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第35章 政治家の慧眼
臆病者と政治屋
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「あのな、かなめ。お前も何度か地下佐賀の大将にはあったろ?どう見る」
「どう見ると言われても……」
曖昧なかなめの返事に父親の顔は厳しくなる。ようやく頭のデータから髭面の小男の姿を思い出してみた。
「小さかったような……」
「そんな外見の話じゃ点はあげられないな」
普段は家族の前ではいい加減でだらしの無い父だが、政敵を目の前にして論破する際の気合を何度か見たことのあるかなめの表情は硬くなる。
「俺は正直お前にはこれまでの西園寺家は譲るつもりは無いんだ。爺さんも俺も反骨で鳴らした一門だ。お前は度胸は据わっているがそれだけじゃ世間を渡っていくのは無理だ。軍人になるのを最後は許したのもお前の人を見る目が甘いからだ。その目つきや言動で一度会った人間の特徴をすぐに捉えることができるかどうか。四大公家なんぞに生まれるとそれくらいの芸当は求められるんだぞ。良く覚えて置け」
珍しい父親の説教にかなめは頭を掻きながらどう答えるか迷っていた。
「分かったの?かなめちゃん」
猫なで声の康子。ここで逆らえばどうなるか分からないと言うことでかなめは仕方なく頷く。
「じゃあ、佐賀高家。どういう人物だと見る」
再びの父親の問いかけにしばらく要は考えていた。
「気が強いような……」
「まさか……あいつは小心者だよ。さも無きゃ嵯峨本家相続のごたごたの時に新三郎の首と胴体が離れているはずだ」
あっさりと自説を覆す父に短気な要の視線は鋭くとがった。
「実際命を賭けてまで貴族制を守ろうと言う人間がどれだけいるか……とりあえず利益だけを見て動いている人間は御しやすいものさ」
父の笑いにどうにも納得できないような表情を浮かべる要。母、康子は親子でそっくりなたれ目を見て面白そうに微笑んでいる。
「じゃあ佐賀さんが寝返ってくるわけですね」
「あのなあ、すぐに結論を出そうとするのは良くない癖だ。止めたほうがいい」
「裏切るって言ったのは親父じゃないか」
そう言ってかなめは康子を見た。父を『親父』と呼んだことで明らかに康子は不機嫌そうな顔をしている。冷や汗を流しながらかなめは父に向き直った。
「寝返るって言うのはそれなりの勇気がいることだ。そこまでの器量は佐賀君には無いよ。ただ、いくつかの烏丸派ということで宇宙に上がった人達には色々粉はかけてみたよ。結果はかなりいい具合だ。確かに清原君は切れ者だ。仕事も速く決断力もある。だが人徳は……」
「まるで自分は人徳があるみたいじゃないか」
「かなめさん!」
「すいません!お母様!」
康子に謝りながらもかなめは納得できないでいた。父もようやく娘の人生経験が足りないことを悟って大きなため息をついた。
「ともかく戦場は入り乱れての乱戦になるだろう。そうなれば実戦経験の豊富な赤松君に分がある。清原君も懐刀の安東君の使い方次第で勝機は見出せるだろうが……」
「まるで人事だな。清原准将が勝ったら親父は斬首だと思うぞ」
あくまで楽しんでいるような父に釘を刺してみた。
「なあに、人の上に立つと言うのはそれなりのリスクを負うものさ。俺は四大公の筆頭に生まれちまった。兄貴は遼南で新三郎の皇位継承権に絡んで好き勝手やって戦死。そんな弟もそのまま遼南王家に魅入られて今じゃあ遼南皇帝だ。俺が責務を果たさないわけに行かないだろ?まったく因果な生まれだよ」
西園寺はそう言うと妻子を見ながら満足げに頷いた。
「どう見ると言われても……」
曖昧なかなめの返事に父親の顔は厳しくなる。ようやく頭のデータから髭面の小男の姿を思い出してみた。
「小さかったような……」
「そんな外見の話じゃ点はあげられないな」
普段は家族の前ではいい加減でだらしの無い父だが、政敵を目の前にして論破する際の気合を何度か見たことのあるかなめの表情は硬くなる。
「俺は正直お前にはこれまでの西園寺家は譲るつもりは無いんだ。爺さんも俺も反骨で鳴らした一門だ。お前は度胸は据わっているがそれだけじゃ世間を渡っていくのは無理だ。軍人になるのを最後は許したのもお前の人を見る目が甘いからだ。その目つきや言動で一度会った人間の特徴をすぐに捉えることができるかどうか。四大公家なんぞに生まれるとそれくらいの芸当は求められるんだぞ。良く覚えて置け」
珍しい父親の説教にかなめは頭を掻きながらどう答えるか迷っていた。
「分かったの?かなめちゃん」
猫なで声の康子。ここで逆らえばどうなるか分からないと言うことでかなめは仕方なく頷く。
「じゃあ、佐賀高家。どういう人物だと見る」
再びの父親の問いかけにしばらく要は考えていた。
「気が強いような……」
「まさか……あいつは小心者だよ。さも無きゃ嵯峨本家相続のごたごたの時に新三郎の首と胴体が離れているはずだ」
あっさりと自説を覆す父に短気な要の視線は鋭くとがった。
「実際命を賭けてまで貴族制を守ろうと言う人間がどれだけいるか……とりあえず利益だけを見て動いている人間は御しやすいものさ」
父の笑いにどうにも納得できないような表情を浮かべる要。母、康子は親子でそっくりなたれ目を見て面白そうに微笑んでいる。
「じゃあ佐賀さんが寝返ってくるわけですね」
「あのなあ、すぐに結論を出そうとするのは良くない癖だ。止めたほうがいい」
「裏切るって言ったのは親父じゃないか」
そう言ってかなめは康子を見た。父を『親父』と呼んだことで明らかに康子は不機嫌そうな顔をしている。冷や汗を流しながらかなめは父に向き直った。
「寝返るって言うのはそれなりの勇気がいることだ。そこまでの器量は佐賀君には無いよ。ただ、いくつかの烏丸派ということで宇宙に上がった人達には色々粉はかけてみたよ。結果はかなりいい具合だ。確かに清原君は切れ者だ。仕事も速く決断力もある。だが人徳は……」
「まるで自分は人徳があるみたいじゃないか」
「かなめさん!」
「すいません!お母様!」
康子に謝りながらもかなめは納得できないでいた。父もようやく娘の人生経験が足りないことを悟って大きなため息をついた。
「ともかく戦場は入り乱れての乱戦になるだろう。そうなれば実戦経験の豊富な赤松君に分がある。清原君も懐刀の安東君の使い方次第で勝機は見出せるだろうが……」
「まるで人事だな。清原准将が勝ったら親父は斬首だと思うぞ」
あくまで楽しんでいるような父に釘を刺してみた。
「なあに、人の上に立つと言うのはそれなりのリスクを負うものさ。俺は四大公の筆頭に生まれちまった。兄貴は遼南で新三郎の皇位継承権に絡んで好き勝手やって戦死。そんな弟もそのまま遼南王家に魅入られて今じゃあ遼南皇帝だ。俺が責務を果たさないわけに行かないだろ?まったく因果な生まれだよ」
西園寺はそう言うと妻子を見ながら満足げに頷いた。
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