998 / 1,505
第2章 落ちこぼれが出会った『ちっちゃい英雄』
敗戦国の英雄
しおりを挟む
『誰かが何か企んでるな……ってまあ企んでるだろう。あの嵯峨とかいう人しか思いつく人はいないけど』
そう独り言を言いながら、誠はただ行きかう人々を眺めていた。周りを見回していた誠だが、あることに気づいた。
ちょうど正面のこの駐車場の一番奥の柱の前に小さな女の子が立っていた。そして、誠がここにきてからこうして周りを見回している間も彼女は誠をじっと見つめていた。
「なんで女の子が?」
ここは軍の施設である。関係者以外はそもそも駐車場に入るゲートのところで止められるはずだ。
「あれか……ここの職員の子供かなにかか……」
誠はそう考えを切り替えて小さな女の子から目をそらした。誠は別に好きでここに立っているわけではない。
誠は『女の人』を待っていた。彼を迎えの車に乗せて、辞令に書いてある配属先の司法局実働部隊とか言う『特殊な部隊』に連れて行ってくれる迎えの人物を待っていた。誠も馬鹿ではないので、その人物が何者なのかは、辞令を渡した禿の大尉に聞いて名前と身分、その人物の略歴ぐらいは知っていた。
迎えに来るのは『クバルカ・ラン』と言う女性だと聞いた。階級は中佐とだけ人事の担当者から伝えられていた。
十年前、ここ東和共和国の西に浮かぶ巨大な大陸『遼大陸』は『戦乱』に包まれていた。特に、その南部であった『遼南内戦』は凄惨を極めるものだったと誠も聞いていた。人事の担当者が言うには『クバルカ・ラン中佐』はその『内戦』の敗戦国『遼南共和国軍』のエースだと聞いていた。
彼女は『紅い』専用アサルト・モジュールに乗って、目覚ましい戦功を立てたと言う。その後、彼女はなぜか内戦終了後成立した『遼南民主国』ではなく、ここ『東都共和国』に『亡命』したのだと人事の担当の大尉は言った。亡命後、東和共和国陸軍に引き抜かれた彼女は、アサルト・モジュールの教導隊でも、その『強さ』を発揮したという。
人事の担当者の大尉の禿げ頭が頼んでもいないのに彼女の活躍について熱く語る様に閉口したことを誠は思い出した。しかし、『人類最強』と言う名をほしいままにしたクバルカ・ラン中佐は、その担当者をして『変な気を起こして』、三年前に発足した司法局実働部隊のパイロットをまとめる仕事についてしまった。それ以上の説明を人事の担当者が拒んだので、誠が彼女について知っていることはそれだけだった。
『人類最強』と呼ばれるエースがいるのに『特殊な部隊』扱いされている司法局実働部隊と言う存在に誠はあまり期待をしないことにしていた。
「クバルカ・ラン中佐か……」
誠はあまり期待できない司法局実働部隊のことを考えるよりも、『人類最強』の女性エースのことを考えることに決めた。誠はこの時、せめて写真ぐらい見せてもらっても良かったのではないかと後悔した。ただ人事担当者は『一目でわかる』と言ったが、それが何を意味するのか誠にはさっぱりわからなかった。これは誠の得意の妄想力でそのエース女性パイロットを想像して、それらしい人に声を掛けてみるほかはない。そう考え、誠は自分の想像するクバルカ・ラン中佐像を作り上げることにした。
「十年前の戦争でエース……ってことは、当時二十歳前後ってことだから、今は三十歳より上のお姉さんってことか……『人類最強』のエースって言うぐらいだからがっちりとした大柄の人なんだろうな……」
まあ、ここまでは普通の想像である。だが、誠は人より少し、想像力が豊かだった。
「美人だと良いな……すっごい美人だっからな……もしかして……巨乳だったりする?」
自分の妄想に取りつかれだらしない顔でニヤニヤしながら誠はぼんやりと低い天井を眺めていた。
そう独り言を言いながら、誠はただ行きかう人々を眺めていた。周りを見回していた誠だが、あることに気づいた。
ちょうど正面のこの駐車場の一番奥の柱の前に小さな女の子が立っていた。そして、誠がここにきてからこうして周りを見回している間も彼女は誠をじっと見つめていた。
「なんで女の子が?」
ここは軍の施設である。関係者以外はそもそも駐車場に入るゲートのところで止められるはずだ。
「あれか……ここの職員の子供かなにかか……」
誠はそう考えを切り替えて小さな女の子から目をそらした。誠は別に好きでここに立っているわけではない。
誠は『女の人』を待っていた。彼を迎えの車に乗せて、辞令に書いてある配属先の司法局実働部隊とか言う『特殊な部隊』に連れて行ってくれる迎えの人物を待っていた。誠も馬鹿ではないので、その人物が何者なのかは、辞令を渡した禿の大尉に聞いて名前と身分、その人物の略歴ぐらいは知っていた。
迎えに来るのは『クバルカ・ラン』と言う女性だと聞いた。階級は中佐とだけ人事の担当者から伝えられていた。
十年前、ここ東和共和国の西に浮かぶ巨大な大陸『遼大陸』は『戦乱』に包まれていた。特に、その南部であった『遼南内戦』は凄惨を極めるものだったと誠も聞いていた。人事の担当者が言うには『クバルカ・ラン中佐』はその『内戦』の敗戦国『遼南共和国軍』のエースだと聞いていた。
彼女は『紅い』専用アサルト・モジュールに乗って、目覚ましい戦功を立てたと言う。その後、彼女はなぜか内戦終了後成立した『遼南民主国』ではなく、ここ『東都共和国』に『亡命』したのだと人事の担当の大尉は言った。亡命後、東和共和国陸軍に引き抜かれた彼女は、アサルト・モジュールの教導隊でも、その『強さ』を発揮したという。
人事の担当者の大尉の禿げ頭が頼んでもいないのに彼女の活躍について熱く語る様に閉口したことを誠は思い出した。しかし、『人類最強』と言う名をほしいままにしたクバルカ・ラン中佐は、その担当者をして『変な気を起こして』、三年前に発足した司法局実働部隊のパイロットをまとめる仕事についてしまった。それ以上の説明を人事の担当者が拒んだので、誠が彼女について知っていることはそれだけだった。
『人類最強』と呼ばれるエースがいるのに『特殊な部隊』扱いされている司法局実働部隊と言う存在に誠はあまり期待をしないことにしていた。
「クバルカ・ラン中佐か……」
誠はあまり期待できない司法局実働部隊のことを考えるよりも、『人類最強』の女性エースのことを考えることに決めた。誠はこの時、せめて写真ぐらい見せてもらっても良かったのではないかと後悔した。ただ人事担当者は『一目でわかる』と言ったが、それが何を意味するのか誠にはさっぱりわからなかった。これは誠の得意の妄想力でそのエース女性パイロットを想像して、それらしい人に声を掛けてみるほかはない。そう考え、誠は自分の想像するクバルカ・ラン中佐像を作り上げることにした。
「十年前の戦争でエース……ってことは、当時二十歳前後ってことだから、今は三十歳より上のお姉さんってことか……『人類最強』のエースって言うぐらいだからがっちりとした大柄の人なんだろうな……」
まあ、ここまでは普通の想像である。だが、誠は人より少し、想像力が豊かだった。
「美人だと良いな……すっごい美人だっからな……もしかして……巨乳だったりする?」
自分の妄想に取りつかれだらしない顔でニヤニヤしながら誠はぼんやりと低い天井を眺めていた。
0
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
あなたがそう望んだから
まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」
思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。
確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。
喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。
○○○○○○○○○○
誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる