188 / 1,505
第15章 休日の終わりに
護衛志願
しおりを挟む
「叔父貴!下士官寮に空き部屋あったろ!」
急にかなめが頭を突き出してくる。それに思わず嵯峨はのけぞった。
「いきなりでかい声出すなよ!ああ、あるにはあるがどうしたんだ?」
タバコに火をつけようとしたところに大声を出された嵯峨がおっかなびっくり声の主であるかなめの顔を伺っている。
「アタシが護衛に付く」
全員の目が点になった。
「護衛?」
カウラとアイシャが顔を見合わせる。
「護衛……護衛?」
誠はまだ状況を把握できないでいた。
「隊長、それなら私も護衛につきます!」
言い出したのはアイシャだった。宣言した後、アイシャはかなめをにらみつける。
「一人だけ良いカッコなんてさせないわよ」
珍しく対抗心むき出しのアイシャに誠はただあきれていた。
「私も護衛に付く」
カウラの言葉にかなめとアイシャの動きが止まった。
「カウラちゃんが?」
「ベルガー!気は確かか?」
アイシャとかなめがまじまじとカウラの顔を見つめた。カウラは動じることなく自分を納得させているかのようにうなづいてた。
「そうかその手があったか」
嵯峨はそう言うと手を叩いた。しかしその表情はむしろしてやったりといった感じに誠には見えた。
「隊長!」
誠の声に泣き声が混じる。女っ気が増えるとあって寮長の島田は大歓迎するだろう。その他の島田派の面々は有給とってでも引越しの手伝いに走り回るのはわかっている。
部隊の人員でもっとも多くのものが所属しているのが技術部である。その神として敬われている女帝、許明華大佐の一言で部隊の方針が決まることすら珍しくない。その地位は神格化され、技術部では別格の存在とされていた。一方でほとんど一人でピザやソーセージを食べながら法術関連の作業を続けているヨハン・シュペルター中尉は部内での人望は0に等しかった。必然的に整備全般を担当する島田正人准尉が事実上の技術部の最高実力者と呼ばれるようになっていた。
変わって部隊の第二の勢力と言える管理部だが、こちらは規律第一の『虎』の二つ名を持つ猛将、アブドゥール・シャー・シン大尉が部長をしている。管理部部長と言う職務の関係上、同盟本部での予算関連の会議のため留守にすることが多いことから主計曹長菰田邦弘がまとめ役についている。
ノリで生きている島田と思い込みで動く菰田。数で勝る島田派だが、菰田派はカウラを女神としてあがめ奉る宗教団体『ヒンヌー教』を興し、その厳格な教義の元、結束の強い信者と島田に個人的な恨みに燃える一部技術部員を巻き込み、勢力は拮抗していた。
寮に三人が入るとなれば、必然的に寮長である島田の株が上がることになる。さらに風呂場の使用時間などの全権を握っている島田が暴走を始めればヒンヌー教徒の妨害工作が行われることは間違いない。
「どうしたの?もっとうれしい顔したらどう?こんな綺麗なお姉さんが三人も来るっていうのよ?」
アイシャがそう言って誠に絡み付こうとしてかなめに肩を押さえつけられる。寮での島田派、菰田派の確執はここにいる士官達の知ることではない。
「じゃあとりあえずそう言うことで」
そう言うと嵯峨は出て行けとでも言うように電話の受話器を上げた。
「そうですわね。私も引越しの準備がありますのでこれで」
そう言うとさっさと茜は部屋を出た。
「置いてくぞ!神前!」
かなめが叫んだ。茫然と立ち尽くしている誠を置いてカウラとアイシャが隊長室の扉を出ていった。
急にかなめが頭を突き出してくる。それに思わず嵯峨はのけぞった。
「いきなりでかい声出すなよ!ああ、あるにはあるがどうしたんだ?」
タバコに火をつけようとしたところに大声を出された嵯峨がおっかなびっくり声の主であるかなめの顔を伺っている。
「アタシが護衛に付く」
全員の目が点になった。
「護衛?」
カウラとアイシャが顔を見合わせる。
「護衛……護衛?」
誠はまだ状況を把握できないでいた。
「隊長、それなら私も護衛につきます!」
言い出したのはアイシャだった。宣言した後、アイシャはかなめをにらみつける。
「一人だけ良いカッコなんてさせないわよ」
珍しく対抗心むき出しのアイシャに誠はただあきれていた。
「私も護衛に付く」
カウラの言葉にかなめとアイシャの動きが止まった。
「カウラちゃんが?」
「ベルガー!気は確かか?」
アイシャとかなめがまじまじとカウラの顔を見つめた。カウラは動じることなく自分を納得させているかのようにうなづいてた。
「そうかその手があったか」
嵯峨はそう言うと手を叩いた。しかしその表情はむしろしてやったりといった感じに誠には見えた。
「隊長!」
誠の声に泣き声が混じる。女っ気が増えるとあって寮長の島田は大歓迎するだろう。その他の島田派の面々は有給とってでも引越しの手伝いに走り回るのはわかっている。
部隊の人員でもっとも多くのものが所属しているのが技術部である。その神として敬われている女帝、許明華大佐の一言で部隊の方針が決まることすら珍しくない。その地位は神格化され、技術部では別格の存在とされていた。一方でほとんど一人でピザやソーセージを食べながら法術関連の作業を続けているヨハン・シュペルター中尉は部内での人望は0に等しかった。必然的に整備全般を担当する島田正人准尉が事実上の技術部の最高実力者と呼ばれるようになっていた。
変わって部隊の第二の勢力と言える管理部だが、こちらは規律第一の『虎』の二つ名を持つ猛将、アブドゥール・シャー・シン大尉が部長をしている。管理部部長と言う職務の関係上、同盟本部での予算関連の会議のため留守にすることが多いことから主計曹長菰田邦弘がまとめ役についている。
ノリで生きている島田と思い込みで動く菰田。数で勝る島田派だが、菰田派はカウラを女神としてあがめ奉る宗教団体『ヒンヌー教』を興し、その厳格な教義の元、結束の強い信者と島田に個人的な恨みに燃える一部技術部員を巻き込み、勢力は拮抗していた。
寮に三人が入るとなれば、必然的に寮長である島田の株が上がることになる。さらに風呂場の使用時間などの全権を握っている島田が暴走を始めればヒンヌー教徒の妨害工作が行われることは間違いない。
「どうしたの?もっとうれしい顔したらどう?こんな綺麗なお姉さんが三人も来るっていうのよ?」
アイシャがそう言って誠に絡み付こうとしてかなめに肩を押さえつけられる。寮での島田派、菰田派の確執はここにいる士官達の知ることではない。
「じゃあとりあえずそう言うことで」
そう言うと嵯峨は出て行けとでも言うように電話の受話器を上げた。
「そうですわね。私も引越しの準備がありますのでこれで」
そう言うとさっさと茜は部屋を出た。
「置いてくぞ!神前!」
かなめが叫んだ。茫然と立ち尽くしている誠を置いてカウラとアイシャが隊長室の扉を出ていった。
0
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
あなたがそう望んだから
まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」
思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。
確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。
喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。
○○○○○○○○○○
誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる