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第18章 行動開始
行動開始
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「それじゃあ……方針はそれで決まったわけだから行こうじゃねえか」
かなめはそう言うと東都警察の紺色のジャンバーを肩に突っかけるようにして立ち上がる。とりあえず誠達が始めることにしたこと。それは新規の住民登録を行なった人物をすべて見て回ると言う地道な行動だった。
「しかし……本当にお巡りさんは大変よね。武装は拳銃とショットガンだけ?」
「ゴム弾入りの非殺傷弾入りだ。しかも一発撃ったら始末書一枚だそうだ」
アイシャもカウラも顔色は冴えない。司法局の丙種装備よりも落ちる装備に不満を言いたい気持ちは誠にもよく分かった。相手は法術師の能力を乗っ取る化け物である。空間制御系の法術を使われればショットガンなどお守り以下なのは嫌というほど分かっている。
「でも準軍事行動じゃないんですから実弾は……」
不満そうな女性陣を落ち着かせようと口を開いた誠。そんな彼を明らかにあざけるような視線でかなめが見つめてきた。
「奇麗事は良いけどよう。オメエは租界で撃ちまくらなかったか?」
「撃ちまくるのは誠ちゃんじゃなくてかなめちゃんでしょ?それ以前に誠ちゃんの下手な鉄砲を市街地で撃ちまくられたら私も困るわよ」
入り口に立ってニヤニヤ笑っているかなめを押しのけるようにしてアイシャはそのままドアを出た。そしてそこで何かとぶつかってよろめく。
「ごめんなさい……ああ、ラーナちゃん」
大柄なアイシャはよろめく程度で済んだが走ってきた小柄なラーナは廊下に倒れてぶつけたひじをさすっていた。ラーナはすぐに手にした荷物が無事か確認すると申し訳なさそうにアイシャを見上げた。
「あまり廊下は走るものじゃないな……」
「すいやせん!ベルガー大尉!」
カウラを見つけてすぐに立ち上がって敬礼をするラーナ。さすがに司法局法術特捜本部の捜査官と言うこともあって警察の制服はしっかり板についている。彼女ならこの手詰まり状態を打破してくれると誠は期待して彼女を見つめていた。
「神前曹長……」
「ああ、こいつは巡査部長だそうだ」
「そうなんですか?」
ニヤニヤ笑っているかなめから話を聞いてラーナは少しばかり得意げに誠を見上げていた。
「まあ無駄な挨拶は抜きにして、失礼するっす……」
そう言うと慣れた手つきで中央のテーブルに腰をかけたラーナは、手にした大きなバッグから携帯端末を取り出すと、手早く立体画像表示システムを起動した。すぐに近隣の交番のデータがオープンになり、その近辺のアパートの状況を表示する画面が移る。
「やはり捜査の基本は地道な聞き込みっすよね。恐らく犯人は年明け前後にこの豊川に転居してると思われるっすから各交番に新規の入居者のいるアパートやマンションを訪問する指示するっす」
「良いのかよ……簡単に言うけど。アタシ等は捜査会議にも出れない身分なんだぜ。それに訪問するって言ったって用件はどうするんだよ。『あなたは犯人ですか?』とか聞いてまわる気か?」
パイプ椅子に腰を下ろすと、自嘲気味な笑みを交えてつぶやくかなめにラーナはこともなげに微笑んで見せる。
「訪問の名目については問題ないっす。防災関係の書類を持たせて訪問てえ形をとるっす。それに先程ここに来る前に刑事課に寄ってきたっすからすでに話は通ってるっす」
かなめの不安そうな顔に淡々と答えるラーナの顔が面白くて誠が噴出しそうになる。それに殴るポーズをするかなめ。それを無視してラーナは端末の画面を切り替えた。
「現在15万件分のアパートやマンションが対象になるっぽいすけど、犯人が法術適正のある人物と仮定した場合、正直あまりいい物件には出会わないっすから……」
そう言うとすぐに画面が検索中のものに切り替わる。そして豊川市内の地図に赤い点と青い点が点滅する画面へと切り替わった。赤い点はどちらかといえば駅の周りや旧街道の周りという再開発前の古い町並みの中に集中している。一方青い点は新開発の公営団地や新しく延伸された私鉄の路線近辺に散らばっていた。
「この赤い点がかつて警察が捜査のために入ったことのあるアパートやマンションす。一方青いのが捜査を受けてねえマンション。青い点の方は正直あまり当たりが無いと思ったほうが良いっす。警邏の担当者も都合があるっすから赤い点から優先的に聞き込みを開始するのをおすすめするっす」
事も無げに言うラーナの言葉に誠達はただ感心しながら聞き入るしかなかった。
「あれか……建ててから年数が経ってるとか、駐車場が無いとか……条件が悪くてあまり入居者を選ばない物件の方が当たりを引く可能性が高いということか?」
あごに手を当てながら納得しながらカウラがうなづく。
「ベルガー大尉。さすがっすね。悲しいことっすけど入居条件の緩いところのほうが犯罪発生率は高いっすから。そこでさらに念を押す意味を込めてこの赤い物件に関しては直接私達が訪問するっす」
ラーナはそう言うと今度は地図から表へと画面を切り替える。
「おい、ラーナ。ずいぶん簡単に言うけど……それなりに数があるぞ?」
あっさり『直接訪問』などと口にするラーナを慌てたような声でいさめようとするかなめ。だがラーナはまるで動じることなくそれに答える。
「西園寺大尉も心配性っすね。この前の同盟厚生局の事件に比べたら調べる範囲は半分以下っすよ。しかも私達は司法局から法術関連の専門家ということで捜査に参加って形っすから。率先して捜査活動を行わないと行けないのは任務上仕方の無いっすよ」
思わず笑いを漏らしているラーナ。アイシャも納得がいったように腕組みをしながら頷いている。
「当然分かれての捜査になるな。全員でまわるのは効率が悪すぎる」
カウラはそう言うと誠達を見回した。
「西園寺と神前。それにカルビナで回ってくれ。私とアイシャで行動することにする」
「えー!なんで私とカウラちゃんなの?それになんでカウラちゃんがそう言うことを決めるのよ。私は警部!カウラちゃんは……」
まるで子供のように抗議するアイシャにカウラは穏やかな笑みを湛えながら続けた。
「お前はサボるからな、ほっとくと。それに司法局では階級はあまり意味は無いってことになってるだろ?先に決めたほうが勝ちだ」
カウラはそう言うと自分の小型携帯端末を胸のポケットから取り出しラーナの情報のダウンロードを始める。
「さてと……犯人め!見つけたらギトンギトンに伸してやる」
「西園寺さんそれだけは止めてください」
パンチのポーズをとるかなめを誠がなんとか眺める。そんな誠達の様子を端末をしまいながらラーナは楽しそうに眺めていた。
かなめはそう言うと東都警察の紺色のジャンバーを肩に突っかけるようにして立ち上がる。とりあえず誠達が始めることにしたこと。それは新規の住民登録を行なった人物をすべて見て回ると言う地道な行動だった。
「しかし……本当にお巡りさんは大変よね。武装は拳銃とショットガンだけ?」
「ゴム弾入りの非殺傷弾入りだ。しかも一発撃ったら始末書一枚だそうだ」
アイシャもカウラも顔色は冴えない。司法局の丙種装備よりも落ちる装備に不満を言いたい気持ちは誠にもよく分かった。相手は法術師の能力を乗っ取る化け物である。空間制御系の法術を使われればショットガンなどお守り以下なのは嫌というほど分かっている。
「でも準軍事行動じゃないんですから実弾は……」
不満そうな女性陣を落ち着かせようと口を開いた誠。そんな彼を明らかにあざけるような視線でかなめが見つめてきた。
「奇麗事は良いけどよう。オメエは租界で撃ちまくらなかったか?」
「撃ちまくるのは誠ちゃんじゃなくてかなめちゃんでしょ?それ以前に誠ちゃんの下手な鉄砲を市街地で撃ちまくられたら私も困るわよ」
入り口に立ってニヤニヤ笑っているかなめを押しのけるようにしてアイシャはそのままドアを出た。そしてそこで何かとぶつかってよろめく。
「ごめんなさい……ああ、ラーナちゃん」
大柄なアイシャはよろめく程度で済んだが走ってきた小柄なラーナは廊下に倒れてぶつけたひじをさすっていた。ラーナはすぐに手にした荷物が無事か確認すると申し訳なさそうにアイシャを見上げた。
「あまり廊下は走るものじゃないな……」
「すいやせん!ベルガー大尉!」
カウラを見つけてすぐに立ち上がって敬礼をするラーナ。さすがに司法局法術特捜本部の捜査官と言うこともあって警察の制服はしっかり板についている。彼女ならこの手詰まり状態を打破してくれると誠は期待して彼女を見つめていた。
「神前曹長……」
「ああ、こいつは巡査部長だそうだ」
「そうなんですか?」
ニヤニヤ笑っているかなめから話を聞いてラーナは少しばかり得意げに誠を見上げていた。
「まあ無駄な挨拶は抜きにして、失礼するっす……」
そう言うと慣れた手つきで中央のテーブルに腰をかけたラーナは、手にした大きなバッグから携帯端末を取り出すと、手早く立体画像表示システムを起動した。すぐに近隣の交番のデータがオープンになり、その近辺のアパートの状況を表示する画面が移る。
「やはり捜査の基本は地道な聞き込みっすよね。恐らく犯人は年明け前後にこの豊川に転居してると思われるっすから各交番に新規の入居者のいるアパートやマンションを訪問する指示するっす」
「良いのかよ……簡単に言うけど。アタシ等は捜査会議にも出れない身分なんだぜ。それに訪問するって言ったって用件はどうするんだよ。『あなたは犯人ですか?』とか聞いてまわる気か?」
パイプ椅子に腰を下ろすと、自嘲気味な笑みを交えてつぶやくかなめにラーナはこともなげに微笑んで見せる。
「訪問の名目については問題ないっす。防災関係の書類を持たせて訪問てえ形をとるっす。それに先程ここに来る前に刑事課に寄ってきたっすからすでに話は通ってるっす」
かなめの不安そうな顔に淡々と答えるラーナの顔が面白くて誠が噴出しそうになる。それに殴るポーズをするかなめ。それを無視してラーナは端末の画面を切り替えた。
「現在15万件分のアパートやマンションが対象になるっぽいすけど、犯人が法術適正のある人物と仮定した場合、正直あまりいい物件には出会わないっすから……」
そう言うとすぐに画面が検索中のものに切り替わる。そして豊川市内の地図に赤い点と青い点が点滅する画面へと切り替わった。赤い点はどちらかといえば駅の周りや旧街道の周りという再開発前の古い町並みの中に集中している。一方青い点は新開発の公営団地や新しく延伸された私鉄の路線近辺に散らばっていた。
「この赤い点がかつて警察が捜査のために入ったことのあるアパートやマンションす。一方青いのが捜査を受けてねえマンション。青い点の方は正直あまり当たりが無いと思ったほうが良いっす。警邏の担当者も都合があるっすから赤い点から優先的に聞き込みを開始するのをおすすめするっす」
事も無げに言うラーナの言葉に誠達はただ感心しながら聞き入るしかなかった。
「あれか……建ててから年数が経ってるとか、駐車場が無いとか……条件が悪くてあまり入居者を選ばない物件の方が当たりを引く可能性が高いということか?」
あごに手を当てながら納得しながらカウラがうなづく。
「ベルガー大尉。さすがっすね。悲しいことっすけど入居条件の緩いところのほうが犯罪発生率は高いっすから。そこでさらに念を押す意味を込めてこの赤い物件に関しては直接私達が訪問するっす」
ラーナはそう言うと今度は地図から表へと画面を切り替える。
「おい、ラーナ。ずいぶん簡単に言うけど……それなりに数があるぞ?」
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「西園寺大尉も心配性っすね。この前の同盟厚生局の事件に比べたら調べる範囲は半分以下っすよ。しかも私達は司法局から法術関連の専門家ということで捜査に参加って形っすから。率先して捜査活動を行わないと行けないのは任務上仕方の無いっすよ」
思わず笑いを漏らしているラーナ。アイシャも納得がいったように腕組みをしながら頷いている。
「当然分かれての捜査になるな。全員でまわるのは効率が悪すぎる」
カウラはそう言うと誠達を見回した。
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「えー!なんで私とカウラちゃんなの?それになんでカウラちゃんがそう言うことを決めるのよ。私は警部!カウラちゃんは……」
まるで子供のように抗議するアイシャにカウラは穏やかな笑みを湛えながら続けた。
「お前はサボるからな、ほっとくと。それに司法局では階級はあまり意味は無いってことになってるだろ?先に決めたほうが勝ちだ」
カウラはそう言うと自分の小型携帯端末を胸のポケットから取り出しラーナの情報のダウンロードを始める。
「さてと……犯人め!見つけたらギトンギトンに伸してやる」
「西園寺さんそれだけは止めてください」
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