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第11章 魔法少女
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「すごい組み合わせだな」
おはぎを手に取るとマリアは呆れたようにそう言った。画面は銃を取り上げて再びかなめのいた場所に照準を合わせる明石の姿がある。
『あなたは……なぜ機械帝国のことを?あなたは……魔力も無いのになぜ?』
シャムの肩に飛び乗ったグリンを明石が見つめる。
「それよりこの奇妙な動物に突っ込むな、俺なら」
そう言いながら嵯峨は明らかに無理をしておはぎを口に運ぶ。
「新さん、お嫌いでしたか、甘いものは」
「いやあ、そんなこと無いですよー。僕は大好物ですから……おはぎ……」
明らかに春子に気を使っている様子にカウラと誠は苦笑いを浮かべると再び画面を覗く。
答えることもせず明石はシャムに近づく。明らかに変質者とコスプレ少女と言うシュールな絵柄に突っ込みたいのを我慢しながら誠は画面を見つめていた。
『知っている人は知っているものさ、どこにでも好奇心のある人間はいるものだからね』
明らかに関西弁のアクセントで明石は無理やり標準語をしゃべる。誠はとりあえず突っ込まずにそのまま黙っていた。
「やはり明石中佐は訛りが強すぎるな」
「そうですね、播州コロニー群の出身だそうですから。あそこの出身者の訛りはなかなか抜けませんよ」
かえでと渡辺はかなめが画面から姿を消したのを見て関心を失ったと言うようにそのまま自分達の席へと戻っていく。誠達が画像を鑑賞していた間も一人作業を続けていたカウラは大きく息をしてそのまま一度立ち上がり、再び椅子に腰掛けた。
『でも、あなたは魔法を見ても驚かなかったじゃないですか。この世界の人がそんなに簡単に魔法を受け入れるとは思えないんですが』
グリンの言葉に明石はにやりと笑って禿頭を叩く。
『確かにそうだ。俺はある人物から話を聞いてね』
「そのある人物が神前君……でもどう見ても……プリンスには見えなけど」
『マジックプリンス』と言うなんのひねりも無い役名の誠の顔を春子はまじまじと見つめる。その吐息がかかるほどまで接近して見つめられて、誠は鼓動が早くなるのを感じたが、春子はまるで関心が無いというように再び画面に目を移す。
『いずれ君達と一緒に戦う日が来るだろう。それまではお互い深いことは知らない方がいい』
そう言うと猟銃を握り締めて明石は立ち去る。
「あいつ、本当に訛ってるな」
そう言いながら嵯峨がお茶を啜っている。その時、再び詰め所のドアが開いた。そこに立っていたのはパーラだった。
「ああ、春子さんここでしたか。アイシャが呼んでますよ」
「ごめんなさい。じゃあ行ってきますわね」
そう言って春子は立ち上がる。
「隊長……」
視線で春子を追っていた嵯峨が突然誠に声をかけられて頭を掻きながら嵯峨は口の中のあんこを飲み込む。嵯峨はなんとかあんこを飲み込むと再び出がらしになった茶の入った急須に手を伸ばす。
「義父上、口をゆすぐのはやめてくださいよ」
自分の席の端末を開いて仕事を再開したかえでの警告が飛ぶ。苦笑いを浮かべながら嵯峨はそのまま口に入れたお茶を飲み下した。
「あのー……」
春子達と入れ替わりにドアから顔を出したのは西とレベッカだった。誠達はその顔を見てそれぞれ時計に目をやった。
「ああ、もう昼か」
十二時を少し回った腕時計の針を確かめながら嵯峨は大きなげっぷをする。乾いた笑いを浮かべながら誠はおはぎに手を伸ばす。
「ああ、シンプソン中尉!見ての通りなんで昼の買出しはいいですよ」
カウラが苦笑いを浮かべながら答える。西とレベッカはロナルドのデスクに置かれた重箱を見ながら呆れつつそのまま入ってきた。昼の買出しは誠が隊に配属になったころから各部の持ち回りで行われるようになっていた。以前は隣の菱川重工の食堂を利用できたそうなのだが、かなめが暴れ、シャムがわめき、嵯峨がぐだぐだと味に文句をつけたため司法局の関係者は出入り禁止を食らっていた。仕方なく昼食は菱川重工の生協で弁当を買うというのが普通のことになっていた。
「僕好きなんですよ、おはぎって」
そう言いながら西はすぐにおはぎに手を伸ばして食べ始める。レベッカもそれを見るとすぐに両手におはぎを持って食べ始めている。
「ああ、神前さん何を見ているんですか?」
西は不思議そうに誠の端末が黒く染まっているのに目をつける。
「あれだよ、例の映画」
「ああ、クラウゼ少佐の奴でしたっけ?でもまあ撮影機材も見ましたけど、あれは……吉田さんも大変ですよね」
そう言いながら今度は西とレベッカが春子が居た場所に陣取る。アイシャが二人を出さなかった理由がシャムが書き上げた西とレベッカをモデルにした作品にあることを誠は知っていた。今度のコミケ向けの作品で紅顔の美少年が爆乳女教師に襲われるという18禁漫画である。レベッカはこれを読んだときかなり嫌な顔をしていたと誠はアイシャから聞かされていた。
再び画面に目を戻すと、そこには鎖に縛られたかなめの姿があった。誠とカウラは目を見合わせた。間違いなくかえで達が動き出す。
『うわ!ふっ!』
鞭打たれるかなめの声。誠が目を向ければ予想通りかえでと渡辺が立ち上がっている。恍惚とした目で鞭打たれるかなめを見つめる二人。そこに割って入ろうとするレベッカだがすぐにかなめの悲鳴に反応して画面の前に割り込んできたかえでが鋭い視線でにらみつける。
「シンプソン中尉!君達は買出しの任務があるんだろ?」
かえでは思い出したようにそう言った。仕方なく西とレベッカは追い立てられるように立ち上がる。
「すみません。かえでさん達はお昼はどうします?」
頭を下げながら画面にいやらしい視線をくぎ付けにしているかえでにレベッカは尋ねた。
「ああ、僕はあっさりとぶっかけうどんがいいな」
「私はミックスサンドで。中身は任せる」
うわの空でかえでと渡辺はそう言うとそのまま画面で拷問を受けるかなめの姿を目に焼き付けていた。
「よく食べますね」
誠が思わずそう言うとかえでと渡辺に殺気を込めた視線を投げられて言葉を失う。
『よくもまあ恥ずかしげも無く生きて帰ってこられたものだな!』
サディストと言われる明華がまさにそれを証明するかのようにかなめから取り上げた鞭を振り下ろしている。かなめの悲鳴とにんまりと笑う明華の表情が交互に映し出される。
「これは……ちょっとやりすぎじゃあ……」
誠は苦笑いを浮かべるが、かえで達の反応はまるで違っていた。
「素敵……ですかなめ様」
「僕も……かなめお姉さまに……」
ほんのりと頬を染めてかえでが今にも身悶えそうな雰囲気で画面を見ている姿に誠とカウラは頭を抱えた。
「じゃあ、失礼します!」
引き時を悟った西とレベッカはそのまま部屋を出て行った。
「賢明な判断だな」
西とレベッカが消えたのを見てそう言うとカウラは再びおはぎに手を伸ばした。
おはぎを手に取るとマリアは呆れたようにそう言った。画面は銃を取り上げて再びかなめのいた場所に照準を合わせる明石の姿がある。
『あなたは……なぜ機械帝国のことを?あなたは……魔力も無いのになぜ?』
シャムの肩に飛び乗ったグリンを明石が見つめる。
「それよりこの奇妙な動物に突っ込むな、俺なら」
そう言いながら嵯峨は明らかに無理をしておはぎを口に運ぶ。
「新さん、お嫌いでしたか、甘いものは」
「いやあ、そんなこと無いですよー。僕は大好物ですから……おはぎ……」
明らかに春子に気を使っている様子にカウラと誠は苦笑いを浮かべると再び画面を覗く。
答えることもせず明石はシャムに近づく。明らかに変質者とコスプレ少女と言うシュールな絵柄に突っ込みたいのを我慢しながら誠は画面を見つめていた。
『知っている人は知っているものさ、どこにでも好奇心のある人間はいるものだからね』
明らかに関西弁のアクセントで明石は無理やり標準語をしゃべる。誠はとりあえず突っ込まずにそのまま黙っていた。
「やはり明石中佐は訛りが強すぎるな」
「そうですね、播州コロニー群の出身だそうですから。あそこの出身者の訛りはなかなか抜けませんよ」
かえでと渡辺はかなめが画面から姿を消したのを見て関心を失ったと言うようにそのまま自分達の席へと戻っていく。誠達が画像を鑑賞していた間も一人作業を続けていたカウラは大きく息をしてそのまま一度立ち上がり、再び椅子に腰掛けた。
『でも、あなたは魔法を見ても驚かなかったじゃないですか。この世界の人がそんなに簡単に魔法を受け入れるとは思えないんですが』
グリンの言葉に明石はにやりと笑って禿頭を叩く。
『確かにそうだ。俺はある人物から話を聞いてね』
「そのある人物が神前君……でもどう見ても……プリンスには見えなけど」
『マジックプリンス』と言うなんのひねりも無い役名の誠の顔を春子はまじまじと見つめる。その吐息がかかるほどまで接近して見つめられて、誠は鼓動が早くなるのを感じたが、春子はまるで関心が無いというように再び画面に目を移す。
『いずれ君達と一緒に戦う日が来るだろう。それまではお互い深いことは知らない方がいい』
そう言うと猟銃を握り締めて明石は立ち去る。
「あいつ、本当に訛ってるな」
そう言いながら嵯峨がお茶を啜っている。その時、再び詰め所のドアが開いた。そこに立っていたのはパーラだった。
「ああ、春子さんここでしたか。アイシャが呼んでますよ」
「ごめんなさい。じゃあ行ってきますわね」
そう言って春子は立ち上がる。
「隊長……」
視線で春子を追っていた嵯峨が突然誠に声をかけられて頭を掻きながら嵯峨は口の中のあんこを飲み込む。嵯峨はなんとかあんこを飲み込むと再び出がらしになった茶の入った急須に手を伸ばす。
「義父上、口をゆすぐのはやめてくださいよ」
自分の席の端末を開いて仕事を再開したかえでの警告が飛ぶ。苦笑いを浮かべながら嵯峨はそのまま口に入れたお茶を飲み下した。
「あのー……」
春子達と入れ替わりにドアから顔を出したのは西とレベッカだった。誠達はその顔を見てそれぞれ時計に目をやった。
「ああ、もう昼か」
十二時を少し回った腕時計の針を確かめながら嵯峨は大きなげっぷをする。乾いた笑いを浮かべながら誠はおはぎに手を伸ばす。
「ああ、シンプソン中尉!見ての通りなんで昼の買出しはいいですよ」
カウラが苦笑いを浮かべながら答える。西とレベッカはロナルドのデスクに置かれた重箱を見ながら呆れつつそのまま入ってきた。昼の買出しは誠が隊に配属になったころから各部の持ち回りで行われるようになっていた。以前は隣の菱川重工の食堂を利用できたそうなのだが、かなめが暴れ、シャムがわめき、嵯峨がぐだぐだと味に文句をつけたため司法局の関係者は出入り禁止を食らっていた。仕方なく昼食は菱川重工の生協で弁当を買うというのが普通のことになっていた。
「僕好きなんですよ、おはぎって」
そう言いながら西はすぐにおはぎに手を伸ばして食べ始める。レベッカもそれを見るとすぐに両手におはぎを持って食べ始めている。
「ああ、神前さん何を見ているんですか?」
西は不思議そうに誠の端末が黒く染まっているのに目をつける。
「あれだよ、例の映画」
「ああ、クラウゼ少佐の奴でしたっけ?でもまあ撮影機材も見ましたけど、あれは……吉田さんも大変ですよね」
そう言いながら今度は西とレベッカが春子が居た場所に陣取る。アイシャが二人を出さなかった理由がシャムが書き上げた西とレベッカをモデルにした作品にあることを誠は知っていた。今度のコミケ向けの作品で紅顔の美少年が爆乳女教師に襲われるという18禁漫画である。レベッカはこれを読んだときかなり嫌な顔をしていたと誠はアイシャから聞かされていた。
再び画面に目を戻すと、そこには鎖に縛られたかなめの姿があった。誠とカウラは目を見合わせた。間違いなくかえで達が動き出す。
『うわ!ふっ!』
鞭打たれるかなめの声。誠が目を向ければ予想通りかえでと渡辺が立ち上がっている。恍惚とした目で鞭打たれるかなめを見つめる二人。そこに割って入ろうとするレベッカだがすぐにかなめの悲鳴に反応して画面の前に割り込んできたかえでが鋭い視線でにらみつける。
「シンプソン中尉!君達は買出しの任務があるんだろ?」
かえでは思い出したようにそう言った。仕方なく西とレベッカは追い立てられるように立ち上がる。
「すみません。かえでさん達はお昼はどうします?」
頭を下げながら画面にいやらしい視線をくぎ付けにしているかえでにレベッカは尋ねた。
「ああ、僕はあっさりとぶっかけうどんがいいな」
「私はミックスサンドで。中身は任せる」
うわの空でかえでと渡辺はそう言うとそのまま画面で拷問を受けるかなめの姿を目に焼き付けていた。
「よく食べますね」
誠が思わずそう言うとかえでと渡辺に殺気を込めた視線を投げられて言葉を失う。
『よくもまあ恥ずかしげも無く生きて帰ってこられたものだな!』
サディストと言われる明華がまさにそれを証明するかのようにかなめから取り上げた鞭を振り下ろしている。かなめの悲鳴とにんまりと笑う明華の表情が交互に映し出される。
「これは……ちょっとやりすぎじゃあ……」
誠は苦笑いを浮かべるが、かえで達の反応はまるで違っていた。
「素敵……ですかなめ様」
「僕も……かなめお姉さまに……」
ほんのりと頬を染めてかえでが今にも身悶えそうな雰囲気で画面を見ている姿に誠とカウラは頭を抱えた。
「じゃあ、失礼します!」
引き時を悟った西とレベッカはそのまま部屋を出て行った。
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