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第十一章 司法局実働部隊運用艦『高雄』
かなりヤバい話
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「しかもその多くが表ざたに出来ないような作戦ばかりだからな……非武装地帯への武器の密輸とか」
ふざけた調子でそう言った吉田をにらむかなめの視線が殺意を込めたものに変わる。
「おいおい!事実をそのままに言っただけだろうが。東都コネクション。神前少尉も知ってるだろ?」
「はい、遼南及びベルルカンの不安定国家の地下経済を担っている組織。ベルルカンで密造されるヘロインと反政府武装勢力の武器をやり取りしているルートです。六年前、遼南のルートが皇帝を務める師範代、じゃ無かった嵯峨隊長の政策により摘発・封鎖されました。その結果それらの商品の供給が止まると同時にベルルカンから東都租界を経由しての密輸ルートをめぐり、シンジケートや各国の非正規特殊部隊がかち合う抗争に発展したってとこですね、通称『東都戦争』」
吉田が少し感心したように誠を見つめながら言葉を続ける。
「まあそんな所だ。結局、表面的にはそのルートは断ち切られた言う発表だがあれはでたらめだ。結局は各国各シンジケートが、それぞれのそのルートから出る上がりを分配することにして手打ちにしただけだ。そこで一番太いルートを築いたのが、胡州。そしてその利益で政界や軍有力者を動かしている非公然組織のリーダーが近藤忠久ってわけだ」
吉田はそう言いながらかなめの顔を見つめた。明らかにうんざりしたような顔をしているかなめがそこに居た。
「おととい胡州下院で親父の民党に閣外協力していた愛国者党が離脱を宣言したのも、枢密院の改革が原因ではなく近藤資金が原因か?」
「何だ知ってるじゃないか西園寺!」
いたずらっ子のような楽しげな表情を浮かべながら吉田はしゃべる。かなめは口にくわえたタバコをぷらぷらさせながら吉田を眺めていた。
「今回の愛国者党の行動は胡州軍内部の貴族主義者による倒閣運動に発展する可能性も有る。陸軍の近藤シンパの青年将校の一部には既に決起を募る回状まで回ってるのも事実だ。同盟設立に貢献した西園寺内閣が倒れれば……」
もったいぶったようにそう言う吉田は今度はカウラに目を向けた。
「最悪の場合には、胡州の同盟からの離脱」
「そんなことになったら今のこの遼州系を支えているミリタリーバランスはめちゃくちゃじゃないの!」
ことの重大性にアイシャは思わず叫んでいた。誠はその言葉を聞いた後、沈黙している回りを見回した。
カウラは淡々と話に聞き入っている。
シャムはかなり思いつめた表情で吉田を見上げている。
いつもならオチャラケたことを言ってもおかしくないはずのアイシャもこの時ばかりはまじめだった。
「終わったらしいねえ、お茶会は。まあ俺がこんなこと言ったなんてオヤッサンやチビ中佐には言うなよな、めんどいから。シャム!荷物の整理するんだろ。行くぞ」
吉田はそれだけ言うと、シャムを連れてそそくさと居住区へ向かった。
「やばい話満載ね……かなめちゃんはこういうの好きそうだけど」
ふざけたアイシャだがかなめの表情を見て、すぐに自分が口を滑らせたことに気づいて口元に手を当てる。
「そんなんじゃねえ。近藤一派が決起となれば、旧官派の残党がそれこそ総決起となるかもしれねえぞ」
「そうなれば胡州の緊張を食い止めるため遼州系の主要国だけじゃなくアメリカをはじめ地球の大国まで動くな」
かなめの言葉を継いでカウラがつぶやいや言葉に誠は事の重大性を改めて認識した。
「火が付いたらドカンね……まあこうしていても仕方ないわ。カウラちゃんが行かないなら私が先生の部屋を案内しましょうか?}
そんなアイシャの言葉にカウラは一瞬戸惑ったような表情をした後、誠の手を握った。
「私が連れて行く」
「はいはい、お熱いことで。アタシはタバコ吸ってくるわ」
かなめは誠に関心を失ったというように去っていった。
「じゃあ行くぞ」
そう言ってカウラは誠の手を引いてかなめの後を追うように食堂を後にした。
ふざけた調子でそう言った吉田をにらむかなめの視線が殺意を込めたものに変わる。
「おいおい!事実をそのままに言っただけだろうが。東都コネクション。神前少尉も知ってるだろ?」
「はい、遼南及びベルルカンの不安定国家の地下経済を担っている組織。ベルルカンで密造されるヘロインと反政府武装勢力の武器をやり取りしているルートです。六年前、遼南のルートが皇帝を務める師範代、じゃ無かった嵯峨隊長の政策により摘発・封鎖されました。その結果それらの商品の供給が止まると同時にベルルカンから東都租界を経由しての密輸ルートをめぐり、シンジケートや各国の非正規特殊部隊がかち合う抗争に発展したってとこですね、通称『東都戦争』」
吉田が少し感心したように誠を見つめながら言葉を続ける。
「まあそんな所だ。結局、表面的にはそのルートは断ち切られた言う発表だがあれはでたらめだ。結局は各国各シンジケートが、それぞれのそのルートから出る上がりを分配することにして手打ちにしただけだ。そこで一番太いルートを築いたのが、胡州。そしてその利益で政界や軍有力者を動かしている非公然組織のリーダーが近藤忠久ってわけだ」
吉田はそう言いながらかなめの顔を見つめた。明らかにうんざりしたような顔をしているかなめがそこに居た。
「おととい胡州下院で親父の民党に閣外協力していた愛国者党が離脱を宣言したのも、枢密院の改革が原因ではなく近藤資金が原因か?」
「何だ知ってるじゃないか西園寺!」
いたずらっ子のような楽しげな表情を浮かべながら吉田はしゃべる。かなめは口にくわえたタバコをぷらぷらさせながら吉田を眺めていた。
「今回の愛国者党の行動は胡州軍内部の貴族主義者による倒閣運動に発展する可能性も有る。陸軍の近藤シンパの青年将校の一部には既に決起を募る回状まで回ってるのも事実だ。同盟設立に貢献した西園寺内閣が倒れれば……」
もったいぶったようにそう言う吉田は今度はカウラに目を向けた。
「最悪の場合には、胡州の同盟からの離脱」
「そんなことになったら今のこの遼州系を支えているミリタリーバランスはめちゃくちゃじゃないの!」
ことの重大性にアイシャは思わず叫んでいた。誠はその言葉を聞いた後、沈黙している回りを見回した。
カウラは淡々と話に聞き入っている。
シャムはかなり思いつめた表情で吉田を見上げている。
いつもならオチャラケたことを言ってもおかしくないはずのアイシャもこの時ばかりはまじめだった。
「終わったらしいねえ、お茶会は。まあ俺がこんなこと言ったなんてオヤッサンやチビ中佐には言うなよな、めんどいから。シャム!荷物の整理するんだろ。行くぞ」
吉田はそれだけ言うと、シャムを連れてそそくさと居住区へ向かった。
「やばい話満載ね……かなめちゃんはこういうの好きそうだけど」
ふざけたアイシャだがかなめの表情を見て、すぐに自分が口を滑らせたことに気づいて口元に手を当てる。
「そんなんじゃねえ。近藤一派が決起となれば、旧官派の残党がそれこそ総決起となるかもしれねえぞ」
「そうなれば胡州の緊張を食い止めるため遼州系の主要国だけじゃなくアメリカをはじめ地球の大国まで動くな」
かなめの言葉を継いでカウラがつぶやいや言葉に誠は事の重大性を改めて認識した。
「火が付いたらドカンね……まあこうしていても仕方ないわ。カウラちゃんが行かないなら私が先生の部屋を案内しましょうか?}
そんなアイシャの言葉にカウラは一瞬戸惑ったような表情をした後、誠の手を握った。
「私が連れて行く」
「はいはい、お熱いことで。アタシはタバコ吸ってくるわ」
かなめは誠に関心を失ったというように去っていった。
「じゃあ行くぞ」
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