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第8章 クリスマス風景
一杯ひっかけて
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「だから……そんな顔でアタシを見るなよ」
いつものようなたまり場のお好み焼き屋『あまさき屋』でキープしていたウォッカを口にしてかなめがつぶやく。
「仕方ないだろ?いきなり乱入された上に一張羅駄目にされたんだ。気分が落ち込むのも無理の無いことだ」
そう言いながらカウラは豚玉を焼く。隣では黙ってアイシャがたこ焼きを頬張っている。
「さすが外道!」
「なんだ?」
かなめを挑発したこの店の看板娘の家村小夏が出した頭を引っ込めた。
「アタシのおごりなんだ……って、これまでかなりの割合でアタシがおごってないか?」
「きっと気のせいよ」
不機嫌そうなかなめを前にアイシャは平然とたこ焼きをつつく。カウラも慣れてきているので焼けてきた豚玉にソースを塗る作業に集中している。
「それじゃあ、アイシャ。なんでここに来るように仕向けたか聞こうじゃねえか」
手にしていたグラスをテーブルに置くとかなめのタレ目は自然とアイシャに向く。誠も自然とかなめに合わせてアイシャに視線を向けていた。
「なに?二人とも」
アイシャは平然とたこ焼きを口に放り込むが、熱かったのか慌ててビールを注ぎ込む。手元の皿にお好み焼きを移したカウラも手を止めてアイシャを見つめている。
しばらく沈黙が続く。
「かなめちゃん。アンタの家って……結構お金持ちよね」
「あ?借金の申し込みならお断りだぞ」
アイシャの第一声を聞くと明らかに不機嫌になったかなめはグラスに手をやった。アイシャは首を横に振る。誠はその様子を突き出しの春菊の胡麻和えを口にしながら眺めていた。
「ちょっとした好奇心からなんだけど、西園寺家のクリスマスってどうなの?」
そんなアイシャの一言にかなめは口をグラスにつけたままものすごく嫌そうな表情でアイシャを見つめた。
「私も興味があるな。胡州四大公家の筆頭の家だ。それとも何か?家が仏教だからクリスマスはしないとか言い出すのか?」
カウラも話題の方向を理解すると無責任な笑みを浮かべてかなめを見つめる。かなめはカウラの目の前の豚玉をしばらく見つめた後、小さなグラスの中のウォッカを飲み干してグラスをテーブルに置いた。
「まあ……いろいろとあったな」
口を開くかなめを見てアイシャは満足げに頷きながら目で誠にかなめのグラスに酒を注ぐように合図した。
「クリスマスねえ……」
何も無い店の奥に目をやった後、かなめは注いだウォッカを一口で飲み干した。かなめのお嬢様としてのクリスマス。
「僕も興味がありますけど」
「ふーん」
そう鼻で笑うとかなめはしばらく目をつぶった。
「普通の家のとはかなり違うのは確かだな。それにその時期は社交界とやらの盛んな時期でね」
「ほう!社交界と来ましたか!どうです?カウラさん」
粘着質の笑みを浮かべたアイシャがマイク代わりにたこ焼きを箸に突き立ててカウラの前にかざす。そのこっけいな姿にカウラは一瞬戸惑ったが、すぐにアイシャを無視して豚玉に箸をつけた。
「アタシは餓鬼の頃に一、二度顔を出したくらいだけどな、親父もああいう席は苦手だし。まあ西園寺一族では茜が一番得意なんじゃねえかな……ああ、そう言えば叔父貴も……」
そう言うとかなめはまた一息で小さなグラスの中の透明な色のウォッカをあおる。だが、その言葉の中に登場した叔父貴、つまりダメ中年こと嵯峨惟基特務大佐と社交界が誠の頭の中ではどうしてもつながらなかった。
「隊長が……社交界か?」
カウラも同じことが気になったらしく、烏龍茶を口に運びながらかなめを見つめている。
「知らねえのか?茜のお袋はエリーゼ・シュトルベルグ。『ゲルパルトの白百合』と呼ばれた社交界の花とか呼ばれてたんだぜ」
『え?』
誠、アイシャ、カウラの視線が淡々と話すかなめの顔の前で凍りつく。だが、考えてみればそれは事実を繋ぎ合わせれば誰でもわかることだった。
茜。彼女の母がゲルパルトの有力貴族シュトルベルグ家の姫君だということは三人とも知っている。そしてたまに彼女をからかうためにエリーゼの社交界時代の画像や動画を誠達に見せびらかすかなめの姿は何度も見たことがあった。一応は胡州一の名門西園寺家の一員。部屋住みの三男坊とは言えエリート軍人として将来を約束されていた嵯峨にそんな話の一つや二つあっても不思議ではない。
知識では、頭では嵯峨と社交界とのつながりは理解できた。だが今のごみ部屋扱いされる隊長室の住人と見た目はほとんど変わらないのに精悍な雰囲気を漂わせている胡州陸軍大学校時代の嵯峨が三人の頭の中ではどうしてもつながらなかった。
「おいどうした?そんなに引くこと無いだろ?」
凍り付いている誠達にかなめは焦ってグラスを置いて声をかける。理解したいと思いながら、ハンガーで七輪で秋刀魚を焼いて安酒を煽る姿以外が想像できずに固まってしまうのは三人とも同じだった。
「じゃあ社交界の話題はこれくらいにして……クリスマス!クリスマスよね!社交界の催し物が嫌いな西園寺家ではどう過ごしたのかしら?」
話題を変えようとするアイシャの口元が不自然にゆがんでいる。誠も嵯峨の話題から離れようと焼けてきた烏賊ゲソに箸を伸ばして静かに口に運んだ。
かなめはアイシャ達の瞳に迫られて腕組みをして考えにふけった。
「そんなに深く考えることなの?」
またペースを取り戻してきたアイシャが笑顔でかなめを見つめる。かなめの隣の席で烏賊ゲソをかみ締めながらアイシャは隣のかなめを見つめていた。
「思い出す限りでは……すき焼きだな」
意外な一言に場が凍った。誠が頼んだアンキモを運んできた小夏も怪訝な表情でかなめを見つめている。
「それ変!」
小夏はそう叫んでかなめを指差す。
「変って言うな!それと人を指差すな!」
「だって変だよ!ねえ、兄貴」
「え?ああ……」
小夏に同意を求められて誠はうろたえる。確かにクリスマスとすき焼きがすぐに直結して出てくるということが理解できなかった。それに名家の中の名家である西園寺家の豪華な料理がすき焼きだと言うのは意外過ぎた。
嵯峨は食通で通っている。彼が気軽に焼いている目刺しも取り寄せたところを聞いてネットで調べるとべらぼうな価格がついていた。彼の振舞う蕎麦も高級品で知られる蕎麦粉を使用している。それが庶民のお祝いの席のメイン料理のすき焼きとつながる過程が誠にも良く分からなかった。
「すき焼きって……そんな他に物を知らないなら別として……なんだって……」
軽蔑するような笑みを浮かべつつアイシャはちらちらかなめに目をやりながらビールを飲む。彼女のあからさまな挑発行為がかなめの機嫌を悪化させる。
「へいへい、変ですよ!確かに親父がああだし、叔父貴もああだしねえ」
かなめはそう言うとウォッカを再びグラスに注ぐ。しかし、誠は何で彼女がすき焼きと言い出したかに興味を持っていた。
「僕は知りたいですよ」
そうきっぱりと言った誠の言葉にかなめが口の中の酒を吹きかけた。手で口を覆いながら咳き込んで目を白黒させる。
「全く汚いわねえ。誠ちゃんも何で?すき焼き食べたこと無いの?」
アイシャの嘲笑。だが、隣のカウラは豚玉を突きながら考えている。
「そうだな。古い家にはそれに似合う慣わしと言うものがあるらしい。西園寺のすき焼きもそれのようなものなんじゃないのか」
そのカウラの言葉を聞いて誠は安堵の笑みを浮かべると隣のかなめを見た。あまり好きではないカウラにフォローされたのが気に入らないのか、かなめのウォッカを含む口元に不満そうな表情が浮かぶ。
「旧家の習わしねえ」
カウラの言葉に納得したアイシャが好奇心に満たされたような顔でかなめを見つめた。その瞳は黙り込んで酒を飲むかなめに向けられている。
「習わしとかじゃないと思うぞ。爺さんが肉好きだったってだけの話だからな」
そう言うとかなめは頭をひねって言葉を連ねた。それに引き込まれるようにして誠達はかなめの言葉を聞くことにした。
「いいじゃないの!隠さなくたって。呪い?それともおまじない?新約聖書の西園寺家流の解釈で生まれた行事とか言う話なら素敵じゃない」
「どこがだよ!」
そう叫ぶとかなめは空になったグラスを置いた。誠は自分の中ジョッキを置いてかなめのウォッカの瓶を手にして勺をした。
「お、おう。有難うな」
慣れない感謝の言葉を口にしながら再びかなめは話し始めた。
いつものようなたまり場のお好み焼き屋『あまさき屋』でキープしていたウォッカを口にしてかなめがつぶやく。
「仕方ないだろ?いきなり乱入された上に一張羅駄目にされたんだ。気分が落ち込むのも無理の無いことだ」
そう言いながらカウラは豚玉を焼く。隣では黙ってアイシャがたこ焼きを頬張っている。
「さすが外道!」
「なんだ?」
かなめを挑発したこの店の看板娘の家村小夏が出した頭を引っ込めた。
「アタシのおごりなんだ……って、これまでかなりの割合でアタシがおごってないか?」
「きっと気のせいよ」
不機嫌そうなかなめを前にアイシャは平然とたこ焼きをつつく。カウラも慣れてきているので焼けてきた豚玉にソースを塗る作業に集中している。
「それじゃあ、アイシャ。なんでここに来るように仕向けたか聞こうじゃねえか」
手にしていたグラスをテーブルに置くとかなめのタレ目は自然とアイシャに向く。誠も自然とかなめに合わせてアイシャに視線を向けていた。
「なに?二人とも」
アイシャは平然とたこ焼きを口に放り込むが、熱かったのか慌ててビールを注ぎ込む。手元の皿にお好み焼きを移したカウラも手を止めてアイシャを見つめている。
しばらく沈黙が続く。
「かなめちゃん。アンタの家って……結構お金持ちよね」
「あ?借金の申し込みならお断りだぞ」
アイシャの第一声を聞くと明らかに不機嫌になったかなめはグラスに手をやった。アイシャは首を横に振る。誠はその様子を突き出しの春菊の胡麻和えを口にしながら眺めていた。
「ちょっとした好奇心からなんだけど、西園寺家のクリスマスってどうなの?」
そんなアイシャの一言にかなめは口をグラスにつけたままものすごく嫌そうな表情でアイシャを見つめた。
「私も興味があるな。胡州四大公家の筆頭の家だ。それとも何か?家が仏教だからクリスマスはしないとか言い出すのか?」
カウラも話題の方向を理解すると無責任な笑みを浮かべてかなめを見つめる。かなめはカウラの目の前の豚玉をしばらく見つめた後、小さなグラスの中のウォッカを飲み干してグラスをテーブルに置いた。
「まあ……いろいろとあったな」
口を開くかなめを見てアイシャは満足げに頷きながら目で誠にかなめのグラスに酒を注ぐように合図した。
「クリスマスねえ……」
何も無い店の奥に目をやった後、かなめは注いだウォッカを一口で飲み干した。かなめのお嬢様としてのクリスマス。
「僕も興味がありますけど」
「ふーん」
そう鼻で笑うとかなめはしばらく目をつぶった。
「普通の家のとはかなり違うのは確かだな。それにその時期は社交界とやらの盛んな時期でね」
「ほう!社交界と来ましたか!どうです?カウラさん」
粘着質の笑みを浮かべたアイシャがマイク代わりにたこ焼きを箸に突き立ててカウラの前にかざす。そのこっけいな姿にカウラは一瞬戸惑ったが、すぐにアイシャを無視して豚玉に箸をつけた。
「アタシは餓鬼の頃に一、二度顔を出したくらいだけどな、親父もああいう席は苦手だし。まあ西園寺一族では茜が一番得意なんじゃねえかな……ああ、そう言えば叔父貴も……」
そう言うとかなめはまた一息で小さなグラスの中の透明な色のウォッカをあおる。だが、その言葉の中に登場した叔父貴、つまりダメ中年こと嵯峨惟基特務大佐と社交界が誠の頭の中ではどうしてもつながらなかった。
「隊長が……社交界か?」
カウラも同じことが気になったらしく、烏龍茶を口に運びながらかなめを見つめている。
「知らねえのか?茜のお袋はエリーゼ・シュトルベルグ。『ゲルパルトの白百合』と呼ばれた社交界の花とか呼ばれてたんだぜ」
『え?』
誠、アイシャ、カウラの視線が淡々と話すかなめの顔の前で凍りつく。だが、考えてみればそれは事実を繋ぎ合わせれば誰でもわかることだった。
茜。彼女の母がゲルパルトの有力貴族シュトルベルグ家の姫君だということは三人とも知っている。そしてたまに彼女をからかうためにエリーゼの社交界時代の画像や動画を誠達に見せびらかすかなめの姿は何度も見たことがあった。一応は胡州一の名門西園寺家の一員。部屋住みの三男坊とは言えエリート軍人として将来を約束されていた嵯峨にそんな話の一つや二つあっても不思議ではない。
知識では、頭では嵯峨と社交界とのつながりは理解できた。だが今のごみ部屋扱いされる隊長室の住人と見た目はほとんど変わらないのに精悍な雰囲気を漂わせている胡州陸軍大学校時代の嵯峨が三人の頭の中ではどうしてもつながらなかった。
「おいどうした?そんなに引くこと無いだろ?」
凍り付いている誠達にかなめは焦ってグラスを置いて声をかける。理解したいと思いながら、ハンガーで七輪で秋刀魚を焼いて安酒を煽る姿以外が想像できずに固まってしまうのは三人とも同じだった。
「じゃあ社交界の話題はこれくらいにして……クリスマス!クリスマスよね!社交界の催し物が嫌いな西園寺家ではどう過ごしたのかしら?」
話題を変えようとするアイシャの口元が不自然にゆがんでいる。誠も嵯峨の話題から離れようと焼けてきた烏賊ゲソに箸を伸ばして静かに口に運んだ。
かなめはアイシャ達の瞳に迫られて腕組みをして考えにふけった。
「そんなに深く考えることなの?」
またペースを取り戻してきたアイシャが笑顔でかなめを見つめる。かなめの隣の席で烏賊ゲソをかみ締めながらアイシャは隣のかなめを見つめていた。
「思い出す限りでは……すき焼きだな」
意外な一言に場が凍った。誠が頼んだアンキモを運んできた小夏も怪訝な表情でかなめを見つめている。
「それ変!」
小夏はそう叫んでかなめを指差す。
「変って言うな!それと人を指差すな!」
「だって変だよ!ねえ、兄貴」
「え?ああ……」
小夏に同意を求められて誠はうろたえる。確かにクリスマスとすき焼きがすぐに直結して出てくるということが理解できなかった。それに名家の中の名家である西園寺家の豪華な料理がすき焼きだと言うのは意外過ぎた。
嵯峨は食通で通っている。彼が気軽に焼いている目刺しも取り寄せたところを聞いてネットで調べるとべらぼうな価格がついていた。彼の振舞う蕎麦も高級品で知られる蕎麦粉を使用している。それが庶民のお祝いの席のメイン料理のすき焼きとつながる過程が誠にも良く分からなかった。
「すき焼きって……そんな他に物を知らないなら別として……なんだって……」
軽蔑するような笑みを浮かべつつアイシャはちらちらかなめに目をやりながらビールを飲む。彼女のあからさまな挑発行為がかなめの機嫌を悪化させる。
「へいへい、変ですよ!確かに親父がああだし、叔父貴もああだしねえ」
かなめはそう言うとウォッカを再びグラスに注ぐ。しかし、誠は何で彼女がすき焼きと言い出したかに興味を持っていた。
「僕は知りたいですよ」
そうきっぱりと言った誠の言葉にかなめが口の中の酒を吹きかけた。手で口を覆いながら咳き込んで目を白黒させる。
「全く汚いわねえ。誠ちゃんも何で?すき焼き食べたこと無いの?」
アイシャの嘲笑。だが、隣のカウラは豚玉を突きながら考えている。
「そうだな。古い家にはそれに似合う慣わしと言うものがあるらしい。西園寺のすき焼きもそれのようなものなんじゃないのか」
そのカウラの言葉を聞いて誠は安堵の笑みを浮かべると隣のかなめを見た。あまり好きではないカウラにフォローされたのが気に入らないのか、かなめのウォッカを含む口元に不満そうな表情が浮かぶ。
「旧家の習わしねえ」
カウラの言葉に納得したアイシャが好奇心に満たされたような顔でかなめを見つめた。その瞳は黙り込んで酒を飲むかなめに向けられている。
「習わしとかじゃないと思うぞ。爺さんが肉好きだったってだけの話だからな」
そう言うとかなめは頭をひねって言葉を連ねた。それに引き込まれるようにして誠達はかなめの言葉を聞くことにした。
「いいじゃないの!隠さなくたって。呪い?それともおまじない?新約聖書の西園寺家流の解釈で生まれた行事とか言う話なら素敵じゃない」
「どこがだよ!」
そう叫ぶとかなめは空になったグラスを置いた。誠は自分の中ジョッキを置いてかなめのウォッカの瓶を手にして勺をした。
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