レジェンド・オブ・ダーク 遼州司法局異聞

橋本 直

文字の大きさ
上 下
780 / 1,505
第7章 初めての部下

天才の娘

しおりを挟む
「そう言えば時々ワレの親父さんが来とるようやけど……」 

「そうなんでありますか?」 

 きびきびと話す楓に明石はしばらく彼女と付き合うことを選んで端末のモニターを休止させた。

「ああ、知らんのやったらええわ。それよりなんで海軍に?」 

「はい!お姉さま……いえ、西園寺かなめ准尉の勧めで……僕なら陸軍では無く海軍がいいと言うことでしたので」 

 その言葉に明石は皮肉の笑みを浮かべざるを得なかった。烏丸派の牙城の陸軍で苦労する対立勢力の一人娘。その苦労は容易に想像できた。楓の口ぶりから要とは相当仲が良いのだろう。苦労をさせまいと目の前の少女に海軍行きを進めるサイボーグの女性の姿がまぶたの裏に浮かぶ。

「ああ、親戚同士仲のええことはええことや。じゃあ何で特機部隊を選んだ」 

 その言葉にしばらく考えた後、楓は口を開く。

「父上の影響を受けました!」 

 よどみも迷いも無かった。先の大戦での遼南戦線。そして遼南内戦。そして現在続いている同盟による軍事活動。どの場所にも黒いアサルト・モジュールを駆る嵯峨の姿があった。エース・オブ・エース。そのような言葉をかけたのなら自虐的な笑顔を浮かべてタバコの煙を吹きかけてくるだろう人物の顔が脳裏をよぎる。

「ちょい待ってくれや」 

 そう言うと明石は再び端末の画像を見ると楓の士官学校での成績を見てみた。

「ほう、技術系の成績が良いな。それと戦闘系。特に射撃と格闘戦が得意……うちの先輩達にも見せたい成績だな」 

「恐縮であります!」 

 成績を見た後に楓の笑顔を見てみるとその長い前髪と結わえられた髪は戦国時代のじゃじゃ馬姫のようにも見えた。むさくるしい隊長室の中では一段と映える。そんな気持ちに明石の頬は緩んだ。

「それじゃあ、うちの悪たれ共と顔合わせせなあかんなあ……そうや。うちの隊の本文とする言葉、知っとるか?」 

 そんな明石の言葉にしばらく考える楓。

「それはなんでありますか?」 

 素直に答える少女の姿につい笑みが浮かぶ明石。

「『至誠』って言葉や。誠を尽くすのが武人の本懐。後に指揮官となるんやったらちゃんと覚えとき」 

「はい分かりました!」 

 その言葉に合わせて明石も立ち上がる。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

もう、終わった話ですし

志位斗 茂家波
ファンタジー
一国が滅びた。 その知らせを聞いても、私には関係の無い事。 だってね、もう分っていたことなのよね‥‥‥ ‥‥‥たまにやりたくなる、ありきたりな婚約破棄ざまぁ(?)もの 少々物足りないような気がするので、気が向いたらオマケ書こうかな?

【完結】そして、誰もいなくなった

杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」 愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。 「触るな!」 だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。 「突き飛ばしたぞ」 「彼が手を上げた」 「誰か衛兵を呼べ!」 騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。 そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。 そして誰もいなくなった。 彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。 これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。 ◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。 3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。 3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました! 4/1、完結しました。全14話。

「おまえを愛することはない!」と言ってやったのに、なぜ無視するんだ!

七辻ゆゆ
ファンタジー
俺を見ない、俺の言葉を聞かない、そして触れられない。すり抜ける……なぜだ? 俺はいったい、どうなっているんだ。 真実の愛を取り戻したいだけなのに。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

王家も我が家を馬鹿にしてますわよね

章槻雅希
ファンタジー
 よくある婚約者が護衛対象の王女を優先して婚約破棄になるパターンのお話。あの手の話を読んで、『なんで王家は王女の醜聞になりかねない噂を放置してるんだろう』『てか、これ、王家が婚約者の家蔑ろにしてるよね?』と思った結果できた話。ひそかなサブタイは『うちも王家を馬鹿にしてますけど』かもしれません。 『小説家になろう』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...