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第七章 アサルト・モジュール
いつもの訓練風景
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吉田は忙しそうに走り回る事務職員を見送り、そのまま隊舎の取ってつけたような粗末な階段を降りて、自分の05式丙型の解体整備をしているハンガーを抜け隊舎の前のグラウンドに出た。
運動服姿の誠、カウラ、アイシャなどが警備部員と混じってランニングをしていた。その様子をランとマリア、それにランニングのメニューを課されていない、サイボーグのかなめが見つめている。吉田は一人、いかにもタバコを吸いたそうにしているかなめに目を向けた。
「なんだ、連中もちゃんとトレーニングしてるじゃないか」
「そりゃあね。年中いろいろ言われてりゃ叔父貴や中央の連中がアタシ等が野球の練習ばかりしてるっていう噂ぐらい聞こえてくるよ。……で、次はこっちの練習でね」
かなめの前には荷物を載せた台車があった。台車にはガンベルトとホルスターが入っていた。駆け寄ってきたカウラはそのままガンベルトを台車から取る。
「あのー、僕の分は?」
かなめがアイシャに台車を押し付けるのを見ながら誠は尋ねる。
「上官を荷物運びに使うつもりか?早くしろ!それとちっちゃい姐御!叔父貴が報告書、書き直せって言うから机に置いといたぜ!」
そう言うとかなめは誠の左手を握って歩き始める。カウラはそれに続いて台車を押した。
「まったくあのおっさんは勝手なことばかり言うな」
そう言うとランはあきらめたような調子でそのまま吉田のところへ歩き始めた。
「事務仕事がんばれや、ちっちゃいの」
吉田はそう言うと疲れたような表情のランの肩を叩いた。
「射撃訓練がんばってね!」
そう言って誠達のランニングを遠目で見ていたアイシャが誠に手を振る。一方のランは、今度は恨めしそうな視線をかなめに向けた。
「ちっちゃいの!文句はあたしに言っても無駄だぜ。叔父貴に言いな!新入り、カウラ!行くぞ!」
「私も見学させてもらうぞ」
「なんだよマリアの姐御まで来るのか……」
「小火器の訓練は警備部(うち)が主導しているんだ。当然だろ?」
思いもかけぬ闖入者にかなめは渋い表情を浮かべるが、美人が増えるとあって誠は幸せな気分になっていた。
かなめは少しばかり怒ったような顔をしながら、誠、カウラ、マリアの三人を連れてそのままハンガーの裏の雑草が生い茂る間にできた踏み固められた道を歩いて、裏手にある射場に向かった。
運動服姿の誠、カウラ、アイシャなどが警備部員と混じってランニングをしていた。その様子をランとマリア、それにランニングのメニューを課されていない、サイボーグのかなめが見つめている。吉田は一人、いかにもタバコを吸いたそうにしているかなめに目を向けた。
「なんだ、連中もちゃんとトレーニングしてるじゃないか」
「そりゃあね。年中いろいろ言われてりゃ叔父貴や中央の連中がアタシ等が野球の練習ばかりしてるっていう噂ぐらい聞こえてくるよ。……で、次はこっちの練習でね」
かなめの前には荷物を載せた台車があった。台車にはガンベルトとホルスターが入っていた。駆け寄ってきたカウラはそのままガンベルトを台車から取る。
「あのー、僕の分は?」
かなめがアイシャに台車を押し付けるのを見ながら誠は尋ねる。
「上官を荷物運びに使うつもりか?早くしろ!それとちっちゃい姐御!叔父貴が報告書、書き直せって言うから机に置いといたぜ!」
そう言うとかなめは誠の左手を握って歩き始める。カウラはそれに続いて台車を押した。
「まったくあのおっさんは勝手なことばかり言うな」
そう言うとランはあきらめたような調子でそのまま吉田のところへ歩き始めた。
「事務仕事がんばれや、ちっちゃいの」
吉田はそう言うと疲れたような表情のランの肩を叩いた。
「射撃訓練がんばってね!」
そう言って誠達のランニングを遠目で見ていたアイシャが誠に手を振る。一方のランは、今度は恨めしそうな視線をかなめに向けた。
「ちっちゃいの!文句はあたしに言っても無駄だぜ。叔父貴に言いな!新入り、カウラ!行くぞ!」
「私も見学させてもらうぞ」
「なんだよマリアの姐御まで来るのか……」
「小火器の訓練は警備部(うち)が主導しているんだ。当然だろ?」
思いもかけぬ闖入者にかなめは渋い表情を浮かべるが、美人が増えるとあって誠は幸せな気分になっていた。
かなめは少しばかり怒ったような顔をしながら、誠、カウラ、マリアの三人を連れてそのままハンガーの裏の雑草が生い茂る間にできた踏み固められた道を歩いて、裏手にある射場に向かった。
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