904 / 1,505
第4章 戦線
軍閥首領の馬車馬
しおりを挟む
嵯峨は自分の肩を何度か揉みながらクリスを引き連れて食堂を出た。
走り回る内勤隊員から邪険にされているのを気にするような嵯峨に連れられてクリスはそのまま駐屯地の広場に出た。出撃は続いており、偵察部隊と思われるバイクの集団が銃の点検を受けているところだった。
「俺の馬車馬ですが……結構狭いですけど大丈夫ですか? 」
格納庫の前の扉で嵯峨が振り返る。それを合図にバイクに乗った隊員達が一斉にゲートのある南側に向けてアクセルを吹かして進む。
「まあ無理は覚悟の話ですから 」
そう言うと嵯峨についていくクリス。さらにバイクの部隊のあとは掃討部隊と思われる四輪駆動車に重機関銃を載せた車列が出撃しようとしていた。
「かなり大規模な作戦になるようですね……ほぼ全部隊ですか? 」
答えなど期待せずに嵯峨の表情を読もうとするクリス。
「そうですかねえ 」
嵯峨ははぐらかすようにそう言うとハンガーの中に入った。すでに二式は全機出動が終わっていて奥の嵯峨の四式の周りに整備班員がたむろしているだけだった。
「間に合いましたね? 」
その中に白い髪をなびかせるキーラがコックピットの中で作業をしている部下に指示を出している姿がクリスにも見えた。キーラはわざとクリスと目が合わないようにして嵯峨に声をかけてきた。
「誰に言ってるんだよ? キーラ。補助席の様子はどう? 」
「ばっちりですよ! 元々コックピット内部の重力制御ユニットを搭載する予定の機体ですからスペースは結構ありましたから 」
四式のコックピットから顔を出す少年技官から書類を受け取るとキーラが叫んだ。
「ほんじゃあよろしく 」
そう言うと嵯峨は雪駄を履いたまま自分の愛機まで歩いていく。クリスは注意するべきなのか迷いながら彼に続いて階段を上った。
「予備部品どうしたんだ? 」
「こんなポンコツにそんなもの無いですよ。二式の部品を加工して充ててるんですから、注意して乗ってくださいね 」
キーラはそう言うとコックピットの前の場所を嵯峨とクリスに譲った。中を覗きこむと全面のモニターがハンガーの中の光景を映し出しているのが見える。
「全周囲型モニターですか。こんなものは四式には…… 」
「ああ、これは二式の予備パーツを改造して作ったんですよ。まあ明華は良い仕事してくれてますから 」
嵯峨はそう言うとコックピットの前にある計器類を押し下げた。
「どうぞ、奥に 」
嵯峨の好意に甘えて完全にとってつけたと判る席に体を押し込むクリス。嵯峨も遼州人としては大柄なので体を折り曲げるようにしてパイロットシートに身を沈める。
「御武運を! 」
キーラの言葉を受けた嵯峨は手で軽く挨拶をした後、ハッチを下げ、装甲板を下ろした。モニターの輝きがはっきりとして周囲の景色が鮮やかに映し出される。そんな状況を楽しむかのように鼻歌を交えながら嵯峨はそのままシートベルトをつけた。
クリスも頼りないシートベルトでほとんどスプリングもきいていない硬いシートに体を固定した。
「ほんじゃあ明華によろしく! 」
嵯峨はスピーカーを通して叫んだ。キーラ達がハンガーで手を振るのに見送られて黒い四式はゆっくりと格納庫を出た。
走り回る内勤隊員から邪険にされているのを気にするような嵯峨に連れられてクリスはそのまま駐屯地の広場に出た。出撃は続いており、偵察部隊と思われるバイクの集団が銃の点検を受けているところだった。
「俺の馬車馬ですが……結構狭いですけど大丈夫ですか? 」
格納庫の前の扉で嵯峨が振り返る。それを合図にバイクに乗った隊員達が一斉にゲートのある南側に向けてアクセルを吹かして進む。
「まあ無理は覚悟の話ですから 」
そう言うと嵯峨についていくクリス。さらにバイクの部隊のあとは掃討部隊と思われる四輪駆動車に重機関銃を載せた車列が出撃しようとしていた。
「かなり大規模な作戦になるようですね……ほぼ全部隊ですか? 」
答えなど期待せずに嵯峨の表情を読もうとするクリス。
「そうですかねえ 」
嵯峨ははぐらかすようにそう言うとハンガーの中に入った。すでに二式は全機出動が終わっていて奥の嵯峨の四式の周りに整備班員がたむろしているだけだった。
「間に合いましたね? 」
その中に白い髪をなびかせるキーラがコックピットの中で作業をしている部下に指示を出している姿がクリスにも見えた。キーラはわざとクリスと目が合わないようにして嵯峨に声をかけてきた。
「誰に言ってるんだよ? キーラ。補助席の様子はどう? 」
「ばっちりですよ! 元々コックピット内部の重力制御ユニットを搭載する予定の機体ですからスペースは結構ありましたから 」
四式のコックピットから顔を出す少年技官から書類を受け取るとキーラが叫んだ。
「ほんじゃあよろしく 」
そう言うと嵯峨は雪駄を履いたまま自分の愛機まで歩いていく。クリスは注意するべきなのか迷いながら彼に続いて階段を上った。
「予備部品どうしたんだ? 」
「こんなポンコツにそんなもの無いですよ。二式の部品を加工して充ててるんですから、注意して乗ってくださいね 」
キーラはそう言うとコックピットの前の場所を嵯峨とクリスに譲った。中を覗きこむと全面のモニターがハンガーの中の光景を映し出しているのが見える。
「全周囲型モニターですか。こんなものは四式には…… 」
「ああ、これは二式の予備パーツを改造して作ったんですよ。まあ明華は良い仕事してくれてますから 」
嵯峨はそう言うとコックピットの前にある計器類を押し下げた。
「どうぞ、奥に 」
嵯峨の好意に甘えて完全にとってつけたと判る席に体を押し込むクリス。嵯峨も遼州人としては大柄なので体を折り曲げるようにしてパイロットシートに身を沈める。
「御武運を! 」
キーラの言葉を受けた嵯峨は手で軽く挨拶をした後、ハッチを下げ、装甲板を下ろした。モニターの輝きがはっきりとして周囲の景色が鮮やかに映し出される。そんな状況を楽しむかのように鼻歌を交えながら嵯峨はそのままシートベルトをつけた。
クリスも頼りないシートベルトでほとんどスプリングもきいていない硬いシートに体を固定した。
「ほんじゃあ明華によろしく! 」
嵯峨はスピーカーを通して叫んだ。キーラ達がハンガーで手を振るのに見送られて黒い四式はゆっくりと格納庫を出た。
0
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
もう、終わった話ですし
志位斗 茂家波
ファンタジー
一国が滅びた。
その知らせを聞いても、私には関係の無い事。
だってね、もう分っていたことなのよね‥‥‥
‥‥‥たまにやりたくなる、ありきたりな婚約破棄ざまぁ(?)もの
少々物足りないような気がするので、気が向いたらオマケ書こうかな?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
「おまえを愛することはない!」と言ってやったのに、なぜ無視するんだ!
七辻ゆゆ
ファンタジー
俺を見ない、俺の言葉を聞かない、そして触れられない。すり抜ける……なぜだ?
俺はいったい、どうなっているんだ。
真実の愛を取り戻したいだけなのに。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
王家も我が家を馬鹿にしてますわよね
章槻雅希
ファンタジー
よくある婚約者が護衛対象の王女を優先して婚約破棄になるパターンのお話。あの手の話を読んで、『なんで王家は王女の醜聞になりかねない噂を放置してるんだろう』『てか、これ、王家が婚約者の家蔑ろにしてるよね?』と思った結果できた話。ひそかなサブタイは『うちも王家を馬鹿にしてますけど』かもしれません。
『小説家になろう』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる