レジェンド・オブ・ダーク 遼州司法局異聞

橋本 直

文字の大きさ
上 下
1,026 / 1,505
第11章 お姉さん達と飲み会

脱落者① 『オミズ』

しおりを挟む
「じゃあ、これまで来た5人のダメなパイロットの話をしましょう!」

「えー、あの馬鹿どもの話か?酒がまずくなるぜ」

 アメリアの提案にかなめは嫌な顔をしながらラムの入ったグラスをすすっている。

「最初に来たのは……」

 カウラはそう言って首をひねった。

「オミズよ!オミズ!」

 嬉しそうにアメリアが叫んだ。

「ああ、いたなそんな奴。印象薄くて顔も名前も憶えてねえけど」

 かなめはそう言ってラム酒のグラスを傾けた。

「オミズ……女性だったんですか?」

「違うわよ。男の子……遼州の月の『ハンミン国』出身の真面目そうな子」

 いぶかしげに尋ねる誠の言葉をアメリアはビールを飲みながら軽く否定した。

「オメエが初対面のアイツに水ぶっかけるからだろ?」

「水ですか!」

 かなめの言い出した言葉で誠は運航部の入り口で逢った『金ダライで歓迎事件』のことを思い出した。

 おそらくはあそこにバケツでも仕込んで水をぶっかけたのだろう。

 誠は呆然としてアメリアの底知れない不気味な笑顔をのぞき見た。

「かなり怒っていたな」

「そりゃあ初対面の人の頭に水をぶっかければ怒りますよ!」

 常識人に見えて完全に『特殊な部隊』に染まっているカウラの薄い反応に、誠は思わず強めに叫んでいた。

「つうわけで、水をぶっかけられて激怒したそいつはそのまま叔父貴にタクシー券を渡されて豊川駅からさようならしたわけだ……オメエもあそこで帰ったら交通費うちもちで帰ることができたのに……ここまで来たら帰りは自腹だからな」

 薄ら笑いを浮かべながらかなめそう言って笑った。

「僕は……残るつもりですから……」

「本当に?本当に?」

 冷やかしてくるアメリアを冷めた目で見つめながら誠は砂肝を平らげた。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

もう、終わった話ですし

志位斗 茂家波
ファンタジー
一国が滅びた。 その知らせを聞いても、私には関係の無い事。 だってね、もう分っていたことなのよね‥‥‥ ‥‥‥たまにやりたくなる、ありきたりな婚約破棄ざまぁ(?)もの 少々物足りないような気がするので、気が向いたらオマケ書こうかな?

【完結】そして、誰もいなくなった

杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」 愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。 「触るな!」 だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。 「突き飛ばしたぞ」 「彼が手を上げた」 「誰か衛兵を呼べ!」 騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。 そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。 そして誰もいなくなった。 彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。 これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。 ◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。 3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。 3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました! 4/1、完結しました。全14話。

「おまえを愛することはない!」と言ってやったのに、なぜ無視するんだ!

七辻ゆゆ
ファンタジー
俺を見ない、俺の言葉を聞かない、そして触れられない。すり抜ける……なぜだ? 俺はいったい、どうなっているんだ。 真実の愛を取り戻したいだけなのに。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

王家も我が家を馬鹿にしてますわよね

章槻雅希
ファンタジー
 よくある婚約者が護衛対象の王女を優先して婚約破棄になるパターンのお話。あの手の話を読んで、『なんで王家は王女の醜聞になりかねない噂を放置してるんだろう』『てか、これ、王家が婚約者の家蔑ろにしてるよね?』と思った結果できた話。ひそかなサブタイは『うちも王家を馬鹿にしてますけど』かもしれません。 『小説家になろう』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...