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第22章 新しい暮らし
煮詰まる会議
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「じゃあ、席についていただける?」
刺す様な目つきに誠は恐怖しながら椅子に座る。すぐに彼女は視線を端末に戻しすさまじいスピードでキーボードを叩く。
「おい、それは良いんだけどよ。法術特捜の部長の人事はどうなったんだ? 一応看板は、『遼州星系政治共同体同盟最高会議司法機関法術犯罪特別捜査部』なんて豪勢な名前がついてるんだ。それなりの人事を示してもらわねえと先々責任問題になった時に、アタシ等にお鉢が回ってくるのだけは勘弁だからな」
誠の隣の席に着くなり切り出すかなめ。アイシャもその隣で頷いている。
「その件ですが、しばらくはお父様が部長を兼任することになっていますわ。まあ本当はそれに適した人物が居るのだけれど、まだ本人の了承が取れていないの。それまでは現状の体制に数人の捜査官が加わる形での活動になると思いますわ」
そう言いながら、茜はなぜか視線を誠に向かって投げた。かなめもその意味は理解しているらしく、それ以上追及するつもりは無いというように腕組みをする。
「僕の顔に何かついてますか?」
真っ直ぐに見つめてくる茜の視線を感じて思わず誠はそう口にしていた。
「いいえ、それより今日は現状での法術特捜の人事案を説明させていただきます」
「そうなんですの。とっととはじめるのがいいですの」
かなめは茜の真似をして下卑た笑みを浮かべて見せる。茜はそれを無視するとカウラの顔を見た。
「司法局実働部隊の協力者の指揮者ですが、階級的にはクラウゼ少佐が適任と言えますわね」
そんな茜の言葉にアイシャはにんまりと笑う。
「でも少佐の運用艦『高雄』の副長と言う立場から言えば、常に前線での活動と言うわけには参りませんわ。ですのでベルガー大尉、捜査補助隊の隊長をお願いしたいのですがよろしくて?」
茜の言葉にカウラは頷く。期待を裏切られたアイシャはがっくりとうなだれた。かなめは怒鳴りつけようとするが、茜の何もかも見通したような視線に押されてそのままじっとしていた。
「つまり私は後方支援というわけね。それよりその子、大丈夫なの?」
アイシャはテーブルの向かいに座っているラーナを見ながらそう言った。ラーナは何か言いたげな表情をしているが、それを制するように茜が口を開いた。
「彼女は信用置けますわ。遼南山岳レンジャー部隊への出向の時にナンバルゲニア中尉の下でのレンジャー訓練を受けたことがある逸材です。それに法術適正指数に於いては神前曹長に匹敵する実力の持ち主ですわ」
シャムの教え子。その言葉だけで誠達は十分にラーナの実力を認める形となった。さらに法術師としては誠をはるかに凌ぐ実力者の茜の言葉にはラーナの実力を大げさに言っていることは判っていても重みがある。
「そんな大層なもんじゃないっすよ。山育ちなんで、サバイバルとかには結構自信があるだけっす」
シャムもそうだが、ラーナも遼南生まれの遼州人は誠のような東和育ちの遼州人と比べて妙に明るい印象がある。そう誠は思いながらかなめ達を見回した。かなめは特に気にする様子は無かった。カウラは珍しそうにラーナの様子を伺っていた。アイシャが聞きたいことは彼女の趣味と合うかどうかの話だろうと推測が出来た。
四人に黙って見つめられても、照れるどころか自分から話始めそうなラーナを制して、茜は話し始めた。
「近年、特に前の大戦の終結後ですけど、法術犯罪の発生件数は上昇傾向にあります、そのため……」
茜らしい。法術犯罪とその対策の歴史を語りだした茜だが、すぐにそれに飽きてしまう人物がいた。
「おい、茜。そんな御託は良いんだ。それより狙いはどこだ?青銅騎士団か?それともネオナチ連中か?アメちゃんの陸軍が動いてるって話も聞くわな」
かなめは相変わらずガムを噛んでいた。茜はそれに気を悪くしたのか、答えることも無くじっと端末を操作していた。
「じゃあかなめさん。『ギルド』と言う組織のことはご存知?」
ようやく茜が口を開く。かなめは自分の意見が通ったことで少しばかり笑みを浮かべた。
「噂は聞いてるよ。成立時期不明、組織構成員不明、ただ存在だけが噂されている法術武装組織のことだろ?どこの特務隊でも名前だけは教えられると言う非正規組織。命名はイギリスのMI6《えむあいしっくす》だったか?」
かなめの言葉にカウラとアイシャは黙って聞き入っていた。
「法術犯罪自体が無かったことになっていた時代、先日の近藤事件以降に発生した法術重大事件の陰に彼等がいるだろうと言われてることもご存知なわけね」
「あの、特殊部隊の常識ばかり話されても話が見えないんですけど……」
茜とかなめのやり取りにうんざりしたような表情のアイシャの質問の途中で会議室のドアが開く。
「ごめんなさい!遅くなっちゃいました?」
現れたのはレベッカだった。予想外の闖入者にかなめは眉をひそめる。
「レベッカちゃん。こっちの席、空いてるわよ」
そう言ってアイシャが隣の席を指差す。技官で中尉の彼女。おそらく誠達にとってのヨハンのように法術兵器に関するフォロー要員として彼女が選ばれたのだろうと誠はレベッカの大きな胸を見ながら思っていた。
だが誠のそんな様子はすぐにかなめに見透かされる。
「やっぱりそこの金髪めがね巨乳は法術に関する研究もやってたか。叔父貴の狙いはその辺のアメリカとパイプをつなげときたいって所か?」
明らかに敵意むき出しのかなめにおどおどとレベッカはうつむく。
「法術研究の最高峰のアメリカ陸軍がお父様とは犬猿の仲である以上、彼女達海軍の方から情報を得ると言うのは上策じゃなくて?」
茜はそう言うと話を続けようとした。
「なるほどねえ」
そう言って再びかなめはレベッカをにらみつける。今にも泣き出しそうな表情のレベッカはその視線に怯えるような視線を茜に投げる。
「あんまりいじめないでいただけませんか。彼女も法術特捜には不可欠な人材ですのよ」
茜の語気の強さにさすがのかなめも少しばかりひるんだ。会議室はかなめのいつもの威圧感で憂鬱な雰囲気に包まれていた。
刺す様な目つきに誠は恐怖しながら椅子に座る。すぐに彼女は視線を端末に戻しすさまじいスピードでキーボードを叩く。
「おい、それは良いんだけどよ。法術特捜の部長の人事はどうなったんだ? 一応看板は、『遼州星系政治共同体同盟最高会議司法機関法術犯罪特別捜査部』なんて豪勢な名前がついてるんだ。それなりの人事を示してもらわねえと先々責任問題になった時に、アタシ等にお鉢が回ってくるのだけは勘弁だからな」
誠の隣の席に着くなり切り出すかなめ。アイシャもその隣で頷いている。
「その件ですが、しばらくはお父様が部長を兼任することになっていますわ。まあ本当はそれに適した人物が居るのだけれど、まだ本人の了承が取れていないの。それまでは現状の体制に数人の捜査官が加わる形での活動になると思いますわ」
そう言いながら、茜はなぜか視線を誠に向かって投げた。かなめもその意味は理解しているらしく、それ以上追及するつもりは無いというように腕組みをする。
「僕の顔に何かついてますか?」
真っ直ぐに見つめてくる茜の視線を感じて思わず誠はそう口にしていた。
「いいえ、それより今日は現状での法術特捜の人事案を説明させていただきます」
「そうなんですの。とっととはじめるのがいいですの」
かなめは茜の真似をして下卑た笑みを浮かべて見せる。茜はそれを無視するとカウラの顔を見た。
「司法局実働部隊の協力者の指揮者ですが、階級的にはクラウゼ少佐が適任と言えますわね」
そんな茜の言葉にアイシャはにんまりと笑う。
「でも少佐の運用艦『高雄』の副長と言う立場から言えば、常に前線での活動と言うわけには参りませんわ。ですのでベルガー大尉、捜査補助隊の隊長をお願いしたいのですがよろしくて?」
茜の言葉にカウラは頷く。期待を裏切られたアイシャはがっくりとうなだれた。かなめは怒鳴りつけようとするが、茜の何もかも見通したような視線に押されてそのままじっとしていた。
「つまり私は後方支援というわけね。それよりその子、大丈夫なの?」
アイシャはテーブルの向かいに座っているラーナを見ながらそう言った。ラーナは何か言いたげな表情をしているが、それを制するように茜が口を開いた。
「彼女は信用置けますわ。遼南山岳レンジャー部隊への出向の時にナンバルゲニア中尉の下でのレンジャー訓練を受けたことがある逸材です。それに法術適正指数に於いては神前曹長に匹敵する実力の持ち主ですわ」
シャムの教え子。その言葉だけで誠達は十分にラーナの実力を認める形となった。さらに法術師としては誠をはるかに凌ぐ実力者の茜の言葉にはラーナの実力を大げさに言っていることは判っていても重みがある。
「そんな大層なもんじゃないっすよ。山育ちなんで、サバイバルとかには結構自信があるだけっす」
シャムもそうだが、ラーナも遼南生まれの遼州人は誠のような東和育ちの遼州人と比べて妙に明るい印象がある。そう誠は思いながらかなめ達を見回した。かなめは特に気にする様子は無かった。カウラは珍しそうにラーナの様子を伺っていた。アイシャが聞きたいことは彼女の趣味と合うかどうかの話だろうと推測が出来た。
四人に黙って見つめられても、照れるどころか自分から話始めそうなラーナを制して、茜は話し始めた。
「近年、特に前の大戦の終結後ですけど、法術犯罪の発生件数は上昇傾向にあります、そのため……」
茜らしい。法術犯罪とその対策の歴史を語りだした茜だが、すぐにそれに飽きてしまう人物がいた。
「おい、茜。そんな御託は良いんだ。それより狙いはどこだ?青銅騎士団か?それともネオナチ連中か?アメちゃんの陸軍が動いてるって話も聞くわな」
かなめは相変わらずガムを噛んでいた。茜はそれに気を悪くしたのか、答えることも無くじっと端末を操作していた。
「じゃあかなめさん。『ギルド』と言う組織のことはご存知?」
ようやく茜が口を開く。かなめは自分の意見が通ったことで少しばかり笑みを浮かべた。
「噂は聞いてるよ。成立時期不明、組織構成員不明、ただ存在だけが噂されている法術武装組織のことだろ?どこの特務隊でも名前だけは教えられると言う非正規組織。命名はイギリスのMI6《えむあいしっくす》だったか?」
かなめの言葉にカウラとアイシャは黙って聞き入っていた。
「法術犯罪自体が無かったことになっていた時代、先日の近藤事件以降に発生した法術重大事件の陰に彼等がいるだろうと言われてることもご存知なわけね」
「あの、特殊部隊の常識ばかり話されても話が見えないんですけど……」
茜とかなめのやり取りにうんざりしたような表情のアイシャの質問の途中で会議室のドアが開く。
「ごめんなさい!遅くなっちゃいました?」
現れたのはレベッカだった。予想外の闖入者にかなめは眉をひそめる。
「レベッカちゃん。こっちの席、空いてるわよ」
そう言ってアイシャが隣の席を指差す。技官で中尉の彼女。おそらく誠達にとってのヨハンのように法術兵器に関するフォロー要員として彼女が選ばれたのだろうと誠はレベッカの大きな胸を見ながら思っていた。
だが誠のそんな様子はすぐにかなめに見透かされる。
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「法術研究の最高峰のアメリカ陸軍がお父様とは犬猿の仲である以上、彼女達海軍の方から情報を得ると言うのは上策じゃなくて?」
茜はそう言うと話を続けようとした。
「なるほどねえ」
そう言って再びかなめはレベッカをにらみつける。今にも泣き出しそうな表情のレベッカはその視線に怯えるような視線を茜に投げる。
「あんまりいじめないでいただけませんか。彼女も法術特捜には不可欠な人材ですのよ」
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