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第5章 本配属になる幼女
お出かけの足
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「いいんだぜ、気にしなくてもよー」
そこに立っていたのはランだった。
シャムよりもさらに小柄な、小学校に入ったばかりと言うような体格のランが腕組みをして誠を見つめている。とりあえずズボンのベルトを締めると敬礼をしようとした。
「だから、いいって言ってんだろ?それよか神前……」
そう言ってランはいかにも自然に男子更衣室に入ってくる。
「アイシャ奴がパーラの車に分乗する分、カウラの車の席空いてんだろ?乗せてくれるように頼んでくれよ」
「は?」
いかにもばつが悪いと言うようにランは頭をかきながらつぶやく。
「別に良いですけど、直接頼んだらどうですか?」
そう言った誠にランは冷めた視線を浴びせる。
「そいつは正論だがなあ……アタシがアイツ等にものを頼むってのは借りを作るみてえで気持ち悪りーんだ。まあ、オメーになら頼みやすいからな」
そう言うランを後目に誠はジャケットを羽織ってバックを掴んでロッカーを閉める。
「なるほど、頼みやすいのか。ふうん」
突然の声にランは振り向いた。そこにはランをタレ目で見つめているかなめとブリーフ一丁の菰田に思わず目を押さえるカウラの姿があった。
「いやいや、中佐殿、教導官殿を乗せることには自分は全く反対しませんよ。なあカウラ」
とりあえず更衣室を出た誠とランにかなめは声をかける。
「まあ、そうだな。私の車でよければ」
そう言うと菰田に背を向けてカウラは車のキーを取り出して歩き始める。
「すまねーな。オメー等も疲れてんだろ?」
ランは弱みを握られたような引きつった笑みを浮かべる。それをいつものタレ目をさらにまなじりの下がった姿にしてかなめが見下ろしている。
「いえいえ、アタシ等は中佐殿と違って暇を持て余していますから。明日はご予定は?」
そう言うかなめに、ランは思わず釣られて携帯端末を取り出す。
「一応、今日じゃなく明日に嵯峨大佐に会うつもりでいたから、明日の昼間はまるまる空いてるんだ。夜からは遼北陸軍第二十三混成特機連隊の夜間教導の予定が入ってるけどな」
そう言うとランはかなめの顔を見上げた。ランの顔は完全に『しまった』と言う顔をしている。
「それじゃあかなり付き合えそうですねえ」
まなじりが下がりっぱなしのかなめを見て、誠も不安を感じていた。だいたいこう言う表情をかなめが見せるときはろくなことが起きない。
ランは頬を引きつらせながらハンガーの階段をカウラに続いており始める。西達夜勤組の整備班員がランの姿を見て敬礼する。軽く手を上げて答えるランだが、どこかしら不安そうな表情が口元に浮かんでいる。
階段を下りてハンガーを抜けもうすでに闇夜に包まれようとするグラウンドに出る。空は隣接している菱川重工豊川の出す明かりで煌々と照らしだされていた。二人はそのまま本部前の駐車場に向かう。駐車場にはカウラのスポーツカーの他に茜の高級セダンと吉田のワンボックスが停められているのが見える。それに一回り大きいパーラの四輪駆動車が目についた。
「パーラの奴、まだ残ってるのか?さっきエダとアイシャを連れて出ていったはずだが」
そう言うとカウラは自分のスポーツカーの鍵を開ける。
「あいつ等だろ。どっかで遊んでるんじゃねえの?」
かなめはそんなことを言いながらさも当然と言うように助手席のドアを開けると狭い後部座席に乗り込んだ。誠も気をきかせてそのあとに続いて後部座席に乗り込む。
「なんだよ。アタシじゃねーのか?そこは」
「いえいえ、中佐殿にはこのような狭い場所はふさわしくないですから」
そう言って笑うかなめを見てカウラは思わずこめかみに手を当てた。
「じゃあ失礼して」
小さなランが助手席に座った。明らかにその視界はダッシュボードに邪魔されて前が見える状況ではなかった。
「出しますよ」
「頼む」
カウラの言葉に申し訳なさそうに呟くランを見てかなめが吹き出しそうになるのをぼんやりと見ながら誠は車が動き出すことで動き出す景色を眺めていた。
そこに立っていたのはランだった。
シャムよりもさらに小柄な、小学校に入ったばかりと言うような体格のランが腕組みをして誠を見つめている。とりあえずズボンのベルトを締めると敬礼をしようとした。
「だから、いいって言ってんだろ?それよか神前……」
そう言ってランはいかにも自然に男子更衣室に入ってくる。
「アイシャ奴がパーラの車に分乗する分、カウラの車の席空いてんだろ?乗せてくれるように頼んでくれよ」
「は?」
いかにもばつが悪いと言うようにランは頭をかきながらつぶやく。
「別に良いですけど、直接頼んだらどうですか?」
そう言った誠にランは冷めた視線を浴びせる。
「そいつは正論だがなあ……アタシがアイツ等にものを頼むってのは借りを作るみてえで気持ち悪りーんだ。まあ、オメーになら頼みやすいからな」
そう言うランを後目に誠はジャケットを羽織ってバックを掴んでロッカーを閉める。
「なるほど、頼みやすいのか。ふうん」
突然の声にランは振り向いた。そこにはランをタレ目で見つめているかなめとブリーフ一丁の菰田に思わず目を押さえるカウラの姿があった。
「いやいや、中佐殿、教導官殿を乗せることには自分は全く反対しませんよ。なあカウラ」
とりあえず更衣室を出た誠とランにかなめは声をかける。
「まあ、そうだな。私の車でよければ」
そう言うと菰田に背を向けてカウラは車のキーを取り出して歩き始める。
「すまねーな。オメー等も疲れてんだろ?」
ランは弱みを握られたような引きつった笑みを浮かべる。それをいつものタレ目をさらにまなじりの下がった姿にしてかなめが見下ろしている。
「いえいえ、アタシ等は中佐殿と違って暇を持て余していますから。明日はご予定は?」
そう言うかなめに、ランは思わず釣られて携帯端末を取り出す。
「一応、今日じゃなく明日に嵯峨大佐に会うつもりでいたから、明日の昼間はまるまる空いてるんだ。夜からは遼北陸軍第二十三混成特機連隊の夜間教導の予定が入ってるけどな」
そう言うとランはかなめの顔を見上げた。ランの顔は完全に『しまった』と言う顔をしている。
「それじゃあかなり付き合えそうですねえ」
まなじりが下がりっぱなしのかなめを見て、誠も不安を感じていた。だいたいこう言う表情をかなめが見せるときはろくなことが起きない。
ランは頬を引きつらせながらハンガーの階段をカウラに続いており始める。西達夜勤組の整備班員がランの姿を見て敬礼する。軽く手を上げて答えるランだが、どこかしら不安そうな表情が口元に浮かんでいる。
階段を下りてハンガーを抜けもうすでに闇夜に包まれようとするグラウンドに出る。空は隣接している菱川重工豊川の出す明かりで煌々と照らしだされていた。二人はそのまま本部前の駐車場に向かう。駐車場にはカウラのスポーツカーの他に茜の高級セダンと吉田のワンボックスが停められているのが見える。それに一回り大きいパーラの四輪駆動車が目についた。
「パーラの奴、まだ残ってるのか?さっきエダとアイシャを連れて出ていったはずだが」
そう言うとカウラは自分のスポーツカーの鍵を開ける。
「あいつ等だろ。どっかで遊んでるんじゃねえの?」
かなめはそんなことを言いながらさも当然と言うように助手席のドアを開けると狭い後部座席に乗り込んだ。誠も気をきかせてそのあとに続いて後部座席に乗り込む。
「なんだよ。アタシじゃねーのか?そこは」
「いえいえ、中佐殿にはこのような狭い場所はふさわしくないですから」
そう言って笑うかなめを見てカウラは思わずこめかみに手を当てた。
「じゃあ失礼して」
小さなランが助手席に座った。明らかにその視界はダッシュボードに邪魔されて前が見える状況ではなかった。
「出しますよ」
「頼む」
カウラの言葉に申し訳なさそうに呟くランを見てかなめが吹き出しそうになるのをぼんやりと見ながら誠は車が動き出すことで動き出す景色を眺めていた。
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