろっていったから一週間居ただけって感じよね」

「あっさりしてたなあいつ。遼北の中華料理は脂っこいのに」

「それが組織に生きるということだ……気に入らなくても上の指示には従わなければならない」

 アメリア、かなめ、カウラの順の答えに誠は少し自分の置かれた状況がそれなりにヤバいモノだと察しながら静かにビールを口にした。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

もう、終わった話ですし

志位斗 茂家波
ファンタジー
一国が滅びた。 その知らせを聞いても、私には関係の無い事。 だってね、もう分っていたことなのよね‥‥‥ ‥‥‥たまにやりたくなる、ありきたりな婚約破棄ざまぁ(?)もの 少々物足りないような気がするので、気が向いたらオマケ書こうかな?

【完結】そして、誰もいなくなった

杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」 愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。 「触るな!」 だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。 「突き飛ばしたぞ」 「彼が手を上げた」 「誰か衛兵を呼べ!」 騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。 そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。 そして誰もいなくなった。 彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。 これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。 ◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。 3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。 3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました! 4/1、完結しました。全14話。

「おまえを愛することはない!」と言ってやったのに、なぜ無視するんだ!

七辻ゆゆ
ファンタジー
俺を見ない、俺の言葉を聞かない、そして触れられない。すり抜ける……なぜだ? 俺はいったい、どうなっているんだ。 真実の愛を取り戻したいだけなのに。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

王家も我が家を馬鹿にしてますわよね

章槻雅希
ファンタジー
 よくある婚約者が護衛対象の王女を優先して婚約破棄になるパターンのお話。あの手の話を読んで、『なんで王家は王女の醜聞になりかねない噂を放置してるんだろう』『てか、これ、王家が婚約者の家蔑ろにしてるよね?』と思った結果できた話。ひそかなサブタイは『うちも王家を馬鹿にしてますけど』かもしれません。 『小説家になろう』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...