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第22章 新しい暮らし
立ち入り規制
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「何とか間に合いそうね。カウラちゃんこれ食べる?」
アイシャはガムを取り出し、カウラを見つめた。カウラはそのまま左手を差し伸べる。
「アタシも食うからな。誠はどうする?」
「ああ、僕もいただきます」
ガムを配るアイシャ。六車線の道路が次第に詰まり始めた。
「車だと通用門の検問でいつもこれだもんね。どうにかならないのかしら」
「ここじゃあアサルト・モジュールや戦闘機なんかも作ってるんだ。セキュリティーはそれなりに凝ってくれなきゃ困る」
工場前での未登録車両の検査などのために渋滞している道。ガムを噛みながらかなめは腕を組む。しかし、意外に車の流れは速く、正門の自動認識ゲートをあっさりと通過することになった。
車は工場の中を進む。積荷を満載した電動モーター駆動の大型トレーラーが行きかうのがいかにも工場の敷地内らしい。
「誠ちゃん、よく原付でこの通りを走れるわね。トレーラーとかすれ違うの怖くない?」
「ああ、慣れてますから」
アイシャの問いに答えながら、すれ違うトレーラーを眺めていた。三台が列を成し、荷台に戦闘機の翼のようにも見える部品を満載して大型トレーラーがすれ違う。四人の顔を撫でるのはトレーラーのモーターが発する熱風ではなくクーラーから出る冷気だった。カウラは工場の建物の尽きたはずれ、コンクリートで覆われた司法局実働部隊駐屯地へと進んだ。
「身分証、持ってるわよね」
アイシャがそう言いながらバッグから自分の身分証を出す。
「それとこれ、返しとくわ」
アイシャに彼女の愛銃、スプリングフィールドXDM40を渡した。いつも通り通用口の警備室では警備部部長マリア・シュバーキナ少佐の部下の警備担当宿直隊員への説教が続いていた。
「意外に早く着いたんじゃないの?」
カウラの車を見つけて振り返ったマリアが説教を止めて開けた窓ガラスに顔を近付ける。かなめは誠の身分証を受け取ると自分のものと一緒にカウラに渡した。
「すいません……身分証を……」
マリアに説教されていた小柄な金髪の新兵がカウラのいる運転席をのぞき込んだ。
「おい!顔見てわからねえのか?このぼんくら!」
「すまんな、西園寺。おとといの正体不明の敵に神前達が襲われた一件で警備はしっかりとの本部からのお達しがあってな。手間をとらせてすまん。一応私達も公務員だ上の指示が出たら……我慢してくれ」
カウラはマリアに四人の身分証を詰め所の部下に渡す。マリアが言うことが海で出たアロハシャツの襲撃者のことだと思い出して誠は苦笑いを浮かべた。
「しかし、大変よね、マリアも。全員チェックするようになったの?」
「まあな。同盟機構の政治屋さん達に一応姿勢だけは見せとかないといけないだろ?」
アイシャの問いに答えるマリアに部下が身分証を手渡した。ゲートが開き、そのまま車が滑り込む。シャムのとうもろこし畑は収穫を終え、次の作付けの機会を待っていた。カウラはそのまま隊員の車が並ぶ駐車場の奥に進み停車した。
「もう来てるんだ、茜ちゃん」
助手席から降りたアイシャが隣に止まっている白い高級セダンを見ながらそう言った。
「アイシャ!遅いわよ!」
誠とかなめが狭いスポーツカーの後部座席から体を出すと、その目の前にはサラが来ていた。
「おはよう!別に遅刻じゃないでしょ?」
「おはようじゃないわよ!四人とも早く着替えて会議室に行きなさいよ!嵯峨筆頭捜査官がもう準備して待ってるんだから」
「どこ行くの?サラ」
「決まってるじゃないの!歓迎会の準備よ!」
サラはそう言うとそのまま走り去った。とりあえず急ぐべきだと言うことがわかった誠達はそのまま早足でハンガーに向かった。
アイシャはガムを取り出し、カウラを見つめた。カウラはそのまま左手を差し伸べる。
「アタシも食うからな。誠はどうする?」
「ああ、僕もいただきます」
ガムを配るアイシャ。六車線の道路が次第に詰まり始めた。
「車だと通用門の検問でいつもこれだもんね。どうにかならないのかしら」
「ここじゃあアサルト・モジュールや戦闘機なんかも作ってるんだ。セキュリティーはそれなりに凝ってくれなきゃ困る」
工場前での未登録車両の検査などのために渋滞している道。ガムを噛みながらかなめは腕を組む。しかし、意外に車の流れは速く、正門の自動認識ゲートをあっさりと通過することになった。
車は工場の中を進む。積荷を満載した電動モーター駆動の大型トレーラーが行きかうのがいかにも工場の敷地内らしい。
「誠ちゃん、よく原付でこの通りを走れるわね。トレーラーとかすれ違うの怖くない?」
「ああ、慣れてますから」
アイシャの問いに答えながら、すれ違うトレーラーを眺めていた。三台が列を成し、荷台に戦闘機の翼のようにも見える部品を満載して大型トレーラーがすれ違う。四人の顔を撫でるのはトレーラーのモーターが発する熱風ではなくクーラーから出る冷気だった。カウラは工場の建物の尽きたはずれ、コンクリートで覆われた司法局実働部隊駐屯地へと進んだ。
「身分証、持ってるわよね」
アイシャがそう言いながらバッグから自分の身分証を出す。
「それとこれ、返しとくわ」
アイシャに彼女の愛銃、スプリングフィールドXDM40を渡した。いつも通り通用口の警備室では警備部部長マリア・シュバーキナ少佐の部下の警備担当宿直隊員への説教が続いていた。
「意外に早く着いたんじゃないの?」
カウラの車を見つけて振り返ったマリアが説教を止めて開けた窓ガラスに顔を近付ける。かなめは誠の身分証を受け取ると自分のものと一緒にカウラに渡した。
「すいません……身分証を……」
マリアに説教されていた小柄な金髪の新兵がカウラのいる運転席をのぞき込んだ。
「おい!顔見てわからねえのか?このぼんくら!」
「すまんな、西園寺。おとといの正体不明の敵に神前達が襲われた一件で警備はしっかりとの本部からのお達しがあってな。手間をとらせてすまん。一応私達も公務員だ上の指示が出たら……我慢してくれ」
カウラはマリアに四人の身分証を詰め所の部下に渡す。マリアが言うことが海で出たアロハシャツの襲撃者のことだと思い出して誠は苦笑いを浮かべた。
「しかし、大変よね、マリアも。全員チェックするようになったの?」
「まあな。同盟機構の政治屋さん達に一応姿勢だけは見せとかないといけないだろ?」
アイシャの問いに答えるマリアに部下が身分証を手渡した。ゲートが開き、そのまま車が滑り込む。シャムのとうもろこし畑は収穫を終え、次の作付けの機会を待っていた。カウラはそのまま隊員の車が並ぶ駐車場の奥に進み停車した。
「もう来てるんだ、茜ちゃん」
助手席から降りたアイシャが隣に止まっている白い高級セダンを見ながらそう言った。
「アイシャ!遅いわよ!」
誠とかなめが狭いスポーツカーの後部座席から体を出すと、その目の前にはサラが来ていた。
「おはよう!別に遅刻じゃないでしょ?」
「おはようじゃないわよ!四人とも早く着替えて会議室に行きなさいよ!嵯峨筆頭捜査官がもう準備して待ってるんだから」
「どこ行くの?サラ」
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