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第二十二章 出撃
起死回生の展開
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「数だけは一丁前かよ」
かなめは撃ちつくしたライフルを捨てて、格闘戦用のダガーを抜いた。相手にしたのは10機の火龍。うち6機は落としていたが、すべての武器の残弾はもう無かった。駆逐アサルト・モジュールらしく距離をとったままじりじりと迫る敵。
「終わる時はずいぶんとあっけないもんだな」
思わずもれる強がりの笑み。そして浮かぶ誠の顔。
「こんな時に浮かぶ顔があいつとは。アタシも焼きが回ったな」
ダガーを抜いた状態で機体を振り回してロックオンされた領域から逃げるかなめ。捕捉されれば全方向から中距離での集中砲火を浴びるのは間違いなく、頑強な05式の装甲も持たないことはわかっていた。
「新入り!先に逝くぜ」
覚悟が決まり敵中へ突撃をかけようとしたとき、奇妙な空間がかなめの目の前に広がった。
「なんだ?」
死の縁を歩くのに慣れたかなめの頭の中は瞬時に現状の把握に向かった。白銀に輝く壁のようなものがかなめの前に展開している。
敵はこちらが動いたと勘違いしたのか、壁に向かって集中砲火を浴びせるが、すべての敵弾はその鏡のようなものの中に消えていった。敵が驚いて統率の取れない射撃を始めたということから、少なくとも敵ではないことをかなめは理解した。
『僕が囮になります!今のうちに後退を!』
かなめの頭に直接話しかけてくる声。誠のその声にかなめは何故かほっとして肩の力が抜けていくのを感じた。
「おいおい、誰に話してるつもりだ?オムツをつけた新入りに指図されるほど落ちぶれちゃいねえよ。敵さん2機は確認した。後はオメエが勝手に食え!」
そう言うとかなめは誠機に着弾した敵弾のデータを解析したもののうち、手前の2機、固まっている火龍に向け突撃をかけた。火龍のセンサーは自分で撒いたチャフによって機能していないのは明らかだった。
「馬鹿が!いい気になるんじゃねえ!」
目視確認できる距離まで詰める。ようやく気づいた2機の火龍だが、近接戦闘を予定していない駆逐アサルト・モジュールには、ダガーを構え切り込んでくるエースクラスの腕前のかなめを相手にすることなど無理な話だった。
「死に損ないが!とっととくたばんな!」
すばやく手前の機体のコックピットにダガーが突き立つ。もう一機は友軍機の陰に隠れるかなめの機体の動きについていけないでいる。
「悪く思うなよ!恨むなら馬鹿な大将を恨みな!」
機能停止した火龍を投げつけながら、その影に潜んで一気に距離を詰めると、かなめは二機目の火龍のエンジン部分をダガーでえぐった。
「神前!生きてるか!」
かなめがそう思った時、急に青い光がさしたのでそちらを拡大投影した。誠の機体から青い光が伸び、すばやく切り払われた。ライフルの射程外に引いたばかりの三機の火龍がその光を浴びて吹き飛ばされていた。
そしてその中央で青い光の筋に照らされながらふり返る灰色の神前機がかなめの目に入った。
「マジかよ」
息を呑みながらかなめはその有様を見つめていた。誠機のサーベルの先端から見たこともない青い光の筋が伸びていた。
『ハハハっハ。やっちゃいました』
誠は自分のしたことの意味も分からずそうつぶやいていた。
「これが『法術』って奴か……」
目の前の信じがたい光景にかなめはただ息をのむほかなかった。
『西園寺!無事か?』
敵の残機を片付け終わったカウラが通信で叫ぶ。
「見たか……今の神前の技」
『見た。これが法術と言うやつだ』
カウラの静かな言葉を聞きながらかなめは静かに誠の機体の持つサーベルから出た光がゆっくりと弱まって消えていく様を眺めていた。
かなめは撃ちつくしたライフルを捨てて、格闘戦用のダガーを抜いた。相手にしたのは10機の火龍。うち6機は落としていたが、すべての武器の残弾はもう無かった。駆逐アサルト・モジュールらしく距離をとったままじりじりと迫る敵。
「終わる時はずいぶんとあっけないもんだな」
思わずもれる強がりの笑み。そして浮かぶ誠の顔。
「こんな時に浮かぶ顔があいつとは。アタシも焼きが回ったな」
ダガーを抜いた状態で機体を振り回してロックオンされた領域から逃げるかなめ。捕捉されれば全方向から中距離での集中砲火を浴びるのは間違いなく、頑強な05式の装甲も持たないことはわかっていた。
「新入り!先に逝くぜ」
覚悟が決まり敵中へ突撃をかけようとしたとき、奇妙な空間がかなめの目の前に広がった。
「なんだ?」
死の縁を歩くのに慣れたかなめの頭の中は瞬時に現状の把握に向かった。白銀に輝く壁のようなものがかなめの前に展開している。
敵はこちらが動いたと勘違いしたのか、壁に向かって集中砲火を浴びせるが、すべての敵弾はその鏡のようなものの中に消えていった。敵が驚いて統率の取れない射撃を始めたということから、少なくとも敵ではないことをかなめは理解した。
『僕が囮になります!今のうちに後退を!』
かなめの頭に直接話しかけてくる声。誠のその声にかなめは何故かほっとして肩の力が抜けていくのを感じた。
「おいおい、誰に話してるつもりだ?オムツをつけた新入りに指図されるほど落ちぶれちゃいねえよ。敵さん2機は確認した。後はオメエが勝手に食え!」
そう言うとかなめは誠機に着弾した敵弾のデータを解析したもののうち、手前の2機、固まっている火龍に向け突撃をかけた。火龍のセンサーは自分で撒いたチャフによって機能していないのは明らかだった。
「馬鹿が!いい気になるんじゃねえ!」
目視確認できる距離まで詰める。ようやく気づいた2機の火龍だが、近接戦闘を予定していない駆逐アサルト・モジュールには、ダガーを構え切り込んでくるエースクラスの腕前のかなめを相手にすることなど無理な話だった。
「死に損ないが!とっととくたばんな!」
すばやく手前の機体のコックピットにダガーが突き立つ。もう一機は友軍機の陰に隠れるかなめの機体の動きについていけないでいる。
「悪く思うなよ!恨むなら馬鹿な大将を恨みな!」
機能停止した火龍を投げつけながら、その影に潜んで一気に距離を詰めると、かなめは二機目の火龍のエンジン部分をダガーでえぐった。
「神前!生きてるか!」
かなめがそう思った時、急に青い光がさしたのでそちらを拡大投影した。誠の機体から青い光が伸び、すばやく切り払われた。ライフルの射程外に引いたばかりの三機の火龍がその光を浴びて吹き飛ばされていた。
そしてその中央で青い光の筋に照らされながらふり返る灰色の神前機がかなめの目に入った。
「マジかよ」
息を呑みながらかなめはその有様を見つめていた。誠機のサーベルの先端から見たこともない青い光の筋が伸びていた。
『ハハハっハ。やっちゃいました』
誠は自分のしたことの意味も分からずそうつぶやいていた。
「これが『法術』って奴か……」
目の前の信じがたい光景にかなめはただ息をのむほかなかった。
『西園寺!無事か?』
敵の残機を片付け終わったカウラが通信で叫ぶ。
「見たか……今の神前の技」
『見た。これが法術と言うやつだ』
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