871 / 1,505
第50章 国士落つ
信じられぬ勝利
しおりを挟む
「撤退やて?」
明石は機体の状況確認を終えた画面を見ながらつぶやいていた。
『どうしたんだろうな。もう一波攻撃を仕掛けられたら……負けてるぞ』
そんな魚住のつぶやきに頷く明石。安東の部隊を半分以上片付けたが部下は一人として生き残ってはいなかった。二人とも周りの機体の残骸を見ながら静かにヘルメットを脱いだ。
「こらまあ……悲惨やな」
周りには数知れぬデブリ。それが昨日まで笑っていた人間の操縦していた機体だったとはとても思えない状況だった。
『明石、魚住。すぐ帰等しろ。追撃戦の準備に当たるぞ』
別所の冷静な言葉に思わず明石は熱くなるところだった。
「死んだんやで……人が一杯死んだんやで」
『分かっているが感傷に浸れるほど世の中が甘くないのは貴様も知っているだろ?』
淡々とつぶやく別所の顔を見る。すでに割り切ったと言うような表情の黒田がヘルメットを被っていた。
『晋一よう。俺にも一分ぐらい部下の弔いの黙祷をする時間をくれよ』
魚住の言葉に明石も大きく頷いた。
『まあいいだろう。だが時間は何よりも貴重なのを覚えておけ』
別所はそう言うと通信を切った。
「あいつも辛いんや。わかったげなあかんで」
『言われねえでも分かってるよ』
魚住はそう言うと目を閉じうつむく。明石も僧職に有ったものらしくポケットに入れていた数珠を取り出すと金属片の散らばる空間を見つめて静かに手を合わせた。
明石は機体の状況確認を終えた画面を見ながらつぶやいていた。
『どうしたんだろうな。もう一波攻撃を仕掛けられたら……負けてるぞ』
そんな魚住のつぶやきに頷く明石。安東の部隊を半分以上片付けたが部下は一人として生き残ってはいなかった。二人とも周りの機体の残骸を見ながら静かにヘルメットを脱いだ。
「こらまあ……悲惨やな」
周りには数知れぬデブリ。それが昨日まで笑っていた人間の操縦していた機体だったとはとても思えない状況だった。
『明石、魚住。すぐ帰等しろ。追撃戦の準備に当たるぞ』
別所の冷静な言葉に思わず明石は熱くなるところだった。
「死んだんやで……人が一杯死んだんやで」
『分かっているが感傷に浸れるほど世の中が甘くないのは貴様も知っているだろ?』
淡々とつぶやく別所の顔を見る。すでに割り切ったと言うような表情の黒田がヘルメットを被っていた。
『晋一よう。俺にも一分ぐらい部下の弔いの黙祷をする時間をくれよ』
魚住の言葉に明石も大きく頷いた。
『まあいいだろう。だが時間は何よりも貴重なのを覚えておけ』
別所はそう言うと通信を切った。
「あいつも辛いんや。わかったげなあかんで」
『言われねえでも分かってるよ』
魚住はそう言うと目を閉じうつむく。明石も僧職に有ったものらしくポケットに入れていた数珠を取り出すと金属片の散らばる空間を見つめて静かに手を合わせた。
0
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
あなたがそう望んだから
まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」
思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。
確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。
喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。
○○○○○○○○○○
誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる