220 / 1,505
第21章 普段の一日
図書館と呼ばれる魔窟
しおりを挟む
「じゃあこれを図書館に運びましょう!」
昼食を終えたアイシャが誠達一同に声をかけてつれてきたのは駐車場の中型トラックの荷台だった。
「図書館?」
誠は嫌な予感がしてそのまま振り返った。
「逃げちゃ駄目じゃないの、誠ちゃん!あの部屋、この寮の欲望の詰まった神聖な隠し部屋よ!」
「あそこですか……」
あきらめた誠が頭を掻く。西はそわそわしながらレベッカを見つめた。
「クラウゼ少佐。図書館や欲望って言われてもぴんとこないんだけどな」
ロナルドが手を上げてそう言った。隣で岡部とフェデロが頷く。
「それはね!これよ!」
そう言ってアイシャはダンボールの中から一冊の冊子を取り出してロナルドに渡す。ロナルドはそれを気も無く取り上げた次の瞬間、呆れたような表情でアイシャを見つめた。絡み合う裸の美少年達の絵の表紙。誠は自然と愛想笑いを浮かべていた。
「わかったんですが……こんなの堂々と見せるのは女性としては品格を欠くような気がするような……」
「そういう事言う?まるでアタシが変態みたいじゃないの」
「いや、みたいなんじゃなくて変態そのものなんだがな」
後ろからかなめが茶々を入れる。アイシャは腕を組んでその態度の大きなサイボーグをにらみつける。
「酷いこと言うわね、かなめちゃん。あなたに私が分けてあげた雑誌の一覧、誠ちゃんに見せてあげても良いんだけどなあ」
「いえ!少佐殿はすばらしいです!さあ!みんな仕事にかかろうじゃないか!」
かなめのわざとらしい豹変に成り行きを見守っていたサラとパーラが白い目を向ける。とりあえずと言うことで、岡部、誠、フェデロ、西の四人がダンボールを抱えて寮に向かった。
「そう言えば棚とかまだ置いてないですよ……昨日部屋にあった奴は全部処分しちゃいましたし」
一際重いダンボールを持たされた誠がなんとか持ちやすいように手の位置を変えながらつぶやく。左右に揺れるたびに手に伝わる振動で誠は中身が雑誌の類だろうということが想像できた。
「ああ、それね。今度もまたキムとエダに頼んどいたのよ」
「あいつ等も良い様に使われてるなあ」
誠の横を歩くかなめはがしゃがしゃと音がする箱を抱えている。そしてその反対側には対抗するようにカウラがこれも軽そうなダンボールをもって誠に寄り添って歩いている。
「これは私から寮に暮らす人々の生活を豊かにしようと言う提言を含めた寄付だから。かなめちゃんもカウラちゃんも見てもかまわないわよ」
「私は遠慮する」
即答したのはカウラだった。それを見てかなめはざまあみろと言うように手ぶらで荷物持ちを先導しているアイシャに向けて舌を出す。
「オメエの趣味だからなあ。どうせ変態御用達の展開なんだろ?」
「暑いわねえ、後ちょっとで秋になると言うのに」
「ごまかすんじゃねえ!」
かなめが話を濁そうとしたアイシャに突っ込みを入れる。そんな二人を見て噴出した西にかなめが蹴りを入れた。
「階段よ!気をつけてね」
すっかり仕切りだしたアイシャに愚痴りながら誠達は寮に入った。
「はい!そこでいったん荷物を置いて……」
「子供じゃないんですから」
先頭を歩いていた岡部が手早く靴を脱ぐ。西の段ボールから落ちた冊子を拾ったレベッカが真っ赤な顔をしてすぐに、西の置いたダンボールの中にもどしてしまう。
「二階まで持って行ったあとどうするんですか?まだ棚が届かないでしょ?」
「仕方ないわね。まあそのまま読書会に突入と言うのも……」
「こう言うものは一人で読むものじゃねえのか?」
そう言ったかなめにアイシャが生暖かい視線を送る。その瞬間アイシャの顔に歓喜の表情が浮かぶ。
「その、あれだ。恥ずかしいだろ?」
自分の言葉に気づいてかなめはうろたえていた。
「何が?別に何も私は言ってないんだけど」
アイシャは明らかに勝ったと宣言したいようないい笑顔を浮かべる。
「いい、お前に聞いたアタシが間抜けだった」
そう言うとかなめは誠の持っていたダンボールを持ち上げて、小走りで階段へと急ぐ。
「レベッカちゃん。もし好きなのが見つかったら借りて行ってもいいのよ」
アイシャのその言葉にレベッカは再び顔を赤らめてうつむく。
「しかし、気前が良いな。何のつもりだ?」
カウラが不思議そうにアイシャを見つめる。
「これが布教活動と言うものよ!」
胸を張るアイシャに中身のあまり入っていない箱を抱えようとしていたサラとパーラは思わずそれを置いて頭を抱えた。嫌な予感がして誠はとりあえずかなめを追って二階に上がる。二階の空き部屋の前にはかなめが座っていた。
「西園寺さん」
声をかけると後ろに何かを隠すかなめがいた。
「脅かすんじゃねえよ」
引きつった笑みを浮かべるかなめの手には一冊の薄い本が握られていた。誠はとりあえず察してそのまま廊下を走り階段を降りた。
「西園寺は何をしている?」
「さあ何でしょうねえ」
先頭を切って上がってくるカウラに誠はわざとらしい大声で答えた。二階の廊下に二人がたどり着くと空き部屋の前にはかなめが暇そうに立っていた。
「かなめちゃん早いわね」
アイシャの視線はまだ生暖かい。それが気になるようで、かなめは壁を蹴飛ばした。
「そんなことしたら壊れちゃうわよ」
サラがすばやくかなめの蹴った壁を確かめる。不機嫌なかなめを見てアイシャはすっかりご満悦だった。
昼食を終えたアイシャが誠達一同に声をかけてつれてきたのは駐車場の中型トラックの荷台だった。
「図書館?」
誠は嫌な予感がしてそのまま振り返った。
「逃げちゃ駄目じゃないの、誠ちゃん!あの部屋、この寮の欲望の詰まった神聖な隠し部屋よ!」
「あそこですか……」
あきらめた誠が頭を掻く。西はそわそわしながらレベッカを見つめた。
「クラウゼ少佐。図書館や欲望って言われてもぴんとこないんだけどな」
ロナルドが手を上げてそう言った。隣で岡部とフェデロが頷く。
「それはね!これよ!」
そう言ってアイシャはダンボールの中から一冊の冊子を取り出してロナルドに渡す。ロナルドはそれを気も無く取り上げた次の瞬間、呆れたような表情でアイシャを見つめた。絡み合う裸の美少年達の絵の表紙。誠は自然と愛想笑いを浮かべていた。
「わかったんですが……こんなの堂々と見せるのは女性としては品格を欠くような気がするような……」
「そういう事言う?まるでアタシが変態みたいじゃないの」
「いや、みたいなんじゃなくて変態そのものなんだがな」
後ろからかなめが茶々を入れる。アイシャは腕を組んでその態度の大きなサイボーグをにらみつける。
「酷いこと言うわね、かなめちゃん。あなたに私が分けてあげた雑誌の一覧、誠ちゃんに見せてあげても良いんだけどなあ」
「いえ!少佐殿はすばらしいです!さあ!みんな仕事にかかろうじゃないか!」
かなめのわざとらしい豹変に成り行きを見守っていたサラとパーラが白い目を向ける。とりあえずと言うことで、岡部、誠、フェデロ、西の四人がダンボールを抱えて寮に向かった。
「そう言えば棚とかまだ置いてないですよ……昨日部屋にあった奴は全部処分しちゃいましたし」
一際重いダンボールを持たされた誠がなんとか持ちやすいように手の位置を変えながらつぶやく。左右に揺れるたびに手に伝わる振動で誠は中身が雑誌の類だろうということが想像できた。
「ああ、それね。今度もまたキムとエダに頼んどいたのよ」
「あいつ等も良い様に使われてるなあ」
誠の横を歩くかなめはがしゃがしゃと音がする箱を抱えている。そしてその反対側には対抗するようにカウラがこれも軽そうなダンボールをもって誠に寄り添って歩いている。
「これは私から寮に暮らす人々の生活を豊かにしようと言う提言を含めた寄付だから。かなめちゃんもカウラちゃんも見てもかまわないわよ」
「私は遠慮する」
即答したのはカウラだった。それを見てかなめはざまあみろと言うように手ぶらで荷物持ちを先導しているアイシャに向けて舌を出す。
「オメエの趣味だからなあ。どうせ変態御用達の展開なんだろ?」
「暑いわねえ、後ちょっとで秋になると言うのに」
「ごまかすんじゃねえ!」
かなめが話を濁そうとしたアイシャに突っ込みを入れる。そんな二人を見て噴出した西にかなめが蹴りを入れた。
「階段よ!気をつけてね」
すっかり仕切りだしたアイシャに愚痴りながら誠達は寮に入った。
「はい!そこでいったん荷物を置いて……」
「子供じゃないんですから」
先頭を歩いていた岡部が手早く靴を脱ぐ。西の段ボールから落ちた冊子を拾ったレベッカが真っ赤な顔をしてすぐに、西の置いたダンボールの中にもどしてしまう。
「二階まで持って行ったあとどうするんですか?まだ棚が届かないでしょ?」
「仕方ないわね。まあそのまま読書会に突入と言うのも……」
「こう言うものは一人で読むものじゃねえのか?」
そう言ったかなめにアイシャが生暖かい視線を送る。その瞬間アイシャの顔に歓喜の表情が浮かぶ。
「その、あれだ。恥ずかしいだろ?」
自分の言葉に気づいてかなめはうろたえていた。
「何が?別に何も私は言ってないんだけど」
アイシャは明らかに勝ったと宣言したいようないい笑顔を浮かべる。
「いい、お前に聞いたアタシが間抜けだった」
そう言うとかなめは誠の持っていたダンボールを持ち上げて、小走りで階段へと急ぐ。
「レベッカちゃん。もし好きなのが見つかったら借りて行ってもいいのよ」
アイシャのその言葉にレベッカは再び顔を赤らめてうつむく。
「しかし、気前が良いな。何のつもりだ?」
カウラが不思議そうにアイシャを見つめる。
「これが布教活動と言うものよ!」
胸を張るアイシャに中身のあまり入っていない箱を抱えようとしていたサラとパーラは思わずそれを置いて頭を抱えた。嫌な予感がして誠はとりあえずかなめを追って二階に上がる。二階の空き部屋の前にはかなめが座っていた。
「西園寺さん」
声をかけると後ろに何かを隠すかなめがいた。
「脅かすんじゃねえよ」
引きつった笑みを浮かべるかなめの手には一冊の薄い本が握られていた。誠はとりあえず察してそのまま廊下を走り階段を降りた。
「西園寺は何をしている?」
「さあ何でしょうねえ」
先頭を切って上がってくるカウラに誠はわざとらしい大声で答えた。二階の廊下に二人がたどり着くと空き部屋の前にはかなめが暇そうに立っていた。
「かなめちゃん早いわね」
アイシャの視線はまだ生暖かい。それが気になるようで、かなめは壁を蹴飛ばした。
「そんなことしたら壊れちゃうわよ」
サラがすばやくかなめの蹴った壁を確かめる。不機嫌なかなめを見てアイシャはすっかりご満悦だった。
0
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
あなたがそう望んだから
まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」
思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。
確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。
喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。
○○○○○○○○○○
誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる