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第13章 宿命の対決
教室
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『カット!まあ……なんというか……かなめちゃん……』
「あ?何が言いてえんだ?」
手を引いたかなめが明らかに不機嫌そうにつぶやく。
『まあ、良いわ。それじゃあ次のシーンね。今度は私も出るから吉田さん頼めますか?』
次のシャムの小学校の担任役でアイシャが登場する。吉田はテキストで『分かった』と返事を出す。恐らくはかなめの怪演に大笑いをしているんだろう。そう思うと誠はかなめに同情してしまった。
『じゃあ皆さんはご自由にどうぞ……かなめちゃんは自重』
「うるせえ!」
かなめの捨て台詞が響くと素早く周りが暗くなる。そしてしばらくたって再びカメラ目線に誠の視界が固定される。そこには小学校。特に誠には縁の無かったような制服を着た私立の小学校の教室の風景が広がっていた。シャムは元気そうに自分のスカートをめくろうとした男子生徒のズボンを引き摺り下ろす。そして彼とつるんで自分を挑発していた男子生徒達を追いかけ回し始めた。
『ナンバルゲニア中尉……似合いすぎ……』
あまりにはまるシャムの行動に誠は自然とつぶやいていた。
チャイムが鳴る。いかにもクラス委員といった眼鏡をかけたお嬢様チックな少女が立ち上がるのを見ると騒いでいた生徒達も一斉に自分の机に戻った。
その時ドアに思い切り何かがぶつかったような音が響いた。そしてしばらくの沈黙の後、アイシャが額をさすりながらドアを丁寧に開いて教室に入ってくる。
「先生!何したんですか!」
先ほどシャムにズボンを下ろされていた男子生徒が指をさして叫ぶ。周りの生徒達もそれに合わせて大きな声で笑い始めた。それが扉を開かずにクラスに入ろうとして額をぶつけた音だと言うのが分かり誠の頬も緩む。
「本当に!みんな意地悪なんだから!」
アイシャはしなを作りながらよたよたと教壇に向かう。なぜか眼鏡をかけているのはお約束ということで誠は突っ込まないでいるつもりだった。
「はい!静かに!礼!」
委員長の言葉で生徒達は一斉に礼をする。
「着席!」
再び生徒達は一糸乱れず席に着いた。大学以外は公立学校で過ごしてきた誠は少し違和感を感じながら目の前の小学校の教室を見つめていた。アイシャは知識は脳へのプリンティングで得ているはずなので彼女の学校のイメージが良く分かった。それを見て誠はニヤニヤしながらバイザーの中の世界の観察を再開した。
「皆さん!算数の宿題はやってきましたか!」
「はーい!」
元気な小学生達。中央の目立つ席についているシャムも元気に答える。
『あの、ナンバルゲニア中尉!はまりすぎ!』
完全に小学生になりきっているシャムに誠は苦笑いを浮かべた。
「そう!みんな元気にお返事できましたね!じゃあ早速これから書く問題をやってもらうわね」
そう言ってアイシャは相変わらずなよなよしながら黒板にチョークで数式を書き始めた。
『いまどき黒板は無いだろ!僕の小学校も磁力式モニターだったぞ!』
突っ込みたい衝動に駆られる自分を抑えて誠はアイシャの後姿を眺める。
『おい、神前』
出番の無いかなめが呼びかけてくる。
『東和ってまだ黒板使ってるのか?』
『そんなわけ無いじゃないですか!アイシャさんの暴走ですよこれは』
『ふーん』
納得したようにそう言うとかなめは黙り込むめ。10問の数式を書き終えたアイシャは満面の笑みで振り向く。
「じゃあ、この問題を誰にやってもらおうかしら?」
アイシャがこう言うと一斉に手を上げる子供達。だが、シャムは身を縮めてじっとしている。
「あら?シャムちゃんどうしたの?」
ポロリとアイシャがそう言うと周りの生徒達がシャムに目を向ける。
「あ!こいつ計算苦手だからな!」
「そうだよ!南條は算数できないからな!」
二人の男の子がそう言って笑う。それを見て怒ったように頬を膨らませたシャムが手を上げる。
「そんなこと無いよ!先生!私を指名してください!」
勢いよく立ち上がるシャムにアイシャは困ったような顔をした。
「良いの?本当に」
「大丈夫です!」
そう言うとシャムはそのまま黒板に向かう。背の小さい彼女は見上げるようにして一番最初の数式を見つめた。そしてゆっくりと深呼吸をする。
『あれくらいは解けるだろ?一応あいつは高校出てるんだから』
『そうですね』
かなめの言葉に誠も余裕を持ってシャムの方を眺めた。いわゆる鶴亀算の書かれた黒板の文字を凝視するシャム。彼女はゆっくりとチョークを手に持った。
『まさかな……分からないとか言わねえよな……』
シャムの動きが止まったのを見てかなめの口が重くなる。
しばらく経つ。そしてチョークを手にした腕を持ち上げる。
『大丈夫なんだろうな。あいつが小学生並みなのは良いが小学生以下ってことになると問題だぞ』
さすがにかなめも司法局のエースとして知られるシャムが小学校5年生の算数の問題ができないと言うことになれば良い恥さらしになると言うことに気づいた。
シャムは一瞬だけ黒板に触れたがすぐに手を引っ込めた。
『おい!』
その姿に誠とかなめは同時に突っ込みを入れていた。
誠は黒板の前で困った顔をしているシャムを見て問題を読み始めた。答えはすべて5。第一問さえ分かれば他の問題もすべて答えられるものだった。
だが、シャムは困った顔でアイシャを見つめる。
「あらー南條さん、分からないのかな?」
アイシャは冷や汗を流しながらヒロイン南條シャム役のシャムを見つめる。シャムはすぐに隣にあった椅子を指差した。
「先生!届かないからこれを使って良いですか?」
「良いわよ!」
さすがにこの問題が分からないわけが無いだろうとアイシャはほっとしてそれを許可する。シャムはそのままその椅子を運んでくると一番上の問題の下にそれを置く。
そのまま問題と見詰め合うシャム。
『5だぞ!その解答は5だぞ!』
『外道!そんなこと言わなくても師匠なら分かる……はず……』
シャムと多くの行動を共にしている小夏でもシャムのことが心配のようでそのままシャムに連絡する。シャムはそれを聞いてすべての答えに『5』と言う正解を書き始める。
『あーあ、不自然。これまずいんじゃないですか?』
シャムが楽しげに何も考えずに小夏の解答を聞いて答えを書いていく有様に誠は呆れる。
『あいつに空気を読めとか言うのは無駄だろ?』
かなめはそう言って乾いた笑いを漏らす。そのままシャムはすべての解答に5と言う数字を書き込むと意気揚々と自分の席に戻った。
「凄いわねシャムちゃん!全部正解よ!」
アイシャは明らかに不自然なシャムの行動をとがめるわけにも行かず歯が浮くような白々しさでそう言ってのけた。
「すげー南條。お前いつ勉強してたんだ?」
「何よ!あなた達が勝手に思い込んでいただけじゃないの。ねえ、南條さん」
明らかにシャムの間違いを期待していた男子に言い返す女子。いかにも小学校の教室の雰囲気が出来上がって誠はなんとか胸をなでおろした。
「あ?何が言いてえんだ?」
手を引いたかなめが明らかに不機嫌そうにつぶやく。
『まあ、良いわ。それじゃあ次のシーンね。今度は私も出るから吉田さん頼めますか?』
次のシャムの小学校の担任役でアイシャが登場する。吉田はテキストで『分かった』と返事を出す。恐らくはかなめの怪演に大笑いをしているんだろう。そう思うと誠はかなめに同情してしまった。
『じゃあ皆さんはご自由にどうぞ……かなめちゃんは自重』
「うるせえ!」
かなめの捨て台詞が響くと素早く周りが暗くなる。そしてしばらくたって再びカメラ目線に誠の視界が固定される。そこには小学校。特に誠には縁の無かったような制服を着た私立の小学校の教室の風景が広がっていた。シャムは元気そうに自分のスカートをめくろうとした男子生徒のズボンを引き摺り下ろす。そして彼とつるんで自分を挑発していた男子生徒達を追いかけ回し始めた。
『ナンバルゲニア中尉……似合いすぎ……』
あまりにはまるシャムの行動に誠は自然とつぶやいていた。
チャイムが鳴る。いかにもクラス委員といった眼鏡をかけたお嬢様チックな少女が立ち上がるのを見ると騒いでいた生徒達も一斉に自分の机に戻った。
その時ドアに思い切り何かがぶつかったような音が響いた。そしてしばらくの沈黙の後、アイシャが額をさすりながらドアを丁寧に開いて教室に入ってくる。
「先生!何したんですか!」
先ほどシャムにズボンを下ろされていた男子生徒が指をさして叫ぶ。周りの生徒達もそれに合わせて大きな声で笑い始めた。それが扉を開かずにクラスに入ろうとして額をぶつけた音だと言うのが分かり誠の頬も緩む。
「本当に!みんな意地悪なんだから!」
アイシャはしなを作りながらよたよたと教壇に向かう。なぜか眼鏡をかけているのはお約束ということで誠は突っ込まないでいるつもりだった。
「はい!静かに!礼!」
委員長の言葉で生徒達は一斉に礼をする。
「着席!」
再び生徒達は一糸乱れず席に着いた。大学以外は公立学校で過ごしてきた誠は少し違和感を感じながら目の前の小学校の教室を見つめていた。アイシャは知識は脳へのプリンティングで得ているはずなので彼女の学校のイメージが良く分かった。それを見て誠はニヤニヤしながらバイザーの中の世界の観察を再開した。
「皆さん!算数の宿題はやってきましたか!」
「はーい!」
元気な小学生達。中央の目立つ席についているシャムも元気に答える。
『あの、ナンバルゲニア中尉!はまりすぎ!』
完全に小学生になりきっているシャムに誠は苦笑いを浮かべた。
「そう!みんな元気にお返事できましたね!じゃあ早速これから書く問題をやってもらうわね」
そう言ってアイシャは相変わらずなよなよしながら黒板にチョークで数式を書き始めた。
『いまどき黒板は無いだろ!僕の小学校も磁力式モニターだったぞ!』
突っ込みたい衝動に駆られる自分を抑えて誠はアイシャの後姿を眺める。
『おい、神前』
出番の無いかなめが呼びかけてくる。
『東和ってまだ黒板使ってるのか?』
『そんなわけ無いじゃないですか!アイシャさんの暴走ですよこれは』
『ふーん』
納得したようにそう言うとかなめは黙り込むめ。10問の数式を書き終えたアイシャは満面の笑みで振り向く。
「じゃあ、この問題を誰にやってもらおうかしら?」
アイシャがこう言うと一斉に手を上げる子供達。だが、シャムは身を縮めてじっとしている。
「あら?シャムちゃんどうしたの?」
ポロリとアイシャがそう言うと周りの生徒達がシャムに目を向ける。
「あ!こいつ計算苦手だからな!」
「そうだよ!南條は算数できないからな!」
二人の男の子がそう言って笑う。それを見て怒ったように頬を膨らませたシャムが手を上げる。
「そんなこと無いよ!先生!私を指名してください!」
勢いよく立ち上がるシャムにアイシャは困ったような顔をした。
「良いの?本当に」
「大丈夫です!」
そう言うとシャムはそのまま黒板に向かう。背の小さい彼女は見上げるようにして一番最初の数式を見つめた。そしてゆっくりと深呼吸をする。
『あれくらいは解けるだろ?一応あいつは高校出てるんだから』
『そうですね』
かなめの言葉に誠も余裕を持ってシャムの方を眺めた。いわゆる鶴亀算の書かれた黒板の文字を凝視するシャム。彼女はゆっくりとチョークを手に持った。
『まさかな……分からないとか言わねえよな……』
シャムの動きが止まったのを見てかなめの口が重くなる。
しばらく経つ。そしてチョークを手にした腕を持ち上げる。
『大丈夫なんだろうな。あいつが小学生並みなのは良いが小学生以下ってことになると問題だぞ』
さすがにかなめも司法局のエースとして知られるシャムが小学校5年生の算数の問題ができないと言うことになれば良い恥さらしになると言うことに気づいた。
シャムは一瞬だけ黒板に触れたがすぐに手を引っ込めた。
『おい!』
その姿に誠とかなめは同時に突っ込みを入れていた。
誠は黒板の前で困った顔をしているシャムを見て問題を読み始めた。答えはすべて5。第一問さえ分かれば他の問題もすべて答えられるものだった。
だが、シャムは困った顔でアイシャを見つめる。
「あらー南條さん、分からないのかな?」
アイシャは冷や汗を流しながらヒロイン南條シャム役のシャムを見つめる。シャムはすぐに隣にあった椅子を指差した。
「先生!届かないからこれを使って良いですか?」
「良いわよ!」
さすがにこの問題が分からないわけが無いだろうとアイシャはほっとしてそれを許可する。シャムはそのままその椅子を運んでくると一番上の問題の下にそれを置く。
そのまま問題と見詰め合うシャム。
『5だぞ!その解答は5だぞ!』
『外道!そんなこと言わなくても師匠なら分かる……はず……』
シャムと多くの行動を共にしている小夏でもシャムのことが心配のようでそのままシャムに連絡する。シャムはそれを聞いてすべての答えに『5』と言う正解を書き始める。
『あーあ、不自然。これまずいんじゃないですか?』
シャムが楽しげに何も考えずに小夏の解答を聞いて答えを書いていく有様に誠は呆れる。
『あいつに空気を読めとか言うのは無駄だろ?』
かなめはそう言って乾いた笑いを漏らす。そのままシャムはすべての解答に5と言う数字を書き込むと意気揚々と自分の席に戻った。
「凄いわねシャムちゃん!全部正解よ!」
アイシャは明らかに不自然なシャムの行動をとがめるわけにも行かず歯が浮くような白々しさでそう言ってのけた。
「すげー南條。お前いつ勉強してたんだ?」
「何よ!あなた達が勝手に思い込んでいただけじゃないの。ねえ、南條さん」
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