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第十五章 覚醒の時
シミュレーターのボタン
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「おい!アイシャ。明華の姐御とマリアの姐さんはいるんだろうな?」
シミュレーションルームの入り口の自販機に寄りかかりながら、ジュースを飲んで一息ついているアイシャにかなめは甲高い声で噛み付いた。
「え?いるわよ。まあ、あの二人は高レベルなバトルしてるから私は暇になっちゃってさ……って、それよりちょっと顔貸しなさいよ!」
アイシャはかなめの襟首をつかんむ。突然の反撃に何も出来ないかなめを連れてアイシャは自販機の陰に消えた。
「何すんだよ!それよりパーラはどうしたんだ?」
「私がどうかしたんですか?」
自動ドアが開いて、パイロットスーツ姿のパーラが出てきた。
『ゲルパルトの人造人間の胸って全てペッタンコじゃないんだな……』
不謹慎と分かっていてもカウラの大平原を思い出して、パーラの胸と見比べながら、誠はそんなことを考えていた。
「神前少尉!」
そのような所にカウラの声が響き、誠は直立不動の姿勢を取った。相当滑稽に見えたのかパーラや自販機の裏から出てきたかなめとアイシャが思わず噴出す。
「別に、そんな、何も考えていないですよ!」
「胸見てたでしょ。カウラちゃんの……」
「そうだよなあ。こいつ盆地胸だもんな!まあそこが菰田あたりが崇拝する対象なんだろうけどさ。いやあアタシは羨ましいねえ。アタシくらいあると邪魔でさ。もうめんどくさくってしょうがねえや。それより中入んぞ!神前!ついて来いや」
かなめは文字通り胸を張ってシミュレーションルームに入った。中にあるモニターに明華とマリアの戦いの模様が映し出されている。
明華の四式改がその得意とするロングレンジを保ちつつ優勢に模擬戦を進めていた。
「やっぱ場数は明華の姐御の方が踏んでるからな。戦いのコツって奴をどれだけ知ってるかの差か」
かなめは一目で現状を理解した。四式改の連射がマリアの回避運動に誘われるようにして続いている。
「しかし、うちはずいぶん豪華な面子なんですよね。あの二人だって東和の教導隊ぐらいならすぐ勤まる腕前ですよ」
画面を見ながらパーラがそう言った。
「叔父貴の奴のことだ。あっちこっちで恫喝でもしたんじゃねえのか?まあアタシはアタシの居た特務隊が解散しちまったから仕方なく来たんだけどよ」
「それで運命の男の子をゲットしようと現在奮闘中と!」
アイシャが入れた合いの手に、すぐにかなめの殺気を帯びた視線が彼女を襲う。
「アイシャ!表に出ろ!すぐさま額でヤニ吸う方法教えてやるからよ!」
「ああ!怖いわ!神前先生!助けて!」
かなめとアイシャがじゃれあっているのを、苦虫を噛み潰すような表情でカウラが見つめていた。
画面上ではまだ戦闘が続いていた。両者距離を保っての撃ちあい。一瞬手元が狂ったのか、直線的な動きをとった明華の機体を、捕らえたマリアの05式のロングレンジライフルの一撃が明華の四式改の腰部に直撃する。
「自分が有利な態勢になっても油断しないことだ。それでは続けて我々も出るぞ」
カウラはそう言うと一直線にシミュレーターの方に向かっていく。その先のシミュレーターの一つのハッチが開き、明華が顔をのぞかせた。
「油断したー!なんだ、あんた等も来てたの。丁度いいわ、そこの二人が役不足で困っていた所だから。西園寺や神前もやるんでしょ?付き合うわよ」
赤いヘルメットの明華はすっかりやる気のようだった。
「西園寺来ていたのか……第二小隊対私達でやるか」
マリアがぶっきらぼうに声をかけてきた。かなめはそのまま軽く手を振るとシミュレーターの一つに飛び乗った。カウラはマリアの言葉に弾かれるようにしてアイシャとパーラがシミュレーターに乗り込むのを確認しながらゆっくりと手前のシミュレーターに乗り込む。誠も成り行きにあきらめながらその隣のシミュレーターに乗り込んだ。
誠は早速コンソールとモニターを見た。
『法術管制システム』
操縦桿の根元の実に目立たない所にそれらしいスイッチを見つけてそれを押し込んだ。
画面が一瞬消え、次の瞬間に右端にサーベルの状態を示す画面と、よく分からない星マークの状態を示す画面が映った。
「これかな?」
『おい!新入り!とぼけたこと言ってねえでさっさと始めんぞ!カウラ!起動とチェック終わったか?』
キンキンとした甲高いかなめの声がシミュレーター内部に響く。
『もう終わった。とりあえず……』
『新米隊長さんの御託なんざ聞きたくねえよ!神前!テメエは突っ込んでアチラさんの誰かと刺し違えろ。アタシとカウラで残りを叩く!』
『西園寺!それは作戦とは……』
『いいんだよ!どうせシミュレーターだ!こう言うのは落とされて学ぶことが多いんだよ!神前!多少は05式のお勉強が出来たろうから、その成果とやら見届けてやんよ!』
明らかに無茶なかなめの叫び。誠は何とか反論しようと口をパクパクするが、肝心の言葉が思いつかない。
『確かに一理あるな。神前少尉!とりあえず貴様が前衛で囮になれ。私と西園寺で釣られてくるアイシャとパーラを叩く!』
「そんなベルガー大尉まで……」
上司二人はもう完全に自分が落とされることを前提に話を進めている。誠はかなめにはそう言われることは予想していたが、カウラにまでそんなことを言われるとは自分の評価がどの程度か良くわかったと思いながらとりあえず先頭に立って状況開始を待った。
シミュレーションルームの入り口の自販機に寄りかかりながら、ジュースを飲んで一息ついているアイシャにかなめは甲高い声で噛み付いた。
「え?いるわよ。まあ、あの二人は高レベルなバトルしてるから私は暇になっちゃってさ……って、それよりちょっと顔貸しなさいよ!」
アイシャはかなめの襟首をつかんむ。突然の反撃に何も出来ないかなめを連れてアイシャは自販機の陰に消えた。
「何すんだよ!それよりパーラはどうしたんだ?」
「私がどうかしたんですか?」
自動ドアが開いて、パイロットスーツ姿のパーラが出てきた。
『ゲルパルトの人造人間の胸って全てペッタンコじゃないんだな……』
不謹慎と分かっていてもカウラの大平原を思い出して、パーラの胸と見比べながら、誠はそんなことを考えていた。
「神前少尉!」
そのような所にカウラの声が響き、誠は直立不動の姿勢を取った。相当滑稽に見えたのかパーラや自販機の裏から出てきたかなめとアイシャが思わず噴出す。
「別に、そんな、何も考えていないですよ!」
「胸見てたでしょ。カウラちゃんの……」
「そうだよなあ。こいつ盆地胸だもんな!まあそこが菰田あたりが崇拝する対象なんだろうけどさ。いやあアタシは羨ましいねえ。アタシくらいあると邪魔でさ。もうめんどくさくってしょうがねえや。それより中入んぞ!神前!ついて来いや」
かなめは文字通り胸を張ってシミュレーションルームに入った。中にあるモニターに明華とマリアの戦いの模様が映し出されている。
明華の四式改がその得意とするロングレンジを保ちつつ優勢に模擬戦を進めていた。
「やっぱ場数は明華の姐御の方が踏んでるからな。戦いのコツって奴をどれだけ知ってるかの差か」
かなめは一目で現状を理解した。四式改の連射がマリアの回避運動に誘われるようにして続いている。
「しかし、うちはずいぶん豪華な面子なんですよね。あの二人だって東和の教導隊ぐらいならすぐ勤まる腕前ですよ」
画面を見ながらパーラがそう言った。
「叔父貴の奴のことだ。あっちこっちで恫喝でもしたんじゃねえのか?まあアタシはアタシの居た特務隊が解散しちまったから仕方なく来たんだけどよ」
「それで運命の男の子をゲットしようと現在奮闘中と!」
アイシャが入れた合いの手に、すぐにかなめの殺気を帯びた視線が彼女を襲う。
「アイシャ!表に出ろ!すぐさま額でヤニ吸う方法教えてやるからよ!」
「ああ!怖いわ!神前先生!助けて!」
かなめとアイシャがじゃれあっているのを、苦虫を噛み潰すような表情でカウラが見つめていた。
画面上ではまだ戦闘が続いていた。両者距離を保っての撃ちあい。一瞬手元が狂ったのか、直線的な動きをとった明華の機体を、捕らえたマリアの05式のロングレンジライフルの一撃が明華の四式改の腰部に直撃する。
「自分が有利な態勢になっても油断しないことだ。それでは続けて我々も出るぞ」
カウラはそう言うと一直線にシミュレーターの方に向かっていく。その先のシミュレーターの一つのハッチが開き、明華が顔をのぞかせた。
「油断したー!なんだ、あんた等も来てたの。丁度いいわ、そこの二人が役不足で困っていた所だから。西園寺や神前もやるんでしょ?付き合うわよ」
赤いヘルメットの明華はすっかりやる気のようだった。
「西園寺来ていたのか……第二小隊対私達でやるか」
マリアがぶっきらぼうに声をかけてきた。かなめはそのまま軽く手を振るとシミュレーターの一つに飛び乗った。カウラはマリアの言葉に弾かれるようにしてアイシャとパーラがシミュレーターに乗り込むのを確認しながらゆっくりと手前のシミュレーターに乗り込む。誠も成り行きにあきらめながらその隣のシミュレーターに乗り込んだ。
誠は早速コンソールとモニターを見た。
『法術管制システム』
操縦桿の根元の実に目立たない所にそれらしいスイッチを見つけてそれを押し込んだ。
画面が一瞬消え、次の瞬間に右端にサーベルの状態を示す画面と、よく分からない星マークの状態を示す画面が映った。
「これかな?」
『おい!新入り!とぼけたこと言ってねえでさっさと始めんぞ!カウラ!起動とチェック終わったか?』
キンキンとした甲高いかなめの声がシミュレーター内部に響く。
『もう終わった。とりあえず……』
『新米隊長さんの御託なんざ聞きたくねえよ!神前!テメエは突っ込んでアチラさんの誰かと刺し違えろ。アタシとカウラで残りを叩く!』
『西園寺!それは作戦とは……』
『いいんだよ!どうせシミュレーターだ!こう言うのは落とされて学ぶことが多いんだよ!神前!多少は05式のお勉強が出来たろうから、その成果とやら見届けてやんよ!』
明らかに無茶なかなめの叫び。誠は何とか反論しようと口をパクパクするが、肝心の言葉が思いつかない。
『確かに一理あるな。神前少尉!とりあえず貴様が前衛で囮になれ。私と西園寺で釣られてくるアイシャとパーラを叩く!』
「そんなベルガー大尉まで……」
上司二人はもう完全に自分が落とされることを前提に話を進めている。誠はかなめにはそう言われることは予想していたが、カウラにまでそんなことを言われるとは自分の評価がどの程度か良くわかったと思いながらとりあえず先頭に立って状況開始を待った。
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