162 / 1,505
第10章 いざ海へ
おおきなおっぱい
しおりを挟む
「外人だ!」
とつぜんのシャムの甲高い叫び声で、一同は入り口のほうを振り向いた。麦藁帽子、戦隊ヒーローの絵柄がプリントされた子供用のタンクトップを着てデニムのスカートを身にまとっている。その隣では涼しげな藍色の小袖を纏った家村春子と白いワンピースに麦わら帽子の娘の家村小夏の姿があった。
「凄いよ!外人さんだよ!ほら金髪の人!」
「おい、シャム。この眼鏡が外人ならオメエは宇宙人じゃねえか!」
かなめは冷たくはき捨てる。誠もかなめの言う通りなので苦笑いを浮かべるしかない。
「金髪ならマリアお姉さんとかエンゲルバーグとか居るでしょz?」
「でも私、この人たち会ったことないよ?」
アイシャのその言葉も、シャムには届いていない。
「もしかして……あなたがあの遼南青銅騎士団団長のナンバルゲニア中尉ですか!」
そう叫んだのはレベッカだった。彼女はそのままシャムのところまで近づくと。頭をなで始めた。
「この人、日本語うまいね」
「生まれが長崎なんですよ私」
全員がこの奇妙な組み合わせを眺めていた。
「生まれは長崎っと。それでスリーサイズは?」
シャムを押しのけていつの間にか隣に立っていた島田とキムを見てレベッカは思わず飛びのいた。
「島田ちゃん。レディーにつまらない質問するとサラに言いつけるわよ」
「それは勘弁してください。つい出来心で……」
アイシャの冷たい視線を浴びて二人は引き下がる。島田がいかにも残念そうな顔をしている。それに対して再びレベッカの前に立ったシャムは興味深そうに金髪のレベッカを観察していた。
「でも本当におっぱい大きいね!」
そう言うと手を伸ばそうとするシャムだが、かなめがその手を叩き落とす。
「シャム、餓鬼かテメエは。三馬鹿を喜ばすようなこと言うんじゃねえ!それよりオメエさんら、ただ顔見せに来たってわけか?ご苦労なこった」
せせら笑うようなかなめのいつもの表情にもロナルドはうろたえることもなかった。
「まあ嵯峨大佐にとりあえず会ってくれと言われましてね。もし馬が合わないようならそのまま遼南の海軍基地に帰ってもかまわないと言うことでしたが」
嵯峨らしい配慮である。誠はあの間抜けな顔をした部隊長がめんどくさそうに画像通信をしている場面を思い浮かべた。
「それでどうするつもりだ?帰るなら早いほうがいいぞ」
かなめがサングラスをずらして上目遣いに誠より一回り大きく見えるロナルドを見上げた。
「いえいえ、帰るなんて。なかなかいい環境のようじゃないですか。それに海軍で事前に聞いていたほど、お馬鹿な集まりじゃないと分かりましたし」
そんなロナルドの言葉にかなめは複雑な顔で黙り込む。
「そうよねえ、馬鹿なのはこの三人とかなめちゃんだけだもんね」
アイシャはそう言って島田、キム、誠を眺めている。
「アイシャ……本当にいっぺん死んで見るか?」
かなめがこぶしを握り締めてアイシャをにらみつける。アイシャはいつものようにすばやくかなめから遠ざかると誠の陰に隠れてかなめを覗き見るふりをした。
「ロナルド・スミス・Jr特務大尉……」
「ロナルドでいいですよ。カウラさん」
穏やかにロナルドからファーストネームで呼ばれたカウラが顔を赤くして下を向いた。ロナルドの余裕のある態度。それを見てカウラも気丈に長身の彼を見上げてみせる。
「ああそうだロナルド、そろそろ出かけないと出頭予定時刻に遅れるぞ!」
頑丈そうな腕で岡部がロナルドの肩をたたく。ロナルドは髪を両手で撫で付けた後静かに手を振る。
「そうだな。では本部でお会いしましょう」
ロナルドはそう言うと、軽く敬礼をして部下達を連れてロビーへと急ぐ。
「隊の形ができたってことか」
「そうか?あのラティーナにしてもただ馬鹿が増えたとしか思えねえけど」
カウラの言葉にかなめはめんどくさそうにそう答えてロナルド達が去っていったロビーへと歩いていく。
「置いてくぞ!」
振り返ったかなめの言葉に一同はようやく我に返ってロビーへ続く廊下を進んだ。
とつぜんのシャムの甲高い叫び声で、一同は入り口のほうを振り向いた。麦藁帽子、戦隊ヒーローの絵柄がプリントされた子供用のタンクトップを着てデニムのスカートを身にまとっている。その隣では涼しげな藍色の小袖を纏った家村春子と白いワンピースに麦わら帽子の娘の家村小夏の姿があった。
「凄いよ!外人さんだよ!ほら金髪の人!」
「おい、シャム。この眼鏡が外人ならオメエは宇宙人じゃねえか!」
かなめは冷たくはき捨てる。誠もかなめの言う通りなので苦笑いを浮かべるしかない。
「金髪ならマリアお姉さんとかエンゲルバーグとか居るでしょz?」
「でも私、この人たち会ったことないよ?」
アイシャのその言葉も、シャムには届いていない。
「もしかして……あなたがあの遼南青銅騎士団団長のナンバルゲニア中尉ですか!」
そう叫んだのはレベッカだった。彼女はそのままシャムのところまで近づくと。頭をなで始めた。
「この人、日本語うまいね」
「生まれが長崎なんですよ私」
全員がこの奇妙な組み合わせを眺めていた。
「生まれは長崎っと。それでスリーサイズは?」
シャムを押しのけていつの間にか隣に立っていた島田とキムを見てレベッカは思わず飛びのいた。
「島田ちゃん。レディーにつまらない質問するとサラに言いつけるわよ」
「それは勘弁してください。つい出来心で……」
アイシャの冷たい視線を浴びて二人は引き下がる。島田がいかにも残念そうな顔をしている。それに対して再びレベッカの前に立ったシャムは興味深そうに金髪のレベッカを観察していた。
「でも本当におっぱい大きいね!」
そう言うと手を伸ばそうとするシャムだが、かなめがその手を叩き落とす。
「シャム、餓鬼かテメエは。三馬鹿を喜ばすようなこと言うんじゃねえ!それよりオメエさんら、ただ顔見せに来たってわけか?ご苦労なこった」
せせら笑うようなかなめのいつもの表情にもロナルドはうろたえることもなかった。
「まあ嵯峨大佐にとりあえず会ってくれと言われましてね。もし馬が合わないようならそのまま遼南の海軍基地に帰ってもかまわないと言うことでしたが」
嵯峨らしい配慮である。誠はあの間抜けな顔をした部隊長がめんどくさそうに画像通信をしている場面を思い浮かべた。
「それでどうするつもりだ?帰るなら早いほうがいいぞ」
かなめがサングラスをずらして上目遣いに誠より一回り大きく見えるロナルドを見上げた。
「いえいえ、帰るなんて。なかなかいい環境のようじゃないですか。それに海軍で事前に聞いていたほど、お馬鹿な集まりじゃないと分かりましたし」
そんなロナルドの言葉にかなめは複雑な顔で黙り込む。
「そうよねえ、馬鹿なのはこの三人とかなめちゃんだけだもんね」
アイシャはそう言って島田、キム、誠を眺めている。
「アイシャ……本当にいっぺん死んで見るか?」
かなめがこぶしを握り締めてアイシャをにらみつける。アイシャはいつものようにすばやくかなめから遠ざかると誠の陰に隠れてかなめを覗き見るふりをした。
「ロナルド・スミス・Jr特務大尉……」
「ロナルドでいいですよ。カウラさん」
穏やかにロナルドからファーストネームで呼ばれたカウラが顔を赤くして下を向いた。ロナルドの余裕のある態度。それを見てカウラも気丈に長身の彼を見上げてみせる。
「ああそうだロナルド、そろそろ出かけないと出頭予定時刻に遅れるぞ!」
頑丈そうな腕で岡部がロナルドの肩をたたく。ロナルドは髪を両手で撫で付けた後静かに手を振る。
「そうだな。では本部でお会いしましょう」
ロナルドはそう言うと、軽く敬礼をして部下達を連れてロビーへと急ぐ。
「隊の形ができたってことか」
「そうか?あのラティーナにしてもただ馬鹿が増えたとしか思えねえけど」
カウラの言葉にかなめはめんどくさそうにそう答えてロナルド達が去っていったロビーへと歩いていく。
「置いてくぞ!」
振り返ったかなめの言葉に一同はようやく我に返ってロビーへ続く廊下を進んだ。
0
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
もう、終わった話ですし
志位斗 茂家波
ファンタジー
一国が滅びた。
その知らせを聞いても、私には関係の無い事。
だってね、もう分っていたことなのよね‥‥‥
‥‥‥たまにやりたくなる、ありきたりな婚約破棄ざまぁ(?)もの
少々物足りないような気がするので、気が向いたらオマケ書こうかな?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
「おまえを愛することはない!」と言ってやったのに、なぜ無視するんだ!
七辻ゆゆ
ファンタジー
俺を見ない、俺の言葉を聞かない、そして触れられない。すり抜ける……なぜだ?
俺はいったい、どうなっているんだ。
真実の愛を取り戻したいだけなのに。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
王家も我が家を馬鹿にしてますわよね
章槻雅希
ファンタジー
よくある婚約者が護衛対象の王女を優先して婚約破棄になるパターンのお話。あの手の話を読んで、『なんで王家は王女の醜聞になりかねない噂を放置してるんだろう』『てか、これ、王家が婚約者の家蔑ろにしてるよね?』と思った結果できた話。ひそかなサブタイは『うちも王家を馬鹿にしてますけど』かもしれません。
『小説家になろう』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる