384 / 1,531
第16章 冷蔵庫の中で
冷蔵庫の中で
しおりを挟む
久間のうどん屋を出た誠達が基地に帰ると吉田がニヤニヤして待ち構えていた。茜の顔を見て即座に使用許可を出した彼を置き去りにして『冷蔵庫』と呼ばれる司法局実働部隊のコンピュータルームに誠達が篭ってから6時間が経過していた。
「とりあえずラーメンを取ったんですけど……いかが?」
席を外していた茜がオカモチを抱えて中央のテーブルに置いた。ラーナの手には盆と湯呑。サラはポットを二つテーブルの上の雑誌の山をどけて置いた。
「アイシャ。いい加減この部屋の私物を持ち帰れよな」
カウラがそう言いながら端末から離れて箸などの準備にかかる。島田が難しい表情で画面を覗き込んでいる。誠もそれを見ながら再び自分の端末の画面を覗きこんでいた。
「DNAは遼南系の人類と一致。まあ予想通りの結果だよなー」
昼間の怪物から採取された細胞のデータを見つめていた首をねじったりした後、ランは彼女には高すぎる椅子から飛び降りる。篭ってからは昼間の化け物のかけらを東都警察が分析した鑑識の資料を整理する作業を始めたが、その途方も無い作業に誰もが疲れを感じていた。
「コイツを倒した正体不明の『正義の味方』がやった干渉空間内の時間軸をずらすって……簡単に出来ること……なのか?」
「かなめさん!食べ始めるのが早すぎましてよ!」
茜はどんぶりをを取ろうとするかなめの手を叩く。かなめは舌を出してそのままテーブルの隣のパイプ椅子に腰掛けた。
「干渉空間の維持にものすごい法力を取られますから……僕も何度か連続干渉の実験はやってみましたけど五回目で精神の負荷が大きすぎると言われてヨハンさんに止められてからはやってませんよ」
「でも不可能じゃないんでしょ?」
ラーナから湯呑を受け取ったアイシャはそう言いながらすでに箸を手に自分の前に置かれたパーコー麺を眺めている。
「五回でアウトなのか?お前の鍛え方がなってないからだな。実を言うとこいつはお袋の得意技でさあ。『官派の乱』で屋敷が官派軍に包囲されたときにこれを使って暴れまわったからな」
かなめはそう言いながらさすがに我慢が出来なくなったのか、オカモチから自分の坦々麺を取り出してスープを飲み始める。
かなめの母の西園寺康子は司法局実働部隊隊長嵯峨惟基の剣の師匠であり、『胡州の鬼姫』の異名で知られる剣豪と呼ばれていた。彼女が法術師であることが分かった今、それまでは何度と無く西園寺家を襲ったテロリストの数が急に激減したという話は誠も耳にしていた。
「しかし、こんなに時間軸のずれた空間を制御し続けて無事で済むわけもねーだろ?」
ランはそう言いながら餃子の皿を並べる。誠も部屋に漂うラーメンのスープの香りに作業を中断してテーブルの席に着いた。
「神前。とりあえずこれ」
ランはテーブルの横に積まれて倒れそうになっている雑誌を指差す。しかたなくそれを抱えて部屋の隅においてみたが、そこで一人島田が端末の前を動こうとしないことに気づいた。
「正人。そんなに根をつめても……」
一通り配膳が終わったサラが島田の肩に手をかける。それまで激しくキーボードを叩いていた島田の手が止まった。
「そうだぜ、これからが正念場だ。とりあえず力をつけろよ!」
そう言ってかなめが再び麺を勢い良く啜りこんでいる。
「別に焦っているわけじゃあ無いんですけどね」
「焦っていない奴はそんな言葉は吐かないな」
シュウマイにしょうゆをかけるカウラの声が響く。ようやく島田は心配そうに見つめるサラに目をやるとそのまま立ち上がって誠達が囲んでいる休憩用のテーブルに常備されている安物のパイプ椅子に腰掛けた。
「しかしまあ、衣類の破片とか見つからないもんかねえ。身元が分かればそこから何とか切り込むって手もあるんだろうけど……」
景気良く麺を啜りこみながらかなめがつぶやく。誠もその意見には同意して頷くと真似をして麺を啜りこむが思い切り気管に吸い込んでむせ返る。
「なにやってんのよ!誠ちゃんは」
アイシャが咳き込む誠の背中をさする。そして不意に見上げた先に青い表情でチャーシュー麺とチャーハンセットを見下ろして黙り込んでいる島田を見つけた。
「おい、食えよ。力つかねーぞ」
心配したようにランが声をかける。島田を気にして箸をつけられないサラが不安げに島田を見つめている。
「今回も手がかりは……」
「仕方ねえなあ」
そう言うともう食べ終わっているかなめは首筋にあるジャックにコードを刺してそのまま一番近かったランの使っていた端末のスロットに差し込んだ。
「見てな」
どんぶりを抱えて近寄るカウラに一言言うと画面が高速で切り替わっていく。
「監視カメラですわね。……それにしては位置がおかしくありません?」
茜の不審そうな顔にかなめは不敵な笑みで答える。同盟本部ビルの前に小夏くらいの年の少女が目つきの悪い男に連れられて画面の中に入ってくる。
「こんなの良く見つけたな」
カウラがそう言った瞬間、少女から発せられた衝撃波で次々と周りの人物や車、そのほかの障害物が撥ね飛ばされていく。
「勘だよ勘。そこだけはアタシも自信があるからな」
一言そう言ってかなめは微笑む。しかし誠達には彼女を見るような余裕は無かった。画面の中で少女は自分のしたことに戸惑ったように頭を抱えたまましゃがみこんでいた。
「これがあの肉の塊に……」
そんな低くつぶやくような誠の言葉に、一同からそれまでの歓喜の表情が消える。そして不安定な位置に取り付けられていたらしく画面は転倒し空
だけを映し出すようになっていた。
「西園寺、あの少女の写真は?」
「もうすでに所轄に送ってますよ。連中もさすがにここまで話がでかくなれば面倒だろうが動かないわけには行かないでしょ?それと明石のタコ経由でライラの山岳レンジャーにも転送済み。後は彼らの運にかけるしかないけどね。まあこの情報は証拠性で何度か検察が裁判で証拠にしようとして認められなかった系統のネットから拾った映像ですからねえ。物的証拠が出てこないと意味無いんだけどさ」
そう言うとかなめは首筋のジャックからコードを抜いてそのまま呆然としている島田からチャーハンを取り上げて食べ始めた。
「かなめちゃん!」
「サラ。良いじゃねえか。島田もようやく食欲が出たみたいだし」
かなめの言うようにすでに島田はチャーシュー麺のどんぶりに手をやっていた。
「ええ、食欲は出てますよ。当然デザートに西園寺さんのおごりがあるんでしょうからその分も空けておきますから」
「そうですわね。こんな情報を知っておきながら独り占めなんて……厳罰が必要ですわ」
「つーわけだ。それ食い終わったら……工場の生協は24時間営業だからな。ケーキ買って来いよ」
茜とランの言葉にかなめは渋い顔をする。だが、誰もが煮詰まってぴりぴりしていた空気が変わって晴れやかな表情を浮かべていた。
「わかったよ……ちょっと待った!」
かなめはそう言うとすぐに開いていた一番奥の端末に飛びついた。すぐさまうなじのジャックにケーブルを挿して端末を起動させる。
「おい、どうした?」
驚いたランの言葉などに耳を貸すことも無くすばやく切り替わっていく画面をかなめはただにらみつける。
「出てきた!出てきやがったぜ!」
そんなかなめの叫びに緊張した表情を浮かべたのはカウラだった。
「お前の情報網に何が引っかかったんだ?」
カウラが声をかけると作業を終えたかなめは死んだような目でカウラを見上げる。
「志村の野郎が連絡してきやがった。二時間後に事務所で会いたいとよ」
そう言ってかなめは伸びをする。きしむ椅子の音。画面には変換ミスの多い端末で打った長文が誠にも見えた。
「さすがにこれだけ話がでかくなったらなあ……あいつ消されるぞ」
ランはすぐさま立ち上がった。
「拳銃くらいは持っていったほうがいいわよね」
「拳銃で済む話で収まればいい方だ。獲物はそれぞれ自分のを用意しろ。そのまま戦闘なんてことも十分考えておけよ」
そんなランの緊張をあおる一言に場の空気はまるで変った。アイシャをせかすようにかなめは立ち上がった。誠はただ呆然としていた。
「頼むぜ、法術師!」
気を利かせたように島田が誠の頭を叩いた。誠はようやく正気を取り戻して冷蔵庫を飛び出すと更衣室の金庫に拳銃とサブマシンガンを取りに走り出した。
「とりあえずラーメンを取ったんですけど……いかが?」
席を外していた茜がオカモチを抱えて中央のテーブルに置いた。ラーナの手には盆と湯呑。サラはポットを二つテーブルの上の雑誌の山をどけて置いた。
「アイシャ。いい加減この部屋の私物を持ち帰れよな」
カウラがそう言いながら端末から離れて箸などの準備にかかる。島田が難しい表情で画面を覗き込んでいる。誠もそれを見ながら再び自分の端末の画面を覗きこんでいた。
「DNAは遼南系の人類と一致。まあ予想通りの結果だよなー」
昼間の怪物から採取された細胞のデータを見つめていた首をねじったりした後、ランは彼女には高すぎる椅子から飛び降りる。篭ってからは昼間の化け物のかけらを東都警察が分析した鑑識の資料を整理する作業を始めたが、その途方も無い作業に誰もが疲れを感じていた。
「コイツを倒した正体不明の『正義の味方』がやった干渉空間内の時間軸をずらすって……簡単に出来ること……なのか?」
「かなめさん!食べ始めるのが早すぎましてよ!」
茜はどんぶりをを取ろうとするかなめの手を叩く。かなめは舌を出してそのままテーブルの隣のパイプ椅子に腰掛けた。
「干渉空間の維持にものすごい法力を取られますから……僕も何度か連続干渉の実験はやってみましたけど五回目で精神の負荷が大きすぎると言われてヨハンさんに止められてからはやってませんよ」
「でも不可能じゃないんでしょ?」
ラーナから湯呑を受け取ったアイシャはそう言いながらすでに箸を手に自分の前に置かれたパーコー麺を眺めている。
「五回でアウトなのか?お前の鍛え方がなってないからだな。実を言うとこいつはお袋の得意技でさあ。『官派の乱』で屋敷が官派軍に包囲されたときにこれを使って暴れまわったからな」
かなめはそう言いながらさすがに我慢が出来なくなったのか、オカモチから自分の坦々麺を取り出してスープを飲み始める。
かなめの母の西園寺康子は司法局実働部隊隊長嵯峨惟基の剣の師匠であり、『胡州の鬼姫』の異名で知られる剣豪と呼ばれていた。彼女が法術師であることが分かった今、それまでは何度と無く西園寺家を襲ったテロリストの数が急に激減したという話は誠も耳にしていた。
「しかし、こんなに時間軸のずれた空間を制御し続けて無事で済むわけもねーだろ?」
ランはそう言いながら餃子の皿を並べる。誠も部屋に漂うラーメンのスープの香りに作業を中断してテーブルの席に着いた。
「神前。とりあえずこれ」
ランはテーブルの横に積まれて倒れそうになっている雑誌を指差す。しかたなくそれを抱えて部屋の隅においてみたが、そこで一人島田が端末の前を動こうとしないことに気づいた。
「正人。そんなに根をつめても……」
一通り配膳が終わったサラが島田の肩に手をかける。それまで激しくキーボードを叩いていた島田の手が止まった。
「そうだぜ、これからが正念場だ。とりあえず力をつけろよ!」
そう言ってかなめが再び麺を勢い良く啜りこんでいる。
「別に焦っているわけじゃあ無いんですけどね」
「焦っていない奴はそんな言葉は吐かないな」
シュウマイにしょうゆをかけるカウラの声が響く。ようやく島田は心配そうに見つめるサラに目をやるとそのまま立ち上がって誠達が囲んでいる休憩用のテーブルに常備されている安物のパイプ椅子に腰掛けた。
「しかしまあ、衣類の破片とか見つからないもんかねえ。身元が分かればそこから何とか切り込むって手もあるんだろうけど……」
景気良く麺を啜りこみながらかなめがつぶやく。誠もその意見には同意して頷くと真似をして麺を啜りこむが思い切り気管に吸い込んでむせ返る。
「なにやってんのよ!誠ちゃんは」
アイシャが咳き込む誠の背中をさする。そして不意に見上げた先に青い表情でチャーシュー麺とチャーハンセットを見下ろして黙り込んでいる島田を見つけた。
「おい、食えよ。力つかねーぞ」
心配したようにランが声をかける。島田を気にして箸をつけられないサラが不安げに島田を見つめている。
「今回も手がかりは……」
「仕方ねえなあ」
そう言うともう食べ終わっているかなめは首筋にあるジャックにコードを刺してそのまま一番近かったランの使っていた端末のスロットに差し込んだ。
「見てな」
どんぶりを抱えて近寄るカウラに一言言うと画面が高速で切り替わっていく。
「監視カメラですわね。……それにしては位置がおかしくありません?」
茜の不審そうな顔にかなめは不敵な笑みで答える。同盟本部ビルの前に小夏くらいの年の少女が目つきの悪い男に連れられて画面の中に入ってくる。
「こんなの良く見つけたな」
カウラがそう言った瞬間、少女から発せられた衝撃波で次々と周りの人物や車、そのほかの障害物が撥ね飛ばされていく。
「勘だよ勘。そこだけはアタシも自信があるからな」
一言そう言ってかなめは微笑む。しかし誠達には彼女を見るような余裕は無かった。画面の中で少女は自分のしたことに戸惑ったように頭を抱えたまましゃがみこんでいた。
「これがあの肉の塊に……」
そんな低くつぶやくような誠の言葉に、一同からそれまでの歓喜の表情が消える。そして不安定な位置に取り付けられていたらしく画面は転倒し空
だけを映し出すようになっていた。
「西園寺、あの少女の写真は?」
「もうすでに所轄に送ってますよ。連中もさすがにここまで話がでかくなれば面倒だろうが動かないわけには行かないでしょ?それと明石のタコ経由でライラの山岳レンジャーにも転送済み。後は彼らの運にかけるしかないけどね。まあこの情報は証拠性で何度か検察が裁判で証拠にしようとして認められなかった系統のネットから拾った映像ですからねえ。物的証拠が出てこないと意味無いんだけどさ」
そう言うとかなめは首筋のジャックからコードを抜いてそのまま呆然としている島田からチャーハンを取り上げて食べ始めた。
「かなめちゃん!」
「サラ。良いじゃねえか。島田もようやく食欲が出たみたいだし」
かなめの言うようにすでに島田はチャーシュー麺のどんぶりに手をやっていた。
「ええ、食欲は出てますよ。当然デザートに西園寺さんのおごりがあるんでしょうからその分も空けておきますから」
「そうですわね。こんな情報を知っておきながら独り占めなんて……厳罰が必要ですわ」
「つーわけだ。それ食い終わったら……工場の生協は24時間営業だからな。ケーキ買って来いよ」
茜とランの言葉にかなめは渋い顔をする。だが、誰もが煮詰まってぴりぴりしていた空気が変わって晴れやかな表情を浮かべていた。
「わかったよ……ちょっと待った!」
かなめはそう言うとすぐに開いていた一番奥の端末に飛びついた。すぐさまうなじのジャックにケーブルを挿して端末を起動させる。
「おい、どうした?」
驚いたランの言葉などに耳を貸すことも無くすばやく切り替わっていく画面をかなめはただにらみつける。
「出てきた!出てきやがったぜ!」
そんなかなめの叫びに緊張した表情を浮かべたのはカウラだった。
「お前の情報網に何が引っかかったんだ?」
カウラが声をかけると作業を終えたかなめは死んだような目でカウラを見上げる。
「志村の野郎が連絡してきやがった。二時間後に事務所で会いたいとよ」
そう言ってかなめは伸びをする。きしむ椅子の音。画面には変換ミスの多い端末で打った長文が誠にも見えた。
「さすがにこれだけ話がでかくなったらなあ……あいつ消されるぞ」
ランはすぐさま立ち上がった。
「拳銃くらいは持っていったほうがいいわよね」
「拳銃で済む話で収まればいい方だ。獲物はそれぞれ自分のを用意しろ。そのまま戦闘なんてことも十分考えておけよ」
そんなランの緊張をあおる一言に場の空気はまるで変った。アイシャをせかすようにかなめは立ち上がった。誠はただ呆然としていた。
「頼むぜ、法術師!」
気を利かせたように島田が誠の頭を叩いた。誠はようやく正気を取り戻して冷蔵庫を飛び出すと更衣室の金庫に拳銃とサブマシンガンを取りに走り出した。
0
お気に入りに追加
58
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
特殊装甲隊 ダグフェロン 『廃帝と永遠の世紀末』 第六部 『特殊な部隊の特殊な自主映画』
橋本 直
SF
毎年恒例の時代行列に加えて豊川市から映画作成を依頼された『特殊な部隊』こと司法局実働部隊。
自主映画作品を作ることになるのだがアメリアとサラの暴走でテーマをめぐり大騒ぎとなる。
いざテーマが決まってもアメリアの極めて趣味的な魔法少女ストーリに呆れて隊員達はてんでんばらばらに活躍を見せる。
そんな先輩達に振り回されながら誠は自分がキャラデザインをしたという責任感のみで参加する。
どたばたの日々が始まるのだった……。
法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『修羅の国』での死闘
橋本 直
SF
その文明は出会うべきではなかった
その人との出会いは歓迎すべきものではなかった
これは悲しい『出会い』の物語
『特殊な部隊』と出会うことで青年にはある『宿命』がせおわされることになる
法術装甲隊ダグフェロン 第三部
遼州人の青年『神前誠(しんぜんまこと)』は法術の新たな可能性を追求する司法局の要請により『05式広域制圧砲』と言う新兵器の実験に駆り出される。その兵器は法術の特性を生かして敵を殺傷せずにその意識を奪うと言う兵器で、対ゲリラ戦等の『特殊な部隊』と呼ばれる司法局実働部隊に適した兵器だった。
一方、遼州系第二惑星の大国『甲武』では、国家の意思決定最高機関『殿上会』が開かれようとしていた。それに出席するために殿上貴族である『特殊な部隊』の部隊長、嵯峨惟基は甲武へと向かった。
その間隙を縫ったかのように『修羅の国』と呼ばれる紛争の巣窟、ベルルカン大陸のバルキスタン共和国で行われる予定だった選挙合意を反政府勢力が破棄し機動兵器を使った大規模攻勢に打って出て停戦合意が破綻したとの報が『特殊な部隊』に届く。
この停戦合意の破棄を理由に甲武とアメリカは合同で介入を企てようとしていた。その阻止のため、神前誠以下『特殊な部隊』の面々は輸送機でバルキスタン共和国へ向かった。切り札は『05式広域鎮圧砲』とそれを操る誠。『特殊な部隊』の制式シュツルム・パンツァー05式の機動性の無さが作戦を難しいものに変える。
そんな時間との戦いの中、『特殊な部隊』を見守る影があった。
『廃帝ハド』、『ビッグブラザー』、そしてネオナチ。
誠は反政府勢力の攻勢を『05式広域鎮圧砲』を使用して止めることが出来るのか?それとも……。
SFお仕事ギャグロマン小説。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
底辺エンジニア、転生したら敵国側だった上に隠しボスのご令嬢にロックオンされる。~モブ×悪女のドール戦記~
阿澄飛鳥
SF
俺ことグレン・ハワードは転生者だ。
転生した先は俺がやっていたゲームの世界。
前世では機械エンジニアをやっていたので、こっちでも祝福の【情報解析】を駆使してゴーレムの技師をやっているモブである。
だがある日、工房に忍び込んできた女――セレスティアを問い詰めたところ、そいつはなんとゲームの隠しボスだった……!
そんなとき、街が魔獣に襲撃される。
迫りくる魔獣、吹き飛ばされるゴーレム、絶体絶命のとき、俺は何とかセレスティアを助けようとする。
だが、俺はセレスティアに誘われ、少女の形をした魔導兵器、ドール【ペルラネラ】に乗ってしまった。
平民で魔法の才能がない俺が乗ったところでドールは動くはずがない。
だが、予想に反して【ペルラネラ】は起動する。
隠しボスとモブ――縁のないはずの男女二人は精神を一つにして【ペルラネラ】での戦いに挑む。
ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり
柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日――
東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。
中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。
彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。
無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。
政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。
「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」
ただ、一人を除いて――
これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、
たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。
「日本人」最後の花嫁 少女と富豪の二十二世紀
さんかく ひかる
SF
22世紀後半。人類は太陽系に散らばり、人口は90億人を超えた。
畜産は制限され、人々はもっぱら大豆ミートや昆虫からたんぱく質を摂取していた。
日本は前世紀からの課題だった少子化を克服し、人口1億3千万人を維持していた。
しかし日本語を話せる人間、つまり昔ながらの「日本人」は鈴木夫妻と娘のひみこ3人だけ。
鈴木一家以外の日本国民は外国からの移民。公用語は「国際共通語」。政府高官すら日本の文字は読めない。日本語が絶滅するのは時間の問題だった。
温暖化のため首都となった札幌へ、大富豪の息子アレックス・ダヤルが来日した。
彼の母は、この世界を造ったとされる天才技術者であり実業家、ラニカ・ダヤル。
一方、最後の「日本人」鈴木ひみこは、両親に捨てられてしまう。
アレックスは、捨てられた少女の保護者となった。二人は、温暖化のため首都となった札幌のホテルで暮らしはじめる。
ひみこは、自分を捨てた親を見返そうと決意した。
やがて彼女は、アレックスのサポートで国民のアイドルになっていく……。
両親はなぜ、娘を捨てたのか? 富豪と少女の関係は?
これは、最後の「日本人」少女が、天才技術者の息子と過ごした五年間の物語。
完結しています。エブリスタ・小説家になろうにも掲載してます。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる