103 / 1,503
第二十二章 出撃
ブリーフィング
しおりを挟む
「それでは時計あわせ、三、二、一」
司法局実働部隊運用艦『高雄』実働部隊控え室。その名前にもかかわらず、誠はここに乗艦以来、一度も入ったことは無かった。カウラ、シャム、かなめ、誠が直立不動の姿勢で、部隊長代理の吉田がその前に立っている。
「今回の作戦の特機運用は第二小隊だけで行う」
口の中でガムを噛みながら吉田はそう言い切った。
「アタシはどうすんの?」
「質問は後だ。現在一一○○(ひとひとまるまる)時。一二○○(ひとふたまるまる)時にベルガー、西園寺、神前はハンガーに集合。そして別命あるまで乗機にて待機。以上質問は?」
「ハイ!ハーイ!」
まるで小学生が出来た答えを発表するような勢いでシャムが手を上げた。
「ちなみにシャムの質問はすべて却下する!」
「それひどいよう!俊平!」
「俺には聞こえん!何も見えん!」
吉田とシャムがいつも通りじゃれ始めたので誠達はすることも無く、力を抜いて立っていた。
「吉田少佐。せめて侵攻ルート等は……」
「すべて搭乗後に連絡する。今回の作戦は非常に機密性が必要とされる作戦だ。それに現状で静観を保っている地球等の異星艦隊の動きがどうなるか読めん。作戦開始時まで何箇所かある進行ルート候補の絞込みを行ってから連絡を入れる」
そう言うと吉田は彼の胸を叩いているシャムの頭を押さえ込んだ。
「離せー!離せー!」
「それよりそいつ何すんだ?」
かなめはじたばたしているシャムを指差してそう言った。
「こいつと俺は別任務。まあ、今回はお前等で十分だろ?値段じゃあっちの火龍の20倍はする機体なんだぜ05式は。落とされたら管理部の連中が発狂するぞ」
「ふうん。けど新米隊長と実戦経験ゼロの新入り。不測の事態って奴がな……」
「何だ、西園寺は自信が無いのか?」
明らかに挑発する調子で吉田がきり返す。
「そんなこといつ言った!このでく人形が!」
「やめろ!」
カウラの一喝。じたばたするのを止めてシャムは恐る恐るカウラの表情をうかがう。吉田はニヤつきながらガムを噛む。かなめは挑戦的な視線をカウラに投げる。誠はじっとしてとりあえず雷が自分に落ちないようにじっとしていた。
「ともかくこれが現状での俺の命令ってわけだ。各員出撃準備にかかれ。それと一応聞いておくけど遺書とか書いとくか?」
「馬鹿言うなよ。アタシが簡単にくたばるように見えるか?」
「必要ない。死ぬつもりは今のところ無い」
かなめとカウラはそれだけ言うとドアに向けて歩き始めた。
「僕は書きます」
自然と誠の口をついて出た言葉に全員が注目した。つかつかとかなめは誠に歩み寄り、平手で誠の頬を打った。
「勝手に死ぬな馬鹿!お前が死んでいいのはな!カウラかアタシが命令した時だけだ!勝手に死んでみろ!地獄までついて行って、もう一回殺してやる!」
それだけ言うとかなめは振り向きもせずに、ドアの向こうに消えていった。
「アイツどうかしたのか?」
かなめの剣幕に少しばかり首をかしげながら吉田がカウラに尋ねる。
「そんなこともわかんないんだ!この鈍ちん!」
シャムはそう言うと思い切り吉田の足を踏んだ。思わず吉田が痛みに少し顔をしかめる。
「へえ、あの西園寺がねえ。カウラはどう思ってるの?こいつのこと」
そう言って吉田が呆然と突っ立っている誠を指差した。
「仰ってる意味がわかりませんが?」
本当に不思議そうにカウラは緑色の髪をなびかせながら答える。
「そんなの決まってるじゃん!カウラも誠ちゃんのこと好きなのよね!」
シャムは小さな胸を張って答えた。誠は狐につままれたという顔の典型とでもいう表情を浮かべた。カウラは透き通るような白い肌を紅潮させてうつむく。
「まあどうでもいいや。神前、どうする?遺書書いとくか?」
投げやりに言う吉田を前に静かに誠は首を横に振った。
「まああれだ。05は素人が乗っても火龍程度は軽くあしらえるスペックなんだ。いざという時は機体を信じろ。まあ俺の言えることはそれくらいだな」
吉田はそう言うとシャムを連れて部屋から出て行った。
「カウラさん?」
うつむいたまま立ち尽くしているカウラに誠は思わず手を伸ばしていた。
「隊長命令だ、直立不動の体勢をとれ!」
一語一語、かみ締めるようにしてカウラは誠に命令した。誠は言われるまま靴を鳴らして直立不動の体勢をとる。
「一言、言っておくことがある。これは作戦遂行に当たっての最重要項目である」
「はい!」
うつむいたままのカウラは肩を震わせながら何かに耐えているように誠には見えた。誠を見つめる緑色の瞳。
潤んでいた。
「死ぬな。頼む……」
「はい」
誠は思いもかけぬカウラの言葉に戸惑っていた。同じように自分の言葉に、そして自分のしていることに戸惑っているカウラの姿が目の前にあった。
「言いたいことは、それだけだ。先に出撃準備をしておいてくれ。ハンガーでまた会おう」
カウラは今度は天井を見上げながらそう言った。誠は一度敬礼をした後、静かに控え室から出た。
『高雄』艦内の廊下は同級艦と比べて広めに設計されている。それを差し引いても、誠には私室に続くこの廊下が奇妙なほど長く感じられた。廊下には誰もいない。昨日まで雑談や噂話に明け暮れていたブリッジ要員の女性隊員も、無駄に元気そうにつなぎ姿で馬鹿話に時を費やす技術部員も、カードゲームの負けのことを考えながら頭を抱えている警備部員もそこから姿を消していた。
「静かなものだなあ」
誠はそう独り言を言った後、居住スペースのあるフロアーに向かうべくエレベーターに乗り込んだ。
「んだ?ロボット少佐殿に絞られたのか?」
エレベータ脇の喫煙所で、かなめがタバコを吸っていた。
「それともあの盆地胸に絞られたとか……」
かなめのその言葉に誠は思わず目をそらす。
「おい!ちょっとプレゼントがあるんだが、どうする?」
鈍く光るかなめの目を前に、誠は何も出来ずに立ち尽くしていた。
「そうか」
かなめの右ストレートが誠の顔面を捉えた。誠はそのまま廊下の壁に叩きつけられる。口の中が切れて苦い地の味が、誠の口の中いっぱいに広がる。
「どうだ?気合、入ったか?」
悪びれもせず、かなめは誠に背を向ける。
「済まんな。アタシはこう言う人間だから、今、お前にしてやれることなんか何も無い。……本当に済まない」
最後の言葉は誠には聞き取れなかった。かなめの肩が震えていた。
「ありがとうございます!」
誠はそう言うと直立不動の姿勢をとり敬礼をした。気が済んだとでも言うように、かなめは喫煙所の灰皿に吸いさしを押し付ける。
「今度はハンガーで待ってる。それじゃあ」
それだけ言うとかなめはエレベータに乗り込んだ。また一人、残された誠は私室へ急いだ。
司法局実働部隊運用艦『高雄』実働部隊控え室。その名前にもかかわらず、誠はここに乗艦以来、一度も入ったことは無かった。カウラ、シャム、かなめ、誠が直立不動の姿勢で、部隊長代理の吉田がその前に立っている。
「今回の作戦の特機運用は第二小隊だけで行う」
口の中でガムを噛みながら吉田はそう言い切った。
「アタシはどうすんの?」
「質問は後だ。現在一一○○(ひとひとまるまる)時。一二○○(ひとふたまるまる)時にベルガー、西園寺、神前はハンガーに集合。そして別命あるまで乗機にて待機。以上質問は?」
「ハイ!ハーイ!」
まるで小学生が出来た答えを発表するような勢いでシャムが手を上げた。
「ちなみにシャムの質問はすべて却下する!」
「それひどいよう!俊平!」
「俺には聞こえん!何も見えん!」
吉田とシャムがいつも通りじゃれ始めたので誠達はすることも無く、力を抜いて立っていた。
「吉田少佐。せめて侵攻ルート等は……」
「すべて搭乗後に連絡する。今回の作戦は非常に機密性が必要とされる作戦だ。それに現状で静観を保っている地球等の異星艦隊の動きがどうなるか読めん。作戦開始時まで何箇所かある進行ルート候補の絞込みを行ってから連絡を入れる」
そう言うと吉田は彼の胸を叩いているシャムの頭を押さえ込んだ。
「離せー!離せー!」
「それよりそいつ何すんだ?」
かなめはじたばたしているシャムを指差してそう言った。
「こいつと俺は別任務。まあ、今回はお前等で十分だろ?値段じゃあっちの火龍の20倍はする機体なんだぜ05式は。落とされたら管理部の連中が発狂するぞ」
「ふうん。けど新米隊長と実戦経験ゼロの新入り。不測の事態って奴がな……」
「何だ、西園寺は自信が無いのか?」
明らかに挑発する調子で吉田がきり返す。
「そんなこといつ言った!このでく人形が!」
「やめろ!」
カウラの一喝。じたばたするのを止めてシャムは恐る恐るカウラの表情をうかがう。吉田はニヤつきながらガムを噛む。かなめは挑戦的な視線をカウラに投げる。誠はじっとしてとりあえず雷が自分に落ちないようにじっとしていた。
「ともかくこれが現状での俺の命令ってわけだ。各員出撃準備にかかれ。それと一応聞いておくけど遺書とか書いとくか?」
「馬鹿言うなよ。アタシが簡単にくたばるように見えるか?」
「必要ない。死ぬつもりは今のところ無い」
かなめとカウラはそれだけ言うとドアに向けて歩き始めた。
「僕は書きます」
自然と誠の口をついて出た言葉に全員が注目した。つかつかとかなめは誠に歩み寄り、平手で誠の頬を打った。
「勝手に死ぬな馬鹿!お前が死んでいいのはな!カウラかアタシが命令した時だけだ!勝手に死んでみろ!地獄までついて行って、もう一回殺してやる!」
それだけ言うとかなめは振り向きもせずに、ドアの向こうに消えていった。
「アイツどうかしたのか?」
かなめの剣幕に少しばかり首をかしげながら吉田がカウラに尋ねる。
「そんなこともわかんないんだ!この鈍ちん!」
シャムはそう言うと思い切り吉田の足を踏んだ。思わず吉田が痛みに少し顔をしかめる。
「へえ、あの西園寺がねえ。カウラはどう思ってるの?こいつのこと」
そう言って吉田が呆然と突っ立っている誠を指差した。
「仰ってる意味がわかりませんが?」
本当に不思議そうにカウラは緑色の髪をなびかせながら答える。
「そんなの決まってるじゃん!カウラも誠ちゃんのこと好きなのよね!」
シャムは小さな胸を張って答えた。誠は狐につままれたという顔の典型とでもいう表情を浮かべた。カウラは透き通るような白い肌を紅潮させてうつむく。
「まあどうでもいいや。神前、どうする?遺書書いとくか?」
投げやりに言う吉田を前に静かに誠は首を横に振った。
「まああれだ。05は素人が乗っても火龍程度は軽くあしらえるスペックなんだ。いざという時は機体を信じろ。まあ俺の言えることはそれくらいだな」
吉田はそう言うとシャムを連れて部屋から出て行った。
「カウラさん?」
うつむいたまま立ち尽くしているカウラに誠は思わず手を伸ばしていた。
「隊長命令だ、直立不動の体勢をとれ!」
一語一語、かみ締めるようにしてカウラは誠に命令した。誠は言われるまま靴を鳴らして直立不動の体勢をとる。
「一言、言っておくことがある。これは作戦遂行に当たっての最重要項目である」
「はい!」
うつむいたままのカウラは肩を震わせながら何かに耐えているように誠には見えた。誠を見つめる緑色の瞳。
潤んでいた。
「死ぬな。頼む……」
「はい」
誠は思いもかけぬカウラの言葉に戸惑っていた。同じように自分の言葉に、そして自分のしていることに戸惑っているカウラの姿が目の前にあった。
「言いたいことは、それだけだ。先に出撃準備をしておいてくれ。ハンガーでまた会おう」
カウラは今度は天井を見上げながらそう言った。誠は一度敬礼をした後、静かに控え室から出た。
『高雄』艦内の廊下は同級艦と比べて広めに設計されている。それを差し引いても、誠には私室に続くこの廊下が奇妙なほど長く感じられた。廊下には誰もいない。昨日まで雑談や噂話に明け暮れていたブリッジ要員の女性隊員も、無駄に元気そうにつなぎ姿で馬鹿話に時を費やす技術部員も、カードゲームの負けのことを考えながら頭を抱えている警備部員もそこから姿を消していた。
「静かなものだなあ」
誠はそう独り言を言った後、居住スペースのあるフロアーに向かうべくエレベーターに乗り込んだ。
「んだ?ロボット少佐殿に絞られたのか?」
エレベータ脇の喫煙所で、かなめがタバコを吸っていた。
「それともあの盆地胸に絞られたとか……」
かなめのその言葉に誠は思わず目をそらす。
「おい!ちょっとプレゼントがあるんだが、どうする?」
鈍く光るかなめの目を前に、誠は何も出来ずに立ち尽くしていた。
「そうか」
かなめの右ストレートが誠の顔面を捉えた。誠はそのまま廊下の壁に叩きつけられる。口の中が切れて苦い地の味が、誠の口の中いっぱいに広がる。
「どうだ?気合、入ったか?」
悪びれもせず、かなめは誠に背を向ける。
「済まんな。アタシはこう言う人間だから、今、お前にしてやれることなんか何も無い。……本当に済まない」
最後の言葉は誠には聞き取れなかった。かなめの肩が震えていた。
「ありがとうございます!」
誠はそう言うと直立不動の姿勢をとり敬礼をした。気が済んだとでも言うように、かなめは喫煙所の灰皿に吸いさしを押し付ける。
「今度はハンガーで待ってる。それじゃあ」
それだけ言うとかなめはエレベータに乗り込んだ。また一人、残された誠は私室へ急いだ。
0
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説
特殊装甲隊 ダグフェロン 『廃帝と永遠の世紀末』 第三部 『暗黒大陸』
橋本 直
SF
遼州司法局も法術特捜の発足とともに実働部隊、機動隊、法術特捜の三部体制が確立することとなった。
それまで東和陸軍教導隊を兼務していた小さな隊長、クバルカ・ラン中佐が実働部隊副隊長として本異動になることが決まった。
彼女の本拠地である東和陸軍教導隊を訪ねた神前誠に法術兵器の実験に任務が課せられた。それは広域にわたり兵士の意識を奪ってしまうという新しい発想の非破壊兵器だった。
実験は成功するがチャージの時間等、運用の難しい兵器と判明する。
一方実働部隊部隊長嵯峨惟基は自分が領邦領主を務めている貴族制国家甲武国へ飛んだ。そこでは彼の両方を西園寺かなめの妹、日野かえでに継がせることに関する会議が行われる予定だった。
一方、南の『魔窟』と呼ばれる大陸ベルルカンの大国、バルキスタンにて総選挙が予定されており、実働部隊も支援部隊を派遣していた。だが選挙に不満を持つ政府軍、反政府軍の駆け引きが続いていた。
嵯峨は万が一の両軍衝突の際アメリカの介入を要請しようとする兄である西園寺義基のシンパである甲武軍部穏健派を牽制しつつ貴族の群れる会議へと向かった。
そしてそんな中、バルキスタンで反政府軍が機動兵器を手に入れ政府軍との全面衝突が発生する。
誠は試験が済んだばかりの非破壊兵器を手に戦線の拡大を防ぐべく出撃するのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 野球と海と『革命家』
橋本 直
SF
その文明は出会うべきではなかった
その人との出会いは歓迎すべきものではなかった
これは悲しい『出会い』の物語
『特殊な部隊』と出会うことで青年にはある『宿命』がせおわされることになる
法術装甲隊ダグフェロン 第二部
遼州人の青年『神前誠(しんぜんまこと)』が発動した『干渉空間』と『光の剣(つるぎ)により貴族主義者のクーデターを未然に防止することが出来た『近藤事件』が終わってから1か月がたった。
宇宙は誠をはじめとする『法術師』の存在を公表することで混乱に陥っていたが、誠の所属する司法局実働部隊、通称『特殊な部隊』は相変わらずおバカな生活を送っていた。
そんな『特殊な部隊』の運用艦『ふさ』艦長アメリア・クラウゼ中佐と誠の所属するシュツルム・パンツァーパイロット部隊『機動部隊第一小隊』のパイロットでサイボーグの西園寺かなめは『特殊な部隊』の野球部の夏合宿を企画した。
どうせろくな事が起こらないと思いながら仕事をさぼって参加する誠。
そこではかなめがいかに自分とはかけ離れたお嬢様で、貴族主義の国『甲武国』がどれほど自分の暮らす永遠に続く20世紀末の東和共和国と違うのかを誠は知ることになった。
しかし、彼を待っていたのは『法術』を持つ遼州人を地球人から解放しようとする『革命家』の襲撃だった。
この事件をきっかけに誠の身辺警護の必要性から誠の警護にアメリア、かなめ、そして無表情な人造人間『ラスト・バタリオン』の第一小隊小隊長カウラ・ベルガー大尉がつくことになる。
これにより誠の暮らす『男子下士官寮』は有名無実化することになった。
そんなおバカな連中を『駄目人間』嵯峨惟基特務大佐と機動部隊隊長クバルカ・ラン中佐は生暖かい目で見守っていた。
そんな『特殊な部隊』の意図とは関係なく着々と『力ある者の支配する宇宙』の実現を目指す『廃帝ハド』の野望はゆっくりと動き出しつつあった。
SFお仕事ギャグロマン小説。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる