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第13章 出発
出発
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突然の衝撃に誠は目を覚ました。揺れる視界、そしてすぐ罵声が聞こえる。
「おい!起きろって!」
怒鳴りつけてくるのはかなめだった。毎日アイシャかかなめが誠を頼んでもいないのに起こしにくることがカウラの気に障って、先週鍵を取り替えさせられたというのにもうかなめは合鍵を作って誠の部屋に侵入していた。
「あの……」
「なんだよ」
誠は魔法少女の描かれた抱き枕を手にしているかなめからその枕を取り返そうと手を伸ばす。だが、かなめはそれをまじまじと見つめた後、誠にそれを投げつけた。
「これからお前の実家行くから。準備しておけ」
そう突然言われて誠はあたりがまだ薄暗いことに気づいた。
「え?今から準備するんですか?」
鈍くしか回転しない頭。時計を見てみれば四時過ぎである。鳥のさえずりもまだわずかにしか聞こえない。どこの高血圧人間かと恨めしそうに誠はかなめを見上げる。
「今日は世の人々は平日なんだ。早く行かねえと渋滞につかまるだろ?」
「でも……」
とりあえず寝たいという一心が誠に言い訳をさせる。
「実家の家業も忘れたのか?今頃は朝稽古の最中じゃねえか」
かなめに言われてようやく誠は気がついた。実家を出て二年弱。それまでは今の時間帯は朝稽古も始まっている時間である。夏のコミケで道場に泊まった時に、母が健康のためとかなめ達も一緒に稽古につき合わせたのを思い出し納得する。
「じゃあ、着替えますから出て行ってください」
「わかったよ……って……」
かなめが後ろに気配を感じて振り向く。そこにはすでに旅行かばんまで持っているアイシャの姿があった。
「そんなに荷物持ってどうする気だ!カウラの車だぞ。乗らねえよ、そんなもの」
「大丈夫よ。どうせ誠ちゃんは身一つでしょ?それにかなめちゃんはあまり荷物は持たないじゃないの。これくらい私が持って行ったって……」
そこまでアイシャが言った時にずるずると旅行かばんが部屋の外に向かって動き出す。突然荷物が動き出して驚いたようにアイシャが振り返る。
「これは後でサラにでも送ってもらえ」
ダウンジャケットを着込んだカウラがアイシャのかばんを取り上げたところだった。アイシャはものすごくがっかりした表情を浮かべる。
「着替えるんだろ?こいつ等は私に任せろ」
そう言ってカウラはそのままアイシャの首根っこをつかんで立たせる。かなめは仕方がないというような笑みを浮かべた後、カウラに引かれるようにして部屋の外へと出て行った。
大きなため息をついてそのまま着替えを済ませてドアを開けるとそこに仁王立ちしているかなめがいた。
「あのー、西園寺さん?」
「じゃあ行くぞ」
淡々とそう言って歩き出す。誠はずっと待っていたのかと呆れながらかなめにつれられて階段を下りていった。
「おい!起きろって!」
怒鳴りつけてくるのはかなめだった。毎日アイシャかかなめが誠を頼んでもいないのに起こしにくることがカウラの気に障って、先週鍵を取り替えさせられたというのにもうかなめは合鍵を作って誠の部屋に侵入していた。
「あの……」
「なんだよ」
誠は魔法少女の描かれた抱き枕を手にしているかなめからその枕を取り返そうと手を伸ばす。だが、かなめはそれをまじまじと見つめた後、誠にそれを投げつけた。
「これからお前の実家行くから。準備しておけ」
そう突然言われて誠はあたりがまだ薄暗いことに気づいた。
「え?今から準備するんですか?」
鈍くしか回転しない頭。時計を見てみれば四時過ぎである。鳥のさえずりもまだわずかにしか聞こえない。どこの高血圧人間かと恨めしそうに誠はかなめを見上げる。
「今日は世の人々は平日なんだ。早く行かねえと渋滞につかまるだろ?」
「でも……」
とりあえず寝たいという一心が誠に言い訳をさせる。
「実家の家業も忘れたのか?今頃は朝稽古の最中じゃねえか」
かなめに言われてようやく誠は気がついた。実家を出て二年弱。それまでは今の時間帯は朝稽古も始まっている時間である。夏のコミケで道場に泊まった時に、母が健康のためとかなめ達も一緒に稽古につき合わせたのを思い出し納得する。
「じゃあ、着替えますから出て行ってください」
「わかったよ……って……」
かなめが後ろに気配を感じて振り向く。そこにはすでに旅行かばんまで持っているアイシャの姿があった。
「そんなに荷物持ってどうする気だ!カウラの車だぞ。乗らねえよ、そんなもの」
「大丈夫よ。どうせ誠ちゃんは身一つでしょ?それにかなめちゃんはあまり荷物は持たないじゃないの。これくらい私が持って行ったって……」
そこまでアイシャが言った時にずるずると旅行かばんが部屋の外に向かって動き出す。突然荷物が動き出して驚いたようにアイシャが振り返る。
「これは後でサラにでも送ってもらえ」
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「着替えるんだろ?こいつ等は私に任せろ」
そう言ってカウラはそのままアイシャの首根っこをつかんで立たせる。かなめは仕方がないというような笑みを浮かべた後、カウラに引かれるようにして部屋の外へと出て行った。
大きなため息をついてそのまま着替えを済ませてドアを開けるとそこに仁王立ちしているかなめがいた。
「あのー、西園寺さん?」
「じゃあ行くぞ」
淡々とそう言って歩き出す。誠はずっと待っていたのかと呆れながらかなめにつれられて階段を下りていった。
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