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第4章 戦いの記録
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「ごめんね!誠ちゃん、カウラちゃん。アイシャがどうしてもって……」
通信主任、サラ・グリファン中尉。いつものように姉貴分のアイシャの暴走を止められなかったことをわびるように頭を下げる。
「それより……島田。オメエが何でこっちの陣営なんだ?」
かなめはサラの後ろにいる島田に声をかけた。
「いやあ、あちらは居心地が悪くて……」
そう言い訳する島田だが、付き合っているサラに引き込まれたことは誠達には一目で分かった。
「どこで遊んでるんだ?アイシャは」
カウラの言葉にサラは隊長室の隣の会議室を指差した。三人はサラと島田について会議室に向かう。会議室の重い扉を開けるとそこは選挙対策委員会のような雰囲気だった。
何台もの端末に運行部の女性オペレーターが張り付き、携帯端末での電話攻勢が行われている。その中には技術部の小火器管理責任者のキム・ジュンヒ少尉や管理部の男性事務官の顔もあった。
「なんだ、選挙事務所みたいで面白そうじゃねえか」
そう言ってかなめはホワイトボードに東和の地図を書いたものを見ているアイシャに歩み寄った。
「やはり吉田さんは手が早いわね。東部軍管区はほぼ掌握されたわね。中央でがんばってみるけど……ああ、来てたの?」
「来てたの?じゃねえよ。くだらねえことで呼び出しやがって!」
あっさりとしているアイシャにかなめが毒づく。カウラも二人の前にあるボードを見ていた。
「相手は吉田少佐だ。電子戦のプロだけあって情報管理はお手の物……かなり劣勢だな。何か策はあるのか?」
そう言うカウラを無視してアイシャは誠の両肩に手をのせて見つめる。そんなアイシャに頬を染める誠だった。そんな中アイシャはいかにも悔しそうな顔でつぶやいた。
「残念だけどやっぱり誠ちゃんはヒロインにはなれないわね」
「あのー、そもそもなりたくないんですけど」
誠はそう言うと頭を掻いた。そしてすぐにアイシャはパーラが手にしているラフを誠に手渡す。そこにはどう見てもシャムらしい少女の絵が描かれている。だが、その魔法少女らしい杖やマントは誠にはあまりにシンプルに見えた。
「これはナンバルゲニア中尉ですか?ちょっと地味ですね」
そう言った誠に目を光らせるのはアイシャだった。
「でしょ?私が描いてみたんだけどちょっと上手くいかないのよ。そこで先生のお力をお借りしたいと……」
誠の魂に火がついた瞬間だった。伊達にアニメヒロインで彩られた『痛特機』乗りでは無いところを見せよう。そう言う痛々しい誇りが誠の絵師魂に火をつける。
「アイシャさん。当然他のキャラクターの設定もできているんでしょうね!」
そう言いながら誠は腕をまくる。ブリッジクルーが宿直室から持ってきた誠専用の漫画執筆用のセットを準備する。
「当然よ!キャラはメインの五人以外も端役までばっちり設定ができてるわよ。あちらがインフラ面で圧倒しようとするならこちらはソフト面で相手を凌駕すれば良いだけのことだわ!」
そう言ってアイシャは高笑いした。こういうお祭りごとが大好きなかなめはすでに机の上にあった機密と書かれた書類を見つけて眺め始めた。
「魔法少女隊マジカルシャム?戦隊モノなのか魔法少女ものなのかはっきりしろよ」
かなめはそう言いながら読み進めた。だがすぐに開いたページで手を止めて凍てつく視線でアイシャを見つめた。
「おい、アイシャ。なんだこれは」
片目の魔女のような姿の女性のラフ画像をかなめはアイシャに見せ付ける。
「ああ、それはかなめちゃんの役だから。当然最後は誠ちゃんと恋に落ちてかばって死ぬ予定なんだけど……」
何事もないように言うアイシャにかなめはさらに苛立ちはじめた。
「おい、なんでアタシがこいつと恋に落ちるんだ?それに死ぬって!アタシはかませ犬かなにかか?」
「よく分かったわね。死に行く気高き騎士キャプテンシルバーの魂がヒロインキャラット・シャムの魂に乗り移り……」
「お姉様が死ぬのか!そのようなもの認めるわけには行かない!」
背後で机を叩く音がしてアイシャとかなめも振り返った。
そこにはかえでと渡辺が立っている。かえではそのままアイシャの前に立つとかなめの姿が描かれたラフを見てすぐに本を閉じた。
「あのー、かえでちゃん。これはお話だから……」
かえではなだめようとするアイシャの襟首をつかんで引き寄せる。かえではそのまま頬を赤らめてアイシャの耳元でささやく。
「この衣装。作ってくれないか?僕も着たいんだ」
その突然の言葉に再びかなめが凍りついた。誠はただそんな後ろの騒動を一瞥するとシャムが演じることになるヒロインの杖のデザインがひらめいてそのままペンを走らせた。
「かえでちゃん!」
濡れた視線でかえでを見つめていたアイシャがそう叫んでがっちりとかえでの手を握り締めた。
「その思い受け止めたわ!でも今回は二時間までって決まってるし……かえでちゃんの出番はあまり出番作れそうにないわね」
「おい!今回ってことは二回目もあるのか?」
かなめが呆れながらはき捨てるように口走る。そんなかなめを無視してアイシャはヒロイン、シャムのデザインを始めている誠の手元を覗き込んだ。その誠の意識はすでにひらめきの中にあった。次第にその輪郭を見せつつあるキャラット・シャムの姿にアイシャは満面の笑みを浮かべた。
通信主任、サラ・グリファン中尉。いつものように姉貴分のアイシャの暴走を止められなかったことをわびるように頭を下げる。
「それより……島田。オメエが何でこっちの陣営なんだ?」
かなめはサラの後ろにいる島田に声をかけた。
「いやあ、あちらは居心地が悪くて……」
そう言い訳する島田だが、付き合っているサラに引き込まれたことは誠達には一目で分かった。
「どこで遊んでるんだ?アイシャは」
カウラの言葉にサラは隊長室の隣の会議室を指差した。三人はサラと島田について会議室に向かう。会議室の重い扉を開けるとそこは選挙対策委員会のような雰囲気だった。
何台もの端末に運行部の女性オペレーターが張り付き、携帯端末での電話攻勢が行われている。その中には技術部の小火器管理責任者のキム・ジュンヒ少尉や管理部の男性事務官の顔もあった。
「なんだ、選挙事務所みたいで面白そうじゃねえか」
そう言ってかなめはホワイトボードに東和の地図を書いたものを見ているアイシャに歩み寄った。
「やはり吉田さんは手が早いわね。東部軍管区はほぼ掌握されたわね。中央でがんばってみるけど……ああ、来てたの?」
「来てたの?じゃねえよ。くだらねえことで呼び出しやがって!」
あっさりとしているアイシャにかなめが毒づく。カウラも二人の前にあるボードを見ていた。
「相手は吉田少佐だ。電子戦のプロだけあって情報管理はお手の物……かなり劣勢だな。何か策はあるのか?」
そう言うカウラを無視してアイシャは誠の両肩に手をのせて見つめる。そんなアイシャに頬を染める誠だった。そんな中アイシャはいかにも悔しそうな顔でつぶやいた。
「残念だけどやっぱり誠ちゃんはヒロインにはなれないわね」
「あのー、そもそもなりたくないんですけど」
誠はそう言うと頭を掻いた。そしてすぐにアイシャはパーラが手にしているラフを誠に手渡す。そこにはどう見てもシャムらしい少女の絵が描かれている。だが、その魔法少女らしい杖やマントは誠にはあまりにシンプルに見えた。
「これはナンバルゲニア中尉ですか?ちょっと地味ですね」
そう言った誠に目を光らせるのはアイシャだった。
「でしょ?私が描いてみたんだけどちょっと上手くいかないのよ。そこで先生のお力をお借りしたいと……」
誠の魂に火がついた瞬間だった。伊達にアニメヒロインで彩られた『痛特機』乗りでは無いところを見せよう。そう言う痛々しい誇りが誠の絵師魂に火をつける。
「アイシャさん。当然他のキャラクターの設定もできているんでしょうね!」
そう言いながら誠は腕をまくる。ブリッジクルーが宿直室から持ってきた誠専用の漫画執筆用のセットを準備する。
「当然よ!キャラはメインの五人以外も端役までばっちり設定ができてるわよ。あちらがインフラ面で圧倒しようとするならこちらはソフト面で相手を凌駕すれば良いだけのことだわ!」
そう言ってアイシャは高笑いした。こういうお祭りごとが大好きなかなめはすでに机の上にあった機密と書かれた書類を見つけて眺め始めた。
「魔法少女隊マジカルシャム?戦隊モノなのか魔法少女ものなのかはっきりしろよ」
かなめはそう言いながら読み進めた。だがすぐに開いたページで手を止めて凍てつく視線でアイシャを見つめた。
「おい、アイシャ。なんだこれは」
片目の魔女のような姿の女性のラフ画像をかなめはアイシャに見せ付ける。
「ああ、それはかなめちゃんの役だから。当然最後は誠ちゃんと恋に落ちてかばって死ぬ予定なんだけど……」
何事もないように言うアイシャにかなめはさらに苛立ちはじめた。
「おい、なんでアタシがこいつと恋に落ちるんだ?それに死ぬって!アタシはかませ犬かなにかか?」
「よく分かったわね。死に行く気高き騎士キャプテンシルバーの魂がヒロインキャラット・シャムの魂に乗り移り……」
「お姉様が死ぬのか!そのようなもの認めるわけには行かない!」
背後で机を叩く音がしてアイシャとかなめも振り返った。
そこにはかえでと渡辺が立っている。かえではそのままアイシャの前に立つとかなめの姿が描かれたラフを見てすぐに本を閉じた。
「あのー、かえでちゃん。これはお話だから……」
かえではなだめようとするアイシャの襟首をつかんで引き寄せる。かえではそのまま頬を赤らめてアイシャの耳元でささやく。
「この衣装。作ってくれないか?僕も着たいんだ」
その突然の言葉に再びかなめが凍りついた。誠はただそんな後ろの騒動を一瞥するとシャムが演じることになるヒロインの杖のデザインがひらめいてそのままペンを走らせた。
「かえでちゃん!」
濡れた視線でかえでを見つめていたアイシャがそう叫んでがっちりとかえでの手を握り締めた。
「その思い受け止めたわ!でも今回は二時間までって決まってるし……かえでちゃんの出番はあまり出番作れそうにないわね」
「おい!今回ってことは二回目もあるのか?」
かなめが呆れながらはき捨てるように口走る。そんなかなめを無視してアイシャはヒロイン、シャムのデザインを始めている誠の手元を覗き込んだ。その誠の意識はすでにひらめきの中にあった。次第にその輪郭を見せつつあるキャラット・シャムの姿にアイシャは満面の笑みを浮かべた。
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