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第4章 お友達
熊騒動
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そのまま戦闘機のエンジンを製造している建物を抜けて、見慣れた司法局実働部隊の壁に沿って車は進む。だが、ゲートの前にでカウラは急にブレーキを踏んだ。誠やかなめはそのまま身を乗り出して前方の部隊の通用門に目をやった。
そこには完全武装した警備部の面々が立っていた。サングラス越しに運転しているカウラを見つけた警備部の面々が歩み寄ってくる。だが装備の割りにそれぞれの表情は明らかに楽しそうな感じに誠には見えた。
「どうしたんだ? 」
「ベルガー大尉!実は……」
スキンヘッドの重装備の男が青い目をこすりながら車内を覗き込む。
「ニコノフ曹長。事件ですか?」
誠を見て少し安心したようにニコノフは大きく息をした。
「それがいなくなりまして……」
歯切れの悪い調子で話を切り出そうとするニコノフに切れたかなめがアイシャの座る助手席を蹴り上げる。
「わかったわよ!降りればいいんでしょ?」
そう言ってアイシャは扉を開き道路に降り立つ。ニコノフの後ろから出てきたGIカットの軍曹が彼女に敬礼する。
「いなくなったって何がいなくなったのよ。ライフル持って警備部の面々が走り回るような事件なの?」
いらだたしげにそう言うアイシャにニコノフはどう答えていいか迷っているように頭を掻く。
「それが、ナンバルゲニア中尉の『お友達』らしいんで……」
その言葉を聞いて、車を降りようと誠を押していたかなめはそのまま誠の隣に座りなおした。
「アイシャも乗れよ。車に乗ってれば大丈夫だ」
かなめの言葉に引かれるようにしてアイシャも車に乗り込む。開いたゲートを抜けてカウラは徐行したまま敷地に車を乗り入れる。辺りを徘徊している警備部の面々は完全武装しており、その後ろにはバットやバールを持った技術部の隊員が続いて走り回っている。
「ナンバルゲニア中尉のお友達?」
誠はそう言うとかなめの顔を見つめた。
「どうせ遼南の猛獣かなんか連れてきたんだろ?先週まで遼南に出張してたからな」
かなめの言葉にアイシャも納得がいったというようにうなづいた。
「猛獣?」
誠はあの動物大好きなシャムの顔を思い出した。遼南内戦の人民軍のプロパガンダ写真に巨大な熊にまたがってライフルを構えるシャムの写真が
あったことを誠はなんとなく思い出した。
「隊長達には吉田に言われて黙ってたんだろ?あの馬鹿はこう言う騒動になることも計算のうちだろうからな。今頃面白がって冷蔵庫で笑い転げてるぜ」
投げやりにそう言ったかなめは、突然ブレーキをかけたカウラをにらみつけた。
「なんだ?あれは」
カウラはそう言って駐車場の方を指差した。
そこには茶色の巨大な塊が置いてあった。
かなめが腰の愛銃スプリングフィールドXDM-40に手を伸ばす。
「止めておけ!怪我させたらシャムが泣くぞ」
カウラのその言葉に、かなめはアイシャを押しのけようとした手を止めた。車と同じくらいの巨大な物体が動いた。誠は目を凝らす。
「ウーウー」
顔がこちらに向く。それは巨大な熊だった。
「コンロンオオヒグマか?面倒なもの持込みやがって」
かなめはそう言うと銃を手にしたままヒグマを見つめた。ヒグマは自分が邪魔になっているのがわかったのか、のそのそと起き上がるとそのまま隣の空いていたところに移動してそのまま座り込む。
「アイシャ、シャムを呼べ。かなめはこのまま待機だ」
カウラの言葉に二人は頷く。熊は車中の一人ひとりを眺めながら、くりくりとした瞳を輝かせている。
「舐めてんじゃねえのか?」
そう言ってかなめは銃を握り締める。アイシャは携帯を取り出していた。
そこには完全武装した警備部の面々が立っていた。サングラス越しに運転しているカウラを見つけた警備部の面々が歩み寄ってくる。だが装備の割りにそれぞれの表情は明らかに楽しそうな感じに誠には見えた。
「どうしたんだ? 」
「ベルガー大尉!実は……」
スキンヘッドの重装備の男が青い目をこすりながら車内を覗き込む。
「ニコノフ曹長。事件ですか?」
誠を見て少し安心したようにニコノフは大きく息をした。
「それがいなくなりまして……」
歯切れの悪い調子で話を切り出そうとするニコノフに切れたかなめがアイシャの座る助手席を蹴り上げる。
「わかったわよ!降りればいいんでしょ?」
そう言ってアイシャは扉を開き道路に降り立つ。ニコノフの後ろから出てきたGIカットの軍曹が彼女に敬礼する。
「いなくなったって何がいなくなったのよ。ライフル持って警備部の面々が走り回るような事件なの?」
いらだたしげにそう言うアイシャにニコノフはどう答えていいか迷っているように頭を掻く。
「それが、ナンバルゲニア中尉の『お友達』らしいんで……」
その言葉を聞いて、車を降りようと誠を押していたかなめはそのまま誠の隣に座りなおした。
「アイシャも乗れよ。車に乗ってれば大丈夫だ」
かなめの言葉に引かれるようにしてアイシャも車に乗り込む。開いたゲートを抜けてカウラは徐行したまま敷地に車を乗り入れる。辺りを徘徊している警備部の面々は完全武装しており、その後ろにはバットやバールを持った技術部の隊員が続いて走り回っている。
「ナンバルゲニア中尉のお友達?」
誠はそう言うとかなめの顔を見つめた。
「どうせ遼南の猛獣かなんか連れてきたんだろ?先週まで遼南に出張してたからな」
かなめの言葉にアイシャも納得がいったというようにうなづいた。
「猛獣?」
誠はあの動物大好きなシャムの顔を思い出した。遼南内戦の人民軍のプロパガンダ写真に巨大な熊にまたがってライフルを構えるシャムの写真が
あったことを誠はなんとなく思い出した。
「隊長達には吉田に言われて黙ってたんだろ?あの馬鹿はこう言う騒動になることも計算のうちだろうからな。今頃面白がって冷蔵庫で笑い転げてるぜ」
投げやりにそう言ったかなめは、突然ブレーキをかけたカウラをにらみつけた。
「なんだ?あれは」
カウラはそう言って駐車場の方を指差した。
そこには茶色の巨大な塊が置いてあった。
かなめが腰の愛銃スプリングフィールドXDM-40に手を伸ばす。
「止めておけ!怪我させたらシャムが泣くぞ」
カウラのその言葉に、かなめはアイシャを押しのけようとした手を止めた。車と同じくらいの巨大な物体が動いた。誠は目を凝らす。
「ウーウー」
顔がこちらに向く。それは巨大な熊だった。
「コンロンオオヒグマか?面倒なもの持込みやがって」
かなめはそう言うと銃を手にしたままヒグマを見つめた。ヒグマは自分が邪魔になっているのがわかったのか、のそのそと起き上がるとそのまま隣の空いていたところに移動してそのまま座り込む。
「アイシャ、シャムを呼べ。かなめはこのまま待機だ」
カウラの言葉に二人は頷く。熊は車中の一人ひとりを眺めながら、くりくりとした瞳を輝かせている。
「舐めてんじゃねえのか?」
そう言ってかなめは銃を握り締める。アイシャは携帯を取り出していた。
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