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第4章 お友達
グレゴリウス16世
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「駄目だよ!撃っちゃ!」
彼らの前に駆け込んできたのはナンバルゲニア・シャムラード中尉だった。いつもどおり東和陸軍と同じ規格の勤務服を着ているので隊員と分かるような小さな手を広げてシャムはそのまま車と熊の間に立つ。
「おい!テメエ何考えてんだ?部隊にペットを持ち込むのは厳禁だろ?」
かなめの言葉にシャムは少し悲しいような顔をすると熊の方に近づいていく。熊はわかっているのか、甘えるような声を出すと、シャムの手をぺろぺろと舐め始めた。
「シャムちゃん、降りて大丈夫かな?」
アイシャが恐る恐るそう切り出した。
「大丈夫だよ!アイシャもすぐに友達になれるから!」
そう言うと嬉しそうに扉を開けて助手席から降りるアイシャを見つめていた。
「一応、猛獣だぞ。ちゃんと警備部の連中に謝っておけ」
カウラはそう言うと熊に手を差し伸べた。熊はカウラの顔を一瞥した後、伸ばした手をぺろぺろと舐める。
「脅かしやがって。誠も撫でてや……」
車から降りて熊に手を伸ばしたかなめだが、その手に熊が噛み付いた。
「んーだ!コラッ!ぶっ殺されてえのか!この馬鹿が!」
手を引き抜くとかなめはすぐさま銃を熊に向ける。
「駄目だよ苛めちゃ!」
シャムが驚いたようにその前に立ちはだかる。
「苛めたのはそっちじゃねえか!どけ!蜂の巣にしてやる!」
「西園寺!何をしているんだ!」
銃を持ってアイシャに羽交い絞めにされているかなめに声をかけたのは、警備部部長、マリア・シュバーキナ少佐だった。
「姐御!コイツ噛みやがった!」
アイシャの腕を力任せに引き剥がすかなめをマリアについて来た警備部員と技術部の面々が取り押さえた。
マリアはかなめと熊を見比べていた。軍用義体のナノマシンの修復機能で、かなめの噛まれた手から流れていた血はもう止まっている。
「なるほど、賢そうな熊だな。ちゃんと噛むべき奴を噛んでいる」
「姐御!そいつは無いでしょ?まるでアタシが噛まれるのが当然みたいに……」
泣き言を言い出すかなめにマリアは微笑みかける。
「捕獲成功だ、各自持ち場に戻れ」
そう言うと重武装の警備部隊員は愚痴をこぼしながら本部に向かって歩き始める。
「こいつが熊太郎の子供か?」
マリアが笑顔でシャムに尋ねる。遼南内戦でシャムと苦難をともにした、人民英雄賞を受けたコンロンオオヒグマの熊太郎の名前を誠も思い出していた。
「そうだよ、名前はねえ『グレゴリウス16世』って言うの」
熊の頭を撫でるマリアにシャムは嬉しそうに答えた。
「おい、そのローマ法王みたいな名前誰が付けたんだ?」
手ぬぐいで止血をしながらかなめが尋ねる。
「隊長!」
元気良く答えるシャムにカウラとマリアが頭を抱える。
「グレゴリウス君か。じゃあ女の子だね!」
「アイシャさん。それはおかしくないですか?どう見ても男性の名前なんですけど……」
突っ込みを入れる誠にアイシャが笑いかける。
「やっぱり誠ちゃんはまだまだね。この子の母親の名前は『熊太郎』よ。命名したのも同じ隊長。つまり隊長は……」
「違うよアイシャ。この子は男の子」
シャムはそう言ってグレゴリウス16世の首を撫でてやる。嬉しそうにグレゴリウス16世は甘えた声を上げながら目を細めていた。
彼らの前に駆け込んできたのはナンバルゲニア・シャムラード中尉だった。いつもどおり東和陸軍と同じ規格の勤務服を着ているので隊員と分かるような小さな手を広げてシャムはそのまま車と熊の間に立つ。
「おい!テメエ何考えてんだ?部隊にペットを持ち込むのは厳禁だろ?」
かなめの言葉にシャムは少し悲しいような顔をすると熊の方に近づいていく。熊はわかっているのか、甘えるような声を出すと、シャムの手をぺろぺろと舐め始めた。
「シャムちゃん、降りて大丈夫かな?」
アイシャが恐る恐るそう切り出した。
「大丈夫だよ!アイシャもすぐに友達になれるから!」
そう言うと嬉しそうに扉を開けて助手席から降りるアイシャを見つめていた。
「一応、猛獣だぞ。ちゃんと警備部の連中に謝っておけ」
カウラはそう言うと熊に手を差し伸べた。熊はカウラの顔を一瞥した後、伸ばした手をぺろぺろと舐める。
「脅かしやがって。誠も撫でてや……」
車から降りて熊に手を伸ばしたかなめだが、その手に熊が噛み付いた。
「んーだ!コラッ!ぶっ殺されてえのか!この馬鹿が!」
手を引き抜くとかなめはすぐさま銃を熊に向ける。
「駄目だよ苛めちゃ!」
シャムが驚いたようにその前に立ちはだかる。
「苛めたのはそっちじゃねえか!どけ!蜂の巣にしてやる!」
「西園寺!何をしているんだ!」
銃を持ってアイシャに羽交い絞めにされているかなめに声をかけたのは、警備部部長、マリア・シュバーキナ少佐だった。
「姐御!コイツ噛みやがった!」
アイシャの腕を力任せに引き剥がすかなめをマリアについて来た警備部員と技術部の面々が取り押さえた。
マリアはかなめと熊を見比べていた。軍用義体のナノマシンの修復機能で、かなめの噛まれた手から流れていた血はもう止まっている。
「なるほど、賢そうな熊だな。ちゃんと噛むべき奴を噛んでいる」
「姐御!そいつは無いでしょ?まるでアタシが噛まれるのが当然みたいに……」
泣き言を言い出すかなめにマリアは微笑みかける。
「捕獲成功だ、各自持ち場に戻れ」
そう言うと重武装の警備部隊員は愚痴をこぼしながら本部に向かって歩き始める。
「こいつが熊太郎の子供か?」
マリアが笑顔でシャムに尋ねる。遼南内戦でシャムと苦難をともにした、人民英雄賞を受けたコンロンオオヒグマの熊太郎の名前を誠も思い出していた。
「そうだよ、名前はねえ『グレゴリウス16世』って言うの」
熊の頭を撫でるマリアにシャムは嬉しそうに答えた。
「おい、そのローマ法王みたいな名前誰が付けたんだ?」
手ぬぐいで止血をしながらかなめが尋ねる。
「隊長!」
元気良く答えるシャムにカウラとマリアが頭を抱える。
「グレゴリウス君か。じゃあ女の子だね!」
「アイシャさん。それはおかしくないですか?どう見ても男性の名前なんですけど……」
突っ込みを入れる誠にアイシャが笑いかける。
「やっぱり誠ちゃんはまだまだね。この子の母親の名前は『熊太郎』よ。命名したのも同じ隊長。つまり隊長は……」
「違うよアイシャ。この子は男の子」
シャムはそう言ってグレゴリウス16世の首を撫でてやる。嬉しそうにグレゴリウス16世は甘えた声を上げながら目を細めていた。
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