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第31章 集結
陸軍の動き
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「どうだ……どれだけ集まった」
それほど広く無い帝都の近郊にある胡州下河内基地の司令室に醍醐は身を潜めていた。本来連隊規模しかいないはずの陸軍基地は陸軍、海軍両軍の兵士が官派決起の際には予定していた通りこの基地へと集結していた。そこで醍醐はひたすらすすっていたラーメンのどんぶりから顔を上げて目の前の連隊長の小見中佐に顔を向けていた。
「現在胡州の基地の四割はうちが我々に同調することを表明しました。あちらが抑えてるのは二割。まあ問題は宇宙に上がる手段を清原一派に握られていることですが……」
その言葉に頷く醍醐。彼は清原達の決起が近いと知ってからすべて準備を整えてこの内紛に備えていた。下河内連隊は元々混成連隊として嵯峨惟基が立ち上げた部隊。上層部には醍醐の顔が利いた。
「しかし……あちらも大変でしょうね。うちにも下士官クラスで烏丸さんの所から寝返ってきた兵隊がたくさんいるもんで正直困っているくらいでして……」
准将の階級章をつけた髭の陸軍士官が笑う。
「烏丸さん達の兵隊は士気が低いですからねえ……って最初から自分達の利益にならない公約をバンバン掲げている連中と心中するほどお人よしは多くないと言うことですよ」
そう言うと醍醐は仕上げとばかりに湯飲みのお茶をすすりこむ。彼が食事を終えると各部隊の指揮官達は満面の笑みで彼の言葉を待った。そこには活気があった。その活気が醍醐には非常に心地よいものに感じられて自然と表情が緩む。部下達はとりあえず醍醐が情報を待っていると知るとすぐに話を始めようとする。醍醐はそれを精すると一番身近にいた小見に目を向けた。
「兵力では勝っているんですが……主戦場が宇宙となると状況はいささか不利ですね。宇宙に上がるには四条畷か極地港でないとアサルト・モジュールで宇宙戦争ができる船は扱っていないですから……中小の港から断続的に小型艦を上げると言う手もありますが危険が多すぎて……」
小見の一言に醍醐は頭を掻く。
「四条畷は今は清原さんの直系の部隊が十重二十重で守りを固めてるはずだ。さすがにあの部隊とやりあうには戦力が足りないなあ……」
「醍醐さん。極地の池さんには?」
小見の言葉にがっかりしたように肩を落としながら見上げる醍醐。その姿が滑稽で隣の陸軍准将が噴出していた。
「小見君。池の野郎の頭の固さは有名だからな。清原さんのことは嫌いだろうが保科さんの遺志を継ぐとなれば話は別だ。保科さんには色々お世話になった池のことだ。簡単にはいかないぞ」
そう言うと醍醐は外の喧騒を見上げるべく立ち上がった。
「一分一秒が惜しい。早速打って出る。各部隊に通達を」
醍醐の言葉に士官達はそのまま立ち上がり帰りを待っている部下の下に散った。
「勝てますか?」
「勝たなきゃ終りだ。それはあちらも同じだろうがね」
小見の問いに醍醐はそう答えると胡州の赤い空を見上げて大きくため息をついた。
それほど広く無い帝都の近郊にある胡州下河内基地の司令室に醍醐は身を潜めていた。本来連隊規模しかいないはずの陸軍基地は陸軍、海軍両軍の兵士が官派決起の際には予定していた通りこの基地へと集結していた。そこで醍醐はひたすらすすっていたラーメンのどんぶりから顔を上げて目の前の連隊長の小見中佐に顔を向けていた。
「現在胡州の基地の四割はうちが我々に同調することを表明しました。あちらが抑えてるのは二割。まあ問題は宇宙に上がる手段を清原一派に握られていることですが……」
その言葉に頷く醍醐。彼は清原達の決起が近いと知ってからすべて準備を整えてこの内紛に備えていた。下河内連隊は元々混成連隊として嵯峨惟基が立ち上げた部隊。上層部には醍醐の顔が利いた。
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准将の階級章をつけた髭の陸軍士官が笑う。
「烏丸さん達の兵隊は士気が低いですからねえ……って最初から自分達の利益にならない公約をバンバン掲げている連中と心中するほどお人よしは多くないと言うことですよ」
そう言うと醍醐は仕上げとばかりに湯飲みのお茶をすすりこむ。彼が食事を終えると各部隊の指揮官達は満面の笑みで彼の言葉を待った。そこには活気があった。その活気が醍醐には非常に心地よいものに感じられて自然と表情が緩む。部下達はとりあえず醍醐が情報を待っていると知るとすぐに話を始めようとする。醍醐はそれを精すると一番身近にいた小見に目を向けた。
「兵力では勝っているんですが……主戦場が宇宙となると状況はいささか不利ですね。宇宙に上がるには四条畷か極地港でないとアサルト・モジュールで宇宙戦争ができる船は扱っていないですから……中小の港から断続的に小型艦を上げると言う手もありますが危険が多すぎて……」
小見の一言に醍醐は頭を掻く。
「四条畷は今は清原さんの直系の部隊が十重二十重で守りを固めてるはずだ。さすがにあの部隊とやりあうには戦力が足りないなあ……」
「醍醐さん。極地の池さんには?」
小見の言葉にがっかりしたように肩を落としながら見上げる醍醐。その姿が滑稽で隣の陸軍准将が噴出していた。
「小見君。池の野郎の頭の固さは有名だからな。清原さんのことは嫌いだろうが保科さんの遺志を継ぐとなれば話は別だ。保科さんには色々お世話になった池のことだ。簡単にはいかないぞ」
そう言うと醍醐は外の喧騒を見上げるべく立ち上がった。
「一分一秒が惜しい。早速打って出る。各部隊に通達を」
醍醐の言葉に士官達はそのまま立ち上がり帰りを待っている部下の下に散った。
「勝てますか?」
「勝たなきゃ終りだ。それはあちらも同じだろうがね」
小見の問いに醍醐はそう答えると胡州の赤い空を見上げて大きくため息をついた。
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