195 / 1,505
第16章 引っ越し
掃除の時間
しおりを挟む
携帯をしまうアイシャの隣でかなめは含み笑いを浮かべていた。
「すいませんねえ、待っていただいちゃって」
島田、サラ、パーラが出勤しようとする当番隊員を押しのけて入ってくる。
「別に待ってなんかいねえよ」
そう言いながらトレーの隅に残ったリゾットをかなめはかき集める。カウラは散々文句を言いながら旨そうにリゾットを食べるかなめをいつものような冷めた目で見ていた。
「ちゃんとおやつも買ってきたよ」
サラが机の上にポテトチップスの袋を置いた。さらに島田、パーラも手一杯の菓子やジュースをテーブルに広げる。
「ちょっと弁当食いますから。ジュン!後のことは頼むわ」
島田はコンビニ弁当を広げる。愛称のジュンと呼ばれたキムはやかんから注いだ番茶を飲み干すと立ち上がった。
「じゃあ自分等は掃除の準備にかかります」
キムはエダ、そして食堂の入り口で待っている西をつれて消えた。
「神前、食い終わったか?」
番茶をすするかなめの視線が誠を捕らえる。
「まあどうにか。それじゃあ島田先輩、僕達も行きますよ」
「頼むわ。すぐ追いつくと思うけど」
誠は島田の弁当を見て驚いた。島田はもう半分以上食べ終わっている。
「島田先輩、よくそんな速度で食えますね」
「まあな。俺等の仕事は時間との戦いだからな。神前もやる気になれば出来ると思うぞ」
島田は一口でメンチカツをかみ砕いて飲み込んだ。
「そんなことはどうでも良いんだ。サラとパーラ。ヨハン達を手伝ってやれよ。それじゃあ行くぜ」
立ち上がったかなめは、トレーをカウンターに持っていく。
「私達の分も持ってってくれたら良かったのに」
そう言いながらカウラと誠のトレーを自分の上に乗せ、アイシャはそれをカウンターまで運ぶ。
「別にそれくらいで文句言われることじゃねえよ」
かなめは頭を掻いた。
「それじゃあ行くか」
カウラと誠も立ち上がった。ようやく決心がついたとでも言うように、菰田とヒンヌー教徒もその後に続く。
「菰田達!バケツと雑巾もう少し物置にあるはずだから持ってきてくれ」
食堂の入り口から覗き込んでいるキムがそう叫んだ。仕方が無いという表情で菰田、ヤコブ、ソンが物置へ歩き始める。
「ほんじゃあ行くぞー」
投げやりにそう言うとかなめは歩き出した。アイシャ、カウラもその後に続く。誠も仕方なく通路に出た。当番の隊員はすでに寮を出た後で、人気の無い通路を西館に向けて歩き続ける。
「しかし、ずいぶん使いかけの洗剤があるのね」
エダが持っている洗剤の瓶を入れたバケツにアイシャが目をやる。
「ああ、これはいつも島田先輩が掃除と言うと洗剤を買ってこさせるから……毎回掃除のたびにあまりが溜まっていってしまうんですよ」
誠は仕方がないというように理由を説明した。
「ああ、あいつ。そう言うところはいい加減だもんな」
かなめは窓から外を眺めながらつぶやいた。マンションが立ち並んでいることもあり、ビルの壁くらいしか見ることが出来ない。とりあえず彼らは西館一階の目的地へとたどり着いた。奥の部屋にカウラが、その隣の部屋にアイシャが、そして一番手前の部屋にかなめが入った。
「なんやかんや言いながら気があってるんじゃないか」
ポツリとキムがつぶやく。
「エダ、ベルガー大尉を手伝ってくれ、俺はクラウゼ少佐の手伝いをする」
「私は誠ちゃんの方が良いなあ」
入り口から顔を出すアイシャをキムとかなめがにらみつける。
「お前と誠を一緒にすると仕事しねえからな。アニメの話とか一日中してたら明日の引越しの手伝いしてやらねえぞ」
「わかりました、がんばりまーす」
アイシャはすごすごと引っ込んでいく。誠は左腕を引っ張られてかなめの部屋に入り込む。
「すいませんねえ、待っていただいちゃって」
島田、サラ、パーラが出勤しようとする当番隊員を押しのけて入ってくる。
「別に待ってなんかいねえよ」
そう言いながらトレーの隅に残ったリゾットをかなめはかき集める。カウラは散々文句を言いながら旨そうにリゾットを食べるかなめをいつものような冷めた目で見ていた。
「ちゃんとおやつも買ってきたよ」
サラが机の上にポテトチップスの袋を置いた。さらに島田、パーラも手一杯の菓子やジュースをテーブルに広げる。
「ちょっと弁当食いますから。ジュン!後のことは頼むわ」
島田はコンビニ弁当を広げる。愛称のジュンと呼ばれたキムはやかんから注いだ番茶を飲み干すと立ち上がった。
「じゃあ自分等は掃除の準備にかかります」
キムはエダ、そして食堂の入り口で待っている西をつれて消えた。
「神前、食い終わったか?」
番茶をすするかなめの視線が誠を捕らえる。
「まあどうにか。それじゃあ島田先輩、僕達も行きますよ」
「頼むわ。すぐ追いつくと思うけど」
誠は島田の弁当を見て驚いた。島田はもう半分以上食べ終わっている。
「島田先輩、よくそんな速度で食えますね」
「まあな。俺等の仕事は時間との戦いだからな。神前もやる気になれば出来ると思うぞ」
島田は一口でメンチカツをかみ砕いて飲み込んだ。
「そんなことはどうでも良いんだ。サラとパーラ。ヨハン達を手伝ってやれよ。それじゃあ行くぜ」
立ち上がったかなめは、トレーをカウンターに持っていく。
「私達の分も持ってってくれたら良かったのに」
そう言いながらカウラと誠のトレーを自分の上に乗せ、アイシャはそれをカウンターまで運ぶ。
「別にそれくらいで文句言われることじゃねえよ」
かなめは頭を掻いた。
「それじゃあ行くか」
カウラと誠も立ち上がった。ようやく決心がついたとでも言うように、菰田とヒンヌー教徒もその後に続く。
「菰田達!バケツと雑巾もう少し物置にあるはずだから持ってきてくれ」
食堂の入り口から覗き込んでいるキムがそう叫んだ。仕方が無いという表情で菰田、ヤコブ、ソンが物置へ歩き始める。
「ほんじゃあ行くぞー」
投げやりにそう言うとかなめは歩き出した。アイシャ、カウラもその後に続く。誠も仕方なく通路に出た。当番の隊員はすでに寮を出た後で、人気の無い通路を西館に向けて歩き続ける。
「しかし、ずいぶん使いかけの洗剤があるのね」
エダが持っている洗剤の瓶を入れたバケツにアイシャが目をやる。
「ああ、これはいつも島田先輩が掃除と言うと洗剤を買ってこさせるから……毎回掃除のたびにあまりが溜まっていってしまうんですよ」
誠は仕方がないというように理由を説明した。
「ああ、あいつ。そう言うところはいい加減だもんな」
かなめは窓から外を眺めながらつぶやいた。マンションが立ち並んでいることもあり、ビルの壁くらいしか見ることが出来ない。とりあえず彼らは西館一階の目的地へとたどり着いた。奥の部屋にカウラが、その隣の部屋にアイシャが、そして一番手前の部屋にかなめが入った。
「なんやかんや言いながら気があってるんじゃないか」
ポツリとキムがつぶやく。
「エダ、ベルガー大尉を手伝ってくれ、俺はクラウゼ少佐の手伝いをする」
「私は誠ちゃんの方が良いなあ」
入り口から顔を出すアイシャをキムとかなめがにらみつける。
「お前と誠を一緒にすると仕事しねえからな。アニメの話とか一日中してたら明日の引越しの手伝いしてやらねえぞ」
「わかりました、がんばりまーす」
アイシャはすごすごと引っ込んでいく。誠は左腕を引っ張られてかなめの部屋に入り込む。
0
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
あなたがそう望んだから
まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」
思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。
確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。
喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。
○○○○○○○○○○
誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる