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第12章 謹慎
戦う意味
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「まあ、僕も死にたくは無いですけどね……でも……」
誠は頭を掻き、照れながらそう言った。
「まあ、誰でも死にたくは無いわな。じゃあ、それで良いんだな」
そう言ってかなめは周りを見まさす。
「西園寺さん!僕の話を聞いてください!僕が言いたいのはですね……」
「なんだよ神前。死にたくないでそれでいいじゃないか、それで十分だぜそれで」
かなめは真剣な表情の誠をなだめすかせるようにそう言う。
「いえ、それじゃあ納得できないんです。クバルカ中佐。一つ、質問があります」
「誠ちゃんが珍しくかなめちゃんに逆らったわね……」
いつになく真剣な誠を冷やかすようにアイシャがそう言って見つめる。
「質問だ?……まーいーや。聞こうじゃねーか。なんだ、言ってみろ」
自分を見つめる強い意志を持った誠にランはそう言って穏やかな視線を返した。
ランのにらむような視線に見つめられて誠にいつもの気弱な表情が戻る。だが、誠はすぐに意を決したような表情を浮かべて口を開いた。
「何をしても生き延びろ。まあ、僕も無駄死にはしたくありません。でも、そうして生き延びた先。僕達はなぜ、そうまでして生き延びなければならないんですか……そうまでして戦い続ける理由は何ですか?戦う理由。それを教えてください」
言葉を一つ一つ選びながらそう言った。そのいつもに無い気の弱い誠の視線。しかし、ランはそれにひるむことなく誠を見つめ続ける。
「戦う意味だ?……神前……オメエ何が言いたい……」
誠の言葉にあきれ果てたという口調でかなめはそう言った。
「おい、西園寺。オメーは浅はかだぜ……神前よりはるかに場数を踏んでるのに……オメーは本当に浅はかだ。いいぜ、聞かせてやろう。神前、オメーが望むもの。そして、司法局実働部隊隊長、嵯峨惟基特務大佐からアタシが聞いた戦う意味って奴をさ……同席した連中は僥倖だぜ……聞き逃すなよ……」
そう言ったランの顔には満足げな笑みが浮かんでいた。
「アタシが知らない話だ。聞こうじゃねえか」
満足げな笑みを浮かべながらかなめがつぶやく。
「急くなよ、西園寺。まあ普通の兵隊さんの目的は勝利だわな……要するに勝ちゃあいい。まあ、その際に国際法だ、政治力だ、経済力だ、まあ色々あるが、目的ってのは勝利ってことになってる。この勝利ってのも単純じゃない……まあそんなことはこの際どーでもいーこった。要するに軍の目的は勝利だ。まあ、うちと性格の似ているお巡りさんなら治安維持、国民の財産と生命を守る。まあ兵隊の勝利が目的ってのと比べると多少分かりにくいが、ようするにみんなの命を守る。まあ目的ははっきりしてるわな」
さっぱりとした口調でランは言い切る。隣でかなめが凄味を利かせた目で小さなランを見つめた。
「一般論を利かせるたあ……随分と……」
「だから西園寺。最後まで聞け、戦う意味、アタシ達が戦い続けなきゃならねー目的ってのは……命を救う事だ」
静かに。そして言い切るようにランは言った。その言葉にアイシャが納得できないように頭を掻いた。
「期待させておいてそれ?ランちゃん。それならさっきランちゃんがお巡りさんの仕事だって言ってたことじゃない。何か違いでもあるの?」
不服そうなアイシャにランは呆れたようにため息をついた。
「そんなこと誰かが言うと思ったよ。アタシ等の命を守るってのはそんなに単純なもんじゃねーんだ。ちゃんと聞いとけ……」
そう言ってランは余裕のある笑みを浮かべた。それはその姿の少女のそれとはとても思えない老成したものだった。
「確かにお巡りさんのお仕事は命を守るってことだ。まあ、時には持ってる拳銃なんかを抜くが、まあそれも人命救助って目的のためだ。西園寺、ここで茶々を入れるなよ。怪しいってだけで無実の人をぶっ殺す馬鹿も警察官をやってるって言いたいんだろ?テメーは。そんな例外はアタシの話にゃ上がってこねー。あくまでまともなお巡りさんの話だ。まあ、これから話すことっを聞けば。アタシ等がはたから見ればまともには見えないこともあるってことは言っといたほうがいいかな。まあ、人さんの意見などどうでもいいが……」
静かにそして冷静にランは話を続けた。
「まあ、アタシや隊長の命令が時に最低で人の道に反していると思えることもあるかも知れねー。まあ、そん時それに従うかどうかはテメー等の勝手だ……そん時言う事を聞かなくてもアタシや隊長は怒らねーよ。ただ、そんな時、オメー等に非道な悪魔になれとアタシと隊長が指示を出した時。指示を出した責任を取るのがアタシや隊長の務めだ。オメー等の責任じゃねー。ただそいつは人の命を救うためだ。目の前の一人を殺すことでその背後にいる数百、数千の命を救えるなら……アタシ等はどんな酷い命令でも出す……そう言う事だ」
ランの非情で冷たい言葉に一同は沈黙した。
誠は頭を掻き、照れながらそう言った。
「まあ、誰でも死にたくは無いわな。じゃあ、それで良いんだな」
そう言ってかなめは周りを見まさす。
「西園寺さん!僕の話を聞いてください!僕が言いたいのはですね……」
「なんだよ神前。死にたくないでそれでいいじゃないか、それで十分だぜそれで」
かなめは真剣な表情の誠をなだめすかせるようにそう言う。
「いえ、それじゃあ納得できないんです。クバルカ中佐。一つ、質問があります」
「誠ちゃんが珍しくかなめちゃんに逆らったわね……」
いつになく真剣な誠を冷やかすようにアイシャがそう言って見つめる。
「質問だ?……まーいーや。聞こうじゃねーか。なんだ、言ってみろ」
自分を見つめる強い意志を持った誠にランはそう言って穏やかな視線を返した。
ランのにらむような視線に見つめられて誠にいつもの気弱な表情が戻る。だが、誠はすぐに意を決したような表情を浮かべて口を開いた。
「何をしても生き延びろ。まあ、僕も無駄死にはしたくありません。でも、そうして生き延びた先。僕達はなぜ、そうまでして生き延びなければならないんですか……そうまでして戦い続ける理由は何ですか?戦う理由。それを教えてください」
言葉を一つ一つ選びながらそう言った。そのいつもに無い気の弱い誠の視線。しかし、ランはそれにひるむことなく誠を見つめ続ける。
「戦う意味だ?……神前……オメエ何が言いたい……」
誠の言葉にあきれ果てたという口調でかなめはそう言った。
「おい、西園寺。オメーは浅はかだぜ……神前よりはるかに場数を踏んでるのに……オメーは本当に浅はかだ。いいぜ、聞かせてやろう。神前、オメーが望むもの。そして、司法局実働部隊隊長、嵯峨惟基特務大佐からアタシが聞いた戦う意味って奴をさ……同席した連中は僥倖だぜ……聞き逃すなよ……」
そう言ったランの顔には満足げな笑みが浮かんでいた。
「アタシが知らない話だ。聞こうじゃねえか」
満足げな笑みを浮かべながらかなめがつぶやく。
「急くなよ、西園寺。まあ普通の兵隊さんの目的は勝利だわな……要するに勝ちゃあいい。まあ、その際に国際法だ、政治力だ、経済力だ、まあ色々あるが、目的ってのは勝利ってことになってる。この勝利ってのも単純じゃない……まあそんなことはこの際どーでもいーこった。要するに軍の目的は勝利だ。まあ、うちと性格の似ているお巡りさんなら治安維持、国民の財産と生命を守る。まあ兵隊の勝利が目的ってのと比べると多少分かりにくいが、ようするにみんなの命を守る。まあ目的ははっきりしてるわな」
さっぱりとした口調でランは言い切る。隣でかなめが凄味を利かせた目で小さなランを見つめた。
「一般論を利かせるたあ……随分と……」
「だから西園寺。最後まで聞け、戦う意味、アタシ達が戦い続けなきゃならねー目的ってのは……命を救う事だ」
静かに。そして言い切るようにランは言った。その言葉にアイシャが納得できないように頭を掻いた。
「期待させておいてそれ?ランちゃん。それならさっきランちゃんがお巡りさんの仕事だって言ってたことじゃない。何か違いでもあるの?」
不服そうなアイシャにランは呆れたようにため息をついた。
「そんなこと誰かが言うと思ったよ。アタシ等の命を守るってのはそんなに単純なもんじゃねーんだ。ちゃんと聞いとけ……」
そう言ってランは余裕のある笑みを浮かべた。それはその姿の少女のそれとはとても思えない老成したものだった。
「確かにお巡りさんのお仕事は命を守るってことだ。まあ、時には持ってる拳銃なんかを抜くが、まあそれも人命救助って目的のためだ。西園寺、ここで茶々を入れるなよ。怪しいってだけで無実の人をぶっ殺す馬鹿も警察官をやってるって言いたいんだろ?テメーは。そんな例外はアタシの話にゃ上がってこねー。あくまでまともなお巡りさんの話だ。まあ、これから話すことっを聞けば。アタシ等がはたから見ればまともには見えないこともあるってことは言っといたほうがいいかな。まあ、人さんの意見などどうでもいいが……」
静かにそして冷静にランは話を続けた。
「まあ、アタシや隊長の命令が時に最低で人の道に反していると思えることもあるかも知れねー。まあ、そん時それに従うかどうかはテメー等の勝手だ……そん時言う事を聞かなくてもアタシや隊長は怒らねーよ。ただ、そんな時、オメー等に非道な悪魔になれとアタシと隊長が指示を出した時。指示を出した責任を取るのがアタシや隊長の務めだ。オメー等の責任じゃねー。ただそいつは人の命を救うためだ。目の前の一人を殺すことでその背後にいる数百、数千の命を救えるなら……アタシ等はどんな酷い命令でも出す……そう言う事だ」
ランの非情で冷たい言葉に一同は沈黙した。
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