178 / 1,505
第13章 満足な海風と波乱
難敵との遭遇
しおりを挟む
「逃げましょう!西園寺さん」
銃を手にかなめは周りを警戒する。戦場と似た緊張した空気がそうさせるのか、かなめの顔には引きつったような笑顔があった。
「馬鹿言うな!逃げられる相手なら最初から逃げてる!」
「騒動にならぬように人気のないところで仕掛けたのが運の尽きですね」
男の声がまるでテレパシーのように二人の頭の中で響く。
「銃声で誰かが来れば……」
かなめは自分の後ろに銀色の空間が生成されようとしたことに気づいて発砲する、スライドがロックされ弾切れを示す。
「弾が無いのですか」
また再び地上に銀色の空間が現れ、その中から赤いアロハシャツの男が現れる。
「これでわかったでしょう」
男の顔に勝利を確信した笑みが浮かんだ。
「この糞野郎!きっちり勝負しろ!」
「胡州四大公爵家のお姫様がそんな口をきいてはいけませんねえ」
男は今度は確実に一歩一歩、二人に近づいてきた。
「あなたは何者ですか」
ようやく誠が搾り出せた言葉は、自分でも遅きに失している言葉だった。
「なるほど、こういう時はこちらから名乗るのが筋ですね。もっとも私個人の名前などあなた達の関心ではないでしょうが。私は遼州人の権利と自由を守るために活動している団体の構成員の一人です。屈辱の三百年の歴史にピリオドを打つべく立ち上がりました」
「アタシ等も遼州人なんだけどねえ」
もはや言葉で時間を稼ぐしかない、そう判断したかなめが皮肉めいた笑みを浮かべながらアロハシャツの男に声をかけた。
「確かにあなたの母上、西園寺康子様は本来、遼南南朝王弟家の出。かなめ様、あなたにも我々と志を同じくする資格があると言うことですが……いかがいたしましょうか?」
男はまた一歩踏み込んできた。
「くだらねえなあ!アタシは貴族とかつまんねえ肩書きが嫌で陸軍に入ったんだ」
「ほう、それもまたよし。私達は王党派とも組しません。ただ遼州人全体の幸福を……」
「それで何が起きるんですか?」
誠は男の言葉をさえぎった。ゆっくりとうろたえることも無く、誠は男に近づいていった。
「今の遼州には多くの人が生きています。地球人、遼州人、そして先の大戦で作られた人工人間。でもあなたは遼州人のための世界を作ると言いましたね」
思いもかけずに誠が自分に近づいてくる。驚いたような表情を浮かべていた男もそれが誠の本心だとわかってゆっくりとわかりやすいようにと心がけるように話を続けた。
「仕方ないでしょう。我々は力を持っている。そして他の人々は持っていない。力のあるものが生き延びるのは宇宙の摂理で……」
再び遼州人の力を誇示するような言葉を口にした男に顔を上げて強くにらみつけた。男は誠の表情の変化に少しばかり動揺したように見えたがすぐさまポーカーフェイスに戻った。
銃を手にかなめは周りを警戒する。戦場と似た緊張した空気がそうさせるのか、かなめの顔には引きつったような笑顔があった。
「馬鹿言うな!逃げられる相手なら最初から逃げてる!」
「騒動にならぬように人気のないところで仕掛けたのが運の尽きですね」
男の声がまるでテレパシーのように二人の頭の中で響く。
「銃声で誰かが来れば……」
かなめは自分の後ろに銀色の空間が生成されようとしたことに気づいて発砲する、スライドがロックされ弾切れを示す。
「弾が無いのですか」
また再び地上に銀色の空間が現れ、その中から赤いアロハシャツの男が現れる。
「これでわかったでしょう」
男の顔に勝利を確信した笑みが浮かんだ。
「この糞野郎!きっちり勝負しろ!」
「胡州四大公爵家のお姫様がそんな口をきいてはいけませんねえ」
男は今度は確実に一歩一歩、二人に近づいてきた。
「あなたは何者ですか」
ようやく誠が搾り出せた言葉は、自分でも遅きに失している言葉だった。
「なるほど、こういう時はこちらから名乗るのが筋ですね。もっとも私個人の名前などあなた達の関心ではないでしょうが。私は遼州人の権利と自由を守るために活動している団体の構成員の一人です。屈辱の三百年の歴史にピリオドを打つべく立ち上がりました」
「アタシ等も遼州人なんだけどねえ」
もはや言葉で時間を稼ぐしかない、そう判断したかなめが皮肉めいた笑みを浮かべながらアロハシャツの男に声をかけた。
「確かにあなたの母上、西園寺康子様は本来、遼南南朝王弟家の出。かなめ様、あなたにも我々と志を同じくする資格があると言うことですが……いかがいたしましょうか?」
男はまた一歩踏み込んできた。
「くだらねえなあ!アタシは貴族とかつまんねえ肩書きが嫌で陸軍に入ったんだ」
「ほう、それもまたよし。私達は王党派とも組しません。ただ遼州人全体の幸福を……」
「それで何が起きるんですか?」
誠は男の言葉をさえぎった。ゆっくりとうろたえることも無く、誠は男に近づいていった。
「今の遼州には多くの人が生きています。地球人、遼州人、そして先の大戦で作られた人工人間。でもあなたは遼州人のための世界を作ると言いましたね」
思いもかけずに誠が自分に近づいてくる。驚いたような表情を浮かべていた男もそれが誠の本心だとわかってゆっくりとわかりやすいようにと心がけるように話を続けた。
「仕方ないでしょう。我々は力を持っている。そして他の人々は持っていない。力のあるものが生き延びるのは宇宙の摂理で……」
再び遼州人の力を誇示するような言葉を口にした男に顔を上げて強くにらみつけた。男は誠の表情の変化に少しばかり動揺したように見えたがすぐさまポーカーフェイスに戻った。
0
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
もう、終わった話ですし
志位斗 茂家波
ファンタジー
一国が滅びた。
その知らせを聞いても、私には関係の無い事。
だってね、もう分っていたことなのよね‥‥‥
‥‥‥たまにやりたくなる、ありきたりな婚約破棄ざまぁ(?)もの
少々物足りないような気がするので、気が向いたらオマケ書こうかな?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
「おまえを愛することはない!」と言ってやったのに、なぜ無視するんだ!
七辻ゆゆ
ファンタジー
俺を見ない、俺の言葉を聞かない、そして触れられない。すり抜ける……なぜだ?
俺はいったい、どうなっているんだ。
真実の愛を取り戻したいだけなのに。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
王家も我が家を馬鹿にしてますわよね
章槻雅希
ファンタジー
よくある婚約者が護衛対象の王女を優先して婚約破棄になるパターンのお話。あの手の話を読んで、『なんで王家は王女の醜聞になりかねない噂を放置してるんだろう』『てか、これ、王家が婚約者の家蔑ろにしてるよね?』と思った結果できた話。ひそかなサブタイは『うちも王家を馬鹿にしてますけど』かもしれません。
『小説家になろう』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる